軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第二百六十七話 第一次ポフェニア戦争 一年目 Ⅱ

まず初めに我が国はペルシス帝国に開戦の知らせをした。

メルシナ海峡は我が国とポフェニアだけの問題ではない。

ペルシス帝国にとっても、重要な戦略的要地である。

利益を共有する者同士、初めに説明する必要があった。

次にトリシケリア島での拠点だが……

トリシケリア島最北端、メルシナ海峡と目と鼻の先にあるキリシア系都市国家のメルシナが我が国の方に付いてくれた。

このままではポフェニア、ロマリア、どちらかに蹂躙されるのは確定。

ならば、一番待遇が良さそうな……

困っていて、そして支配者としての評判が良いロマリア王国に下ったのである。

こうして橋頭堡を確保した我が国は、ポフェニアと対決する準備が整った。

幸いなことにペルシス帝国にとって、ロマリア王国とポフェニア共和国が潰し合うのは望んでいたことだったようで、好意的な中立を守ってくれるようだった。

その後、我が国はアズル・ハンノに連絡を取り先の条約は飲めないと伝えた。

斯くして、両国の戦争が始まった。

「問題は無事にトリシケリア島に渡れるかだが……大丈夫か?」

「大丈夫ですよ。アデルニア半島とトリシケリア島の間……メルシナ海峡は目と鼻の先です。少し船を走らせれば到着します。キリシア諸国の護衛艦も付いてきますから、ご安心を」

「なら良いが……」

俺は散々迷ったが、アレクシオスを今回の戦争の総司令官に命じた。

本当のところはバルトロ、アレクシオスの二名を送り出したかったが……

どうしてもロゼル王国への押さえのために、一名はアデルニア半島の防衛に残しておく必要があったのだ。

そして……

敵はバルカ家。

ならば、アレクシオスが適任であると判断した。

バルカ家の戦い方はアレクシオスが一番良く分かっているだろう。

それにアレクシオスはトリシケリア島で、ポフェニアの将軍として戦ってきた過去がある。

トリシケリア島の地理もよく分かっているはずだ。

「大船に乗ったつもりでいてください」

「ああ、分かっている。……深入りはするな? 追い払うだけで良い」

「はい、分かっていますとも。でも……」

アレクシオスはニヤリと笑った。

「別に倒してきてしまっても、構わないのでしょう?」

「それ、死亡フラグだぞ?」

大丈夫か?

「困りましたね……最初からこれとは……」

アレクシオスは困り顔を浮かべていた。

現在、アレクシオスがいるのは都市国家メルシナの外港である。

メルシナ海峡を渡る船が必ず立ち寄る港で、なかなかの規模の港だ。

アレクシオスがアデルニア半島から連れてきた兵力は……

ロマリア王国軍二万。

連邦軍二万。

アルヴァ騎兵三千。

ゲルマニス騎兵二千。

の合計四万五千である。

副司令官として、ロンとロズワードが随行。

呪術師としてはソヨン、そして妻のメリアが随行していた。

あまり戦争に深入りするつもりがないアルムスの意向で、兵力は抑え気味だ。

大軍を動かすと、それだけお金がかかり、また国内の農地にも影響が出るからである。

しかしアデルニア歩兵は全て、ロマリア式の軍事教練を受け、そして何度も戦ってきた精鋭中の精鋭。

アルヴァ騎兵もまた、生粋の生まれながらの騎兵。

そして……

ゲルマニス騎兵の強さも証明されている。

そう、精鋭である。

精鋭なのだが……

「ううぇー!!」

「地面が、地面が揺れる……」

「□□□□□!!!」(お見苦しいので、一部音声を変えております)

殆どの兵士が胃の中のモノを地面に撒き散らしていた。

無理もない。

アデルニア人の多くは生まれてこの方、海すら見たこと無いのだ。

ましてや、船など初めて。

船では船酔い、着いてからは陸酔いするのは自明であろう。

メルシナからアレクシオスたちを迎えにきた有力者たちも、「こいつらに頼んで大丈夫だったのか?」と心配そうな顔をしている。

「まあ、一日休めば治るでしょう。まずは十分に休養を取って……それから戦だな」

「諸君!! このトリシケリア島はアデルニア半島ではない、異国の地だ。戸惑うこともあるだろう。しかし、我々は戦わなくてはならない……なぜなら、ポフェニアがこの地を征服すれば、彼らの征服の手はアデルニア半島に伸びるからである!!」

