軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

7話:準備も楽しい結婚式*1

「……おめでとう!是非、是非、幸せになってほしい!」

なんだか、照れと緊張と、2人から貰ってしまった幸せのお裾分けとで頭が混乱して、けれどとりあえず嬉しくて、僕は思わず2人の手を握って上下に振っていた。

「認めて、貰えるのか」

「当然!……おめでとう!おめでとう!」

僕の反応を見たマーセンさんとインターリアさんは、ほっとしたような、じんわり嬉しそうな、そんな顔をしている。それが僕も嬉しくて、また嬉しくなってきて、ああ、どうしようかな!一周回って、もう恥ずかしくない!

そうだ!おめでたいことだから、恥ずかしいなんて思わなくていい!結婚するなら隠す必要もない!そうか、こういうのって、隠れてるから恥ずかしいのか!

なんだか発見だなあ、と思いつつ、結婚、結婚……と頭の中で考えを巡らせて……。

「あっ」

「ど、どうした、トウゴ殿」

大事なことに、気づいてしまった!

「そうだ。式。結婚式!準備しなきゃいけない!」

「あ、でも会場はいいのがもうできてる。あそこを結婚式用に飾り付けよう。どんなのがいいのかな。クロアさんにも聞いて……いや、まずはインターリアさんに聞くね。後でいくつかデザイン案を持って行くから見てほしい」

「あ、ああ……」

「ドレスも素敵なのを用意しよう!材料は幾らでも出せるから、プロの仕立て屋さんに頼もう。マーセンさんの方はそれに合わせるのでいいだろうか」

「そ、それは構わないが……」

「そうだ。会場、やっぱり屋外じゃなくて室内の方がいいだろうか。じゃあ、教会、出す?ガーデンパーティの会場は二次会で使うことにする?それから、折角おめでたいことがあるんだから、森の実りは今年は大豊作にしよう。あ、でもあんまりやるとやっぱり生態系が崩れるから……その、壁に這わせた苺とか、森の町の畑だけとか、そういう限定的なかんじでも、いい……?」

考えることは山ほどある。どうしようかな。ちょっと早いけれど、もう春の芽吹きの季節にしてしまう?森の中だけなら、もう春にしてしまうっていうのも十分に可能だし、式を挙げるならやっぱり春になってからの方が花がたくさんあって華やかでいい気がするし……。

「と、トウゴ君!落ち着いてくれ!」

色々と考えていたら、マーセンさんに肩を掴まれてかくかく、と揺さぶられていた。揺れる揺れる。

「……ど、どうしたんだ、急に」

「え、え……?」

揺すられて、ちょっと、冷静になる。

……うん。

はい。ちょっと、興奮しすぎました。

「その……森の子が幸せに結ばれるの、初めてだから、なんか、嬉しくて……」

ちょっと落ち着いたので、弁明。

なんといってもここ、ずっと人が周りに住んでいたことなんて無かったから。森としては、精々、レッドガルドの家に1世代ごとにお嫁さんやお婿さんが来て結婚式を挙げているのを遠巻きに見つめて、おめでとう、って言うぐらいだったんだ。

だから、このように、間近に結婚という大きな節目を迎えるカップルを見つけて、その、つい、先走ってしまった、というか……。

「……ごめんなさい。こういうの、僕が決めることでもないのに、随分と舞い上がってしまって……」

「い、いや!気持ちは嬉しい!トウゴ殿のそのふわふわした心遣い、深く感謝する!だ、だが……」

インターリアさんは慌てて僕にそう言って……それから、ちょっとそっぽを向いて、頬を赤らめた。

「……その、まだ私達も、この幸福を、受け止めきれて、いなくて……」

……うん。そっか。

あ、どうしよう。またちょっと照れてきたな。これ……。

「まさか、奴隷の身分で結婚ができるとは、思っていなかったからなあ……なんだか現実味が無いよ」

マーセンさんもそう言ってちょっと恥ずかしそうに笑う。それにつられて、また僕も恥ずかしくなってきて……。

……あ。

「あの」

思いついてしまったので、一応、確認を取る。

「この機会に、あなた達の身分を奴隷から解放する、っていうことは、可能だろうか」

「えっ」

「い、いいのか、トウゴ君。我々は……」

「その上で、まだ森の騎士をやってくれるなら、僕はすごく嬉しい。でも、他所に行ってもいい。それだと僕はちょっと寂しいけれど……」

寂しいけれど、でも、彼らの意思が何より大事だ。僕は今まで散々彼らにお世話になっているし、町が平和なのも彼らのおかげだから……恩返しになるかは分からないけれど、折角の機会だし、ここで奴隷身分の解放ができたらいいな、と、思って……。

