軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

304 転生者たち

朝食を食べ終えた私たちは、そのまま魔王のところに行く。

魔王はまだ寝てるだろうけど、その護衛をしている鬼くんを回収するためだ。

転生者たちと会う場合、鬼くんのコミュニケーション能力は必要不可欠。

鬼くんがいるのといないのとでは、ミッションの成功率が段違いとなる。

そうしてやってきた鬼くんのところ。

鬼くんとメラをチェンジさせる。

事前に何の説明もしてなかったけど、鬼くんはさすがというべきか、私のジェスチャーで言いたいことを察してくれた。

なので、スムーズに鬼くんを連れ出すことができ、代わりにメラを魔王の護衛に残すことができた。

その際、若干メラが「俺、まだ働かなきゃいけないのか」的な顔をしたのは、うん、見なかったことにしておこう。

内心はどうあれ、責任感が強くて頼まれた仕事はきっちりこなすそんな君が好き。

大変都合がよくて。

さて、準備も整ったし、転生者たちのところに乗り込むか。

……乗り込まなきゃいけないかー。

気が乗らねー。

若葉姫色を知っている転生者たちと会う。

それだけでなんか気が乗らないのに、さらに説明のためにどうあっても口を開かなきゃならないとか。

何その罰ゲーム?

あー、行きたくない。

行きたくないけど行かなきゃならない。

ホントにそうか?

よくよく考えてみたら、別に転生者たちに事情を説明する義務なんかなくない?

このまま黙って彼らには事情もわからず右往左往しててもらうっていうのは?

ありかなしか。

あり!

「白さん。なんかよからぬことを考えてないかい?」

ぐぬ!

貴様エスパーか!?

むむむ。

ハア。

しょうがない。

鬼くんにツッコミをいただいてしまったし、覚悟を決めて乗り込むか。

そうしてやってきた転生者たちがいるツリーハウス。

大所帯の転生者たちを一ヵ所に突っ込むのは狭いだろうし申し訳ないんだけど、そっちのほうがこっちとしても管理がしやすくていいんだよね。

一応中で男女は分かれるようになっているはずだから、間違いは起きてないはず。

見張りもちゃんといるし。

合意の上でなら? 知らん。

気分のせいか、やたら重く感じる扉を開ける。

ああ、これを開けきったらそこには転生者たちがいるんだ。

鬱だ、死にはしないけど。

扉を開けた先では、草間くんと荻原くんが縄で縛られていた。

パタン。

ん?

んん?

んんん!?

思わず扉を閉めちゃったけど、何今の?

幻覚か?

この私に幻覚を見せるほどの高度な使い手がいるということか!?

見間違いとかそういうのじゃないことを確認するためにも、もう一度そーっと扉を開ける。

そこにはやっぱり草間くんと荻原くんがお縄についていた。

……うん。

まあ、うん。

ええっと、うん。

百歩譲って縛られてるのは、まあ、いい。

草間くんと荻原くんは、神言教の手先。

草間くんはこのエルフの里を襲撃した犯人、つまり私たちの一味だし、荻原くんはわざとエルフに捕まって内部から情報をリークしてた密偵。

他の転生者たちからしたら裏切り者みたいなもんだし、尋問のためにもとっ捕まえるのは、わからなくもない。

ないんだけど、どうして二人は抱き合うような感じで一緒くたに縛られてるの?

普通こういう時って、背中合わせにして縛るものなんじゃないの?

向きが逆じゃね?

草間くんも荻原くんもめっちゃ顔を背けてるけど、それでも顔と顔が触れ合っちゃってるじゃん。

もうちょっと角度が違ったらキスしちゃう距離じゃん。

そして、どうしてそれを女子たちがうっとりとした表情で眺めているのか?

