軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第五十話「初めての防具」

十一月七日。

三日前、俺はグールとの戦いで負傷した。

その時、強く頭を打ったため、翌日は完全休養日に当てた。幸い、その後も特に後遺症はなく、ただの脳震盪だったようだ。

昨日の六日はラスペード教授の講義の日であり、学院に行っている。

本来なら今日は森に入る日だが、新市街の冒険者ギルド近くにある防具屋に行くことにした。

今までは尖った木の枝や岩などでケガをしないため、革のジャケットと革のズボンを着ていたのだが、今回の負傷でそれでは不十分だと思い知らされた。

ベアトリスの行きつけの店があるということで、四人で防具屋に向かっている。

冒険者は基本的に革製の防具をつけることが多い。これは音が出る金属製の防具では、魔物に先に見つけられ、奇襲を受ける可能性が高くなるからだ。ベアトリスもリディも 硬革製(ハードレザー) の鎧を身に着けている。

槍術士のベアトリスは弓術士のリディより重装備で、革鎧の下に 鎖帷子(チェインメイル) も着けているそうだ。見せてもらったが、かなりの重量がありそうなのに、彼女の動きはそれを感じさせない。そのことを彼女に言うと「鍛え方が違うんだよ」と笑うが、リディに「体格の差でしょ」と言われて苦笑していた。

防具屋は武具関係の店が並ぶ一画にあり、俺もこの辺りには時々来ていたので、見たことがあった。ベルトラム――ラスモア村のドワーフの鍛冶師――の剣の手入れのため、ゼルギウスというドワーフの武器職人の店に来ていたからだ。

ゼルギウスとは八月の終わり頃に初めて会ったが、ペリクリトルの鍛冶師、ギーゼルヘールの紹介ということですぐに打ち解けている。もちろん、手土産のスコッチが役に立ったことは疑っていない。

防具屋の表には、“リュファス・ラヴァーニュの店”と書かれていた。

扉を開けると、加工前の皮の匂いと 膠(にかわ) の生臭いというか微妙な匂いが漂っていた。

中には革鎧のパーツが多く並べられ、 硬革(ハードレザー) が飴かメノウのような光沢を放っている。

ベアトリスが、「リュファスはいるか!」と声を上げると、奥から若い女性が出てきた。その女性はエルフのようでかなりの美人だが、年齢はよく判らない。だが、柔らかい物腰から、かなり年上なんだろうと思っている。

ベアトリスが、「ラシェルか。リュファスはいないのかい」と言うと、ラシェルと呼ばれた女性は微笑みながら、

「今、手が離せないのよ。二十分くらい待ってくれたら出てこれるそうよ。それより、今日は何の用かしら。初めてのお客さんがいるようだけど」

「今あたしとパーティを組んでいる仲間だ。リディアーヌ、ザック、シャロン。今日はザックの防具を見繕いにきたんだ」

ラシェルは俺の前に立ち、上から下まで眺めたあと、

「ふーん、この子は魔法も使うのね……ベアトリス、予算はどのくらいなの?」

何も言っていないのに、俺が魔法を使うと気付いている。リディにも精霊の力の流れが見えるそうだから、ラシェルにも見えるのかもしれない。

予算についてだが、俺はまだ二万 C(クローナ) (=二千万円)ほどの現金を持っている。だが、ある理由で予算は決めていなかった。

一つには革鎧の相場がよく判らないということだ。

一応、ベアトリスやリディからある程度の相場を聞いていたが、防具はオーダーメイドに近いので、サイズによって大きく値段が変わる。需要のあるサイズなら、パーツの共用化で値段を下げられるそうだが、ベアトリスのもののような 特注品(・・・) だと、かなり割高だそうだ。俺の体のサイズから言えば、猫人族などの小柄な獣人族の女性冒険者とほぼ同じだが、需要が多い人間の男性サイズからは外れている。この辺りがどう価格に影響するか見当もつかない。

