軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

2話:吸い取る素材*1

「くそー、やっぱ、魔力を減らす、ってのは難しいのかあ?」

「どうだろう。やったことが無かったから上手くいかないだけかもしれないけれど……」

酔い覚ましに風の精と戯れたフェイと、早速反省会。

「とりあえず、魔力のある物体を『本来なら魔力の少ない物体』に描き替えても、魔力自体はほとんど変わらねえっぽい、っつーことが分かったな」

「うん」

僕、どうやら、魔力を注ぐことは得意みたいなんだけれど、吸い取ることは難しい……みたいだ。まあ、やったことが無かったからなあ。

「ある意味、画期的なんだよなあ……。本来なら魔力をそんなに蓄えておけない、魔力をそんなに持つことが無い素材が、最高級の魔石と同程度の魔力を持つ、ってのはさ……」

フェイは『何かに使えねえかなこの技術』と言っているけれど、その技術、僕ありきだから、普遍的なものにするのはちょっと難しい気がするよ。

「なあトウゴー、できるだけ魔力がこもらないように描いても駄目か?」

「結構頑張って抑えたつもりだったんだけどな」

なんというか、元々、絵を実体化させるのって、魔力を注ぐことで実体化している訳だから、魔力を吸い取れるようにはできていないんじゃないかな、と思う。強いて言うならば、絵を実体化させるのと、現実に絵を反映させるのとでは仕組みがちょっと違うのかもしれないけれど……それでも、魔力を吸い取る、っていうのはまた別のような気がする。

「くそー!それでも諦めきれねー!俺はフワフワたんぽぽ王を見てみたいーっ!」

フェイはそう言って頭を抱えているけれど……そ、その、目的と手段がごちゃ混ぜになってない?別に、カチカチ放火王をフワフワたんぽぽ王にする必要は無くて、ただ、カチカチ放火王の魔力を減らすことができればそれでいい、と思うんだけれど……。

「私も見てみたいわ。フワフワたんぽぽ王。多分トウゴみたいな雰囲気でしょ?」

「そうねえ。トウゴ君みたいな雰囲気のカチカチ放火王……うふふ、フワフワたんぽぽ王、なんて、素敵な名前じゃない。カチカチ放火王って名前ですら困惑していたんだから、フワフワたんぽぽ王にされたらもっと困惑するでしょうね」

……ライラとクロアさんは乗り気みたいだ。困ったなあ。

「ねえ、ラオクレス。どう思う?」

乗り気の人ばっかりじゃあ困るから、ちょっとラオクレスにも聞いてみる。……すると。

「……お前らしい解決手段だとは思うが。その、フワフワたんぽぽ王、というのは……」

……ラオクレスが肩を震わせて笑っている!こら!笑ってないでちゃんと反対して!

「まあ、効率的なことに変わりはないか……」

「おう!なんてったって、トウゴの魔法は色々規格外だからな!活かさねえ手がねえ!」

結局、森の皆は揃いも揃って『フワフワたんぽぽ王』に賛成だった。まあ、本当にたんぽぽの綿毛にするかは置いておくとして、宝石を別のものに描き替えて魔力を減らす、っていうのは一考する価値があると思うので、もうちょっと試行錯誤してみようと思うよ。

「けど、ちょっと色々と小道具を使わねえと駄目そうだよな、これ」

そして、僕よりもフェイが考えることになりそうなので、ちょっとそれは申し訳ない。この中だとフェイが一番魔法に詳しいからね。

「魔力を吸い取る、ってことを考えると、そういう道具を使わないと駄目っぽいよなあ……」

「絵の具を変える、ってこと?」

「ん、まあ、まずはそこらへんからやってみるか?」

そういうことなら……ええと、魔力が少ないもので絵の具を作ってみる、ことになるのかな。よし。

そうして僕は、風の精の抜け毛で絵の具を作った。そのために風の精をブラッシングして、抜け毛を貰った。

ブラッシングしている間、風の精は気持ちよさそうに体を伸ばして、とろん、としていた。必要な量の抜け毛が手に入ってブラッシングをやめようとしたら、ねだるように僕の手へすりすりやってきたので、しょうがない。もう少しブラッシングを継続して……それからやっと絵の具づくり。

絵の具のチューブを描いて、色のところに風の精霊の毛を張り付けて……それが実体化したので、早速、使って絵を描いてみる。

生まれた絵の具は、綺麗な淡い薄緑。この色なら、うぐいす餡の大福の、餅に透けて見える緑色を表現するのに丁度いいだろうな、と思われたので、早速、薄緑の宝石をうぐいす餡の大福に描き替える。

「……宝石がお餅になっちゃうのって、どうなのかしら」

クロアさんは複雑そうな顔をしていたけれど、まあ、それはさて置き……。

「フェイ。食べて」

「よし、今度こそ酔わねえことを祈るぜ!」

フェイに、できたての大福を食べてもらう。……すると。

「……酔った!めっちゃ美味いけど、酔った!」

あ、やっぱり?

