軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

25話:何度でも楽園を*9

魔王の脅威に誰も気づいていないという事実に、僕は驚愕せざるを得ない。まさか、魔王が全く人に伝わらない言葉で話していたなんて……。

「あれが本物の魔王だとすると、納得がいくよな。ほら、でけえ鳥が勇者の剣で刺した途端にあいつ、力を失っただろ?あれって、勇者の剣が魔王に対して働いたから、ってことだよな?つまり、あれが魔王だったから、っつう証明になるよな?」

うん。そうだと思う。

……そういえば、思い返してみると、何故か今回、鳥が大活躍だった。あの鳥が持つと、勇者の剣、綺麗な細工の剣になるから、その、ちょっとだけ納得がいかない。

「……この調子でいくと、あの鳥が勇者になっちまう日も遠くねえな」

……ああ、鳥が窓の外でふんぞり返っている!

「これからどうしようか」

「そうだな……結界の中から魔王が復活したことには驚いたが、魔王はすぐに結界を出ることを選んだ、ということだな?ならば、結界の維持は今後も必要だろう」

あ、うん。それは思う。

……あの魔王、多分、結界の中に居ると力が出せなかったんじゃないかな。だから、すぐさま結界を出た。結界を出ない方がたくさん人に危害を加えられただろうに、そうしなかったのは、『そうできなかった』からだと思う。

つまり、森の結界は魔王にも有効。魔王はきっと森の結界が嫌い。だから僕は森の結界をしっかり保っていかなければ。

「そうね。森の結界が今後も要になってくることは間違いないでしょう。……恐らく、元々はこの結界、魔王の封印を守るためのものだったんでしょうけれど……まあ、しょうがないわ」

うん……。結界があったのに、魔王の復活を許してしまった。それは、森の精霊としては申し訳ない限りだ。

「ということは……あれ?そういやトウゴ。あんた、調子悪くない?大丈夫?」

「え?」

「ほら、森が魔王に焼かれちゃったじゃない。魔王の封印が解けて最初に燃やされちゃった、のよね?」

「うん。熱かった……」

思い出すに、熱い。自分が燃えて焼け焦げて失われていく感覚は、あまりにも理不尽で、怖くて、どうしようもないもので……熱くて痛いあの感覚がまた戻ってきたように感じて、ちょっとだけ、身震いする。

「……あんたって本当に森なのね」

そんな僕を見ていたライラが、ちょっと呆れたようにそう言った。

「え?あ……ええと、人間!僕は人間だよ!」

「よろしい。……まあ、あんたは人間だけれど精霊様だし森なわけだし、そうでなくとも森の結界って森の具合によって強度が決まるんでしょう?なら、燃えちゃった分の木は足しといた方がいいんじゃないの?」

なんとなく物申したいところではあるんだけれど、それは置いておいて……。

「うん。魔王のせいで失われてしまった部分は補修していこうと思う。それから、また魔王を防げるように、結界の強度を上げたり、森の防衛力を魔王対策として上げていく必要があると思うんだけれど……」

僕は早速、そう提案する。

今できることをやらなくては。魔王はきっとまた、ここを襲いに来る。ただ僕を殺しに来るだけならまだしも、きっと、森を焼いて、森に住む生き物達の住処を奪おうとしてくる。

僕は、僕の大好きなものを失わせるわけにはいかないから、全力で魔王からものを守らなきゃいけない!

……なんていうことを、言っていたら。

まおーん……と、魔王の鳴き声が響く。

「あら、ご機嫌斜めね」

魔王……ええと、ふにふにした黒いやつが、レネの膝の上で、ちょっと不貞腐れたように丸くなって、ちょっと、とろけかけている。

「魔王?どうしたの?」

「まーおう?わにゃーにゃ?」

僕とレネが魔王をふにふにつつくと、魔王は、まおーんまおーんと鳴く。……ちょっとご機嫌斜めに見える。

「どうしたんだろう。魔王、元気が無いけれど。ええと、魔王の話してたら魔王の元気がなくなってきたよね?……ん?あ、これ、ややこしい」

そう。僕らが森を燃やした魔王の話をしていたら、まおーんの魔王の機嫌が悪くなってしまった。

これって、もしかして……。

「……森を燃やした奴が魔王って呼ばれるのは、気に食わない?」

そう聞いてみると、魔王は途端に、シュッ、と姿勢を正して、まおーん!と、堂々たる鳴き声を上げたのだった。

……どうやら、そうらしい。

魔王は……森を燃やした魔王も『魔王』なのが、嫌みたいだ!