翌日、船酔いから快復した兵士たちにアレクシオスは演説をする。

すでに開戦の理由は兵士たちに伝えられているが……

士気を上げるためには必要だ。

今回はロマリア王国にとって、初めての海外遠征なのだから。

「彼らがアデルニア半島に侵攻して来たのは記憶にも新しいだろう。彼らは残忍な侵略者だ。彼らの軍勢が通った後には、草の根一つ残らない!! 我らは我らの財産と妻を守るために、戦わなくてはならない!!」

「将軍万歳!!」

「アレクシオス将軍万歳!!」

「ロマリアに勝利を!!」

「ロマリアに栄光あれ!!」

兵士たちが大歓声を上げる。

士気は高い。

ここは陸。

例え海を隔てていたとしても……ロマリア王国の得意とする陸である。

ならば負ける理由は無い。

あるのは勝利、ただそれだけ!!

「行くぞ!! 全軍進撃開始!!!」

「「「おおおおおおお!!!!」」」

一方、ロマリア王国のトリシケリア島上陸を聞いたバルカ家は……

「早いな……さすが、ロマリア王国。連中の兵士を集める速度は尋常ではない」

「全くです……今回の相手は油断なりませんな。兄上」

ポフェニアの港町。

トリシケリア島の後方基地で二人の男が唸った。

一人はバルカ家当主にして、現在ポフェニアの最高指導者。

セアル・バルカ。

アレクシオスの父である。

もう一人はその弟で、先の戦いでアレクシオスに敗北した将軍。

ケプカ・バルカである。

「ロマリア王国の歩兵は厄介ですな。正面から戦いたくない」

「騎兵もアルヴァ騎兵とゲルマニス騎兵……まあ、僕らのヌディア騎兵と大差はないけどさあ……」

一人はバルカ家に婿養子として嫁いできた男。

シェマル・バルカ。

もう一人はバルカ家次男、ダヴィド・バルカである。

そして……

「敵は裏切り物、アレクシオス!! 奴は気に食わないが……用兵の実力は確か。油断すべきではないな」

ベルシャザル・バルカ。

バルカ家長男。

バルカ家の次期当主である。

「我らの兵はまだ集まりきっていないが……一先ず足止めせねばならん。……ケプカ。四万やろう。お前が行け」

「はい、承りました。兄上。……今度は必ず勝ちます」

斯くして、ケプカ・バルカは三万五千の歩兵、五千の騎兵、合計四万を与えられてトリシケリア島に向かった。

「しかし抵抗が激しいなあ」

「まあ、ポフェニア系の都市だからね。……本当はキリシア系都市を狙いたいんだけど。ここは戦略的要地だ。まずはここを落とさないと始まらない」

ロンの呟きに、アレクシオスが答えた。

アレクシオス率いるロマリア軍が攻囲しているのは、トリシケリア島のポフェニアの植民都市。

アシュタルトである。

ポフェニアはキリシア系諸都市を支配する一方で、戦略的要地にはポフェニア系の植民都市を築いていた。

アシュタルトはそんな植民都市の一つである。

アシュタルトは大きな港町で、本土からの物資、援軍、連絡を円滑に行うためには是非とも確保したい場所だ。

その上、アシュタルトの周囲には山が聳え立っている。

天然の要害なのだ。

そして山と山の谷間には道路が通っており、トリシケリア島の内陸部に繋がっている。

攻めるのには苦労するが、しかし攻め落とすには十分な価値がある。

「港町だから、日干しにはできないんだよねえ。制海権はあちらが握っているわけだし……やっぱり、強引に攻めるしかないね。……ロン・アエミリウス殿。あなたに一任します」

「宜しいんですか?」

「僕は邪魔をしにきた、目障りなバルカを潰しに行くよ……ロズワード・ファビウス殿!!」

「準備は整っています。いつでも出陣出来ますよ」

アレクシオスはロンに二万の兵を預け、二万の歩兵とアルヴァ騎兵、ゲルマニス騎兵五千を率いてケプカ・バルカを迎え撃ちに向かった。