軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

7話:安心と信頼の*6

それから僕らは王都へ出かけた。

メンバーは前回同様。フェイ一家と僕とクロアさんと、僕と同じくラオクレスを描きたいライラ。

そして主役のラオクレス!おめでとう!ありがとう!

「皆様、ようこそいらっしゃいました」

王城に着くと、ラージュ姫が自ら出迎えてくれた。忙しいだろうになあ。ちょっと申し訳ない。

「さあ、こちらへ」

そしてそのまま、応接間へ通してくれる……のかと思ったら、案内されたのは庭だった。

遅咲きの品種の薔薇が咲き乱れる一角、ガーデンテーブルを囲んで席に着いた僕らは、どうやらお茶に招かれたらしいぞ、ということに気づく。

そんな僕らの様子を見て、ラージュ姫はちょっと申し訳なさそうに笑って……言った。

「すみません。ちょっと、お茶にお付き合いいただけますか?」

「それは構わないが……どうしたのかな?」

フェイのお父さんは何か分かっているのか、にこにこしながら聞いている。そして僕はさっぱりだ。僕らはてっきり、このまま重々しく打ち合わせとかがあって、それから会場に向かって式典がある……と思っていたので、少し驚いている。いや、お茶、好きだけれどさ。

……すると、ラージュ姫はこっそり、言った。

「お父様に、『大切なお客様をおもてなしするため』の時間を頂いてきたものですから」

うん。……うん?

僕が首を傾げていると……フェイが、隣でけらけら笑った。

「あっ、分かった!つまり俺達をダシにして休憩するってことだな!」

「ごめんなさい。そういうことです」

あ、成程。そういうことか。

僕らを接待する、っていう名目があれば、ラージュ姫はお茶をのんびり飲んで少し休憩できる、と。そういうことらしい。

「いいぜいいぜ!そういうことならどんどん使ってくれよ!レッドガルドから王都まで、ちょいちょい呼びつけてくれたっていい!」

「僕も。出涸らしになるまでダシに使ってください」

こんなことでお役に立てるなら、是非是非。……先生の家で、急須でお茶を淹れた時、13番茶まで出した時があったけれど、あの時の出涸らし並みの出涸らしになる覚悟だよ。

それからお茶を楽しむ時間が流れた。お城のお菓子はなんだか高級感がある。妖精洋菓子店のお菓子も好きなのだけれど、雰囲気が違う、というか……ええと、お城のお菓子は森っぽくない。うん。当たり前か。当たり前だな。

「最近、忙しいんだろ?」

そんな中、フェイがお茶を飲みつつ、ラージュ姫にそう、尋ねた。

「そうですね。まあ、忙しさも本日で一段落するものと思われますが……」

ラージュ姫はそう言って、ちょっと疲れた顔で笑う。多分、今日の式典の準備を、ラージュ姫が自らやっているんだろう。大変そうだ。

「今回の式典、対策は万全です」

そして、ラージュ姫は少し自信ありげに、堂々と、話してくれた。

「まず、お父様にお願いして、王家の鎧を全て魔物にして頂きました。お父様には渋られましたが」

うわ。それはすごい。

「それを兵士達に配布しております。……新たに魔物にされ、新たな主を定められてしまうからいけないのです。予め、鎧が魔物になっており、着用する兵士との間に信頼関係があったならば、先日のようなことにはならないでしょう」

成程。あらかじめ魔物にしてあれば、それ以上魔物になることはないだろう、っていうことか。

「会場には魔法の力を弱める結界を巡らせてあります。会場外部から魔法による干渉をしにくい造りになっておりますので、もし何かあっても、会場内部に犯人を特定できるはずです」