「……そりゃあそうだよなあ。俺だって、森を燃やしたあいつの名前が『フェイ』だったら嫌だぜ」

フェイがそう言って、「な、そうだよな」と、魔王を撫でる。魔王は、まおん、と鳴くと、ゆったり尻尾を振り始めた。……尻尾を振る仕草は、馬から真似したものらしい。魔王はよく学習しているなあ。

「ええと、向こうの呼び名を『森を焼いた方の魔王』にするのは駄目だろうか」

「駄目だわ!まおーんちゃんが、それだと嫌って言ってるわ!」

更に、カーネリアちゃんからも援護射撃が来た。相変わらずレネの膝の上に乗っている魔王が、まおんまおん、と抗議の声を上げている。そ、そっか。相手が『魔王』なのは嫌なのか……。

そして、クロアさんがにっこり笑って、言った。

「分かったわ。なら、向こうに新しく名前を付けましょう。幸いにも、あれを魔王だと思っている人は少ないわ。新しく名前を付けてそっちを浸透させちゃいましょう。あんなのと同じ名前じゃ、まおーんちゃんが可哀相だわ」

「折角ならさ、ものすごく気と間の抜けた名前がいいわ。そういう名前で呼んでやりましょうよ」

クロアさんとライラが非常ににこにこ攻撃的だ。そしてやる気だ。

「じゃあ、何がいいだろう。悪い魔王だから、悪魔王、とか……?」

そうは言っても、何と呼べばいいんだろう。何かいい名前があればいいんだけれど……。

……と、思っていたら。

「ということで、ラージュ姫をお呼びしてるわ。今はレッドガルド様のところで打ち合わせ中だけど、もうすぐこっちにいらっしゃると思うわよ」

ライラが、そう言って、胸を張った。

……うん。

ええと……。

まあ、適材適所!

「いいのですか?私が魔王……いえ、まおーんさんの方ではないアレの名前を付けてしまっても……」

「ああ!是非、ラージュ姫にお願いしてえ!」

「そうね!ラージュ姫の名づけだったら、きっと皆笑顔になれるわ!」

「そうよ!私、お姫様がソレイラに『にこにこトウゴ村』って名前付けようとしたの忘れてないわ!その調子であの悪い奴にお名前を付けてほしいの!」

ラージュ姫はちょっともじもじしながらも乗り気で、そして、フェイとライラとカーネリアちゃん……つまり、森の過激派達がものすごく乗り気だ。いいのかなあ、いいのかなあ……。

「え、ええと……何故、私が」

一方、ラージュ姫は困惑している!そりゃあそうだ!ネーミングセンスがちょっとあれなのを見込まれて名付け親を任されてるんだから、そりゃあ困惑されると思うよ!

「そうね、やっぱり、ラージュ姫が名づければ、国中にあれの新たな呼び名が浸透するだろう、っていう目論見でもあるわ。あれが『魔王』だってことで浸透していくよりは、別の名前の、別の生き物として知られていった方がいいと思うのよ。この世界の平和の為にも、王家の安定のためにも、ね」

そこでクロアさんがもっともらしい事を言うと、ラージュ姫は大きく頷いた。

「そうですね……やはり、まおーんの方の魔王さんとの区別化を図るとともに、新たに現れた迷惑な方の魔王をより分かりやすく表現する名前が必要であると思います。そうすることで民衆にも話が伝わりやすくなるでしょうし……ええと、では……」

ラージュ姫は早速、真剣に考え始めてくれた。……とんでもないネーミングセンスを期待されてのことだっていうところが、ちょっと申し訳ない。

「恐ろしさを伝えることは必要ですね。ある程度は脅威であり、魔物の王であり、人々に危害を加えようとしている、そして森を焼いたという罪も含めて、民に知らしめなければならないでしょうし、しかし、不必要に恐れることのないような、そしてまおーんの魔王さんとは全く異なるものである、というような、そんな名前を……」

