軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

091 合同パーティー、そして囲まれて

たっぷり2時間もかけて、魔王討伐隊は二層を突破。

俺達は三層に来ていた。

魔王討伐は発見階層の二層上からスタートするのが慣例らしく、5層で見つかった魔王なら3層から探していくということらしい。

「魔王はすでにこの階層にいる可能性がある! みんな、気を引き締めろ!」

「おお!」

先頭の大男がみなに発破をかける。

とはいえ、この短期間で2層も上がってくることはほぼないらしい。まだ出現から日も浅いし五層に留まっている可能性が一番高いとか。

俺とアレックスはポーターとしての参加だが、装備を見ればわかるとおり、戦闘に参加する気満々だ。総勢40名からなる討伐隊だ。ポーターが戦いに参加していようと、誰も気にしないだろう。

「魔王って、階層を上がるごとに強くなるんだってさ。知ってた?」

「いや、知らない」

「5層でも相当強かったみたいだし、もし3層まで来てたら、俺達レベルじゃ太刀打ちできないくらい強くなってるんじゃないか? そんときはどうする?」

アレックスの顔にわずかな怯えの色が浮かぶ。

魔王と戦うなんて楽しみだと、さっきまでは笑っていたけれど、いざその時が来て怖じ気づいたのだろうか。

……だが、これが普通の反応だ。

嬉々として戦いたいなんて普通の神経じゃないのだから。

むしろ、面白そうという理由だけで魔王討伐に繰り出してきているアレックスは、かなり意欲的なほうだと言えるかもしれない。

「俺は、魔王がどの階層に出たとしても戦うよ。その為に来たんだからな」

「ヒカル……。そうだよな、幸運は勇者に味方するって言うし、ここまで来たらやるしかねぇ……!」

うっしと気合いを入れるアレックス。

そうだ。ここまで来たならやるしかない。

俺はステータスボードを開き、視聴者数を見た。

昨日一日休んだことで下がるかとも思ったのだが、実際には右肩上がりだ。

(9億人になってる……! 残り4日で瞬間視聴者数1位。総合3位なら十分にチャンスはあるな。まだ魔王に出会ってないのに妙に上がってるし。アレックスと話したから相乗効果が発生したのかも)

実は、昨日リフレイアとデートしたことでも、かなり視聴者数は上がってはいた。

昨日のリフレイアは綺麗だった。日の光を浴びてキラキラと輝く彼女に、地球の人たちも釘付けになったのかもしれない。

あるいは、そんな彼女と遊んでいる俺に対しての憎しみによるものか。

……幼馴染みを殺しておいて異世界で美人とデートしてるなんて、格好のネタではあるのかもしれない。

今日の予定は三層に魔王がいないかを探索するのだそうだ。

12時間ずつ2交代で丸1日かけて三層を洗い、魔王がいなかったら、次の日から四層の探索に入るとのこと。つまり、この人数でも全体を半分に分けているということだ。

うっかり魔王と入れ違いになってしまうと、階層を上がられてしまう。そうすれば、最悪「地上」に出てくることもある。それだけは絶対に阻止しなければならないらしい。

アレックスによると、「魔王を倒すために大精霊たちが出張ってきて、取り返しの付かないことになる」のだとか。そうなったら大精霊を元の神殿に戻すのは不可能だし、迷宮も精霊力のバランスが崩壊して消滅してしまうのだとか。

だから、魔王だけは絶対に人間が迷宮内で殲滅しなければならない。

それが迷宮を人為的に作り出す都市の責任なのだということだ。

「では、全体を3つに分ける! 適当にバラけてくれ!」

先頭の男の号令で、適当な感じに探索者たちが3つの集団にバラけていく。

「じゃ、俺、あいつらと合流すっから! 死なない程度に頑張ろうぜ!」

「ああ。頑張ろう」

拳を前に出したアレックスと、ゴッと拳を突き合わせてから別れる。

リフレイアは、アレックスのパーティーとは逆側の集団のほうにいるようだ。

なんだか、女性が多い集団のようだが――

「あっ、ヒカル! こっちこっち!」

リフレイアが笑顔で手招きしている。周囲の完全武装の女性たちの視線が俺に集まり、非常に居心地が悪いのだが……。

「へぇ~! これがリフレイアちゃんの彼氏かぁ。あ、私グロリア。よろしくね」

「私はモアップルな! フルーから、ヒカル氏の話は聞いてるなん。二層で助けてくれたって。私からもお礼を言うなん!」

「わー、ホントに真っ黒なんだね!」

3人の女性に無遠慮に距離を詰められて、焦ってしまう。一人はリンクスだけど。

というか、この集団、全員女性なんですけど!

「ちょ、ちょ、ちょ、ヒカルが困ってるじゃないですか」

リフレイアが助け出してくれたが、俺の腕を抱くようにしているから、余計に彼女たちの好奇心というか興味を惹いてしまったようだ。

3人以外の女性達までヒューと口笛を吹く始末だ。

「いやぁ、男に興味がないとまで言われてたリフレイアちゃんに突然いい人が出来たっていうから、何事かと思ってたけど……いいなぁ」

「出会いは多いけど、みんな同じ感じだもんねぇ、探索者の男って」

「ヒカル君、ちょっと駆け出しっぽさあるけど、そこも新鮮でカワイーわね」

「確かにこういうタイプは今までいなかったかも!」

口々に好き勝手言う女性探索者たち。

正直、こういう無遠慮な視線はめちゃくちゃ苦手だ。

闇の中に隠れたくなってしまうが、さすがにここでダークネスフォグするのは悪目立ちしすぎるだろう。

「さあさあみんな、おしゃべりはそれくらいにして、行くよ! 魔王がいるかもしれないんだから、気を引き締めないと死ぬわよ!」

「はぁ~い」「はい!」「ハイなん!」

「それと、リフレイアちゃんとカレシも、とりあえずは付いてきて」

「はい!」「うす」

赤い鎧を身につけた赤毛の女性が、どうやらこのグループのリーダーのようだ。

真っ赤な全身鎧も目立つが、背中に背負った巨大な斧はもっと目立つ。どんな腕力があったら、あんな斧を振り回せるのだろうか。

リフレイアの大剣より重そうだ。

赤毛探索者は号令一発で全員を掌握し、探索がスタートした。

3パーティーで別々の方向へ進んでいく。

俺たちのパーティーは、俺を入れて14名。2パーティープラス俺とリフレイアというところ。俺とリフレイアは後方を警戒する係だ。

「さっきはごめんね。みんな、私がヒカルと潜ってるの知ってるから、あんなことになっちゃって」

「仕方ないよ。それより、あのリンクスの人……モアップルさんはいわゆる雇われじゃないってこと?」

「そうですよ。モアさんってこの道10年の大ベテランなんですって。位階もかなり高いらしいです」

「強そうだもんなぁ」

モアップルさんは斥候を買って出て、ピョンピョンと跳ねるように先行していく。

おそらく、グレープフルーたち雇われのリンクスは彼女を目指しているのだろう。

装備もミスリルで統一されていてカッコイイ。

憧れの先輩というやつかもしれない。