軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第二十一話「アレクシス・エザリントン」

父から公爵位と元老の地位を引き継いだのはちょうど十年前、私が三十二歳の時だ。健康を害していた父が引退を決意したためで、引き継ぐ一年以上前から準備ができたから戸惑いはなかった。

しかし、私に課せられた責任は重く、もう少し気楽な立場を享受したいと思ったこともあった。もちろん、その当時から帝国軍の将として働いており、遊び呆けていたわけではない。

父の跡を継いで最初に行った大きな仕事は元老としてではなく、領主としてのものだった。

当時、エザリントン市は交通の要衝であるものの、城門通行の手続きが煩雑で陸上輸送のネックと言われ、中部域および東部域の発展を長く阻害していた。

私はエザリントン領および帝国の発展のため、改革に着手した。

改革を始めた当初は、海上輸送を請け負うアウレラの商人や彼らの支援を受けた貴族たちなど、多くの抵抗勢力に悩まされ、改革は遅々として進まなかった。

しかし、元老として宰相であるフィーロビッシャー公と知遇を得た後は一気に改革が進んだ。これはフィーロビッシャー公が自らの不利益を顧みず、抵抗勢力を力ずくで抑えてくれた結果だ。

フィーロビッシャー公はそんな私に対して、「帝国の発展のために当然のことをしたまで」と言い切った。私は宰相が帝国の国益を最優先に考える無私の人であるという思いを強くするとともに、返し切れないほどの恩を感じた。

エザリントン公爵家の当主としての仕事も重要であるが、帝国という巨大な国家の舵を取る元老として、そして祖国を守る第四軍団長としての仕事は更に重要だ。

元老は緊急の招集がいつ来るか分からないため、帝都にいることが多い。一方、軍団長は自らの軍団と共にあることが望ましいのだが、対ルークス聖王国作戦が行われている時は帝都から離れることが難しく、悩ましいところだ。

元老院に関しては宰相に一任すれば必ずしも出席しなくてもよい。実際、ラングトン大公などは私事にかまけて欠席することが多かった。

そうは言っても恩人であるフィーロビッシャー公に難しい帝国の運営を丸投げするわけにもいかず、頻繁に欠席することはできなかった。

更に私が指揮する第四軍団は、基本的には帝都防衛のための部隊ではあるが、対ルークス戦争では頻繁に狩りだされている。これはレオポルド皇子派が調子に乗って戦火を拡大させることを防ぐためで、宰相から直々に頼まれることが多かった。名宰相のフィーロビッシャー公から信頼されることは名誉なことだが、このことも領地から離れる要因となっていた。

私の家族だが正妻のメルセデスに二男二女がおり、他にも二人の側室に五人の子がいる。九人もの子がいるが、公爵家の当主としては少ない方だ。チェスロック公爵にはダース単位で子がいると噂されているほどだ。

嫡男スティーブンは二十歳になったばかりの若造だが、宰相府で秘書官の一人として働いている。能力は未知数だが、フィーロビッシャー公から何か学んでくれればよいと思っている。

次男リュシアンは十三歳、初等学術院の二年だ。高等学術院卒業後はどこかの軍団で軍人として国に仕え、将来は第四軍団を率いてほしいと思っているが、軍団長は世襲ではないため、本人の努力次第だろう。

二人の娘はそれぞれ高等学術院で学んでいる。

長女ローレンシアは卒業後、どこかの家に嫁がせるつもりだが、彼女自身そのつもりがなく、私の悩みの種だ。勉学に励むことを否定する気はないが、もう少し将来のことを考えてほしい。