そういうこともできるのか。便利だなあ。

……と、僕らが感心していると。

「……しかし、万全の対策をしても、果たして本当にこれで十分なのか、と、不安になりますね」

ラージュ姫は苦笑しつつ、そっと、疲れたようにため息を吐いた。

「アージェント家は何を考えているのでしょう」

……ルギュロスさんは、相変わらず地下牢の中で元気にしているらしい。そろそろ投獄されて2週間になるのだけれど、それでもまだ余裕綽々なんだそうだ。

アージェント家からの反応は一切無し。何を企んでいるのかさっぱり分からない状況で、それもまた、ラージュ姫の疲れの原因になっているんだろうな、と思う。

「王家の転覆を謀っている、ということなら、分かります。けれど、そのために魔物と手を組むなど……いえ、あの父が居るので、何とも言えませんが」

ま、まあ、王様がやっていたことについては置いておくとして……。

「もしアージェントが魔物と手を組んで、魔物を生み出す力を手に入れているとしたら、やってることは前の王家と同じなんだよな」

フェイはちょっと複雑そうな顔でそう言って、ぱくん、と、お茶菓子を一口に食べた。……僕はなんとなく、ちびちび4つぐらいに分けて食べてるんだけどな、このお菓子。こういう時に性格って出るよなあ、と思う。

「……アージェントも、まさか魔王復活を目指してるわけじゃあねえだろうし、となると、どこかで魔物を裏切って手を切るつもり、なんだよ、なあ……?」

「案外この世界ごと滅ぼそうとしていたりして。ふふ」

クロアさんが優雅に笑ってお茶を飲んでいるけれど、そんな風に微笑む話題ではなかった気がする。

「アージェント家の狙いが国家転覆および王権の奪取であるなら、今後も工作活動が続くものと思われます。前回の事件で、アージェントは国民の意識からの変革を画策していると分かりましたから。きっと、二度目、三度目があることでしょう」

ラージュ姫はため息を深々と吐き出しつつ、不安そうな顔をする。

「国を、父ではなく兄が主導して動かしている今なら、以前のような隙は無いはずです。しかし、その、二度目三度目の攻撃を、果たして本当に凌げるのか……」

……その心配はなんとなく、分かる。

どんなに勉強しても勉強し足りないような気がしている、っていうことは、よくある。一度テストの点がよかったとしても、次もそうだとは思えないし、そこで一度でも悪い点を取ってしまったら、それをずっと引きずってしまうし。

うん。気持ち、分かるんだよ。すごく。

「ま、そりゃやってみねえと分からねえって」

なんとなく心配性で後ろ向きな僕やラージュ姫とは真逆、前向きで割と楽天家なフェイは、そう言って次のお菓子をまたぱくん、と食べる。……フェイは一口で食べる割には、その所作が綺麗だからなんだか面白い。お上品な一口だ……。

「そうね。前回みたいな、大規模なやつは、ある程度防げると思うわ。少なくとも、相手の手の内がある程度分かっている、ということは大きいわね。……逆に、それ以外の小さな工作についてはどうしようもないから切り捨ててしまっていいと思うわ」

そしてクロアさんは、フェイが一口で食べていたお菓子を丁寧にフォークで切り分けて、その一切れを優雅に口に運んで表情を綻ばせた。美味しかったらしい。『美味しい!』っていう顔のクロアさんは、その、少し若く……というか、幼く?うん、そんなかんじに見えるから不思議だ。

「現に、王都では『先の事件は全て国王が企んだものだった』なんていう噂話が流れているの。それって多分、アージェントの連中が流している噂なんでしょうけれど、そういうのってもう、防ぎようが無いじゃない?」

