作品タイトル不明
第七十三話「痕跡」
トリア暦三〇一七年十月九日。
ラスモア村に帰ってきた翌日、その日は朝から快晴だった。昨日の作戦会議で決まった通り、早朝から四方に斥候が放たれていく。
ロックハート家一の 斥候(スカウト) 、ガイ・ジェークスが最も危険な東の森に向かい、弓術士で狩人たちのまとめ役であるヘクター・マーロンがボグウッドに近い南の森に、ダンが西に、ベアトリスが北に向かう。それぞれ、猟師たちが一名ずつ付き、伝令となっている。
村の様子だが、麦の収穫は終わっているものの、ジャガイモなどの根菜類の収穫時期になっていることから、自警団の護衛のもと、主に女性たちによって収穫が行われている。この状況で魔族の襲撃があった場合は、館が丘にある鐘が鳴らされ、即座に避難することになっている。
更に家畜たちについても、夜間は館が丘に収容されているものの、村にいるすべての牛や羊の放牧を行うには狭すぎるため、昼間は館が丘周辺の草原に放たれている。こちらについては、魔族の襲撃があったとしても回収は行わない。人命第一でいくということだ。
俺とリディ、シャロンの三人は館が丘で待機し、剣術士であるメルは祖父の部隊、すなわち最精鋭部隊に配属となっている。それ自体は嬉しかったようだが、俺たちと離れることに少しだけ不満があるように見えた。
ガイたちが偵察に出た後、館が丘のふもと付近にある学校には、警戒に当たっている自警団員以外の、すべての村人が集められていた。
父が今日の予定を伝えることになっている。
「皆も知ってのとおり、ザックたちが戻ってきた! これで敵が魔族であろうと恐れることはない!」
父は俺に小さく頷き、合図を送ってきた。
「私とリディアーヌ、シャロンの三人がいれば、魔族が使役するという 翼魔(レッサーデーモン) でも恐れる必要はない……」
俺はそう言った後、デモンストレーションを行うため、呪文を唱えていくが、演出効果を狙い、出来るだけ重々しく聞こえるよう、低い声で詠唱していく。
「火を司りし 火の神(イグニス) よ。御身の眷属、精霊の猛き炎を我は求めん、御身に我が命の力を捧げん。我が敵を焼き尽くせ! 火炎の砲弾(ファイアキャノン) !」
詠唱とともに右手にはオレンジ色の火の玉が形成されていき、詠唱の完了とともに、直径五十cmほどになった炎の玉が上空に飛び出していく。
轟という燃焼音とともに高速で飛んでいき、百mほど上空に上がったところで、激しい爆発音とともに炎の砲弾が弾ける。
弾けた炎の砲弾から無数の小さな火の玉が円錐状に飛び出していく。
「これで空を飛ぶ敵も一網打尽にできる!」
その爆音と光景に村人たちから「オォ!」という歓声が上がり、「これなら心配はいらねぇ」とか、「翼魔も恐るるに足らずだな」などという声が上がる。
今回使った魔法は学術都市ドクトゥス近くの森で使った 火炎の砲(ファイアキャノン) と名はほぼ同じだが、中身はかなり異なる。以前、恩師であるリオネル・ラスペード教授が見せてくれた 獄炎の槍(ヘルファイアランス) を参考に作った時は徹甲弾をイメージしていたが、今回はデモンストレーションということもあり、榴散弾をイメージしているからだ。
実を言うとこの魔法、見た目は非常に派手なのだが、殺傷力はほとんどない。榴散弾ということで、着弾の直前に爆発するのだが、実際のものとは異なり、弾が飛び出さない。大きな爆発音と飛び散る炎だけで、ほとんど空砲か花火と言っていい。
何度か改良を行ったのだが、火属性ではうまく固体ができず、撃ち出すべき散弾ができなかった。風属性では固形化できるので、火の精霊にうまくイメージを伝えられないことが原因だと思っている。他の属性で榴散弾のようなものが出来ないか試行錯誤している状況で、一つだけうまくいきそうなものはあるが、今回は派手さを重視して火属性にした。ちなみに、この榴散弾バージョンのファイアキャノンは、真っ赤な炎と大きな音が出ることから、信号弾代わりに使えると思っている。