次女のプリムローズも未だに婚約者がいないが、生来の性格からか危機感を持っていない。

公爵家の直系であれば、十代前半で婚約者がいることは当たり前であり、娘の同級生にも婚約している者が多くいるはずなのだが、私が自由にさせすぎたのだろう。

いずれにせよ、私は家族に恵まれ、公爵家としては平穏な家庭を持っている。

私自身についてだが、フィーロビッシャー公より数年のうちに宰相職を引き継ぐよう言われており、それが重荷になっている。

彼の後でなければ、やれる自信はある。しかし、長い帝国の歴史の中でも一二を争う名宰相の跡を継ぐと思うと、どうしても気が重くなるのだ。

そして、その宰相からある難題を突きつけられている。

あれは十一月の半ば頃、ロックハート家の陞爵が決まった数日後だった。

フィーロビッシャー公が帝都にある私の屋敷を訪れた。

「アレクシス殿に頼みがある」と言った後、鋭い視線を私に向けた。

「ロックハート家に我が陣営に加わるよう説得してくれんか」

理由は聞くまでもないが、私に依頼してきた理由が分からない。

「否はありませんが、クレメント殿の方が適任ではありますまいか」

私よりクレメント・シーウェル侯爵の方がロックハート家との付き合いは長く、特に彼の腹心ラドフォード子爵は酒を通じて良好な関係を築いている。

「元老であるアレクシス殿なら大公らも手を出しにくかろうが、クレメントでは手を引かぬ。それにロックハート家は帝都より先に貴公の領地に入る。その機を狙えば大公らを出し抜ける」

フィーロビッシャー公の言うことはもっともだ。シーウェル侯爵家は皇室に連なる名家ではあるが、権力という点で言えば元老に遠く及ばない。仮にシーウェル侯がロックハート家を掌握したとしても、ラングトン大公やインゴールスロップ公といった派閥の領袖が遠慮することはなく、強引な手を打ってくる可能性は高い。

その点、元老であり皇帝陛下の従兄弟でもある私が引き込めば、手を出してくるにしても強引な手は打ちにくい。更に大公たちは帝都に入るまで直接動くことはないだろうから、先手を打つという意味では非常に合理的だ。

「確かにそうですが……分かりました。努力してみましょう」

その時は軽い気持ちで受けたのだが、翌日、シーウェル侯とラドフォード子爵から話を聞き、頭を抱えることになる。

私の話を聞いたクレメント殿は「難しいかもしれませんな」と言った。

「なぜかな? ロックハート家は元々ヒューバート殿の配下。表向きにはラズウェル辺境伯家は中立派とは言い難いが、ヒューバート殿は長年に渡って宰相閣下と友誼を結んでいる間柄。ならば、難しいことはないと思うのだが?」

私の問いにクレメント殿に代わりラドフォードが答えた。

「恐れながら申し上げます。ロックハート家はラズウェル家の影響下にございません。よって、宰相閣下と北部総督閣下が友誼を結んでおられても、彼らが従うとは限らぬかと」

「それはおかしいのではないか? ヒューバート殿の愛娘、ロザリンドはロックハートの嫡男に嫁いだと聞いている。自らの派閥でない者を縁戚とするとは思えんのだが?」

私がそう聞くと、彼は言葉を選びながら説明し始める。

「ロックハート家には次男ザカライアスがおります。あの者は英才という言葉では言い表せぬほどの才気を持っております。そして、今の皇室の状況を正確に把握し、どの陣営に加わっても自分たちの力の源泉である鍛冶師ギルドが利用されると危惧しております」

「それは分かるが、持っている力を使うのに何のためらいがあるのだ?」

「ロックハート家はドワーフの鍛冶師たちに強い恩を感じております。光神教の司教が暴走した際にロックハート家を守ったためです。更にはアンデッドの襲来時、ドワーフたちはすべてを投げ捨てて救援に向かっております。ロックハート家は先代ゴーヴァン卿の時代より信義を何よりも重んじており、その彼らが友を利用することはありえません……」

その言葉にクレメント殿も頷いている。

「……当主マサイアス殿の傍らには、現状を正確に把握しているザカライアスがおり、彼の言葉に従う可能性が高いということです。つまり、ドワーフたちを政治の場で利用するような判断はなされないと愚考いたします」