もう一つの理由は、成長期の俺がどの程度の期間使えるのか判らないことだ。防具にも調整代はあるのだろうが、その調整代でどの程度の範囲がカバーできるのかが判らない。あまり頻繁に買い換えるのは、コスト的に見合わないから、俺が考えているより値段が高く、すぐに買い替えが必要なら、一番安い物を買うつもりでいた。

俺は「初めまして、ザックです」と笑顔でラシェルに挨拶し、

「予算は物を見ないと判りません。一応、上限は五千C(=五百万円)までと考えていますが」

「五千Cね。戦闘のスタイルとか、要望とかはベアトリスに聞いた方がいいかしら? それとも、そちらのエルフのお嬢さんに聞いた方がいい?」

リディを一目見て、ベテランの冒険者と見抜いているようだ。さすがに冒険者相手の商売だなと思ったが、エルフだから、相当長くやっているのかもしれないと思い直した。

ベアトリスは「本人に聞いてくれ。それでいいだろう、リディアーヌ」とリディに確認を取る。リディも「そうね」と頷き、ラシェルは俺に視線を戻した。

「判ったわ。それにしても凄いわね。ベアトリスに信頼されているなんて。前に連れてきた子なんか、一から十までベアトリスの意見で決まっていったわよ」

ベアトリスが「それはないだろう。アドバイスをしただけだろ」と抗議しているが、ラシェルは気にせず、「では、戦い方を教えてもらえる?」と話を進めていく。

俺は苦笑しながら、ある人物を思い浮かべていた。

(何となくラスペード先生に似ているな。マイペースというか……)

俺は自分の戦闘スタイルをどう説明したらいいのか悩むが、彼女は“狼と戦う時はどう”とか、“人型の魔物は”とか具体的な話を聞いてきた。

俺は彼女の質問に一つずつ答えていった。

二十分ほどで、彼女も満足したのか、質問をやめ、「大体判ったわ。リュファスにも伝えておくから」と言って、工房に戻っていった。

俺は「あれで判るのか?」とベアトリスに聞くが、彼女は笑いながら、

「最初はそう思うんだよ。でも、ラシェルもリュファスも一流の職人だから安心しな」

「一流だと高いんじゃないか? 五千と言ったが、そこまで出す気はないぞ」

ここドクトゥスの標準的な革鎧は、ヘルメットから脛当てまでの一式でおおよそ千C(=百万円)。それでは 新人(ルーキー) は手が出ないので、安い中古品――廃棄寸前の物――で一式二百Cほどからあるそうだ。さすがにそこまで質を落とすつもりはないが、一年くらい使えるなら、三千くらいまでと思っている。

ここ一ヶ月の魔物狩りの収入だが、俺の取り分だけでも五百C(=五十万円)は軽く超えている。もちろん、四人で均等に割っているわけではなく、ベアトリスとリディに多めに渡した後の取り分だ。俺の必要経費は剣の手入れくらいだし、シャロンはほとんど必要ない。だから二人に多めに渡しているのだが、それでもほとんどが貯蓄に回っている状態だ。

俺の性格が貧乏性なのだろう。短期間しか使えないものにあまり金をかけたくないと思ってしまうのだ。普通に考えれば、今の収入なら五千C以上の金を掛けても十分に割は合うのだが、勿体無く感じてしまう。きっと、子供がいたら、子供服には金をかけたくないと思う親になっていたんだろう。

俺の心配を他所にベアトリスが、「命を預けるものなんだから、ケチケチするな。足りないなら、あたしが出してやる」と言ってきた。

「俺は成長期なんだ。長く使えないものに金を掛けるのは勿体無いだろう。それに防具は保険みたいな物なんだ。基本的には動き回って回避するスタイルを変えるつもりはないしな」

俺がそう言うと、奥から若い男性の声が聞こえてきた。

「買い換える時に下取りもするよ。君の言うとおりのスタイルなら、高く買い取れると思うよ」

そう言いながら、大きなエプロンをしたイケメンのエルフが工房から出てきた。彼が店主のリュファスのようだ。

人当たりのいい柔らかい雰囲気で、荒くれ者が来る防具屋の主人というより、金持ち相手の装飾品店の店主といった方が似合いそうな男だった。

「君が今回のお客さんだね。素材はどうしようか。昆虫系の魔物の外殻か、爬虫類系か、それとも普通に動物系の革か。この街は素材が多く手に入るから、大抵の物は作れると思うよ」