村人たちが歓声を上げる中、俺のデモンストレーションに満足したのか、父が両手を挙げて静粛を求める。ざわめきが収まったところで、防衛体制の周知が行われていく。
「ザックたちが加わったことで、体制を変更する……」
第一班は祖父ゴーヴァンを長とする剣術士部隊。
この班には自警団でも優秀な者、一人一人がオークと十分に渡り合える者たちからなり、三十名ほどが集められている。全員がレベル三十六を超え、傭兵ギルドの階級で言えば、五級に相当する 強者(つわもの) たちだ。この班が先頭に立って敵を切り崩す。
第二班は十五名ほどからなる騎兵部隊で、兄ロドリックが率いている。
騎兵部隊と言っても、兄とシム・マーロン――メルの兄、ウェルバーンで従騎士を務めていた――以外は専門の訓練を受けているわけではなく、機動力を生かして敵を混乱させることが期待されている。
第三班は俺が率いる弓兵部隊だ。
二十人ほどの長弓兵と十人ほどの弩弓兵で構成され、リディとシャロンもこの部隊に入っている。元はヘクターが指揮していた班だが、彼は斥候に出ているため、俺が引き取った形になっている。戦闘については、基本的には対空戦を俺たち三人が、地上の敵を弓兵が担当することにしている。
ちなみに 弩(クロスボウ) だが、俺の意見で導入を始めたものだ。速射性は劣るものの、 長弓(ロングボウ) に比べ、射撃に限れば取り扱いが容易で命中率も良いことから、防衛戦ではかなり有効だと思っている。ただし、クロスボウ自体の値段が高いことと、メンテナンスに必要な専門の職人が村にいないことから、今のところ大量導入には至っていない。
この他に四十人程度の班が四つあり、それぞれ従士頭のウォルト・ヴァッセル、従士のニコラス・ガーランド、バイロン・シードルフ、イーノス・ヴァッセルが率いる。この四班が主力だが、平均レベルが二十台後半であり、単身でオークに当たるにはやや不安が残ることから、五人一組で敵に当たることになっている。
斥候に出ているガイたちだが、村に戻り次第、俺の第三班に合流する。
総大将たる父から体制が発表されると、自警団員たちはすぐに動き始めた。俺のところにも弓を持った自警団員が集まってくる。
全員が集合したところで、作戦会議で決まったことを伝えていく。
「第三班は屋敷近くで待機してくれ。とりあえず、敵が見えてから動いても十分に間に合う。長丁場になるかもしれないから、気を張り過ぎないように……」
簡単な指示を出した後、俺とリディ、シャロンの三人は屋敷の庭で待機することにした。
庭のベンチに座ると、リディが真剣な表情で話しかけてきた。
「大丈夫なの?」
主語を抜いた言葉だが、何が言いたいのか何となく分かる。だが、素直に答えることができず、あえて分からない振りをし、「何の話だ?」と、とぼけてみた。
「分かっているんでしょ。あなたの使命のことよ。本当に感じているの? もうそろそろだって……」
リディは真剣な表情を崩すことなく、俺の眼を見つめていた。
「ああ……父上たちにも言ったが、何となくなんだ。ただ、漠然とそんな感じがする……それが合っているのかは全く分からないんだ……」
リディは「遂に来るのね」と呟き、俺に抱き付いてきた。
「何があっても一緒よ。どこまでも……いつまでも……だから、あなたも……」
反対側に座っているシャロンも真剣な表情で「私も同じです」と言って、俺の腕をそっと掴む。
「そこまで気負う必要はないと思う……極端な話、投げ出してもいいと言われているんだからな」
それに対し、シャロンが小さく 頭(かぶり) を振る。
「ザック様は決して投げ出されません。いつでもそうです……ですから、心配なんです……私たちがいます。無理はしないでください。本当に……」
シャロンがほとんど泣きそうな表情でそう訴えてきた。リディも何か言おうと口を開くがうまく言葉に出来ないという感じで黙ってしまう。