ラドフォードは美食家として有名だが、それ以上に政治家としての能力が高いと私は評価している。

現在、シーウェル侯爵家が力を付けつつあるのは、クレメント殿自身の才覚もあるが、ラドフォードを重用していることが大きな要因だと思っている。

その彼が断言するということは本当に実現が難しいということだ。

「では、どうすればよいのだ」

私がそう呟くと、クレメント殿がゆっくりとした口調で答える。

「無理に取り込もうとせず、彼らを大公閣下らから守るように動くのです。イグネイシャスの言葉ではありませんが、ロックハートは義理堅いのです。我らが守ろうとする姿勢を見せれば、おのずと味方となってくれるでしょう。無理に摘み取るのではなく、風雨から守りながら果実が熟すのを待つのです」

ワインで有名な家らしい表現だが、彼の言いたいことは分かる。しかし、私は彼らの言葉に従わず、自らの目で確かめた後に方針を決めることにした。

但し、クレメント殿の言う方策に切り替えられるよう手は打っておく。

それから私はロックハート家に関する情報を集め始めた。

当初は帝国領と言えぬほど辺境にある小さな家であるため、大した情報が集まるまいと考えていた。

しかし、思った以上に多くの情報が集まった。特にザカライアスの情報が多く、集まった情報を見るたびに僅か十六歳の、それも同一人物のことかと疑問に思うほど多彩だった。

最初に手に入った情報は、全属性持ちの魔術師であり、学術都市ドクトゥスのティリア魔術学院を最年少で入学し、そのまま首席で卒業したというものだ。その実力もさることながら、在学中から冒険者として活躍し、一流といえる四級冒険者になったということもすぐに分かった。

しかし、そこで疑問に思う情報が入り込む。

冒険者として級を上げたということだが、得意の魔法で級を上げたというならまだ分かる。しかし、手に入った情報では剣術の腕を上げるために冒険者になったというものだった。

更に彼のレベルは既にベテラン傭兵並の四十台半ば、五級傭兵の上位に達しているという。

エザリントン市にある冒険者ギルドの支部に問合せたところ、四級冒険者の平均年齢は三十歳を超えており、一般的な経験年数は十五年以上という回答が返ってきた。十歳の少年が五年で上がる級ではなく、冒険者ギルドでもその情報が入った際、その真偽が話題になったらしい。

その問い合わせの際、冒険者ギルドで新たな情報が手に入った。それは彼に関することだけではなく、彼の幼馴染たちのことだった。ほぼ同年の三人の幼馴染は皆、一騎当千といえる技量を持ち、ザカライアスを含め、“ザックカルテット”という名はドクトゥスでは知らぬ者はいないという話だった。

ここまでならまだ納得できないこともなかった。幼いうちから一流の教師から厳しい指導を受けて育てばありえないこともない。

剣術はあのルークスの獣人奴隷部隊と互角に渡り合ったゴーヴァン・ロックハートが、魔法はティリア魔術学院の首席であるリディアーヌ・デュプレが指導している。これほど優秀な指導者が身近におり、幼い頃から修行を重ねれば可能性は皆無ではないだろう。

しかし、政治に関する話では耳を疑うしかなかった。あの老練な政治家、魔術師ギルドのワーグマン議長が彼を手放しで褒めるだけでなく、敵対しないと公言した上、実際に彼の提案を即座に承認している。

その結果がルークス聖王国の最高権力者、光神教の総大司教の交代だ。我が帝国がどのような謀略を行っても成し得なかったことを僅か十四歳の少年が成し遂げている。

他にも皇帝陛下が警戒するほど広大な領地を持つヒューバート殿が、非公式ながら自らの領地の半分を与えて召抱えようとしたという話には、情報源であるクレメント殿に「まさか」と言ってしまうほど驚愕した。

