軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第三十八話「新たな武器」

トリア歴三〇一八年六月一日。

鍛冶師ギルドの匠合長ウルリッヒ・ドレクスラーたちによる武具の改造及び製造が終わった。

俺とメルの魔法剣はウルリッヒにより更に強化された。ウェルバーン支部の支部長デーゲンハルト・グラブシュの魔法剣と同じく発現させる魔法の分布を変え、出力が二十パーセント以上向上し、消費魔力を約三十パーセント削減している。

具体的には元の状態では発動に 魔力(MP) を五十消費し、維持に毎秒〇・七程度必要だったが、魔法陣改良後は発動に三十、維持に毎秒〇・五程度になっている。これにより連続使用時間は二時間以上になった。

更にデーゲンハルトのアイデアを参考に、鞘に自動修復機能を付与することにより、剣本体に付与されていた木属性魔法の自動修復を削除した。このため、鞘は無骨な木製の物から美しい紋様の入った漆黒の革製になっている。

鎧に妙に合い一段と禍々しさが増している気がする。これに関してウルリッヒが満足していたのは分かるが、リディたちも妙に満足げだったことが引っ掛かる。

剣に付与してあった自動修復を削除したため、反属性の硬化の魔法を強化した。これにより魔法を発動していない状態での切れ味が更に上がっている。

また、木属性を削除したため、新たに火属性を付与している。つまり炎の魔法剣としても使えるようになったのだ。この火属性は光属性より出力を上げているため、使用時間は短いが大出力の火属性と、出力を抑えているが長時間使用できる光属性という使い分けができる。

この火属性の炎だがイメージ次第で出力を上げられる。一方の光属性はビーム兵器をイメージしているためか一定出力になる。一定出力であっても実用上問題はないが、固定観念を崩せない自分の頭の固さに不満が残る。

防具の方だが、ゲオルグ・シュトック作の黒龍の鎧も改良された。こちらは元々金属性の硬化の魔法が付与されていたが、更に自動修復の魔法が付与された。これも剣と同じく常時発動型ではなく、装着時に硬化が利き、脱着時に自動修復が利くように“スイッチ”で切り替える方式だ。

スイッチは装着時に必ず締める留め金を使っている。このため、特別な道具や操作は不要で非常に合理的だ。この“スイッチ方式”だが、原理さえ分かればドワーフの名工たちにとって、それほど難しいものではないらしい。黒龍の鎧にはこの他にも新たに別の属性魔法が組み込んである。

メルとベアトリスのゲールノート作のチェインメイルにも似たようなスイッチが取り付けられ、自動修復機能を強化している。但し、チェインメイルの構造上の問題から名工ゲールノートもかなり頭を悩ませた。

結局、チェインメイルを脱いだ後に魔法陣が書かれたプレートを装着することで解決した。ゲールノートは「不細工じゃな」と言っていたが、実用上問題ないのでこの方法に落ち着いている。

更にこのチェインメイルにも新たな機能が付与された。それは光属性による“精神防護”だ。これは弱い光属性の魔法を常時放出することにより、闇属性の魔法をキャンセルする仕組みだ。

原理としては灯りの魔道具と同じであり、 魔力(MP) はほとんど消費しない。元々魔法防御力が高いミスリル製のチェインメイルであり、充分な能力があるのだが、対魔族戦を想定し闇属性魔法に対する防御力を強化したのだ。

そうは言っても所詮灯りの魔道具を参考にしているだけであり、効果の方も気休め程度しかない。

この精神防護だが、最初は胴体を守るチェインメイルではなく、頭を守るヘルメットの方がいいのではないかと思っていた。しかし、闇属性魔法は魔晶石に作用することから、首から胸辺りを守る鎧を強化した方が効率がいいことが分かった。

実際、睡眠の魔法を使ってみて確かめてみたが、頭をミスリルで覆うより、頚椎から下を防護した方が効果は高かった。ドワーフの鍛冶師たちにとっては常識らしいのだが、魔術師ギルドでは研究が進んでいない分野であり、後日、恩師ラスペード教授にレポートを送るつもりでいる。