「やっぱり、絵の具にしちゃうと均質化されてしまって駄目な気がする」

「よく分かんねえけどとりあえず片っ端から実験してみてくれ……」

フェイが魔力で酔って赤い顔でダウンしている中、僕は次の宝石を餅にする。

絵の具は、いつものつくり方をすると魔力が増えてしまうのかもしれない。つまり、素材を一回、僕の魔力で実体化させてしまっているというわけだから。

なので今回は、素材を直接使うコラージュで絵を描いてみることにする。

画用紙に直接、風の精の毛を張り付けて……ずんだ餅。カビたお餅にならないようにだけ気を付けたので、まあ、なんとか成功。

「フェイ、どうぞ!」

「酔い覚ましに水かなんか持ってきといてくれ……」

早速出来上がった餅をフェイに食べさせると……。

「……さっきよりはマシ、かあ……?あ、う、いや、駄目だ。やっぱ酔う……」

……うーん。やっぱり、劇的な変化は無かったようだ……。

それからも色々、試してみた。

光の筆で描いてみたり、風の精の毛じゃなくてそこら辺の炭で描いてみたり。

そうこうしている間に風の精のブラッシングを羨ましがった管狐が僕の袖からスポンと潜り込んで脇の下をくすぐり始めたり。しょうがないから管狐もブラッシングしたり。鳳凰もブラッシングしたり。馬もブラッシングしたり。鳥は勝手に泉でバシャバシャやっていたり。がしゃどくろは……ブラッシングする毛が無いので、とりあえず骨を磨いてみたり。

そうして全員の毛艶もしくは骨艶がよくなったところで疲れて寝ちゃったり。

……と、まあ、うん。動物の毛は一通り試したし、そこらへんの土とか葉っぱも試した。森の中のものを使っても魔力たっぷりな気がしたので、森を出てそこら辺の土とか草とかも使ってみた。

けれど、それでもやっぱり、フェイはぐでぐでに酔っぱらってしまったのだ。

「フェイ、大丈夫?」

「うあ……くそ、あんまり、らいじょぶくねえ……」

フェイは魔力探知機として頑張ってくれていたのだけれどやっぱり限界があるみたいなので、今日はここで終了。フェイを団扇で扇ぎつつ、額や首筋に濡らしたハンカチを当てて冷やしつつ寝かせている。

「くそぉー、どーしたらいーんだろーなー!」

「とりあえず、絵の具の工夫はこれ以上しようがない気もする。よっぽど魔力の少ない素材があれば別なのかもしれないけれどさ」

なんというか、『小道具』が必要だ、っていう理屈は分かるんだけれど、それ、この辺りの素材を使っていても駄目な気がする。だって、その絵の具を使って絵を描いて実体化させる時、どのみち魔力はこもってしまうし、それで元々の物体の魔力が減るわけは無いし……。

「くそー、トウゴの魔法がどういう風になってんのか分かれば、まだもうちょっと何とかなりそうなんだけどよー」

フェイは悔しそうにそう言って、ごろごろ、と寝返りを打つ。こらこら。寝返りしたらハンカチが落っこちちゃうだろ。

「魔力を吸い取る素材なんて、そうそうねえだろうしなあ……」

うん……。そういうものが見つかれば、カチカチ放火王の封印から直接魔力を吸い取ってしまえると思うんだけれどね。難しいかなあ……。

……いや、そもそもそういう素材が見つかったら、宝石をたんぽぽの綿毛にせずに、魔力を吸い取って奪ってしまう、っていう使い方をするべきのような気もする……。

とりあえず、その日はもう寝ることにした。旅の疲れもあったし、それ以上に、疲れと魔力酔いとでフェイがもう、ぐでぐでだったので。……酔っぱらったフェイを火の精に乗せてフェイの家まで帰らせるのは何となく心配だったので、フェイには僕の家に泊まっていってもらうことにした。