俺には素材の特徴と価格が判らない。そのことを言うと、マシンガンのように説明を始めた。

「そうだね。初めて買いに来たんだから知らないのは当たり前だね。うんうん、では説明するよ。まず、昆虫系なんだけど、硬いというのが一番の特徴だね。下手な金属の物より丈夫だよ。欠点なんだけど、価格が高いことだね。加工が難しいから、素材の形にあったものしか出来ないんだ。その分、どうしても無駄が出てしまってね……」

それから十分ほど素材の説明が続いた。どうやら、とんでもなく話好きの人に捕まったようだ。

話を整理すると、昆虫系は硬さが特徴で加工が難しいため、その分割高になる。爬虫類系は耐水性や素材の変質が少ないことが特徴だが、硬さを求めると上位の魔物の素材が必要になるため、価格が上がる。リザードマンの皮などの安い素材から、竜種の超高級な素材までバリエーションがあるのもこの素材の特徴だ。ちなみに今は勧められるほどの素材はないそうだ。

動物系は馴染みのある牛や馬の物から、四手熊などの魔物の物まであり、値段はピンきりだそうだ。皮を加工して硬くしているため、長時間水に浸かったり、手入れを怠ったりするとすぐに性能が落ちる。安い革鎧の素材はほとんど牛か馬だそうだ。

素材については判りすぎるほど判ったので、次は必要な防具の種類を確認しようと思ったが、リュファスに聞くと同じように長くなりそうなので、リディとベアトリスの意見を聞くことにした。二人とも一度フルセットを揃えてみた方がいいという意見で一致したので、俺はそのまま伝えた。

「ヘルメットから、脛当てまでのフルセットで。素材は一般的なものでお願いします」

俺が普通の動物系の皮を選んだ理由は簡単だ。値段がそれほど高くないこともあるが、基本的に俺たちは晴れた日しか森に入らない。その分、劣化もしにくいだろう。更に一般的な革鎧から慣れていけば、手入れの仕方なども覚えられるし、独り立ちする時に役に立つ。

そして、何より悪目立ちしない。

ただでさえ、俺は目立っている。旧市街では学院の首席で、あのラスペード教授のお気に入りだ。新市街でも、今までパーティを組まなかったベアトリスが俺とパーティを組んだことが話題になっている。更にリディという絶世の美女が常に傍らにいることから、かなり目立っているのだ。

「それだと、五百から二千Cの間になるけど、どのくらいのものにする?」

俺は奮発して、二千Cの物にした。

「了解。採寸してパーツを組合せるだけだから、三日ほどで終わるよ。色はどうする? 今あるものでよければ時間は掛からないけど、染め直すと十日ほど掛かるよ」

特に色に拘りはないし、周りを見ても飴色の物がほとんどだからと、「あるものでお願いします」とあまり考えずに答えた。

俺は工房に連れて行かれ、採寸された。更に、腕の可動範囲をどうするかとか、膝の裏や足首はどうするかなど細かい聞き取りを終え、ようやく解放される。

その間、リディたちは店の中でシャロンの防具を見ていたようだ。防具と言っても、マントとかローブとかの魔術師が使うものだ。さすがに魔術師ギルドのお膝元だけあり、結構な品揃えだった。

