軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第95話 スタンピード①

北門の詰所は、騎士団と宮廷魔術団専用。西門と東門は冒険者が使うけど、状況によっては、外に出た騎士団や宮廷魔術団が戻って来る時にも使うそうです。

門前の広場にある詰所には大きなテントがいくつも並んでいて、仮眠をとるテントや、怪我をした人が治療出来るように救護班も待機している。

『石化』などの弱体異常を受けた人は、聖女と治癒士が待機している中央広場の救護施設で治療してもらうとか。

詰所の設置・管理は警備兵がするそうで、私達のチームは、東門前の詰所の設置を手伝っている。

今、第一騎士団と宮廷魔術団は北門の詰所で待機していて、第二騎士団と冒険者達は、既にスタンピードの第一波を討伐する為に森へ向かったとか。

「「第一波……?」」

ミアと私は、白髪まじりのベテランの警備兵さんと一緒に荷物運びを手伝っている。

「ああ、初めにダンジョンから溢れて来る魔物達を第一波と呼んでいる。第一波は、浅い層にいる魔物達ばかりだから、まだ倒しやすいんだ」

「じゃあ、私達みたいな学園の生徒でも倒せますか?」

ミアがベテランの警備兵さんに聞くと、

「慣れていないと難しいな……」

ダンジョン30階までの魔物が束になって襲って来るから、慣れた冒険者パーティーじゃないとキツイだろうと言う。

「魔物の束って……アリス、見たことある?」

「ないよ……。30階までが浅い層なんですか……」

20階までだと思っていたな。

ブーーーー!! ブッ……

「あっ、サイレンが止まった」

「本当だ! アリス、第一波の魔物が倒されたのかな~?」

ミアとサイレンの音が消えたと話していたら、ベテランの警備兵さんが立ち止まって北門の方を見た。

「違う。たった今、始まったんだ……」

「「えっ?」」

ダンジョンから溢れ出た第一波の魔物達と、第二騎士団・冒険者達がかち合い、戦闘が始まったんだと教えてくれた。他にも手を止めて、北の方角を見る警備兵さんがいる。

「次にサイレンが鳴るのは、ダンジョンから第二波の魔物が出て来た時だ」

「えっ、「第二波……」」

前回のスタンピードでは、1回目のサイレンで第二騎士団と冒険者が第一波の討伐に向かい、2回目のサイレンが鳴った後、第二騎士団と交代に第一騎士団と宮廷魔術団が北門から出て魔物を迎え撃ったと言う。

エリオット様達とレオおじいちゃんが……。

冒険者達は騎士団とは別行動で、弱めの魔物を狩ったり、チームを組んで強い魔物を狩ったりと、自分達の力量で魔物の討伐に参加しているそうです。

テオとタロウはどうしているんだろう……。

昼前に、Aクラスのチームが来たので、交代して学園の競技場へ戻った。

先生からAクラスの見回り状況――今の所、街の中は静かで落ち着いている――を聞いて出発する。

ロレンツ様とタイラー様が先頭を歩き、騎士科のメンバー、その後ろに魔術科メンバーが歩く。

大通りは、警備兵が御者をする馬車と冒険者をちらほら見かけるけど、昼間なのに庶民は誰も歩いていない。

中央広場を西へ進んで、西門前の詰所を通り過ぎ、城壁沿いを北門に向かって歩くと、遠くで……微かに魔物の唸り声や誰かが叫ぶ声が聞こえた。

壁の向こうで、街を守る為に戦っているんだ……。

「これは、近いね」

「ああ、討伐に参加出来なくとも見たいな」

「「「そうだな」」」

先頭を歩くリーダー達の言葉に、騎士科のメンバーが頷いている。

『ゴオォー!』と、『火魔法』を撃ったような音も聞こえてきた。

「あれは……冒険者の魔法使いが攻撃しているのかしら?」

「そうだろうね。ソフィア様、宮廷魔術団は第一騎士団と待機しているはずだよ」

ミハエル様の言う通りで、北門前の広場には、馬を連れた白い鎧姿の第一騎士団が出撃の準備をしていた……あっ、アルバート様だ。

そして、金色の刺繍が入った黒いマントと黒いローブ姿のリアム様と、同じく全身黒い30人程の宮廷魔術団が待機している。

レオおじいちゃんはいないようだけど……魔術団は2回目のサイレンが鳴る前に出撃するのかな?