ベアトリスのオイゲンの槍だが、効率を上げた以外はあまり手を加えていない。元々完成度が高かったことと槍という武器の特性上、自動修復機能を付けにくかったというのが理由だ。それでも効率は三割以上向上し、連続使用時間が十分ほどと倍近くに延びている。

他にもリディたちの剣や防具も強化され、性能的には二割程度向上している。しかも、これだけの作業を僅か十日ほどで終えているのだ。

本来なら五月の中旬にはすべての作業が終わってもおかしくないのだが、従士たちの武具の製作に気合が入ってしまったことが長引いた原因だ。村に長居したいためではないと信じている。

俺たちザックセクステットの武具を作った七人のドワーフ以外では、両手剣の名工フゼイフ・ユンゲルスと片手剣の名工ゴットハルト・ハルフォーフがそれぞれバイロン・シードルフとニコラス・ガーランドの剣を打っている。

そのバイロンだが、当初は自分が見限ったカウム王国の王妃から剣を授与されることに難色を示した。彼の元上司であるオズワルド・グレンジャーは昨年の十月に伯爵位を剥奪されているが、それはトーア砦陥落の責任を取ったわけではなく、俺に対する傷害未遂事件がきっかけだった。そのため、バイロンとしては王家に対するわだかまりが未だに残っている。

「私はカウムを出奔した身です。無為に死んでいった部下たちに対し、何もしなかった王家から剣を受け取ることは不誠実であると考えます」

その言葉に祖父は理解を示したが、俺の考えは違った。

「王家から名誉を授けられるわけじゃない。力をもらうんだ。あまりいい言い方じゃないが、もし剣を断って、お前が戦いで散るようなことになれば、死んでいった部下たちが悲しむんじゃないか」

バイロンは納得し難いという表情は崩さなかったが、俺の説得により最後には「ロックハート家のために剣を受け取ることにします」と言って了承した。

無事に剣を打つことを了承したのだが、その後がまた大変だった。

フゼイフもウルリッヒたちに匹敵する腕の持ち主であり、自らの工房も持っているが、いかんせんラスモア村の施設が凄すぎた。総本部のお膝元アルス以上の設備を使えるとあって、フゼイフの職人魂に火が着いてしまったのだ。

バイロンの両手剣は元々一・五メートルを超える大型の両手剣であり、 剣身(ブレード) の幅も広く、高価な魔法金属を使えば素材代だけでも膨大な金額になる。これだけの大きさの剣なら超一流の鍛冶師といえども高品位鋼であるアルス鋼で作るのが普通で、ミスリルで作られることすら稀だ。

フゼイフも最初はミスリルで作るつもりだったらしいが、アダマンタイト専用の炉と工具を使いたくなり、素材代の差額を自ら負担するということで変更してしまった。

これにはバイロンも困惑し、「自分にはアルス鋼で充分」と言って固辞した。しかし、フゼイフが「何とかやらせてくれんか」と土下座する勢いで頼み込み、更にウルリッヒが祖父ゴーヴァンにバイロンの説得を頼んだことからアダマンタイト製の剣になった。

バイロンの剣だが、彼の希望により硬化の魔法を強めに利かせてある。彼の膂力と剣の重量が加わると通常の剣でも信じられないほどの破壊力を見せるが、その分剣に掛かる負担が大きく、損傷することが多かった。

そのため、硬化の魔法をギリギリまで掛け、元々頑健なアダマンタイトの剣を更に頑丈にしている。試し斬りの際に鉄ではなく、俺が作った岩柱を斬るというか叩き折ってみせ、祖父がその非常識な頑丈さに「城壁すら斬れそうじゃ」と呟いたほどだ。

鞘に付与する自動修復機能と弱いながらも光属性の魔法剣にしていることから、三属性の魔法剣となった。素材費などを考えると、世界で最も高価な剣ではないかと思っている。

ニコラスの剣を打つゴットハルトだが、当初は彼もアダマンタイトを使うつもりでいた。しかし、ニコラスから自分の戦闘スタイルにはアダマンタイトは重すぎると言われて泣く泣く諦めている。