更に驚いたことに、マントやローブには魔法が付加されたものがあり、良い物だとちょっとした革鎧並の防御力があるそうだ。

シャロンの安全のためにと一つ買おうとした。だが、彼女はその値段を見て、顔面が蒼白になる。

安い物でも二千C(=二百万円)。高い物なら十万C(=一億円)もしたのだ。普通の皮のマントが高くても二百Cくらいだから、シャロンが驚くのも無理はない。

さすがに一億円の物には手が出ないが、安い二百万円のものなら手が出る。

「これを買おうか。木属性の魔法が付加されて防刃性が上がっているって書いてあるし」

シャロンは「こんな高価な物は買えません」と泣きそうな声で断るが、「俺がプレゼントするから」と言って強引に買うことにした。

それを見ていたベアトリスが「自分の物はケチるのにね」と呆れていた。

「当たり前だろう。俺は男だからいいが、シャロンは女の子なんだ。体に傷がついたらどうするんだ」

それを聞いたリディが「なら、私にもプレゼントして欲しいわ」とからかってきた。

俺は「リディは革鎧を着けているからいいだろう」と相手にしなかった。すると、「あら、私に傷がついてもいいの」と泣き真似をする。

俺は遊んでいるリディを放っておいて、シャロンのマントを選んでいく。

リュファスの代わりに戻ってきたラシェルに質問していく。

「色はここにあるだけですか? 大きさの調整は? 同じくらいの値段で別の効果のあるものは……」

ベアトリスが「自分のを選ぶ時より、真剣じゃないか」と呆れている。

結局、森の中で目立たない濃いモスグリーンのマントを二千五百Cで購入した。

マントの長さも折り返すことで簡単に調整できるとのことで、長く使えることも“買い”の理由だった。

シャロンは涙目になり、「自分だけこんな高い物を……」と呟いていたので、強引に手渡した後、「今度、村に帰るときにメルやダンのも買って土産にしよう」と耳元で囁く。すると、すぐに笑顔になり、「はい! ありがとうございました」と言って嬉しそうに抱えていた。

リディは「あら、私たちにはないわけ?」と真剣な顔で言ってきたので、今度買ってやるといって、その場を収めた。

シャロンは俺の贈ったマントが余程気に入ったのか、家に帰ってから何度も見ていた。それだけならいいのだが、汚れるからと森に着ていこうとしなかった。何とか説得して、森に着ていくようになったが、やはり女の子なのだと思った一幕だった。

三日後の十一月十日。

朝一番でリュファスの店に革鎧を取りに行く。

フルセットということで、ヘルメット、胸甲、胴鎧、肩当て、腰当て、腕甲、籠手、脚甲、脛当てを買ったのだが、出てきた革鎧を見て、俺は言葉を失った。

俺が頼んだのは一般的な革鎧で牛か馬の皮を加工したもので、茶色い飴色の物のはずだった。だが、俺の目の前にある革鎧は、黒で統一され、表面が黒曜石のように輝いた禍々しい物だった。

(魔王の鎧じゃないんだから、この色はないだろう。黒塗りの高級車のボディの色が近いな……しかし、この硬質な感じは金属か? 叩くと音はプラスチック系、そう、アクリルに近い感じだ。でも、こんなに目立つ鎧はどうよ……)

俺は唖然としたまま、それを見ていた。ようやく気を取り直し、防具職人のリュファスに苦情を言った。

「俺が頼んだ物と違うんですが。俺が頼んだのは一般的な革を使ったものだったはずです。これはどう見ても違いますよね」

リュファスはニコニコと笑いながら、

「いやいや、一般的な牛の皮を使っているよ。処理はちょっと特殊だけどね。もちろん予算内で抑えているよ」

詳しく聞いて見ると、皮自体は一般的な牛革で、色は黒が余っていたからだそうだが、ラシェルが表面に木属性魔法で撥水加工を施したら、思った以上に光沢が出たそうで、面白いからと言って調子に乗り、硬化と撥水を重ね掛けして輝きを上げたそうだ。

「余分に掛けた魔法の分はサービスだから、気にしないでいいよ」

俺はその言葉で脱力し、「いや、そういうことじゃないんだが」と素の言葉でしゃべってしまった。

「そういうしゃべり方も出来るんだ。ここは気を使わなくてもいいから、普通にしゃべってくれればいいよ」

俺は「はあ」とだけ答えるが、リュファスを見ながら、別のことを考えていた。

(どうもこのエルフと話していると調子が狂うな。何歳なんだろう、この人は……)

リュファスが「ああ、これも渡しておくよ。ラシェルがこれも一緒にってうるさいんでね」と言って、真っ黒なウールのアンダーウエアと同じ色の黒い革のズボンを手渡してきた。