ものすごく真剣に考えて、考えて、ラージュ姫は『魔王』に代わる名前を、編み出してくれて……。

……そして。

「命名。『カチカチ放火王』、です!」

「ふにふにとした優しい手触りの魔王さんとは対極のものであるという表現と、火打石を用いる時の音をかけた『カチカチ』と、森を焼いたという悪の所業を分かりやすく表す『放火』、そして、敵の恐ろしさと強大さを表現しての『王』です!いかがでしょう!」

……カチカチ放火王。カチカチ放火王。

カチカチ放火王……。

フェイとライラは満面の笑み、クロアさんは、魅力的ににっこり。ラオクレスは思い切り渋い顔をしながらふるふる肩を震わせていて、カーネリアちゃんとアンジェは『ちょっと気が抜けて素敵な名前!』と賛成。リアンは複雑そうな顔で頷いていて……。

「トウゴ!どうだ!?いいよな!」

……うん。

ええと……ええと……。

まあ、いいか!

ごめん、魔王!いや、カチカチ放火王!ごめんね!本当にごめんね!カチカチ放火王!

ということで、魔王改め、カチカチ放火王。……気が抜ける名前だけど、丁度いいかもしれない。少なくとも、魔王は商売敵の名前がカチカチ放火王になって満足気だ。これからも君は……君こそが魔王だ。よろしくね、魔王。

……ただ。

カチカチ放火王の命名で盛り上がる室内で、レネは、ちょっと元気が無かった。

「レネ、どうしたの?ええと『わにゃーにゃ?』」

魔王を膝の上に乗せたレネは、どうにも、元気が無い。それを見て不安になりつつ、レネに話しかけてみる。すると、レネは、はっとして、大丈夫、というように笑顔を作ってみせてくれるのだけれど……。

『どうしたの?元気が無いように見えます。もしよければ、話してほしいです』

レネにそう書いて見せると、レネは、へにゃ、と元気のない顔に戻って……そして、迷いながら、文字を書いていく。

……そして。

『トウゴの羽が、燃えてしまいました。それがとても、悲しいです』

そんなことを、僕に、遠慮がちに見せてきた。

「……僕の羽、が?」

僕が自分の背中を指しながら確認すると、レネは、こくん、と、悲し気に頷いた。

……僕の羽は、すっかり焼け焦げて、半ば燃え落ちてしまって、今は背中にちょっとだけ残骸が残っているようなかんじだ。左側はほとんど背中から何もでていなくて、右側は手首から指先ぐらいまでの長さだけ、羽の残骸が残っている。葉っぱも一枚だけ残っているみたいだ。

フェニックスの涙はあらゆる生き物のあらゆる怪我を治してくれるらしくて、僕の背中は綺麗に治ったのだけれど……僕の羽だけは治せなかったらしい。

……ええと、つまり、この羽が生物じゃなくて森だっていうことが証明されてしまったぞ。困ったな。まあいいか。

『なかよし魔物ふりゃふりゃ広場も中止になってしまいました。森も、燃えてしまいました。楽しい催しが無くなってしまって、綺麗な森が焼けてしまって、とても悲しいです。何百年もかけて大きくなった木が、一日で燃えてしまうなんて、とても悲しい。多くの人が楽しみにしていた催しが無くなってしまうのも、悲しいです』

……うん。つくるのは難しくて、壊すのは簡単なんだ。すごく、そう思う。

100年の大木だって、燃やされてしまえばそれまでなんだよ。そこにどんな歴史があって、どんな思いがあって、それでそこに木があるか、なんて、壊す奴らは何も考えやしないんだろう。

なかよし魔物ふれあい広場についても同じだ。……だからこそ、壊すのは効果的、とも言えるけれど……でも、そういうの、嫌いだ。

『酷い人が1人居たせいで多くの人達に愛でられていた美しいものや優しいものが奪われてしまったのは、悲しいことです!ひどい!許せません!』

レネが書く文字が、ちょっと乱暴になってきた。レネの、普段はちょっと丸くて整った形をした文字が、歪んで、どんどん走り書きになる。

『トウゴの羽、大好きだったのに!木漏れ日の下でゆらゆら揺れて綺麗で、月の光に透けて綺麗で、飛ぶトウゴもすごく綺麗で……大好きだったのに、もう無いんです!トウゴはもう飛べないし、羽が風にはためくのも見られないんです!すごく、悲しくて、トウゴの羽を奪ったやつが、憎い!』