これは比喩ではない。本当に泣いていたのだ。地面に手をつき慟哭するほど、この工房の設備を使いたかったらしい。

その分、剣に取り付ける魔晶石には拘り、一個数万クローナ、日本円で数千万円は下らない一級相当の 赤竜(レッドドラゴン) の魔晶石を使っている。この魔晶石代はゴットハルトが負担した。

この魔晶石の使い方だが、俺のアイデアが生かされている。このため、今までにない魔法剣が完成した。

話は変わるが、ニコラスにしてもバイロンにしても魔術師ではないため、 魔力(MP) 保有量が少ない。そのため、フゼイフはMP消費量が少ない硬化の魔法を主とし、光属性を対アンデッド用として弱めに設定した。

しかし、ゴットハルトはそれでは面白くないと思ったのか、「何とかならんか。知恵を貸してくれ」と俺に意見を求めた。そこでアイデアとして温めていた魔晶石を二つ使い、一つを魔力タンクとするアイデアを提案してみた。

通常の武器では魔晶石は一つしか使わず、それは魔力回路の一部となっているだけで 魔力(MP) は使用者本人から供給される。もちろん常時作動の硬化の魔法などに魔力を供給することは可能だが、属性魔法を付与する場合のように大量の魔力を消費する場合はほとんど寄与しない。

このアイデアだが、大して目新しいものではない。この世界で普通に使われている照明器具である灯りの魔道具と同じ原理だからだ。

灯りの魔道具は魔晶石に貯められた魔力によって光を放出する。イメージとしては充電式のバッテリーライトと同じであり、これと同じように魔晶石をバッテリーと考えれば、術者が魔力を与え続けなくても起動させることは可能だ。

このアイデアが今まで実用化しなかった理由は、魔晶石の魔力貯蔵量が大きくないためだ。一級相当なら千程度と成人した人間以上の貯蔵量があるが、二級相当の魔晶石でも三百程度と成人した人間の半分程度しか貯められない。

つまり、二級相当の魔晶石だけで魔法剣を起動させようとすると、僅か一分ほどで切れてしまい、実用的ではないのだ。そのため、実戦で用いるためにはどうしても一級相当の魔晶石が必要になる。

このアイデアにゴットハルトは当初、「二つも魔晶石をつけるとバランスが悪くなる」と否定的だった。確かに一級相当の魔晶石は小さなものでも野球のボールより大きい直径十センチメートルほどある。それだけの大きさのものを剣に取り付ければ、使いづらくなることは容易に想像できる。

そこで俺が考えたのは魔力タンクを剣に取り付けず、モバイルバッテリーのようにミスリル製のコードで繋ぐ方法だ。

バッテリーとする魔晶石は邪魔にならない腰に取り付け、鎧の中にミスリル製の回路を通して 籠手(ガントレット) に繋ぐ。そして、籠手と剣の 柄(グリップ) をミスリルのチェーンで結び、剣に魔力を供給するのだ。剣を手首にチェーンで結ぶと使いづらそうに思えるが、実際には落下防止の紐を付けていることから違和感はない。

このアイデアだが、俺のような 片手半剣(バスタードソード) を使う剣術士にはそぐわない。両手で使う場合と片手で使う場合で握る場所を変えるし、利き腕である右手を離すこともあるからだ。また、ダンやリディのように弓と剣を併用する場合も実用的ではない。

ロックハート家では祖父の影響でバスタードソードを使う者が多く、片手用のロングソードを使う剣術士はニコラスくらいだったので、ようやく日の目を見たアイデアということになる。

