軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

37 足掻く

地龍が去ってから、たっぷり時間を置いて、さらに周りを過剰なほど警戒する。

それだけやってもまだ安心できない。

できないけど、行動しないことには始まらない。

私は拘束したまま放置されていた蜂に向けて操糸で糸を伸ばす。

うぐ、背中が痛い。

けど、糸を出すのは問題なさそう。

糸はそろそろと慎重に伸びていって、ようやく蜂に繋がる。

蜂はまだもがいていたけど、こうなったらもう関係ない。

また、別の魔物を引き寄せてしまわないうちに、さっさと回収する。

引っ張るたびに傷が痛む。

痛みは酷いけど、HPはそれ以上減っていないし、大丈夫だと思いたい。

ようやく蜂を回収。

すぐに毒牙を打ち込んで、息の根を止める。

毒を使うような魔物相手にも問題なく毒牙が効くのを考えると、私の毒牙と毒耐性のスキルレベルは、他の魔物に比べて相当高いんじゃないだろうか?

まあ、今はそんなことどうでもいい。

問題は、このあとどうするかだ。

正直、このエリアを探索するのは自殺行為だと思う。

あの地龍みたいな化物が、他にもいるかもしれないと考えると、どうあっても私の生き残る目はない。

あれはダメだ。

今まで危険な橋はいろいろ渡ってきたけど、あれはそんな比じゃない。

なんだかんだ言って、私はそれなりに戦えると自負してる。

今でこそダンジョンを徘徊して、奇襲なんて戦法をとってるけど、私の本来のスタイルは巣を作っての篭城戦だ。

簡易ホームですら蛇を打倒できたことから分かるとおり、私が本気で防衛戦を想定して巣作りすれば、突破できる魔物はそういない。

いないはずだった。

あれはきっとそれすら突破してくる。

しかも、鼻歌交じりの感覚で。

それだけの力があれにはある。

糸、毒牙、奇襲、スピード。

私の持ち味も、あれの前では小細工程度にしかならない。

そんな小細工も、圧倒的な力の前に蹴散らされる。

その姿が容易に想像できる。

あれは、私が蜘蛛として生を受けてから、2度目に見るどう足掻いても勝ち目のない魔物だった。

ちなみに1度目はマイマザー(ファザー?)たる巨大蜘蛛だ。

勝ち目がないのも問題だけど、それ以上に、私よりスピードが速いというのが大問題だ。

巣を突破されても、その間に逃げることはできる。

多分その時私の腹の中は煮えくり返ってることだろうけど、最終的には命をとって逃げるはずだ。

私の逃げ足の速さならそれができる。

けど、あれはそんな私の逃げ足を超える。

戦っても勝ち目がない。

逃げきることもできない。

本当に、目をつけられたらその時点でどうしようもなくなる。

なんて理不尽な存在だろう。

あんなのがいるとわかってれば、無理を承知で蛇に突貫したほうがまだマシだった。

しかも、このエリアにいるのがあれだけとは限らない。

怖い。

今までで一番死が身近にある。

自分にもまだ怖いなんて感情があったことに驚きだわ。

いろいろハチャメチャな体験しても、緊張だったり恐怖だったりを感じなかったから、そういう感情はとっくにどっかに置いてきちゃったんだと思ってた。

この状況になってから分かった。

今までの危険なんて、所詮その程度、恐怖を感じるまでもないレベルだったんだ。

感情が枯れたわけじゃなくて、そう感じる必要がなかったってだけだったんだ。

はは。

それがわかるのが遅すぎるよ。

こんな詰んだ状況になる前に気づきたかったわ。

それなら、少しは危機意識を持てたかもしれないのに。

後悔するのはここまでにしよう。

生き残るためにどうすべきか、考えよう。

まずは安全の確保。

地龍には役に立たないだろうけど、この岩場を中心に巣を作る。

現状、移動できるほど私の状態は良くない。

こうなった以上、出し惜しみはなしで。

第3のマイホームをここに作る。

そして、できれば蜂とかの弱い魔物を引き寄せて仕留めていきたい。

レベルアップによる傷の回復を目指して。

この傷が回復しないことにはどうしようもない。

今のこの状態だと、雑魚の魔物に小突かれただけで死ねる。

自然治癒は、期待しないほうがいい。

こうなってくると、HP自動回復のスキルを取っておいたほうが良かった。

悔やんでも仕方ない。

ここは潔く諦めて、気持ちを切り替えていかないと。

とりあえず、当分はこれを目標に拠点を作ろう。

正直、ここに拠点を作るのは得策とは言えない。

拠点を作ればそれだけ目立つし、それを地龍クラスの強力な魔物に見つかったらアウトだ。

けど、今の傷付いた私じゃ、それしか取れる道がない。

あとはもう、私の運に賭けるしかない。

当分はレベルアップを目指す。

レベルアップで傷が治ったあと、この危険エリアからの脱出を考える。

蜂軍団を突破して上に行くか、危険を承知で下を探索するか。

どっちにしても地獄を見そう。

けど、ここまでどん底に落ちちゃった今、究極的に言えばもう生きるか死ぬかの2択しかないわけだ。

運良く生きるか、運悪く死ぬか。

今のところ天秤は死ぬ方にグッと傾いてる。

そのまま落ちていくか、巻き返すか。

巻き返すためにも行動しよう。

幸い巣を作るためのスタミナ源はある。

蜂は1体だけでもかなり大きいので、食料としてはとても助かる。

この1体分で得られるスタミナを全部巣作りに回そう。

そこから先は私の腕と運次第だ。