「……それはフェイ殿とも相談した方が、いいんじゃないかな。我々が『はいお願いします』と言って決めていいものではないと思うよ、トウゴ君」

「あ、はい。分かりました」

そ、そっか。うん。そうだな。この森はレッドガルド領だし、森の騎士団は一応は、レッドガルド領の公的機関の奴隷ってことになるんだろうし……。

「じゃあ早速聞いてきます!」

「元気だなあ」

僕は早速、鳳凰に出てきてもらって、フェイの家まで……。

「大事なこと忘れてた!」

「うお、びっくりした」

慌ててUターンしたものだから、見送ってくれたマーセンさんとインターリアさんを驚かせてしまった。でもこれは大事なことなので……。

「あの」

「あ、ああ」

僕は、2人に、許可を取る。

「……結婚式の様子、描いてもいいですか?」

マーセンさんとインターリアさんは、ぽかん、として……それから、笑って、答えてくれた。

「勿論!」

……ということで、フェイとフェイのお父さんが丁度お茶を飲んで休憩していたところにお邪魔して、一緒にお茶とお菓子を頂きつつ、事の顛末を話す。勿論、2人を処罰したくはない、っていうことを前面に出して。

「ま、いいんじゃねえの。丁度いいだろ。な、親父」

「そうだな。彼らの身分については、私もそろそろ、と思っていた」

すると、思いのほかあっさりと、話が済んでしまった!

「あの、何か理由が……?」

何か、森の騎士団の石膏像の皆さんを奴隷身分から解放した方がいい理由が2人の結婚以外に何かあるのかな、と聞いてみると。

「あー、うん。まあ……ソレイラがお披露目されて、レッドガルド領には精霊様の加護がある、なんて噂になって、レッドガルド領とソレイラの評判がどんどん良くなっていく一方で、まあ……『町の警備に奴隷を使うなんて品が無い』って難癖付けてくる奴らもいるからさあ……」

「……品が無いの?」

「いや、俺は別にそうは思わねえよ。うちに文句つけてえ奴らが勝手に『品』とやらを定めてるだけだっつの。なあ親父」

「そうだな。全く、他所の領の騎士団に難癖をつける方が余程下品というものだろうに」

……ちょっとやさぐれ気味のフェイ達を見て、ああ、本当に大変だなあ、と思う。僕が寝てる間も、そういう難癖とか色々、あったんだろうなあ……。

「まあ……『騎士達の忠誠心があるわけではなく、奴隷の契約で騎士をそれらしく整えただけ』っつって言われちまうとなあ。じゃあ見てみろようちの騎士団の忠誠心!……って気分になるよな」

なる。それは分かる。見てみろうちの騎士団の忠誠心。あと、うちの騎士団の肉体美。是非ご覧いただきたい。自慢したい。

「まあ、そういうわけだ。トウゴ君。我々は全面的に許可を出そう。森の騎士団の身分解放についても、彼らの結婚についても」

「あ、じゃあ俺から話してくる。俺もマーセンさんとインターリアさんにおめでとうって言いてえし」

早速、フェイが立ち上がって火の精を耳飾りから出し始める。なので僕も膝の上に頭を乗せてうとうとしていた鳳凰に起きてもらって、森へ帰ることにする。

……彼らは喜んでくれるだろうか。それとも、戸惑うかな。うーん……まあ、騎士達の意見を聞きながら進めていけばいいか。

その日の内に、森の騎士団の詰め所に行って、代わる代わる、勤務を終えた騎士達に逐一、身分解放の件を説明していった。

騎士達はやっぱり、戸惑いが大きいらしかった。けれど、嫌がっているわけじゃなくて……どちらかというと、『では俺はクビですか!?』っていう類の心配をしている人が多かった。

それについては『望むなら是非引き続き森の騎士団としてよろしくお願いします』っていう旨を伝えてある。今のところ全員が継続して勤務してくれるらしいので、僕としては嬉しい限りだ。

そうして、森の騎士団詰め所に住んでいる全ての騎士達に身分解放の話ができて、ついでにその後の雇用についてもいい返事がもらえた。

そして、マーセンさんとインターリアさんの結婚についても発表があると、騎士達は大いに盛り上がって、皆が彼らを祝福してくれた。いいなあ。こういう風景、すごくいい。誰かの幸せを皆で喜べるって、すごくいい。

ということで、描きたくなって描いた。満足。

その後、フェイが改めて雇用条件とかを詰めてくれている間……僕は、最後の1人に、身分解放と雇用について、話をしに行く。

最後に残った1人。それは……。

「ラオクレスー!」

「トウゴ。どうした」

詰め所ではなく僕の家のご近所に住んでいる、ラオクレスだ。

僕らはラオクレスの家の前の切り株に座って、一通り、他の騎士達と同じように話をした。

マーセンさんとインターリアさんが恋仲だったことは、ラオクレスもうっすら知っていたらしい。元々仲良しで、元の職場でもいいかんじだったけれど、恋仲になったのはつい半年ぐらい前から、とのことだ。そっか。半年。そんな前から気づいてたのか……。

ただ、やっぱり奴隷同士の恋だから、あんまり大っぴらにするものでもないだろう、とほっといたんだそうだ。いいなあ。僕ももっと早く知りたかった……いや、僕、その間寝てたのか!知れるわけがなかった!ああ、10か月って、長かったんだなあ!