カメラがあったら撮りだしそうな雰囲気。

まともなのは先生と、元委員長の工藤さんと、櫛谷さんだけじゃん。

あ、イヤ。

先生は「こんなことよくありませんー」とか言いつつも、顔を覆った手に隙間を作ってチラチラ見てる。

工藤さんは「違うのよ。二次元だから許されるのよ。三次元は駄目なのよ!」とか、訳わかんないことを言いながら嘆いている。

結論、櫛谷さんしかまともなのがいねえ!

えーと、何、この、何?

「若葉さん! 助けて!」

私がこの謎の光景に呆気に取られていると、草間くんと目があい、次の瞬間には助けを求めてきた。

よっぽど切羽詰まっているのか、その声はなんか泣きそう。

ちょ、ここで私にフルなよ!?

その草間くんの声で、その場にいたほぼ全員の視線がこっちに集中する。

やめて!

このなんかよくわからないタイミングでこっち見ないで!?

こっち見んな!

「うそ」

「若葉さん?」

「え、でも」

「本物?」

ひそひそとこっちを見ながら会話をする転生者たち。

その中から、代表して一人が一歩踏み出してくる。

元委員長の工藤さんだ。

「お久しぶり、でいいのかしら? あなたは、若葉さんでいいのよね?」

ホントは違うわけだけど、ここで違うって言うと話がややこしくなるので黙って頷く。

私が肯定すると、先生が目に見えて動揺した。

「ちなみに、後ろの人は、笹島くんで合ってる?」

「うん。そうだよ。久しぶり、委員長」

「ええ」

穏やかに挨拶をする鬼くんに、工藤さんは毒気が抜かれたかのように強張っていた肩を落とした。

けど、すぐに気を引き締めなおしたのか、もう一人に目を向ける。

「あなたは、消去法で根岸さん?」

「ええ、そうよ」

吸血っ子が肯定すると、工藤さんの後ろにいた転生者たちがざわざわしだした。

会話を拾ってみると、まあ、大体が吸血っ子の変わり様にビックリって感じのことを言っていた。

ざわつく転生者たちを、工藤さんがパンッ! と手を叩いて静かにさせる。

「それで? あなたたちは何が目的でここに来たの?」

警戒心をむき出しにして、工藤さんが聞いてくる。

まあ、その警戒はわかる。

エルフの里に捕らわれていた転生者たちは、帝国軍が攻めてきたことまでは知っている。

けど、その後は状況も何もわからず、私に空間隔離をくらって、気づけばこうして捕らわれていたって感じなんだから。

これから自分たちがどうなるのか?

いったい何が起きたのか?

何もわからず、そんな状況で急に同じ転生者が三人も現れたってんだから、タイミングからしても警戒しちゃうよね。

その他は、困惑してる感じか。

工藤さんと、あと田川くんと櫛谷さん、それから漆原さんあたりは警戒。

その他は困惑の感情が強いみたいだ。

「安心してほしい。危害を加える気はないよ」

私よりも先に、鬼くんが口を開く。

「先生には信じてもらえないかもしれないけど、僕たちは敵じゃない。それだけは信じてほしい」

鬼くんの真摯な訴えに、場が静まり返る。

転生者のうち何人かがチラチラと先生に視線を向ける。

けど、先生はそれに気づくことなく、混乱した様子で口を開いたり閉じたりしていた。

たぶん、何かを言おうとして、でも言葉が出てこないんだと思う。

「今日、ここに来たのは話し合うためだよ。僕らは、話し合わなければならない」

鬼くんがみんなを見回しながら宣言する。

それに否を唱える者はいなかった。

やっぱ鬼くん連れてきて正解だわー。

「あのー。その前に、これ、解いてもらっていい?」

「馬鹿! 空気読め!」

草間くんが情けない声で懇願し、それを荻原くんが諫めていた。

「……立ったままじゃなんだから、座って話しましょう」

草間くんのエアブレイク発言で緊張感がなくなったのか、工藤さんが肩の力を抜きながらそう提案してきた。

草間くんと荻原くんは、残念ながらそのまま放置された。