(彼女たちも何かを感じているのかもしれないな。メルも俺のそばを離れたくないという感じだったし、ベアトリスですら不安そうな表情を見せていた……いずれにせよ、いつかはやってくるんだ。俺自身がきちんと向き合わないと、みんなに余計な心配を掛けてしまうな……)
正午頃、猟師の一人、細身の強弓使いであるジョアンが、館が丘に駆け込んできた。
「はぁはぁ……お、オークの、足跡を見つけました!」
ジョアンは父を見つけると、大きな声でそう報告する。
その声に周囲は一瞬騒然となるが、祖父の「静まれ!」という大音声でざわめきは一瞬にして静まった。
ジョアンは受け取った水を一口含み、荒い息を整える。
父が「場所はどこだ」と尋ねると、
「足跡を見つけたのは東に五kmほど、シーリン湖のほとりです。北に向かっておりました。ジェークス様がおっしゃるには、数は二百から三百。ほとんどがオークの足跡で、昨日か一昨日に通ったようだとのことです」
父は小さく頷く。
「ガイはどうした」
「ジェークスの旦那は追えるところまで追ってみるとおっしゃられて……」
ガイはとりあえずジョアンを伝令に出し、自らは単身で追跡を続けている。日没までに戻るらしく、あと三時間ほど追跡し、北に抜けていったことを確認するつもりのようだ。
ラスモア村周辺の地形だが、南にはミーゲイド山という小さな山があり、その東には魔の山と呼ばれるアクィラ山脈の麓が広がっている。南にある国境の町ボグウッドから、ミーゲイド山までは深い森が続くが、山を越えた辺りからラスモア村までの森はそれほど深い森ではない。これは百年ほど前に大規模な森林火災が発生したためで、樹齢百年を超える大木がないためだ。
ラスモア村の北東にはシーリン湖という直径三kmほどの湖がある。この湖からシーリン川という川が流れ、ファータス河――カウム王国からカエルム帝国北部域を流れる大河――に注ぎ込んでいる。支流に当たるとは言え、シーリン川は幅三十mほどで、深さも浅いところでも数mあり、渡河できる箇所は限られている。猟師たちだけが知る渡河ポイントはあるが、北上するにはシーリン湖の東を迂回するルートが現実的なルートになる。
(ボグウッドから真直ぐ北上すればラスモア村だ。だから ラスモア村(ここ) が戦場になると思ったんだが、敵は村を迂回するルートを選択した。確かに街道以外で効率よく北上するにはシーリン川を迂回した方が合理的なんだが……敵はこの辺りの地理に精通しているということか……)
ジョアンから情報を聴き取った父は「ご苦労だった。ゆっくり休め」と労った後、
「キルナレックに伝令を出す。シム! お前に任せる」
近隣の城塞都市キルナレックに派遣するのは、メルの兄シム・マーロンで、彼は兄ロドリックの部下としてカエルム北部総督府軍の従騎士を務めており、その際に得意の馬術を生かして伝令として活躍していた。
シムは「はっ」と片膝をついて応える。
「直ちにキルナレックに情報を伝えよ。ボグウッドには明日の朝一番に向かえ。だが、無理はするな。確実に情報を伝えることを第一に考えよ」
この村からキルナレックに行き、更にボグウッドまで行って戻ってくる計八十五kmを二日間で走破するだけなら、優秀な軍馬として名高いカエルム産の名馬――兄が結婚した際に贈られた四頭の名馬の一頭――であるシムの愛馬であれば何ら問題はない。だが、敵が近いことから、父は何が起こるか分からないと考え、注意を促したようだ。
シムはもう一度頭を下げると、颯爽と愛馬に跨り、一気に丘を駆け下りていった。
俺はその様子を見ながら、魔族の行動について考えていた。
(ボグウッドから真直ぐ北上しなかった。確か十年前にも同じルートでオークとオーガが北に向かったはずだ。だとすれば、北に何かがある、若しくは誰かがいるということになる……魔族が神の敵であるなら、俺の運命と関係するはずだが、魔族も 闇の神(ノクティス) を信仰する種族だ。神々が十二神なら 闇の神(ノクティス) も含まれる……情報が少なすぎるな。今は誰が敵かより、どう動くか考えるべきだ……)