あ、そういう噂、あるのか。まあ……アージェント家が、王都の人達に王家への信用を失わせようとしているのなら、手軽かつ効果的な方法ではある、のか。

噂って、中々どうして制御できないし、消すこともできないし。なのに広まっていくし、面白可笑しく尾ひれとか付いていくわけだし……。

「ねえ、ラージュ姫。気にしないことよ。細々したことはどうしようもないのだから」

「はい……」

クロアさんにそう言われて、ラージュ姫はそっと頷く。まだその表情は心配そうで、不安げだ。

「ねえ、クロアさん」

なので、僭越ながら、僕が代理で、ちょっと物申してみる。

「あら、なあに?トウゴ君」

「気にしたくなくても気になっちゃう時にはどうしたらいいんだろうか」

ぱちり、と、クロアさんが目を瞬かせる。同時に、ラージュ姫も、ぱちぱち、と瞬きしていた。

「……トウゴ様は、どうして、私が考えていたことがお分かりになったのですか?」

ラージュ姫は感嘆と驚きの混じった顔で、じっと僕を見つめて、そう言う。

「いや、僕がそういう人なので……もしラージュ姫も同じように思っていたなら、多分、僕ら、似てるんだと思う」

「そう……なのですか」

ラージュ姫は少し意外そうに僕を見つめた。僕は結構後ろ向きだし心配性なタイプなのだけれど、そうじゃないように見えていた、っていうことだろうか。

いや、確かに、この世界に来てからの僕は、結構後ろ向きでも心配性でもなくなってきた気もする。この世界には素晴らしいものがたくさんあって、素晴らしいものに触れることが許されているから……多分、僕は結構、積極的になったと思う。

「少し嬉しいです。同じような人が居る、ということも嬉しいですし、トウゴ様と似たところがある、ということも、嬉しい」

それからラージュ姫はそう言って、くすくす笑った。少しだけ、元気になってくれただろうか。

「あらあら。案外、心配性が多いのね」

そんな僕らを見てクロアさんもくすくす笑う。

「そうねえ、そういうことなら……どうしても、気にしたくなくても気になっちゃう、っていうことなら、ね」

そして、クロアさんはお茶のカップをちょっと掲げて、言った。

「気を紛らわすためにお茶にお付き合いするくらいは、できるわ。いつでも呼んで頂戴」

そうして休憩のお茶会が終わったら、いよいよ、式典の準備だ。

ラオクレスが勲章授与の流れを説明されて、じっと表情を動かさずに説明を聞いている。……つまり、緊張しているんだと思うよ。あれは。

「彼、随分人間っぽくなったわよねえ」

そんなラオクレスを見て、クロアさんはそんなことを言う。

「人間っぽく?」

「ええ。そうよ。だって彼、出会ってすぐの頃は、ああいう風に緊張なんてすることなかったじゃない」

そう言われれば、そんな気もする。少なくとも、そわそわラオクレスは今まで見たことがなかった。

「きっと、失うのが惜しいものをたくさん手に入れたからなんでしょうね」

クロアさんはラオクレスを眺めて、そう言った。

「……失うのが惜しいものを、たくさん、手に入れたから?」

「ええ。きっとそうよ。だって私もそうだもの」

ちょっとびっくりしてクロアさんを見ると、クロアさんは照れたように笑う。

「トウゴ君とラージュ姫に似ている部分があるっていう話だったけれど、私とラオクレスも案外似てるのよ」

……おお。

「あの、クロアさん。今の顔のまま、もうちょっと」

「え?あら、やだ、トウゴ君。描くの?」

「描くの」

だって今のクロアさんの表情、すごく綺麗だったんだよ!もう一回!もう一回!

そうして、いよいよ、式典本番。

「……であるからして、本日は、この国をより良きもの、より豊かなものにしてくれている者達へ、感謝と畏敬を込めて、勲章を授与したいと思う」

オーレウス王子が開会の挨拶をする中、ラオクレスは不動だ。……傍目には堂々と座っているように見えるのだけれど、僕には分かる。あれはものすごく緊張している顔だ。

「……ラオクレスって、緊張して固まってても違和感ないわね」

「そこがラオクレスの凄いところなんだよ」

他の人達は、ゆったりしていなかったらすぐ『緊張しているなあ』と分かってしまうし、なんとなく違和感が生じる。けれどラオクレスの場合は、緊張してぴしりと姿勢が動かない状態になっていても、『流石の石膏像だなあ』となってしまうんだよ。違和感なんてどこにも無い。むしろ堂に入っている。

ということで、オーレウス王子の挨拶の間も、僕とライラはひたすらラオクレスを描いている。楽しい。

「……そのスケッチだけ見ると、本当に彫像のスケッチに見えちまうんだよなあ」

「うん」

「まあ、だって、元が彫像みたいなものだし……ね?」

フェイが僕らのスケッチブックを覗き込んで、複雑そうな顔をしている。いや、そりゃあ、石膏像をスケッチしたら石膏像のスケッチになるよ。当然だろ。

王子の挨拶が終わって、勲章の授与が始まった。

勲章を授与される人達は、技師や職人さん、優れた功績を残した学者の人や魔法使いの人なんか、らしい。業績が簡単に紹介されてから、勲章がそれぞれに贈られた。

……そして。

「では……バルクラエド・オリエンス殿」

ラオクレスが呼ばれて、すっ、と立ち上がる。その動きはまるで彫像が動いたようにも見えた。堂々として硬くて重々しい。

「先の広場での怪事件を解決するにあたって、民を先導し、兵に的確な指示を出してくれた。民間人でありながら魔物へ立ち向かったその勇気。真の敵を見出したその慧眼。そして実際にかの怪事件の解決に大きく貢献したその功績を称え、勲章を授与する」