俺がそれを持って呆けていると、リディとベアトリスが早く着てみろとせっつく。

俺が鎧の着け方を知らないというと、二人掛かりで楽しそうに着せていく。俺はなすがままに手や足を動かし、十分ほどで鎧を装着した。

リディ、ベアトリス、シャロンの三人は似合う似合うと言って、楽しそうにしているが、姿見の鏡がないため、俺にはどう見えているのかは判らない。だが、ヘルメットや脛当てを見る限り、力の暗黒面に落ちた某騎士に見える気がしていた。

(黒いマントにフェイスマスクをして、光のサーベルでも持ったら、完全に某帝国の暗黒卿だな。黒いマントじゃなくて良かった……)

そんなことを考えていたら、奥からリュファスの妻、ラシェルが現れた。

「よく似合っているわね。そうそう、これもプレゼントよ」

そう言って、漆黒に染められたマントを手渡してきた。

俺が手に持ったまま、着ようとしないため、ラシェルが強引に着せてくる。

「うん。思ったとおりね。これで完璧よ」

何が完璧なのかは判らないが、満足げに何度も頷いている。

要望通りかどうかは別として、俺の注文と違うところはない。当然、返品はできないが、どうにも釈然としなかった。

「マントにも防刃と防水の処理がされているし、結構いいものよ。手入れはいつでも言ってね」

後日聞いたところでは、ラシェルが俺に興味を持ち、ベアトリスにいろいろ聞いたそうだ。そして、闇属性も使える魔道剣術士と聞いて、遊び心を刺激されたのだとか。その分、性能は倍の値段の物よりいいそうだ。

試しに動いてみると、最初は非常に動き辛かった。

今まで伸縮性のある革のジャケットだったため、引っかかりのようなものは全くなかったが、肩や肘、膝をカバーする防具が動きを阻害する感じだし、回避するときにしゃがもうとすると胴鎧が邪魔になる。

だが、それもベアトリス相手に訓練を行うことで、ほとんど違和感なく動けるようになった。雨の日にギルドの訓練場で訓練をした結果、十一月の終わり頃には以前と同じ動きが出来るようになった。

確かに性能はいい。だが、この装備には呪いが掛けられていた。そう、装備をつけるたびに、俺の精神にダメージを与えるのだ。

俺がその装備をつけて訓練場に行くと、必ず注目され、ひそひそと話す声が聞こえるようになった。

しばらくして、俺は“ 真闇の小魔剣士(ダークネス・リトルソードウィザード) ”と呼ばれていることを知った。

初めて聞いた時、“なんだよ、それ……”と絶句したことをはっきりと覚えている。

その厨二的な“二つ名”は、精神年齢五十過ぎの俺の心に、大きなダメージを与えたのだ。初めてそのことを知った日の夜、俺はベッドの中で数時間悶え苦しんだ。

■■■

ザックの知らないことだが、彼の“二つ名”はこんなものではなかった。

冒険者たちが多い酒場では、様々な二つ名で呼ばれていたのだ。

三人の個性的な美女、美少女を侍らしていることから、“ 全方位のハーレム王子(オールレンジ・プリンス) ”、ベアトリスを虜にしたことから、“ 雌虎の騎手(タイグレス・ライダー) ”と呼ばれていた。

更に、名字のロックハートにかけて、“ザカライアス・ロック ハーレム(・・・・) ”とか、下品なところでは、“ザカライアス・ コック(・・・) ハート――コックは男性器の隠語――”などと、酔っ払いの酒の肴にされていた。

もちろん、ベアトリスの前では禁句だった。一度、口を滑らせた酔っ払いがいたが、ベアトリスの殺気の塊のような視線を受けた後、酒場の裏に連れて行かれた。ベアトリスが戻った後に、仲間が見に行くと、下半身を丸出しにされ、頭からゴミ箱に突っ込まれた酔っ払いの姿があった。

彼女は「あいつが突っ込めるのはゴミ箱くらいだろう。あいつには ゴミ箱の愛人(トラッシュ・ラバー) という名が似合いだ」と言ったと言われている。