軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第94話 備える②光の曜日

光の曜日。テオとタロウにお昼用のサンドパンを渡して、ポーション用の瓶も沢山買って来て欲しいとお願いした。

「アリス、俺達が出た後、戸締りはしっかりしておけよ」

「うん、分かった」

2人を見送った後、作業場に 籠(こも) ってポーションを作り始める。

薬草100本で10本のポーションが出来るから、洗い終わっている薬草から使おうと数えていたら、作業場の窓を叩く音がした。

ふと顔を上げると、険しい顔をした近所のナタリーさんが窓を叩きながら『アリス、大変だよ!』って言うのが聞こえた。

店側に行って扉を開けると、ナタリーさんが凄い勢いで話し出した。

「アリス、大変だよ! さっき王国から 御触(おふ) れが出たんだよ! 近いうちにスタンピードが起きるんだって!」

「えっ……」

あぁ、発表したんだ……思っていたより早い。

警備兵が街のあちこちで、近いうちにスタンピードが起きるから、他の街に避難する人は今日中に街を出るように言っているとか。

「今日、街の北門が閉鎖されるんだって!」

「えっ、北門が……」

まだスタンピードが始まっていないのに?

「ああ、前の時もそうだったよ。アリス、スタンピードが始まったら全ての門が閉鎖されるんだよ。まあ、あたしらは、どこにも行かないけどね……」

街に残る者は、スタンピードに備えるために食料を買い込みに行くらしい。市場は、街が完全に閉鎖されるまでは開いているけど、品物が少なくなるんだって。

「アリス、1週間分の食べ物は準備しておくんだよ! 早く買いに行かないと、全部なくなっちまうからね!」

「分かりました。ナタリーさん、ありがとうございます」

ナタリーさんは、食料の買い込みに行くついでに寄ってくれたみたいで、テオがまだ寝ているならたたき起こすんだよと言って、慌てて市場の方へ走って行った。わざわざ知らせに来てくれるなんて有難いな。

作業場に戻って、ポーション作りの続きを……今、私が出来ることを頑張ろう。

洗い終わっている薬草から作るので、いつもより短い時間でポーションが出来る……10本ずつ、丁寧にポーションを作っていく。

「アリス、帰ったぞー」

「アリス、ただいまー!」

えっ、もうそんな時間!? いつの間にかテオ達が帰って来た。夢中でポーションを作っていたみたいで、お昼を食べ損ねたな。

「テオ、朝、ナタリーさんが来たの。警備兵がスタンピードの話をしていたんだって」

「ああ、瓶を買いに店を何軒か回ったんだが、警備兵があちこちでスタンピードの話をしていたな。市場へ向かう人が凄かったぞ」

「うん、途中でテオとはぐれそうになったよ。みんな、怖い顔をしているし」

スタンピードが起きるって聞いたら、みんな不安になるよね。

「テオ、ポーションを180本作ったよ。先ず、テオとタロウが10本ずつ持っていて」

「180本も? アリス、頑張ったな! そうだな……俺もタロウも念の為に持っておこうか」

うん。自分が使わなくても、怪我した人がいたら必要になるからね。

「分かった。アリス、ありがとう」

「アリス、タロウ、俺が採った薬草を全部ここに出すぞ。俺は、取りあえずポーションを100本、今から第一騎士団に届けて来る」

「「うん」」

テオは100本のポーションを2つの木箱に詰めて出かけた。

これで第一騎士団には、追加で150本のポーションを納品したけど、まだ必要なのかな? バッグにはまだポーションはあるけど……。

「タロウ、足りると思う?」

「……分からない。アリス、テオが帰ってくるまで薬草を洗うよ」

「うん、私も」

タロウと私は、テオが出した薬草を洗って100枚ずつ籠に入れていく。ここまでしておくと、ポーションを作るのが楽だからね。

◇◇

ブーー!

夜中、寝ていると……どこかでサイレンが鳴りだした。

ブーーーー! ブーーーー!!

『……!』

けたたましいサイレンが重なって行き、遠くで誰かが叫んでいる……?

「ふぁ~、……?」

「起きろー! アリス! タロウ! スタンピードが始まったぞ!」

「へっ……始まった……? スタンピード……!」

慌てて飛び起きた! 窓の外はまだ薄暗くて……何をすれば良いの? えっと、競技場に集合だった。制服に着替えないと……荷物はバッグに入っているから特にない。

台所に下りて手早くパンを食べる。

「テオ、3年生は学園の競技場に集合なの。行って来るね」

「おう! 魔物が街に来るまで、まだ時間はあるからな! アリス、気を付けるんだぞ」

タロウは未成年だから、ランクDの冒険者でもスタンピードの討伐には参加出来ないんだって。テオはタロウの保護者として一緒に行動するから、準備が出来たら2人でギルドに行くそう。

「アリス、何かあったら呼んで……」

「うん。タロウも気をつけてね」

「アリス、タロウは俺に任せておけ!」

外に出るとまだ薄暗くて……通りには人がいない。時々、冒険者がギルドに向かって走って行くのが見える。

急ごう……自分に身体強化を掛けて走り出した。

学園の門をくぐり抜けて競技場に入ると、張り詰めた空気が漂う。競技場は吹き抜けになっているから、サイレンの音も聞こえている。

あっ、ロレンツ様を見つけた。みんなもいる……私が最後だ。

「ロレンツ様、遅くなりました」

「アリス、大丈夫だよ。これから学園長の話があるからね」

「分かりました」

少し待つと、学園長が競技場の中央に現れて、これから起きるであろう 惨状(さんじょう) を話し出した。魔道具が使われているのか、サイレンが鳴っているのにしっかり聞こえてくる。

「――君たちは、まだ騎士でも宮廷魔術師でもない、ただの学園の生徒だ。それを考えて、無理をせずに行動するように」

「「「はい!」」」

先ずはAクラスが見回りを開始。その間、Bクラスは3か所の詰所に分かれて手伝いをする。

見回りのルートは決まっていて、学園の門を出て中央広場を西門へ→西門から城壁沿いに北門へ向かい、そして東門へ→東門から中央広場を通って学園に戻って来る。

街の半分、南側にある貴族街(お城や上位貴族のお屋敷がある)の城壁沿いは通れないので、街の北側だけを歩いて見回るんだけど、たっぷり3時間は掛かるだろうな。

Aクラスの一組目のチームが見回りに出発し、私達Bクラスは分かれて北・東・西門にある詰所に向かった。

ブーーーー!! ブーーーー!!

サイレンがまだ鳴っている。