オーレウス王子はそう読み上げ……そして、もう一言、付け加えた。

「ゴルダの……いや、この国の英雄に相応しい、勇ましくも美しい戦いぶりだった。この国を守って頂き、感謝する」

そして、割れんばかりの拍手の中、ラオクレスはぴしり、と一礼して、勲章を授与される。

その姿の、絵になることと言ったら!

壇上に注ぐ光、その光に真上から照らされて、陰影も濃く、直立不動のラオクレス。羽織ったマントの裾が微かに揺れる以外は動きもなく、ますます彼が石膏像に見える。

そして、マントの胸に飾られた勲章が光に煌めいて、その堂々たる様子といったら、本当に芸術作品のようだ!

壇上の芸術作品の如きラオクレスは、見ている人達に安心と信頼を与えていることだろう。この安定感と落ち着いているように見える不動の様子は、正に、国を救う英雄の姿に相応しい。

ああ、帰ったら早速、このスケッチをちゃんと描き上げよう!この重厚なかんじを描くには、やっぱり油彩かな!

「僕、来てよかった……」

「そうね。すごく描き甲斐があるわ……!」

「お前ら描く以外にやる事ねえのか!ねえな!まあいいや!お前らの分まで拍手しといてやるからさ!いっぱい描け描け!」

フェイはラオクレスに捧げる拍手をものすごい勢いでやりながら、笑ってそう言ってくれた。僕、いい親友を持ったなあ。

「これにて勲章の授与式を閉式する。……そしてこのような目出度き席で発表するのも申し訳ないが、1つ、諸君らに知らせておかねばならないことがある」

そうして勲章の授与式が終わって興奮冷めやらぬ会場で、オーレウス王子はそう切り出した。

「本来ならば、先の発表の際、同時に発表する予定であったことだ。かの怪事件によって有耶無耶になってしまっただけに、あの場での発表は控えることとしたが……父上より、説明がある」

オーレウス王子はそこで、そっと、王様に場所を譲った。王様は『やっとか』みたいな顔をしながら壇上に上がった。

王様が壇上に上がったことで、がらりと雰囲気が変わる。人々はざわざわとざわめきながら何事かと囁き合って、王様の発表を待った。

「静粛に」

王様は最初にそう言うと、じっと人々を見回して……そして、言った。

「今回、発表するのはアージェント家についてのことだ。アージェント家は、諸君らも知っての通り、王都の北西から北にかけての一帯を領地として治める、わが国有数の貴族であるが……」

あ、早速長い話の気配がしている。

先生が前、言ってた。『トーゴ、いいか?自分がいっぱい喋りたい時こそ、人は黙らなきゃいけないんだ。自分が喋りたいくらい内容がいっぱい詰まった話題なら、相手が興味を持って質問してきたのを全部答えていった方がよっぽど効率よくいっぱい喋れるし、相手もぐいぐい引き込まれてくれるってもんさ』と。

「……そして、アージェント家が治める土地の一部は、元は王家直轄領であったところをアージェント領にしたものであり……」

……王様の話は長い。前置きが長い。

遂に、ラージュ姫が大福らしいものを片手にそわそわし始めた。

「……と、いう具合に、その、アージェント家は、王家ともつながりの深い家柄の、良き領主であった、のだが、この度、大変に残念な事件が起きた」

けれど王様も、視界の端でラージュ姫が大福を持ってそわそわし始めたら気づいたらしい。ちょっと急に話を切り上げて、やっと本題に入ってくれた。

「アージェント家から勇者として名乗り出た、ルギュロス・ゼイル・アージェント。かの者が、余の命を狙って、やってきた」

王様がそう言った途端、会場が大いにざわめいた。

アージェント領は王都と隣接した領地だから、王都の人達にとっても馴染みが深いんだと思う。そこの領主の家から出た勇者が、国王を殺そうとした。それって、ものすごくショッキングな話題だと思う。

