軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

エルフの里攻防戦⑨

【カティア】

ユーリの放つ雷の魔法。

けれど、それも私には届かない。

エルロー大迷宮において、地龍を倒した際に手に入れた称号、龍殺し。

その称号によって得た龍力というスキルは、発動している間ステータスを向上させ、魔法を阻害する効果があります。

本物の龍が持つ魔法阻害効果に比べれば劣りますが、下位の魔法であれば十分に防いでくれます。

そして、ユーリは今現在、私の接近を防ごうと発動の早い下位の魔法をメインに攻撃をしてきています。

ユーリのステータスは聖女となれるだけあって、それなりに高いはずですが、それを言えば私も転生者の中では相当強いはずです。

龍力というスキルのアドヴァンテージがある分、私の方に分がありそうです。

ユーリの選択は間違っていません。

ユーリが魔法タイプなのに対して、私は魔法寄りとはいえ、接近戦もこなせる万能タイプ。

接近を許せば、私の勝ちは確定するでしょう。

だからこそ、タメの長い威力のある魔法を捨てて、足止めのための速射を選んでいるのでしょうから。

けれど、それもいたずらに勝負を長引かせるだけで、私の有利を覆す要因にはなりません。

迫る雷を龍力で中和し、ほぼ無傷で切り抜けます。

龍力がなければ回避も防御も困難な雷の魔法はかなりの脅威だったでしょうね。

大迷宮で地龍に遭遇したときは生きた心地がしませんでしたが、あの戦いのおかげでこのような強力なスキルを得ることができたのですから、結果良かったかもしれません。

次の魔法を放つ準備をしているユーリに向けて、私はお返しの魔法を放ちます。

流石に森の中で私の得意属性である火は使えません。

火事にでもなったら大変です。

私が放つのは、光魔法。

光線がユーリの肩を貫きます。

ユーリが使う雷の魔法同様、下位の威力が低い魔法ですが、龍力の守りがないユーリでは防ぐことはできません。

痛みに顔をしかめるユーリ。

その表情の中には、驚愕が含まれています。

接近させなければ勝てるとでも思っていまして?

私は魔法寄りの万能タイプですのよ?

伊達に幼い頃からシュンと一緒に修行してきたわけじゃありませんもの。

ユーリもそれは知っているはずでしょうに。

もっとも、ユーリの知る私は学園で過ごしていた頃が最後。

短い期間ですが、その間に私は数々の修羅場をくぐり抜けて、強くなっています。

龍力もそうして得た力ですが、何より戦い慣れたというのが大きい気がします。

エルロー大迷宮では訓練では決して味わえない、死という存在が常に身近にいました。

それを乗り越えてきた経験が、今の私と、今のユーリ、その差になっているのでしょう。

「どうして!?」

ユーリが叫びながら雷の魔法を放ちます。

龍力で中和し、受けるダメージはすぐさま回復。

「ユーゴー様を裏切ったくせに、どうして私の前に立ちはだかるのよ!?」

「裏切ったわけではありませんわ。元に戻っただけです」

「意味のわからないことを言わないで!」

私自身、ユーゴーの洗脳を受けていた身。

その効果のほどは思い知っています。

言葉による説得でどうこうなるレベルではありません。

だから、実力で黙らせることにしましょう。

光線が再びユーリの体を貫きます。

光の速さで飛ぶ光線は、雷同様避けるのが非常に難しい魔法です。

それを、ユーリの足に撃ち込みました。

足を撃たれ、地面に倒れるユーリ。

ユーリは回復魔法も使えるのでダメージとしてはあってないようなものですが、転んだ隙はどうあっても取り戻せませんわ。

一気に間合いを詰め、愛刀のレイピアでユーリの体を貫きます。

一見致命傷にも思えますが、スキル「手加減」の効果で意識を奪うだけにとどめることができます。

気を失ったユーリに、死なない程度の治療を施し、拘束します。

逃げるユーリを追っていたら大分シュンたちと距離が開いてしまいました。

すぐに戻るとしましょう。

そして、戻った先で、ユーゴーが倒れ伏し、その眼前に剣を突きつけるシュンの姿がありました。

ああ、やっぱり。

まがい物の力では、どうあってもシュンに勝てるわけがありませんでした。

全身傷だらけなユーゴーに対して、シュンは傷1つありません。

本当に、チート野郎ですわね。

思えば、エルロー大迷宮で地龍と戦った時でさえ、シュンは無傷でしたわね。

「終わったのか?」

「ああ」

ああ、男言葉を使うのもそろそろ億劫になってきましたわ。

「まだ、まだ、終わって、ねえ!」

「いや、終わりだ。お前じゃ、俺は倒せない」

ユーゴーがろくに動けそうもない体を起こそうとして、力なくまた地面に倒れます。

その執念だけは認めますが、往生際が悪いとも言いますわね。

「シュン、止めを刺せ。お前にはその権利がある」

正直に言えば、私もこの男に止めを刺したい。

この男に私はいろいろなものを奪われた。

それらは決して戻ってこない。

その喪失の怒りを、この男にぶつけたい。

けれど、シュンが失ったものは私以上。

止めを刺すならば、シュンが私より適任でしょう。

「いや。命は奪わない」

だというのに、シュンは信じられないことを言う。

「なんですって?」

あ、つい素の言葉が出てしまいましたわ。

けど、そんなことはどうでもいい。

「どういうつもりなのですか? この男を、まさか生かしておくつもりですか?」

「あ、ああ」

「ふざけないでください!」

この人は、甘い甘いと思っていましたが、これほどとは!

「この男は生かしておいても百害あって一利なし! 生きているだけで害となります。即刻殺すべきです」

「ごめん、カティア。カティアの気持ちもわかるし、俺もユーゴーを許す気はない。けど、それでもこいつは生かしておく。生きて、死ぬまで罪を償わせる」

シュンの瞳はまっすぐ私の瞳を見返します。

そこには、揺るぎない意志が感じられました。

何を言っても無駄だと。

致し方ありません。

もしかしたら、これでシュンに嫌われてしまうかもしれません。

けれど、ユーゴーを生かしておくことなどあってはならないことです。

ユーゴーに止めを刺すべく魔法を構築し始め、

「イヤ。さすがに甘ちゃん過ぎるでしょ」

轟音。

衝撃。

思わず手で顔をかばい、体全体が何かに覆われます。

それがシュンの体だとわかりました。

だ、だ、だ、抱きつかれ、れ!

衝撃が過ぎ去ると、シュンはすぐさま私を離します。

あ。

「誰だ?」

シュンが見つめる先、そこには、ユーゴーを踏み潰した男が立っていました。

ユーゴーは頭部を失い、男の右足に踏み潰されていました。

男の足元には小さなクレーターのようなものが出来上がり、その衝撃を物語っています。

この男、いったいどこから?

状況から察するに、どこかから飛んできたということでしょうか?

いえ、そんなことは今問題ではありませんわね。

問題なのは男の正体。

男の額には2本の角。

人に類似した姿ですが、人にあらざるもの。

おそらく鬼人でしょう。

オーガ系の魔物の上位種。

人と同じだけの知恵を持ち、魔物としての力を振るう恐るべき種族。

けれど、それすらどうでもよくなります。

私は男の顔をみて、驚愕に目を見開きます。

きっと、シュンも同じ顔をしていることでしょう。

「久しぶりで忘れられちゃったかな?」

私は、いえ、私たちはその男の顔を知っています。

全体の雰囲気は変わりましたが、その面影はきっちりと残っています。

「京也」

シュンがポツリと、その名を口にします。

それは、前世の私たちの親友、笹島京也にほかなりませんでした。