ヒューバート殿は私が尊敬する数少ない政治家の一人だ。

北部総督という難しい地位を二十年以上に渡って守り続けていることが、彼の政治家としての優秀さを示している。

そのヒューバート殿が僅か十五歳の少年に対し、実質的な後継者にしたいと言ったことに衝撃を受けたのだ。

私も政治家であり、“政治”というものがどれほど難しいものか知っている。洞察力は経験を経なければ得られないし、人を動かすということは知識だけでできるものではない。いかに天才とはいえ、十五歳の少年にそこまで入れ込むことができるのかという疑問を持ったのだ。

ここまでの情報も信じられないものが多かったが、それにもまして眉唾物と思われる情報も多く集まった。

あまりに荒唐無稽な話、例えば“ 全方位のハーレム王子(オールレンジプリンス) ”なる逸話や、僅か十五歳で“ドワーフの友”と呼ばれ、鍛冶師ギルドでは、既に伝説の蒸留職人と呼ばれているスコット・ウィッシュキーに並ぶ重要人物と認識されているなど、俄かに信じ難いものが多くありすぎた。

情報の整理ができぬまま、ロックハート家が我が領地エザリントンの到着する日が近づいてきた。

情報はラドフォードから適宜得ていたが、私には他にも独自の情報源があった。それはラングトン大公やインゴールスロップ公の子飼いの下級貴族やその家臣たちだ。

ファーフリー子爵家では家令を調略しており、子爵が大公に送った報告書の写しを手に入れている。また、他にも我らに通じる者は多く、その者たちから得た情報を基に、ロックハート家の行動を見極めた上で、彼らと直接顔を合わせることにした。

帝都からエザリントンまでは馬車で四日ほどの行程だ。私はローレンシアとプリムローズを引き連れ、領地に戻った。

この時、私が考えていたことはロックハートをいかに引き込むかだった。

そのためにはマサイアス・ロックハートおよびザカライアスの人となりを見極めた上で最も欲する条件を提示するつもりだ。地位、名誉、領地、財産、安全……どのような者であれ、完全に無欲な者はいない。

幸い、フィーロビッシャー公から全権を任されていたため、相当無茶な要求、例えば侯爵位以上を欲するとか、皇女を娶りたいなどでなければ、ある程度欲張った要求にも応えられる。

仮に我がエザリントン家との縁戚関係を望むのであれば、次男リュシアンとロックハートの長女との婚約を認めてもいいし、更なる関係を望むのであれば、ローレンシアかプリムローズをザカライアスの嫁に出してもよいとすら考えていた。

また、クレメント殿には釘を刺されていたが、脅しを掛けるという方法がないわけでもない。

ロックハート家の力の源泉は鍛冶師ギルドと魔術師ギルドだ。

ドワーフ王妃と呼ばれ、鍛冶師ギルドへの影響力を持つカトリーナ王妃や、魔術師ギルドのワーグマン議長であれば、フィーロビッシャー公に敵対することの恐ろしさを知っているだろう。

つまり、帝国の力を背景にすれば、いかに両ギルドに強い影響力があっても屈服させることは可能だと考えていた。

一月二十三日、ロックハート家はエザリントンに到着した。

ラドフォードにも私が待っているという情報を伝えていないため、彼を含め全員が私を見て驚いている。

これは主導権を握るためにあえて行ったことだ。公爵たる者がやることではないが、交渉を有利に進めるために必要なことは、どのようなことでもやるつもりだった。

ロックハート家を引き入れようという思惑は晩餐の席で脆くも崩れ去った。

ザカライアスは私の出した破格の条件を拒否しただけでなく、我が腹心アドルフ・レドナップ伯爵の脅迫にも屈しなかった。多少は悩むと考え、条件を釣り上げることや脅しを加えることで、主導権を握ろうと考えていたが、私の考えは完全に読まれていた。

一応、私からも圧力は掛けておいたが、こうもあっさり断られるとは思っていなかった。

唯一、クレメント殿の出した条件には心魅かれたようだが、それすらもきっぱりと断っている。

更に彼の妻たちを見た瞬間、娘たちを与えるという選択肢もないと理解した。

あの四人は美しく強いだけでなく、心からザカライアスのことを愛している。そして、彼も彼女たちを愛していることは明らかで、ラドフォードがいうように家族想いであるならば、無理強いはできないと悟ったのだ。