この外部魔力タンク方式だが、鍛冶師たちの評判はあまりよくなかった。性能面で飛躍的に向上することは認めるが、武器という“作品”としては美しさに欠けるというのだ。

「有用性があるのは認めるが、こいつは単なる道具じゃ。儂らが魂を込めて作る武器とは違う気がする」

作ったゴットハルトですらこんなコメントを残している。

それでも性能面では圧倒的だった。魔力タンクを取り付けない場合、今回の効率を向上させた魔法剣であってもニコラスが発動させていられる時間は七分ほどでしかない。しかし、魔力タンクを接続すると三倍以上の二十五分に延びるのだ。

そして、この魔力タンク方式の利点は装備している者の魔力でなくてもよい点だ。魔力を消費すると全回復するのにおおよそ一晩掛かる。しかし、装備者以外が魔力補給をすれば、充電時間以外は常に魔法剣を使用できることになる。

さすがに一級相当の魔晶石を複数個用意することはできないが、魔術師でない一般人でも魔力補給ができるため、魔力切れによる戦力低下に陥りにくい。ちなみに魔力の補給時間は“フル充電”状態まで一時間程度。一般人の魔力総量は大きくないため、三人以上で補給することになるが、僅か一時間でペナルティなしに魔法剣が使えるようになるのだ。

この他に特筆すべき武器はウォルト・ヴァッセルの槍だろう。ベアトリスと同じく“神槍のオイゲン”ことオイゲン・ハウザーが作った一品物で、ベアトリスの物よりやや長い他はほぼ同じ性能を有している。つまり、オイゲンの最高傑作ということだ。

普段は滅多に表情を変えないウォルトが新しい槍を嬉しそうに振っている姿は見ていて新鮮だった。

この他にも従士たちの防具類が新調若しくは補強され、防御力も格段に向上している。

今回この超一流の鍛冶師たちに相談したいことがあった。

それは廉価版のミスリル製武器の製造のことだ。

ここにはミスリルのインゴットがゴロゴロ転がっているが、本来は希少な金属であり、長剣一本分の素材を集めることすら困難なほど手に入れにくい素材だ。

ミスリルの特徴は魔法との相性がいいこともあるが、通常の金属製武器では傷つけられない 幽霊(ゴースト) などのアンデッドにダメージを与えられることが上げられる。また、対魔法防御にも有効であり、鋼の五倍程度の防御力を有するとも言われている。

神々の敵がアンデッドであるとは限らないが、少なくとも闇属性魔法を操る魔族がルナを狙っている。そう考えると闇属性魔法、つまり精神に作用する魔法に対する防御力を上げておく必要がある。

そこで俺が考えたのはミスリルで武具をコーティングができないかということだった。防具にコーティングできれば、攻撃魔法に対しては効果は小さいかもしれないが、少なくとも精神攻撃には有効だろう。また、剣や槍、矢の 鏃(やじり) にコーティングできれば比較的安価な対アンデッド兵器となり得る。

俺自身、金属性魔法で“ミスリルメッキ”を試したことがある。他の金属、例えばクロムなどであれば魔法でメッキは可能なのだが、ミスリルでは何度やってもうまくいかなかった。

うまくいかない理由は分かっている。ミスリルの魔力伝導性の高さだ。

金属性魔法でミスリルをコーティングしようとして魔力を通すのだが、ミスリル自体が魔力を拡散させてしまい、魔法として作用しなかったのだ。

ミスリルコーティングのことをウルリッヒら超一流の鍛冶師たちに相談してみた。

初めてアイデアを話した時には「何を馬鹿なことを」という答えが返ってきたが、「魔法陣は金属の上に別の金属で描画するんじゃないのか」と言ったら唸り始め、最後には「できるかもしれん」と言い始めた。

「お前も知っておるだろうが、金属性魔法と魔力付与のスキルを併用すれば、ミスリルの剣に魔法陣を描ける。逆に言えば、鋼にミスリルを貼り付けることは可能かもしれん」

魔力付与は武器などに魔法を付与するスキルで、ドワーフの鍛冶師やエルフの細工師などが持っていることが多い。ドクトゥスで買った防水や防刃の機能がついたマントにも使われていたもので、魔晶石や魔法陣を介さずに魔法が付与できる。