詰所の横を通る時にリアム様の声が聞こえた。

「研究員の皆さん! 貴方達の魔力を使わないのは勿体ないので、今のうちに魔力を使い果たして下さい。第一波を全て倒すつもりでお願いしますよ」

あっ、宮廷魔術師じゃなくて研究員の方達なんだ。

「そうですね……飛びぬけて良い働きをした研究員がいれば、その方が所属するチームの研究費を増額しましょうか」

「「「おおおー!」」頑張るぞ!」「「リアム副団長! 「本当ですか!?」」」

研究員のみなさんのやる気が、一気に倍増したよ。あっ、ウィルバート様がいる! ミハエル様も見つけたようで、心配そうに見ています。

リアム様が、第一騎士団が護衛に付いてくれるので、MPを使い切っても大丈夫ですよと微笑んでいる……何か、リアム様が怖いです。

「ねえ、アリス。あのシルバーの髪の人がリアム副団長?」

「うん、そうだよ。ミア」

ミハエル様が、この国でマルティネス様の次に強い宮廷魔術師だよと言うと、ミアは「凄い~!」と目を輝かせている。心なしかソフィア様の目もキラキラしているような気がする。

北門を通り過ぎて東門へ向かう途中、今回、第二波が来る前に第一波の魔物を全て倒すつもりなのだろうかと言う話になった。

「確かに、使ったMPは翌日には回復するからね。後々のことを考えると、例え弱い魔物でも倒しておいた方が助かるよね」

「ええ、ロレンツ様、1日に使えるMPには限りがありますからね」

ソフィア様の言う通りで、マジックポーションなんて、ポーションに比べたら数が少ない。もし、ポーションやマジックポーションが無くなったら……スタンピードの討伐が長引くのかな?

「う~む。第一波を早めに一掃して、第二波に備えるつもりかも知れないな」

「イーサン……そんなこと、出来るのか?」

「イーサン、ポールも、第一波を完全に討伐するには、第一騎士団と宮廷魔術団も出撃しないと無理だろう」

タイラー様の言葉に、ロレンツ様とタイラー様のパーティーの騎士科の方が「ああ、「「その通りだな」」」と言う。

「でも、宮廷魔術団が第一波の討伐に参加するとは思えないよ」

「ミハエル様、どうしてですか~?」

「ミア、第一波は浅い階層の魔物ばかりだからだよ」

ミハエル様、私もそう思います。だって、レオおじいちゃんがスライムやゴブリン相手に魔法を撃つ姿なんて想像出来ないし、弱い魔物は『ひよっこに任せる』とか言いそう……。

リアム様も、弱い魔物を倒す為にMPを消費するのを嫌がって……もしかしたら、魔法を使うのが勿体ないから剣で倒せとか言いそう。

「今回、研究員の方達に魔法を使わせるのは、単にMPを寝かせるのが勿体ないからなら良いんですけど……でも、それなら経験を積ませるとか言って『ひよっこ』も参加させると思うんですけど……」

「えっ「「……」」」「「アリス?」」

あっ、つい思ったことが口から出てしまった。余計なことを言ってしまったかな?

「アリス、他にも理由があると思うの?」

聞いて来るミアに「特には……ないかな」と言って、こっちを見る視線に微笑んで誤魔化した。

もしも……、

第一波の魔物の数が予想していたより多くて……、

もう、既に『ひよっこ』は討伐に参加していたとしたら……。