オークの足跡の情報が入ったことから、父は自警団に待機を命じた。
「距離から言って、今日の昼に敵が襲撃してくる可能性は低い。無論、敵が北上した部隊だけとは限らぬが、今は夜襲に備えて各自休養をとっておけ!」
見張りに立つ一班を残し、自警団員は校舎や天幕の中に入っていく。
俺たちも警戒組から外れ、一旦屋敷に戻ることになった。
装備を外し、寝台に横になるが、さすがに眠ることはできない。それでも、ごろごろとしている間に日が大きく傾いていた。
既にヘクター、ダン、ベアトリスの三人は索敵から戻っており、報告を終えていた。
彼らの報告ではヘクターが向かった南の森でやや魔物の数が多かった程度で、オークの足跡などの痕跡は全くなかったそうだ。
日没の直前に、ガイが戻ってきた。
すぐに屋敷に主要なメンバーが集められ、彼からの報告を聞くことになった。
ガイはかなり急いで移動したためか、涼しい十月の夕方だというのに、汗を滝のように流し、息も荒かった。
「……シーリン湖を迂回し北上したことは確実です。更に北西に向かったところまでは確認できましたが、その先は確認できておりません……」
オークたちの足取りはシーリン湖を迂回し、更に森の中に続いていたが、時間の関係もあり、それ以上は追えていないらしい。
「オークどもが通ったのはいつ頃だと考える」
祖父の問い掛けに「一昨日で間違いありません」と即答する。
父は「うむ」と頷き、
「オークどもの足跡に迷いはあったか」
ガイは 頭(かぶり) を振り、
「斥候を放った形跡も迷った形跡もございませんでした。しかしながら、翼魔族がいた場合は、斥候の形跡が残らない可能性はありますが」
父はわずかに沈黙して思案すると、
「ならば、ボグウッドに密偵を放った翌日に出発していることになるな。密偵を監視していたのか、それとも、どこかで合流するつもりであったのか……いずれにせよ、奴らがここに来る可能性は低くなった」
周りから安堵の息が漏れる。
シーリン湖を越えて北上すれば、シーリン川が障害となり、戻るにしても同じルートを辿るか、キルナレック近郊を通過してシェハリオン山の西を回ってこなければならない。
迷いもなくシーリン湖を迂回したということは、目的地が別の地点であり、最も移動しやすいルートを選択したことになる。仮に空を飛べる翼魔族がいた場合でも、ラスモア村の存在を確認しながら襲撃しなかったことになるため、魔族たちの目的はここではなかったことになる。
「今宵は厳戒態勢で臨む! だが、明日は周囲の警戒は続けるが、各自の仕事に戻すことにする……」
本来ならオークたちが殲滅されるか、位置を確実に把握しなければ、敵襲の可能性が否定できないため、自警団の警戒態勢を解くことは危険だ。だが、今は秋の収穫期ということで農作業を放棄するわけにはいかず、父としても苦渋の選択をしたのだろう。実際問題としてシーリン川を越えている以上、この村が奇襲を受ける可能性は低く、警戒を強めておけば問題ないだろう。
もちろん、敵の思惑が判らない以上、別働隊がいる可能性は否定できないが、そこまで考えると何もできなくなる。
北上した敵についてはキルナレックに情報を送ったことから、アルス街道沿いの町から冒険者が派遣されることは間違いなく、敵が隠密裏に行動できる範囲は確実に狭まる。また、通報を受けた冒険者ギルド本部が、十年前と同様に大規模な討伐作戦を展開するはずだ。
父の決定を従士たちが村人に伝えに行く。
残されたのはロックハート家の者たちだけだった。
「お願いがあります」
俺は父にそう切り出した。
父は「何だ?」と首を傾げるが、すぐに話すように促した。
「敵を追う許可を頂けないでしょうか」
俺はガイが見つけた足跡を追う許可を求めた。