この魔力付与は時間の経過と共に掛けられた魔法が減衰していくが、硬化の魔法のように魔法陣と組み合わせることで永続的な効果を発揮する。

魔力付与のもう一つの使い方として、ミスリルなどの魔法金属に魔法陣を描くというものがある。

魔法金属は先ほども述べたとおり魔力を拡散しやすく、金属性魔法を使って描こうとしても描くための魔力が拡散してしまい、うまく描けない。

ここで魔力付与のスキルを使うことにより、魔法金属に金属性魔法を部分的に定着させ、魔法陣を描くことができるのだ。

「つまりじゃ。魔力付与を併用した金属性魔法でミスリルを薄く延ばし、鋼に定着させればよい。うまくいくかは分からんがな」

興味を持ったのか、ウルリッヒやゲールノートらが試し始めた。

彼らの金属を扱う魔法は独特で呪文を使わず、工具を使って局所的に魔力を与えていく。これは長年の修行により培われた方法らしく、心の中で 金の神(フェッルム) に祈りながら魔法を発動させているらしい。

ウルリッヒがミスリルの欠片を自警団用の鋼の剣に載せてハンマーで叩いていくと、ミスリルは徐々に薄く延ばされ、鋼の表面は鏡のような美しい銀色に変わっていった。十分ほどで何の変哲もなかった鋼の剣が見た目だけなら完全にミスリルの剣に変わっていた。

その手際に感歎の声すら出なかった。

(さすがは鍛冶師ギルドの匠合長だ……ハンマーだけで磨き上げたようにきれいに仕上がっている……)

当のウルリッヒは「こんなもんじゃろう」と言って俺に剣を渡してきた。

「物を切ればミスリル部分は落ちてしまうぞ」

その言葉にようやく我に返る。

「いや、基本的にはゴーストやレイスなんかの幽体用だ。硬いものを斬るつもりはない……それにしても見事なものだ……」

光に当てながら 剣身(ブレード) を眺めていく。

横にいるベルトラムに「同じことができるか」と尋ねると、僅かに顔を顰め、「伯父貴と同じレベルは無理だ」と言うが、すぐに「貼るだけなら、何度か試せばできんこともない」と自信を見せた。

その後、ゲールノートに自警団用の 胸甲(キュイラス) の内側にミスリルを貼り付けてもらった。剣よりも面積のある胸甲だが、使われたミスリルは三十グラム程度と少量で済んでいる。

このミスリルコーティング鎧だが、驚いたことに精神系の魔法に関しては全ミスリル製鎧と同等の性能だった。これにはゲールノートを始め、ゲオルグ・シュトックなど防具職人たちが驚いていた。

「こいつはカウム王国が喜ぶかもしれん。魔族の魔法には煮え湯を飲まされておるからの」

「いや、闇の矢の魔法なんかの攻撃魔法にはほとんど効果はないから、それほど期待はされないんじゃないか?」

俺がそう言うと実際に魔族と戦った経験を持つバイロンが話に加わってきた。

「確かに 小魔(インプ) であれば闇の矢の魔法が主ですが、翼魔族は睡眠や麻痺といった魔法を使ってきたはずです。これだけでも充分な能力だと思います。それに……」

そこまで言ったところで口篭る。

俺が「それに?」と先を促すと、苦笑を浮かべながら言葉を続けた。

「聖銀騎士団が使いたがるのではと思ったのですよ。もちろん、内側ではなく外側にミスリルを貼ったものですが」

聖銀騎士団はカウム王国の近衛騎士団であり、名前の通り聖銀、すなわちミスリルを冠した騎士団だ。しかし、ミスリル製の武具は高価であることと、鍛冶師たちが聖銀騎士団の騎士のように実力のない者に武具を作りたがらないことから“銀”で装飾された鎧を使っている。このため、聖銀騎士団が欲しがるだろうと言ったのだ。

それはともかく、自警団の武器と防具の強化に目途が立ったことは大きな前進だった。