「静粛に!……詳細は伏せるが、ルギュロス・ゼイル・アージェントは私兵を率いて玉座の間に乗り込み、抜刀し、事もあろうか余を『魔王』などと呼び、そして、余を殺そうとしたのだ」

王様の話は伝わったのか伝わっていないのか。ひそひそざわざわやる人々の様子は分かりにくいけれど、とりあえず、大いに混乱している様子だけは分かった。

「よって、今後、王家はアージェント家との交流を断絶……したいところではあるが、まずはアージェント家の釈明を聞いてからにしようと思う。うむ」

……多分、王様はさっさとアージェント家と交流断絶したいんだろうけれど、後ろでしっかり睨みを利かせる王子王女達によって、穏便な軌道修正をしていた。

なんというか……多分、王子王女が遠慮しなくなった今、もう、王家が前みたいに暴走することはないんじゃないかな。そういう安心感がある。

そうしてアージェント家についての発表も終わり、その場は解散、となった。

僕らはそのまま王城へ向かう。ラージュ姫にお願いされて、今日も王城で一泊していくことになったからだ。お邪魔します。更に、夕食をラージュ姫とオーレウス王子と一緒に摂ることになった。ご馳走になります。

「ひとまず、よかったです。無事に終わって」

「私としては、むしろアージェントに仕掛けてきてほしかったところなのだがな……」

「まあ、それはそうなのですが……」

ラージュ姫はジャガイモのポタージュをスプーンで掬って口に運んで、ふう、とため息を吐く。

「……アージェントがこれから何をしてくるのか分からない、というのは怖いですね」

そうだね。今日の勲章授与式は、アージェント家をおびき寄せるためのものだった訳で……そこに引っかかってくれなかったのはちょっと残念だし、今後の見通しが立たないから不安だ。

「まあ……このままアージェントが何も動かないのであれば、ルギュロス・ゼイル・アージェントを処刑して終了だな」

オーレウス王子はそう言って、ふう、とため息を吐く。……処刑、っていう言葉がサラリと出てきたけれど、そこに何の抵抗も覚えない人っていうわけじゃないんだろうな。うん。僕は、そういう人の方が、その、ちょっと安心だ。僕に似てて。

「ねえ、王子様。処刑というと、公開処刑かしら?ルギュロス・ゼイル・アージェントは大罪人でしょう?」

そこで、僕とはまるきり似ていないけれどこれはこれで頼りになるクロアさんが、そう尋ねる。

……この世界にも、公開処刑、とか、そういう風習があるんだなあ。

「そうだな。父上は公開処刑をお望みであったが、私は非公開の内にそっと葬るのが良いように思う。相手が何をするか分からん以上、民衆を集めたところにあれを引き合わせたくない。相手は間違いなく、何かを企んでいる。それが何かも分からぬのなら、慎み深くあるべきだろうな」

オーレウス王子はそう言って、また食事を続ける。

……王子様の食事風景って、優雅だなあ。フェイも綺麗な所作だし、クロアさんも見ていて思わず見とれてしまうような所作だけれど、ラージュ姫やオーレウス王子の食事風景は、それとはまたちょっと違う。なんというか、優雅。

「……描くのか」

「うん」

なので折角だから、描かせてもらうことにした。色々なものが描けて、このお城はいい所だなあ。

……そして、翌日。

お昼ご飯まで頂いて、夜になる前に王城を出ようか、という話をしながら中庭でお茶会が開催されていた、そんな時。

「殿下!お耳に入れたいことが!」

突然、やってきた兵士がオーレウス王子にそう言う。

何だろう、と思いつつ、兵士が王子に何か耳打ちしているのを眺めて……。

「何?アージェント領主が、面会の希望を……?」

……オーレウス王子がそう言ったのを聞いて、雲行きが怪しくなってきたなあ、と、思うのだった。