軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第57話 囚われの剣姫

夜に今日のダンジョンでの戦闘を考えていた。ミカとイフリートの戦闘はまだまだミカに余裕がある。下層に進んでも問題無いと思う。蒼炎もイフリートに効いた。

ボスモンスターがどの程度かわからないが本格的に攻略を目指しても良いかなって考えた。明日は休みにしたから明日考えようと思い就寝した。

昨日ダンジョンに行ったので今日は休み。つらつらと魔法学校の受験勉強をしていたらリーザさんからギルド長が呼んでいると言われた。

なんだろう? そう思い冒険者ギルドのギルド長室に出向いた。

ギルド長室のソファに座るなりギルド長が真剣な顔つきで話を始めた。

「今日、アキさんに来てもらったのはミカさんの事についてなんだ」

そう切り出されたが、特に思い当たる事柄が無い。首を傾げるとギルド長が話を続けた。

「ミカさんは昨年Bランク冒険者になった。これはどの国でも貴族扱いされる。これは冒険者ギルドがBランク冒険者を全力で守るからだ」

「そうですね。Bランク冒険者になった時に説明を受けました」

「私もミカさんにBランク冒険者になった時に説明させてもらったよ。ここで考えて欲しい事があるんだ。ミカさんは戦争奴隷だ。捕虜になって身代金が払われない場合になる奴隷だ。戦争の相手国の人間のため、奴隷になった国では反逆の恐れがあるため奴隷解放はできない」

「知っています。僕も以前ミカを奴隷解放するためにカンダス帝国に行く提案をしましたが拒否されました。この国で私と一緒にいたいと言われましたので」

ギルド長は深い息をついて会話を続ける。

「そんな事があったのか。実はBランク冒険者になったミカさんをこの国でも奴隷解放できそうなんだよ。Bランク冒険者になったため、現在ミカさんは魔石の供給で冒険者ギルドやこの国に多大な貢献をしている。つまりは何かあった時ミカさんをこの国の権力者から冒険者ギルドは全力で守る事になる。まぁこの国で国家転覆なんかを画策されたら困るから、ミカさんにはそのような事をしない旨を国に書面で出してもらってその責任と保証を冒険者ギルドでする事になるけどね」

なるほどと僕は思った。

「それならこの国に居てもミカを僕の奴隷から解放できるってことで間違いないんですね」

僕の問いにギルド長は自信を持って答える。

「その通りだ。実はミカさんがBランク冒険者になった時の説明で本人には話してある。君が納得しないなら冒険者ギルドが君を説得しても良いって言ったんだ」

「ミカを奴隷から解放する事に私からは異論はありません」

「去年ミカさんにその話をした時に少し考えさせて欲しいと言われてね。それで先日もう一度確認したら、ミカさんはこのまま奴隷でいたいって言うんだよ。理由を聞いても教えてくれなくてね。それでアキさんの意向を聞いてみようと思って今日来てもらったんだ」

「奴隷から解放できるなら解放したほうが良いと思います。私からミカに確認してみます」

「そうしてもらうと助かるよ。やはりBランク冒険者が奴隷のままと言うのは対外的にも良くないからな」

「やっぱりそういうものですか?」

「そうだな。この間のファイアール公爵家のパーティーみたいに貴族格として出席しながら奴隷だからな。それに君のためにも良いと思うんだ」

「私のためですか?」

「そうだね。君は他の冒険者から【蒼炎の魔術師】と呼ばれているね。ミカさんが何て呼ばれているか知ってるかな?」

僕は分からなかった。

「わかりませんね。なんて呼ばれているのですか?」

ギルド長は僕の目を見ながら話した。

「まぁ君の耳に入らないように裏で呼んでいるんだろうけどね。ミカさんは【囚われの剣姫】と呼ばれているよ。この呼び名は君にとってもあまり良くないんじゃないかな?」

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

冒険者ギルドを出て帰宅した。ミカがリビングにいたから僕の部屋に呼んだ。ミカが椅子に座ったところで僕は話を始めた。

「ギルド長から奴隷解放について話を聞いてきたよ。良い話じゃない? 僕はこの話は賛成だよ。何でミカは奴隷のままでいたいの?」

ミカは俯いたまま会話を始めた。

「特に今のままで問題ないから。ただそれだけよ」

「それなら尚更奴隷から解放された方が良いよ。僕はミカをパートナーだと思っている。命を預け合う冒険者仲間でもある。以前この件で話した時と違って僕とミカとの間には固い絆がある。奴隷から解放しても何も問題が無いよ」

ため息を一つついてミカがこちらを見て口を開いた。

「アキくん、ありがとうね。私の事を考えてくれて。確かに私とアキくんには既に固い絆があると感じている。これは私のわがままなの。アキくんと初めてあった奴隷商会で、隷属の契約の主人をアキくんに変えたわよね。あの瞬間アキくんとの繋がりができたのを感じたの。腕の隷属紋から熱い感情が流れてきたのよ。この熱い感情はアキくんの感情……。その感情が凍っていた私の心を溶かしてくれたの。今でもたまに隷属紋を通して、その熱い感情が流れてくる時があるわ。またこの奴隷の証のチョーカーを触るとその時の感情を思い出させてくれるの」

ミカはそこまで一気に話すと唐突に僕にキスをした。

「私がアキくんの奴隷でいたいのは、私が新しく生まれ変わった証なの。お願いだからその証を私から奪わないで!」

ミカの瞳から涙が溢れる。そっかそういう事だったんだ。僕が他の冒険者から、皮肉と妬みでミカの事を【囚われの剣姫】なんて言われる事なんて小さな事だ。ミカが僕の奴隷のままでいたいのはミカが新しい人生を歩み始めた証。ミカを縛るようなもんじゃないんだね。

「ミカ、分かったよ。これからも僕の奴隷としてよろしくね」

「了解致しました。ご主人様」

ミカはそう言って涙を流しながら微笑んだ。