……そして。

「身分解放の話について、だが」

ラオクレスは少し迷うように、言った。

「不相応だと、思う。人を殺した犯罪奴隷が、奴隷身分から解放されていいのか、と、思う」

……うん。

これについては、僕は、何も言えない。

ラオクレスがそう思うことは彼の自由だし、僕が口を出していい部分じゃないって、分かってる。

「だが……」

そして……僕は、僕が口を出していい部分じゃない部分、僕が口を出していい部分において……彼の過去に負けないくらい、信頼を勝ち取れているんじゃないかって、期待してる。

「……俺が奴隷でいることが、レッドガルド領やこの町や、お前の重荷になりかねん、ということなら……俺個人の罪悪感など、捨てようと思う」

うん。

嬉しい。

すごく嬉しい。

彼の過去に負けなかった!今の……僕らの、僕の、勝ち!やった!

……勿論、この勝ちがラオクレスにとっていいことなのかは分からない。彼の心に無理をさせているかも。でも……僕としては、嬉しいことだ。とてつもなく、嬉しいことだ。

「じゃあ、雇用の方は……」

「ああ。是非、よろしく頼む」

よし!こっちもオーケーを貰えた!やった!

「……今更、俺が雇用を断るとでも思ったのか」

「うん……ちょっとだけ、思った」

なんというか……まだ僕は、ラオクレスに対してどうするのが一番いいのか、分かっていないので……というか、ありとあらゆる全ての人に対して、それって永遠の謎であるわけで……だから、ちょっと、自信がなかった。それはそうだ。

「よかった。僕、今更ラオクレス無しで生きていけるのか不安だった」

「そう言われると逆に不安になってくるが……」

うん。じゃあいっぱい不安になってください。それで、不安ついでに今後ともよろしく。

「……ところで、雇用契約の話なんだけど」

「ああ」

「今度は正式に、モデルの業務も契約に含めたい」

「……好きにしろ」

よし!こっちもオーケー!万歳!

こうして僕は、無事に森の騎士団の身分解放の手続きをして……遂にその日がやってきた。

「はい、終わりましたよ」

技師の人が、パチン、と、騎士達の首についていた首輪を外していく。彼らの元々の首輪は幅が広くて首筋の様子が分かりにくくて描くのに邪魔だったから、全員分、細めのやつに変えていたのだけれど……やっぱり何も無いのが一番だ!

「……首が落ち着かん」

最後に首輪を外すことになったラオクレスは、すっかり露わになった首筋を手で撫でながら、なんだか複雑そうな顔をしている。

「何か……巻くものは無いか」

「管狐でも巻いておく……?」

あまりにも落ち着かなげなラオクレスに管狐を貸し出してみた。管狐は僕の首より太いラオクレスの首に困惑気味で、ちょっと巻き付いた後、すぐ『なんか違う』とでも言いたげな顔でこんこん鳴いて、ラオクレスのシャツの襟元から中に潜り込んでしまった。生きてる襟巻きは巻きっぱなしにしておくのが難しいね。

「ねえ、ラオクレス。あなた、ちょっと我慢して早目に慣れた方がいいんじゃないかしら。じゃなきゃ、次はアンジェがおリボンを結びに来るわよ」

落ち着かなげなラオクレスを見て、クロアさんがくすくす笑っている。ラオクレスはそんなクロアさんを見て、ますます複雑そうな顔だ。

まあ……きっとその内、慣れてくれるよね。

「よし!んじゃあこれで奴隷の身分は解放された!となりゃあ、次にやることは……」

「雇用契約!」

フェイが元気に言ったのを聞いて僕は紙とペンを持ってくる。契約書の作成はバッチリだ!

「あ、それもあったな……」

……と思ったら、フェイがちょっとしょげてしまった。あれ、違ったか。じゃあ何だろう。

「それも大事だけどよお……ほら、もっと楽しいのがあるじゃねえか」

楽しいの。楽しいの……。

……あ。

「結婚式!」

「そう!それだ!」

僕らがはしゃいでいると、マーセンさんとインターリアさんがちょっと恥ずかし気ににこにこする。ごめんね、はしゃいで。でも嬉しいことだから!

「ってことで、さっさと契約終わらせて、結婚式の準備、始めようぜ!こういうのは準備してる間からして楽しいもんな!」

うん!楽しみだ!

……さて、いくつ結婚式場を出そうかな。ええと、とりあえず、3つくらい要る……?あと、折角だからインターリアさんを思い切り飾ることになるのだろうし、宝石を沢山出してみよう。それから、それから……。

……ええと楽しみだ!