軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

303 早起き吸血鬼と朝食

メラに案内されたのは、私が寝起きしたのと同じようなツリーハウスだった。

魔王軍は野営のためのテントとかも持参しているけど、それよりかはやっぱりちゃんと屋根のある建物のほうが居心地はいいからね。

一部の区域は使い物にならなくなっちゃったけど、だだっ広いエルフの里にはまだまだ使える住宅が残っている。

住民もいなくなったんだから、それを使わない手はない。

「あら? おはよう」

ツリーハウスの中では、吸血っ子が優雅に朝食を食べていた。

この家にあったものなのか、木製の皿に盛られた料理の数々。

朝食ということで量は控えめだけど、種類が豊富で見ているだけでも飽きない。

パンにサラダに果物と、一口サイズの肉のステーキにスクランブルエッグ。

戦後一日目の朝食とは思えない豪勢な内容の食事を、ナイフとフォークを使ってお上品に食べる吸血っ子。

貴族か!?

あ、生まれは正真正銘貴族だった。

「二人分追加で用意を」

メラが奥にいた部下に指示を出す。

どうやらここは将校とか専用の食事処として扱っているらしい。

指示を受けた人はすぐに奥に引っ込んでいった。

たぶんあの奥が調理場なんだろう。

ていうか、二人分ってことはメラも一緒に食べるのか。

なんか、吸血っ子とメラが一緒の食卓に着くのってすごい久々に見る気がする。

一応メラは吸血っ子の従者だからねー。

主人と一緒に食事をとるって、なんかどうなのって感じはある。

サリエーラ国から魔族領に行くまでの旅では普通に一緒に食べてたから、今さらっちゃ今さらだけど。

まあ、それに公式の立場じゃ、メラのほうが上だしなー。

ん?

それ言ったらむしろここで食事をとってる吸血っ子って場違いじゃね?

私とメラはちゃんと軍団長っていう役職についてるけど、吸血っ子って無役だよね?

そこらへん事情を知らない魔王軍の人たちはどう感じてるんだろう?

んー、まあ、ここで堂々と将校待遇受けてるし、一般兵もいろいろ察してるのかな?

そんなどうでもいいことを考えながら、メラに椅子を引かれて座らされる。

は!? 気づいたら座っていた!

なんというエスコート力!

これができる男の力か!

私が座った後に、メラも席につく。

よくよく見てみれば、メラの顔には疲労の色が浮かんでいる。

エルフたちを相手に戦闘した後に、徹夜で戦後処理をしていたんじゃ、そりゃ疲れるわな。

食事もろくに食べてなかったっぽいし。

でなければメラが私や吸血っ子と一緒に食事をとろうとはしないっしょ。

きっと遠慮して後で一人で食べる。

吸血っ子以外の人がここで食事してないのも、きっと仕事してたり疲れて寝てたりしてるからじゃないかな。

朝っぱらから吸血鬼二人が優雅に朝食食ってるのはすんごい違和感あるけど。

「アリエルさんは寝てるわ。京也君はその護衛中。フェルミナは知らない」

私の考えが透けて見えたのか、他の人たちが今何をしているのか吸血っ子が教えてくれた。

しかし、フェルミナちゃん、知らないって。

フェルミナちゃんのことだからきっとあくせく働いてくれてるんだろうけど、相変わらず影が薄いな。

ていうか、フェルミナちゃんは私の部下だし、その行動は私が把握してないとまずいんじゃないか?

大丈夫だ! 問題ない!

きっと、おそらく、たぶん。

「ああ、あと、草間くんは他の転生者たちのところに行ってるわ。今ごろ一緒に朝ご飯でも食べてるんじゃない?」

草間くん、ああ、そういえばいたっけ。

教皇子飼いの忍んでない忍者な草間くん。

なんでそんな草間くんに忍者なんてユニークスキルがあるのかは、たぶん草間くんの下の名前が忍だからっていう安直な理由なんだろうなー。

Dならやりかねない。

けど、そうかー。

草間くんからしてみると久々の級友との再会。

気分は同窓会かねえ?

私は、あれだから別にわざわざ旧交を温めに行こうとか思わないけど、吸血っ子や鬼くんはそこんところどうなの?

「何?」

私の疑問がわかったわけじゃないだろうけど、吸血っ子の声に不機嫌さが滲む。

あ、はい。

そういえば吸血っ子は前世にあんまいい印象がないんだっけか?

まあ、ここでこうして食事をしてる時点で、察せられるか。

とは言え、この後の転生者への説明会には強制参加な。

あと鬼くんも。

魔王の護衛はその間メラにお願いしよう。

今、魔王は大幅に弱体化してるからね。

信頼のおける人に護衛をしてもらわないといけない。

徹夜明けのメラにさらなる仕事を押し付けちゃうことになるけど、こればっかりは他の人には任せられない。

あ、そういえば。

転生者で思い出したけど、山田くんはどうしてるだろう?

そろそろ目を覚ましたかな?

吸血っ子は何か知ってるか?

「山田くん」

「は? ……えーと、ああ。まだ寝てると思うわよ。私が知ってる限りじゃ、起きたって話は聞いてないわ」

長年の付き合いで、吸血っ子もだいぶ私の意を汲んでくれるようになったけど、それでも時々考え込む。

今回も私の短い問いかけの意味を一瞬理解できなくて、言いよどんだっぽい。

読解力がまだまだ足りぬ。

鬼くんを見習うが良い。

「むしろそっちよりも、洗脳が解けた長谷部さんのほうがやばいかもね。ずいぶん錯乱してたらしいから」

あ。

そういえば、そうだった。

夏目くんに洗脳された転生者のうち、自力で洗脳を解除した大島くんはいいとして、もう一人、長谷部さんは今までずっと洗脳されっぱなしだった。

それが夏目くんが死んだことによって洗脳が解除されて、正気に戻ったら?

あー。

記憶の消去とかでアフターケアしとくべきかもなー。

「今は強制的に眠らせてるらしいから、気になるのだったら後で見に行けば?」

そうしよう。

が、その前に食事だ!

運ばれてきた食事を美味しくいただく。

うーん。

戦後すぐだっていうのに贅沢。

お偉いさん特典だね。

夜通し働かなくてもこうやって美味しいご飯にありつけるなんて、いい役職に就いたもんだ。

隣のメラと、どこかで今も働いているフェルミナちゃんと、魔王の護衛をして一睡もしてないだろう鬼くんのことは忘れる。

みんな頑張って働いてくれたまえー。