「トウゴの家のベッドって、なーんか寝心地いいんだよなー……へへへ」

「それはよかったよ」

フェイはすっかりぐでぐでなのだけれど、とりあえず自力で歩いてベッドまでは行ってもらった。ベッドにごろん、となったら、適当にタオルケットをお腹に掛けておく。おやすみ。

……ということで僕も僕のベッドに入ろう、としたら。

こんこん、と、窓が叩かれる。

あれ、と思う。こんな時間に、しかもドアじゃなくて窓から、っていうと、普通はフェイなのだろうけれど……フェイを起こさないように配慮したラオクレス?

確認のため、ちょっとだけカーテンを開けてみる。……すると。

「とうごー」

「あ、レネ!」

もじもじしながら、レネが立っていた!

『今夜は丁度いい月夜だったので、遊びに来てしまいました。大丈夫でしたか?』

『はい。いつでも大歓迎です!』

ということで、レネを家の中に招き入れる。寝る前なので飲み物は麦茶。描いて出した奴を水割りにして丁度いい濃さ。

お茶請けに、宝石を餅にしたやつの残りを出してしまう。まあ、夜食ってことでおひとつ。

『このお餅はとてもおいしいです!あったかくなる味がします!』

ちなみに、元宝石の餅はレネには好評。そっか。あったかくなる味か。いっぱい食べていってほしい。

それからレネに『元々は宝石だったんだよ、このお餅』と説明したら、「わにゃ!?」と驚かれた。ま、まあ、そういう反応になるか……。

少しだけレネとお喋り(とは言っても筆談がメインだけれど)をして、それから僕らも眠ることにした。レネは夜の国の人だけれど、普通に夜の時間帯は眠くなる人だし。僕も眠いし。

……客間はフェイが使ってしまっているので、しょうがない。今回も例のごとく、一緒のベッドで寝ることにした。レネは同じベッドで寝ることに抵抗が無いらしいんだけれど、いいのかなあ、これ……。まあ、いいか……。

レネはしばらく、僕の隣でもそもそしながら「ふりゃ」と嬉しそうにしていたのだけれど、やがて寝付いてしまったらしくて、すうすうと規則的な寝息が聞こえてくるようになる。それを聞いていたら、僕も段々眠くなってきて……。

……気づいたら朝だった。ちょっと早い時間だ。

レネはまだ、隣で寝ていた。朝の光の中で見ると、レネの目の下にちょっと隈ができているのが分かる。最近、あんまり眠れていないのかな。忙しそうだもんな、レネ。

そんなレネを起こさないように、僕はそーっとベッドを抜け出して、朝食の準備をすることにする。僕だって食事の支度くらいはするんだよ。

朝食はフレンチトーストにしよう。一緒にバナナも焼こう。僕は割とこれが好きだし、夜の国で似たようなものが出た時にレネが喜んでいたから、レネも気に入ると思う。フェイは甘いもの、結構好きだから……フレンチトーストだけ嫌い、ってことはないと思う。まあ、多少嫌いでも付き合え、ってことでいいや。

ということで、卵を溶いて、牛乳と砂糖とを混ぜて、先に牛乳に浸しておいたパンに卵液をくっつけて……あとはちょっと放置。2人が起きてから焼こう。

さて、朝ご飯の準備もできたし、僕はちょっと外をぶらぶらしてくるかな、と思っていたところ。

……そーっと、客間から出ていくフェイを見つけた。

なんだなんだ、と思ってこっそり後をつけると、フェイは僕の部屋に入っていって……。

「トーウゴ!起きろー!」

フェイがベッドの上、頭から毛布に包まって丸まっているレネに突撃していった!毛布の中に手を突っ込んで、そのままくすぐる構えだ!

僕が止める間もなく、フェイは遠慮なく、こしょこしょ、とやり始めて……。

「わにゃーっ!?」

すると当然、レネはびっくりして起きる!

「うわーっ!?なんで!なんでトウゴがレネになってるんだーっ!?」

そしてフェイもびっくりして引っ込む!

……そうして。

フェイは僕だと思ってくすぐった相手がレネでびっくりしてるし、レネはいきなりくすぐられて「わにゃっ!?わにゃっ!?」と混乱中だし、そんな光景が繰り広げられていて僕もびっくりしている!つまり全員びっくりしている!全員びっくりしている!