レネは泣きそうな顔でそう書いて、僕にぐいぐいとスケッチブックを見せてくる。それから、レネはまた、僕の背中を見て、しょんぼりとする。

『……でも、一番悲しいのはトウゴだっていうことも分かっています。ごめんね』

……ええと、僕個人としては、羽が無いのは、元の状態に戻ったようなものだから、まあ、そこまでショックじゃない。けれど、レネは……その、僕の羽が無くなってしまったのが、すごく悲しいらしい。だから、羽自体についてはしょうがないと思っている僕も、レネを悲しませてしまっていることは、悲しい。

そして僕としても、森が焼けてしまったことは……その、すごく、悲しいし悔しい。なかよし魔物ふれあい広場だって、もうすこし長い期間開催されて、多くの人に、魔物と触れ合って楽しんでいってもらう予定だったのに、それが無くなってしまって、悲しいし、悔しい。

「そうね。カチカチ放火王の所業のせいで、色んなものが失われてしまったわ。取り返しのつかないものだってあるし……」

クロアさんがそう言って、彼女もまた、僕の背中を、ちらり、と見る。……いや、僕の背中はそんなに気にしなくていいんだけれどさ。

でも……うん。

「壊すのって、簡単だよね。なのに、取り戻すのって難しい。永遠に取り戻せないものだってある」

僕はそう言いつつ、同じような内容を書いてレネに見せる。レネはしょんぼりと、頷いた。

「……僕が描いた絵が、捨てられてしまったことがある」

そして、更にそう続けると……。

「だ、誰がそんなことをしたの!?私、そいつをぶん殴ってやるわ!ぶん殴ってやるんだわ!」

カーネリアちゃんが席を立ちあがって怒り始めた。僕は最初、呆気にとられてしまったのだけれど……なんだか少し嬉しくて、不思議な気分になる。

「ええと、両親に。僕の両親は、僕が絵を描いているのが嫌な人達だったから。……まあ、そういう人も居るんだよ。もう諦めてる」

僕がそう言うと、カーネリアちゃんは口をへの字にして、そうね、と言った。彼女も家族について色々思うところがある人だもんな。

「でも。……捨てられてしまった絵は、二度と、手に入らないし、もう一度、全く同じものを生み出すこともできないけれど……新しい絵は、描けるから」

レネとカーネリアちゃんに説明するように、そう伝える。

「僕、ここに来て、色々な絵を描いた。それこそ、ここに来る前に描いた分よりも沢山、描いているかもしれない。それは、捨てられてしまった絵の代わりにはならないし、大切なものを捨てられてしまったことが無かったことになる訳でもないけれど……でも、嬉しいことが増えれば、天秤は悲しい方じゃなくて嬉しい方に傾くから」

しょっぱすぎる料理に砂糖を入れたって、塩味が無くなる訳じゃない。

それと同じように、悲しいことは嬉しいことを積み重ねても無かったことにはできない。

……けれど、塩を入れ過ぎた料理だって、やりようによっては十分美味しく食べられるようになるかもしれないし、悲しいことだって……マシにできるかもしれないんだ。

「絵を焼くことは簡単だ。悲しいことに。でも、焼け焦げたキャンバスにも新しく色を乗せて塗り替えられるかもしれない。塗り替えた結果、生まれるのは元の絵ではないけれど……だったら、せめて、綺麗な色で塗り替えたい。だって、そうしないと、あんまりにも……救われない」

半ば、自分自身に言うような気持ちでそう言って、そう、書いた。

それを、皆、黙って、ちょっと笑って、聞いてくれた。

「あの、だから……僕、焼けた森を、もう一度、描こうと思う。同じ森にはできないけれど。でも、前よりもずっといい森を、描きたい。なかよし魔物ふれあい広場も、もう一回開催しよう。もっと盛大に、その時は、ラージュ姫の召喚獣もお借りしてきてさ。……その、どうだろうか」

