軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第10話 絶望への行進曲(1) フック

バルセの街酒場

「気に入らねぇ!」

D級ハンター、ライガ・イースターは 葡萄酒(ぶどうしゅ) の入った木製のコップをテーブルに叩きつけた。

「ミアちゃんに散々しぼられたもんな。おまけに、お前の憧れのイルザさんも、あのカイ・ハイネマンを大層買っていると見える」

親友であり、参謀、そして抑え役でもあるフックは、葡萄酒を喉に流し込みながらも、今もなお怒りで震えるライガを見据えながらも、そう口にする。

ライガは、ラムール出身。あの街のものは、特に神から賜るとされる 恩恵(ギフト) で、人の価値の序列を決めたがる。そのライガからすれば、【この世で一番の無能】のギフトを持つカイ・ハイネマンは、絶対に認めるわけにはいかない人物なのだ。

(これがなければ、気のいい、良い奴なんだがな)

内心を独白すれば、フックはこのライガのギフト蔑視だけは、どうしても好きになれない。

ギフトはあくまで能力の目安だ。能力が低いからといって、そのものの人格が劣っているなどあるはずがないのだ。

「ミアちゃんもあんな、無能を庇いやがって!」

「彼女の立場からすれば、別に庇ったわけではないと思うぞ。というか、ギルドの受付嬢の立場からすれば、そりゃあ怒るだろうさ。何せ、お前が余計なことをしたせいで、彼女の立場、相当悪くなっただろうしな」

「ざけんなッ! 俺が何したってんだ!?」

「お前、それ本気で言ってんのか?」

「当たり前だ」

ことギフトに関することになると、ライガは目先が見えなくなってしまう。

「もう、カイ・ハイネマンに関わるのは止めておけ。イルザさんも、遺跡の発掘チームにカイ・ハイネマンをスカウトしたいだけだ」

「俺がチームに入ってもいいと言ったんだぞ? なのに、あの女、Bランク以上が必須条件だとぬかしやがった!」

「単にそれだけ、難解なクエストってだけだろ? 俺達、まだクラスDだぜ?」

「もうすぐCクラスだ! 俺の 恩恵(ギフト) なら直ぐにクラスAまで登りつめられる。なのに――あの女、あんな無能より、俺を下に見やがったっ!」

フックは、 恩恵(ギフト) ですべてが決まるとは思っちゃいない。実際に、明らかに専門外のギフトホルダーが、特定の分野で名を遺すことなど、腐るほどあるのだから。

今絶賛売り出し中の 遺跡探索系(トレジャー) ハンター、イルザ・ハーニッシュがカイ・ハイネマンを認めている以上、彼には遺跡の探索を成功させる重要な価値があるんだろう。

だが、頭に血が上ったライガには、それを説明しても受け入れまい。さて、どうするかな。

「おい、ライガ、フック! これをお前らに渡して欲しいってさ」

仲間の一人がフックたちの席にくると、テーブルに手紙とペンダントを置く。

「誰がだ?」

「フードを頭から被ってたから、よく見えなかったな。名前を聞く前にそれを渡すとすぐ、去っちまったし」

胡散臭すぎるな。触らないで捨てるのが吉だろう。

「ライガ――」

フックが口を開きかけるが、

「あーそうそう、それって、『太古の神殿』探索についてらしいぞ。バルセで最も有望株のライガとフックがいる俺達にのみ教えるんだってさ」

得意げに、そんなライガを殊更刺激することを口にする。

「ま、待て、ライガ――」

無駄だとは思ったが、懸命に制止の声を上げていた。

きっと、このときフックが上手くライガを説き伏せて手紙を破り捨てていたら、あんなおぞましい悪夢に直面することはなかったのだろう。

しかし、フックの願望とは相反し、ライガは手紙を読んでしまう。

「くはっ! くひっははっ!!」

ライガは憑りつかれたように笑ったあと、

「このペンダントの効果を調査して、もし真実なら、俺達だけで『太古の神殿』の探索にでかけるぞ!」

最悪の道への言葉を紡ぐ。こうしてフックたちの絶望への行進が始まった。