軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第121話 エンバラの歓迎の宴

シニアさんはヴィア主任を一度エンバラに連れ帰ると言った。

ヴィア主任もエルフの里であるエンバラが蒼炎の魔法について何か知っているはずと思い了承する。

サイドさんはヴィア主任の助手として同行する事になった。

エルフの里のエンバラは王都センタールから10日ほどかかる。

王都より馬車で西に7日で西の中心都市カッターに着く。そこより2日間、馬車で南下し、森に行き着いたら、1日の徒歩の移動でエンバラに至る。

道中は結構暑い。カッターは内陸である為、結構乾燥もしていた。

砂埃が舞い上がる。なるべく馬車から出ないように過ごす。

カッターまで2日の距離にある宿場に入る時にエルフの皆んなは頭が隠れるようにスカーフを巻いた。

僕は不思議に思いエルフの従者に尋ねる。

従者の人が言うには30年くらい前にカッターでエルフ排斥運動があり、未だにカッターはエルフを排斥しているそうだ。その為、カッター周辺では髪とエルフの特徴である先の尖った耳を隠すとのこと。

30年前、カッター、エルフ排斥運動。

僕は、サイドさんからヴィア主任が30年ほど前までカッターのギルド長をしていた話を思い出した。

エルフ排斥運動はヴィア主任が冒険者ギルドに良い思い出がない事と関係があるのかな。

タブーだから聞かないけど。

特に問題なくカッターを通り抜け南下をする。

馬車で1日ほど進むと景色がだいぶ変わってきた。緑が多くなっている。

ここは王都〜カッター間の道と違い、途中に宿場街は無い。野営の準備を始めた。

皆んなで外で泊まるだけなのに興奮してしまう僕。

焚き火を見ながらヴィア主任とシニアさんの言葉の応酬を聞いている。

空を見上げると満天の星だった。

野営地より1日馬車で南下すると小さな町があった。その町の裏には鬱蒼とした森が広がる。

馬車はここまでだ。

今日1日この町に泊まり、明朝、エンバラに向けて森を歩く事になる。

次の日は日が昇ると同時に移動を開始する。エンバラへの道は獣道のような状態だ。先導を従者のエルフが務めてくれた。

空が茜色に染まる頃、目の前の景色が開けてくる。集落だ。

僕達はエルフの里エンバラに到着した。

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

エンバラの住居は木造だ。

周囲の森と調和が取れており、落ち着いた印象を受ける。

エンバラに着いて直ぐに宿泊する場所に案内された。

風呂が用意されており、僕達は旅のほこりを落とす。

その後、案内人のエルフが、格段に立派な屋敷に僕を案内する。

屋敷の一室に入ると正面に女性が座っている。

見た瞬間に分かった。ヴィア主任とシニアさんとは血縁だと。

横には左右に2名ずつ男性が座っている。

僕は女性の正面の位置に座るように言われる。僕が座ると正面の女性が口を開く。

「蒼炎の使い手であるアキ殿に、遠路はるばるここエンバラまで出向いてもらって感謝申し上げる。私はここエンバラの長のオウカ・ウォレットじゃ」

「僕はアキ・ファイアールです。この度はシニアさんからのお誘いでお邪魔させていただきます。よろしくお願いします」

「何を言うか。こちらが無理を言ったのは分かっておる。今日は歓迎のために宴を用意させてもらった。混み入った話は明日にして、今晩は宴を楽しんでもらいたい」

エルフの里の歓迎の宴かぁ。どんなものなんだろう。

僕はエルフの里の広場に案内される。

広場の中央には木で2メトルくらいの簡易的な 櫓(やぐら) が組んである。

その 櫓(やぐら) を囲む様に席が設置されていた。僕の席は 櫓(やぐら) が正面に見えて、少し高くなっている席だ。

隣りはミカが、反対側の隣りはエンバラの長のオウカ・ウォレットが座る。

ヴィア主任とサイドさん、シニアさんは僕たちの後ろの席に座っている。

空は既に日が落ちて暗くなっていた。

広場の中央の 櫓(やぐら) と、周囲の 篝(かがり) に火がつけられる。

その火の灯りで周囲は柔らかな赤色に染められた。

エンバラの長のオウカさんが立ち上がり周囲を見渡す。

「皆、盃は持ったか? 今日は蒼炎の使い手であるアキ殿がここエンバラに来ていただいた歓迎の宴である! 失礼の無いように楽しんでくれ! それでは乾杯!」

その乾杯が引き金になり、櫓を囲んでいるエルフ達は歓談を始めた。

ミカはワインを飲んでいる。エンバラには人間の商人が行商に来ているそうだ。僕はお茶をもらった。

エンバラの料理は素朴だけど、とても美味しい。エンバラでは狩猟の他に、作物も作っていると聞く。

エンバラの長のオウカさんは話す事が好きなようでずっと喋っている。

オウカさんは3人の母親で、一番上がシニアさん、二番目がザルツさん、三番目がヴィア主任とわかった。

ヴィア主任と血縁だと思っていたが、さすがに母親だったと聞いては僕は驚く。

オウカさんは3人の子供が幼い時の話を楽しそうに話す。聞いている僕も楽しくなる。

オウカさんは興が乗ってきたようで、シニアさんとヴィア主任の恥ずかしい話をしようとしたら、後ろの席の2人から首を締められた。

櫓の前では里のエルフ達が出し物をしている。弓の遠打ちや二人組の剣舞、ナイフ投げなど、どれも見応えがあった。

エルフの里の皆んなが僕たちを楽しませるために頑張ってくれているのが心に伝わる。

宴が盛り上がりそろそろ終わりかと思ったら最後の出し物が始まる。

壇上の下に男性が太鼓を持って並んだ。

こちらに一礼し、左右に分かれる。

片方に10名ずつ。太鼓は手で叩くタイプだ。ゆっくりとしたリズムで太鼓の音を奏でる。

その後、僕は赤面した。

薄手の服を着た10名の女性のエルフが僕の前に整列した。薄手の服の下は裸である。

下着も付けていない。全てが見えている。

僕が慌てていると、10名の女性のエルフは僕に一礼し、横に5人の2列に等間隔に並んだ。

そして太鼓のリズムに合わせて舞い始める。

始めはゆっくりの太鼓のリズムがドンドン激しくなった。

僕はこの舞に心を奪われていく。

櫓と篝火の火で照らされる身体。

飛び散る汗。

太鼓のリズムが僕の心臓を叩く。

なんて幻想的で情熱的な光景なんだ。生物の原初の意識を揺さぶられる。

そして舞と太鼓のリズムはクライマックスを迎えて終了した。周囲に静けさが訪れる。

圧倒的な舞だった。

僕が言葉を失っているとエンバラの長のオウカさんが立ち上がり僕の前に跪いた。そして真剣な声を上げる。

「今の舞はアキ殿に捧げるものであります。我々エンバラの心、また祖先であるソフィア・ウォレールの願いが篭っている舞であります。この舞を見ていただきありがとうございました」

この言葉を最後にエンバラ初日の宴は終了した。