「敵は北に去ったとは言え、今の状況でお前を外すのはな……何か理由があるのか?」
「特に明確な理由はありませんが、敵が迷いもなく北上したことが気になるのです。十年前を覚えておいででしょうか?」
父は大きく頷き、
「無論だ。あの時はオークとオーガがともに村の東を通っていたのだ。更にトーア砦が陥落したしな」
俺が「状況が似ていると思いませんか」と言うと、父を含め全員が頷く。
「ボグウッドの件と合わせて考えれば、野生のオークである可能性はなくなりました。だとするならば、オークを使役しうる存在、魔族の関与しか考えられません」
「確かにな。だが、それとお前が追うことに関係は無いと思うが?」
俺は「いいえ」と 頭(かぶり) を振り、
「もし、魔族であるなら明確な目的があるはずです。それを突き止めるためには、誰かが追跡しなければなりません。それも闇属性魔法に対抗できる者が……私なら魔族の闇属性魔法に対抗できます。ですが、他の者ではどうなるか……ボグウッドのことを考えれば、闇属性魔法で操られる可能性も否定できません……」
俺の考えはこうだった。
魔族であることは確定的であり、大規模な侵攻の尖兵であると考えるなら、敵を野放しにすることは非常に危険だ。痕跡を発見したなら、早急に敵を追わなければならない。
更に魔族は精神に作用する闇属性魔法を使うことが知られている。闇属性魔法の使い手は少なく、ペリクリトルを含めてもアルス街道に俺以上の使い手はそうそういない。
その二点を考えるなら、俺が追うことが最も合理的だ。
父は祖父に目を向け、
「ここでザックが抜けても問題ないと思いますが、父上のお考えは?」
静かに聴いていた祖父だったが、その問い掛けに小さく頷き、
「シーリン湖沿いに戻るなら、追跡するザックとかち合う。キルナレックの近くを通るなら、通報がくるじゃろう。他の魔族軍がおらぬとは限らぬが、北上した部隊がこの村を無視した以上、別働隊がここを襲う可能性は低かろう。ならば、この地を治める領主としての義務を果たすべきじゃ」
魔族の侵入に対しては、各国は一致団結して当たるという古くからの協定がある。カエルム帝国も当然、その協定を批准しており、帝国の騎士であるロックハート家も同様に魔族の侵攻に対し、最大限の努力を払い、近隣の各国の安全に寄与する必要がある。祖父の言う義務とはそれを指す。
父は「分かりました」と祖父に答えた後、
「ザック一人では厳しかろう。ベアトリス殿たちも同行してやってくれ」
俺は「リディとシャロンもですか」と声を上げ、
「それでは村の防衛力が落ちてしまいます。私とベアトリスだけで十分です」
父が答える前にリディが口を挟んできた。
「あなたがどう言おうと、私は付いていくわよ。この辺りはともかく、キルナレックより先は危険な場所。あなたとベアトリスだけで野営するのは危険すぎるわ」
それに対し、メルが大きく頷き、
「リディアさんの言うとおりです。私も絶対に付いていきます。もちろん、足手纏いなんかにはなりません」
シャロンも「私もです」と前のめりになって訴えてくる。唯一、ダンだけは言葉を発しなかったが、それでも目では必死に訴えていた。
「ザック、ベアトリス殿、リディア、メル、ダン、シャロンの六人で敵の動向を探れ。これは命令だ。ガイ、シーリン湖まで案内してやってくれ」
父は強い口調でそう命じた。
別働隊の存在は確認されておらず、更にオークに限って言えば、全数が北上している。もし、俺が送り出すほうの立場なら、父と同じ判断をしただろう。
(父上は俺が何か感じていることを重要視しているんだろう。もし、俺の使命と関係があるのなら、この村より俺の方が危険だと……本来なら、俺を含め六人とも村の防衛に回すべきなんだが、俺のことを考えて……父上の思いを無碍にするわけにはいかない。もちろん、リディたちの思いも……)
「分かりました。敵を追跡し、必ずや情報を手に入れてきます」
俺たちは翌朝一番で敵の足跡を追う。