軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

284 王国陥落

神言教の教皇が直々に声明を発表。

その内容は、新たな勇者にレングザンド帝国のユーゴー王子が選ばれたというもの。

その発表とほぼ同時に、王国にて最後の仕上げを行う。

夏目くんはよくやってくれた。

洗脳を使い、山田くんと先生以外の転生者、大島くんと長谷部さんを手中に収め、王国の一部をすでに掌握。

さらに、言葉巧みに玉座に執着している第一王子と王妃をたぶらかして味方につけるということもやってのけていた。

ポティマスに知らず知らずのうちに思考を誘導されていた王様は、山田くんのことを次期王にするつもりでいたらしい。

そのことを持ち出して、このままじゃ玉座につけないかもなーと切り出せば、第一王子と王妃は簡単になびいてくれた。

準備は整った。

念のため王国には私と吸血っ子が待機しているけど、よっぽどのイレギュラーな事態が発生しない限りは手出しするつもりはない。

転生者の誰かが死にそうになるとかそういうことでもない限り、事態の推移を見守ろう。

「くくく。ようやくだ。ようやくあいつらに一泡吹かせることができるぜ!」

第一王子の護衛に扮した夏目くんが邪悪な笑みを浮かべている。

その横には、どこか虚ろな表情をした妹ちゃん。

妹ちゃんは、途中から夏目くんに洗脳させておいた。

初めのほうは事態の深刻さをわかってなかった妹ちゃんだけど、次第に自分たちがしていることが祖国である王国を転覆させることだと気付いた。

しかも、その仕上げに王国上層部、自分の父親である国王を含む多くの人物が死ぬことになる。

兄様愛が爆発しているヤンデレだけど、常識まで天元突破してるわけじゃなかった。

自分のしてきたことが大好きな兄様にとって、どういう結果をもたらすのか、それがわからないわけもない。

だから、そこに完全に思い至る前に、夏目くんに洗脳してもらった。

正気のままだといつ足を引っ張られるかわかったもんじゃないしね。

それに、これなら、正気に戻した後でも、洗脳されていたという名目が建つ。

兄様の手で洗脳の魔手から救ってもらえるなんて美味しいシチュエーションじゃないか。

感動的だな。

その先は知らんけど。

心の傷だなんだは大好きな兄様に癒してもらえ。

私がそそのかしたとはいえ、半分は自分の意思でやったこと。

後になってから自分のしたことを後悔しても知ったことか。

「それで? 私は何をすればいいの?」

連れてきた吸血っ子は暇を持て余している模様。

ここまで帝国の上層部の魅了だとか、王国の兵士の魅了だとかを手伝ってもらったけど、本番ではやることない。

あ、いや。

「ポティマスを殺してきて」

騒ぎに乗じて、王国にいるポティマスを殺しておこう。

見た感じここにいるポティマスはサイボーグでも何でもないし、始末するのは簡単。

何もすることがないんだったら、暇つぶしもかねて殺しておいたほうがいい。

「わかったわ」

吸血っ子は了承してポティマスを殺しに行った。

うむ。

存分に暴れてくるがよい。

吸血っ子はこのところ生き生きとしている。

なんか神言教の教皇に取引を持ち掛けられて、それを了承してからというもの、時々ニヤニヤしていて気持ちが悪い。

しかも、教皇のことをおじ様呼ばわりし始めるし、ついにトチ狂ったかと心配になったもんだ。

メラ曰く心配はないとのことなので放置している。

さらに言えば、「お嬢様を置いていくあなたには関係のないことですので」とも言われてしい、それ以上の突っ込みを拒否されてしまった。

なんかちょっと悲しい。

吸血っ子を見送り、ルンルンと夏目くんが去っていき、あとは経緯を見守るだけとなった。

城内の一室で、優雅にお茶としゃれこむ。

ちなみに、お茶に含まれるカフェインを摂取しても問題ない。

以前コーヒーを飲んでぶっ倒れた後に、地球に行って調べてみたところ、蜘蛛はコーヒーを飲むと酔っぱらうということがわかった。

それによるとコーヒーに含まれるカフェインが原因だとのことだったのだけれど、どうも私の場合、カフェインではなくカフェインを含んだコーヒーに反応するらしい。

恐る恐るノンカフェインコーヒーを飲んだらなんともなかった。

同じように、カフェインを含むお茶を飲んでもなんともない。

どういうこっちゃねと思うが、そういうことなので仕方がない。

そういう仕様なんだと思ってあきらめるしかないわな。

そんなどうでもいいことを考えながら、透視や分体を通じて城の中で繰り広げられる茶番を観戦する。

山田くんが妹ちゃんと一緒に王様の部屋へ行き、妹ちゃんが王様を殺害。

それを見計らってなだれ込む第一王子とその護衛。

そこに混じった夏目くんが第一王子の号令に従って山田くんに真っ先に切りかかる。

夏目くんの剣が山田くんの剣を切り裂き、返す刃で山田くんに傷を負わせる。

夏目くんの持つ剣は、もちろん鬼くん謹製の魔剣。

いくら山田くんの持つ名剣でも、防ぐことはできない。

傷を負い、不利な状況に立たされた山田くん。

それに気をよくした夏目くんが、冥途の土産とばかりにネタ晴らしをしていく。

とはいっても、私や神言教とのつながりまでは口にしない。

そして、止めという最高のタイミングで、先生が乱入。

山田くんを間一髪で救出し、逃げ出してく。

もちろん、先生がこのタイミングで山田くんを助けることができたのは、私が裏で操作したからだ。

先生はそのことを知らない。

「終わったわ」

そこに、吸血っ子が戻ってきた。

その手には、ポティマスの頭が握られている。

頭だけが。

首尾よく殺すことができたようだ。

「ご苦労様」

そう言う私に、なぜか頭を差し出してくる。

何? 食えと?

くれるんならもらっておくけど。

「どんな状況?」

「茶番第一段階終了」

山田くんは予定通りに城を脱出した。

ここからもう一段階茶番を仕込み、この王都から脱出してもらう。

そこから先のことは山田くんたち次第だ。