ロックハート家の訓練の話を聞き、我が次男リュシアンとロックハート家の長女セラフィーヌとの結婚も無理だと分かった。初日の訓練を見た騎士からの報告では十一歳の少女とは思えぬほどの腕で、我が第四軍団なら十七、八の正規の騎士に匹敵するという。

一方のリュシアンは武官にするつもりで十歳から訓練を始めさせたが、三年以上経った今でも駆け出しといわれるレベル五に過ぎない。

公爵家の者が実際に剣を握って戦うことはなく、第四軍団長たる私自身も剣術スキルは十五と大したことはないため問題はないのだが、これほど差があると二人の関係が上手くいくとは思えない。

私は即座にロックハート家に恩を売る方針に切り替えた。

これについてはクレメント殿に感謝するしかないが、方針転換できるように手を打っておいたことが幸いした。

翌日、ローレンシアたちが上手くやってくれたお陰で、ザカライアスと娘たちの関係を大いに印象付けられたと思った。これによって大公やインゴールスロップ公の干渉を最小限に留めることができ、これでロックハート家に恩を売ることができると安堵したのだ。

しかし、思わぬところで綻びが出た。謀略から最も遠い存在、ドワーフたちによって。

私はこれから鍛冶師ギルドの宴会に参加する。

私も平民の部下を多く持っているし、元老の中では彼らと最も上手く付き合っているという自負はある。しかし、さすがに彼らの宴に参加するようなことは今までなかった。

私が行けば、彼らが萎縮すると思ったからだが、今は私の方が萎縮している。

ドワーフとどう付き合っていいのか分からないためだが、それ以上にここが正念場でもあるからだ。

このことをクレメント殿に言うと、彼から助言をもらえた。

「ヒューバート殿は鍛冶師たちの宴に参加したことがあります。その時の話から私が言えることは、純粋に宴を楽しんではどうかということです」

その言葉に頷くものの、具体的にどうしていいのか分からない。我々が行う宴は政治の延長であり、純粋に楽しむということが感覚的に分からないのだ。

そのことを告げると、

「分からなければ分かるものに聞くのが一番でしょう」

「分かる者?」と私が聞き返すと、笑いながらも更に貴重な助言を与えてくれた。

「ドワーフのことなら最もよく知る人物、ザカライアスに聞けばよいのです。宴会を楽しみたいのだが、どうしたらいいのかと素直に聞けば、必ず教えてくれるでしょう」

私は「なるほど」と大きく頷いた。

そして、夕方の訓練を終え、ギルドに向かおうとしていたザカライアスを捕まえ、そのことを聞いてみた。

「鍛冶師たちとの宴会を楽しみたいのだが、どうしたらよいだろうか」

私の問いに彼は困惑の表情を浮かべた後、ゆっくりとした口調で話し始めた。

「閣下は気の置けない仲間と酒を酌み交わされたことがおありでしょうか? 例えば、お若い頃、学術院の同級生と大騒ぎをしたこととか」

彼の質問の意図が分からないまま、記憶を辿っていく。そして、十八歳の時のことを思い出した。

「うむ。二十年以上前だが、学術院の卒業前、父が付けた目付け役を撒いて、帝都の居酒屋で馬鹿騒ぎをしたことがある。その翌日、二日酔いで苦しむわ、父に大目玉を食らうわで散々だったが、あれは楽しかったな……」

そこまで言ったところで彼の言いたいことが理解できた。

「では、その頃を思い出していただければよいかと。皇太子派も皇子派も中立派もなく、気の合う仲間と馬鹿騒ぎをする。今のお立場では難しいかもしれませんが、そんな気持ちで望まれてはいかがでしょうか」

私は彼の助言を聞き、ちょっとした悪戯を思いついた。