「……トウゴの力は、そのためにあるのかもしれねえな、って……なんか、そんな気がしてきた」

やがて、フェイが噛みしめるようにそう言った。

そう言われて、僕は……自分にこの能力があってよかった、と、強く思う。

描いたものが出てくるなんて、随分と都合が良くて、へんてこで、有難い能力だけれど……この力があれば、悲しい思いも、塗り替えていけるかもしれない。

それって、すごく貴重で、幸福なことだ。

「いいじゃねえか。やろうぜ。失われちまったもん全部、でっかく作り直してやろうぜ!」

フェイが明るく笑って言う。部屋の中に太陽がやってきたみたいな笑顔は、皆を元気にする。

「やっぱり、負けたくねえよな。ものを壊す奴らになんか、負けたくねえ。壊されてそれで終わりだなんて、俺は絶対に嫌だね!」

ぎらり、と燃え上がるような瞳でフェイがそう言えば、やっぱり同じような瞳で、クロアさんが笑う。

「そうね。泣き寝入りするのは癪だわ。幸いにも、トウゴ君の力があればいくらでも新たにものを生み出せる。トウゴ君にどうしようもないことは、私達がやればいいわね」

うん。是非、人を動かす部分についてはお願いします。僕、交渉とか説明とか、苦手なんだよ……。

「分かるわ!私、家族がいなくなっちゃったけれど、リアンとアンジェが新しい家族になってくれて、とっても幸せだもの!……お父様とお兄様の代わりじゃないけれど、リアンもアンジェも、元の家族以上に素敵な家族だわ!」

カーネリアちゃんがそう言えば、隣でリアンが照れくさそうにそっぽを向いて、アンジェがにこにこと嬉しそうにカーネリアちゃんにくっつく。うーん、天使。

「よし!じゃあまずは森か!?どうする、トウゴ!」

フェイが満面の笑みで僕の背中をバンバン叩いてそう言うのを聞きながら……ああ、楽しいなあ、幸せだなあ、と、僕は思う。じんわりと強く、そう思う。

……僕は知ってるんだ。

何かが失われてしまったらそれはもう二度と取り返しがつかないことだって多いけれど、でも、それを取り返そうとすれば、案外救われるもんだ、っていうことを。

失われた花火大会が、もっと素敵な、オツな花火大会に化けたなら、きっと、心の中にあった凹みは綺麗にならされて、何ならその上に花が咲くことだってあるんだってこと、僕は、知ってる。

「うん。森からいこうかな。……なんだか、楽しみになってきた」

「おう!俺もだぜ、トウゴ!」

……僕、焼け焦げた土地にだって、花を咲かせてみせる。

……と、意気込んでいたところ。

「とうごー、とうごー」

レネが、ついついと僕の服の裾を引っ張る。

そして……もじもじそわそわ、そして滲み出る期待と不安とを携えて、文字を書いたスケッチブックを見せてくれた。

『もしかして、羽も、トウゴの力で治りますか?』

「……は、羽?ええと、多分、治る……のかな?」

フェニックスの涙では治らなかったけれど、描けば治る、と、思う。多分。フェイの目と指も戻せたし、羽も多分、戻せる……んじゃないか、と、思うのだけれど。

ということで、そういう旨をレネに伝えてみたところ、レネは、きゃあ、と声を上げて、頬を紅潮させて、興奮気味にスケッチブックを見せてくれた。

『よかったです!トウゴの羽が治るととても嬉しいです!トウゴの背中で美しい羽が揺れているのを見ると、とても幸せな気持ちになります!』

そ、そっか。僕の羽を見ると幸せな気持ちに……い、いや、でも、そう言われてもなあ……。

『僕は、元々羽が無かった生き物だから、羽が無くなって、少し落ち着いているのだけれど……』

僕の率直な意見を書いて見せると、レネはびっくりしたような顔をする。

……そして。

『トウゴは羽が嫌いですか?』

……う。

うう……レネの、この星空みたいな瞳で見つめられてしまうと、その……断れない!

……ということで、リハビリがてら、一発目。

僕は、自分の羽を描くことにした。

ええと……できるだけ目立たなくて、コンパクトに折りたたんで普通の服を着られるようなやつにしよう。うん。それなら、まあ……。