軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第二百五十五話 今後の方針

王城のとある一室。

そこには九人の男たちが集まっていた。

一人は国王である、俺。

貴族の取りまとめ役であるライモンド、外交官のイアル、軍人であるバルトロ、同じく軍人でキリシア人と強い繋がりを持ち、海軍にも詳しいアレクシオス、俺にとって子飼いの家臣であるロン、ロズワード、グラム、そしてペルシスから一時帰国したエインズ。

話し合いの目的は単純明快。

これからの国家方針である。

このまま内政に注力するか、それともさらに積極的な領土拡大をするのか。

領土拡大をするのであれば、北か南か。

今までのロマリアの国家方針は一つだった。

それはアデルニア諸国を相手に戦争をして、領土を拡張することだ。

しかしそれは先の戦争で終えてしまった。

今、ロマリア王国は国家方針を見失いつつあるのだ。

これは不味い。

そういうわけで、俺は八人、自分を含めて九人を集めたのである。

初めに俺は口を開く。

「征服地の反乱は全て鎮圧済み。とはいえ、今すぐ税収が見込めるわけでもないし、隙あらば反乱を起こそうとしているのは事実。まあ、しばらくは足止めだろう。問題はその後だ。諸君らの意見を聞きたい」

俺は八人を見回した。

まず初めに、口を開いたのはバルトロだった。

「仮に領土拡張をするのであれば、北です。……我が国に海軍はありませんから。それと、ロゼル王国と戦うならば今がチャンスかと」

「その理由は?」

「クリュウ将軍が留守だからです」

実際にクリュウと戦ったバルトロの言葉には説得力があった。

なるほど、クリュウが南に戻って来れば領土拡張は絶望的になるだろう。

その意見を聞いて、手を上げたのはイアルだ。

「私は領土拡張方針を続けるべきである、と思います。……いえ、むしろ領土拡張方針を取らざるを得ないかと」

「どういうことだ?」

俺の問いに、イアルは答える。

「ロマリア連邦の結束を高めるためです。……戦争で勝ち、分配品が手に入るとならばこの戦争で我が国の支配下になった、または連邦に加盟した国々の国民たちも、我が国に逆らおうとは思わないでしょう。……無論、勝つことが前提です」

何だか止まると転ぶ自転車みたいだな……

うちの国は。

急速な領土拡張が悪かったかな。今更だが。

しかしロゼル王国と本格的な戦争となると、今まで通りにはいかない。

難しいモノだ。

「私はこの辺りで一度、立ち止っても良いと思います。……ロゼル王国は今まで通りとはいきませんよ」

ライモンドは俺と同じ危惧を抱いていたのか、領土拡張には反対のようだ。

ここでアレクシオスが手を上げる。

「領土拡張は結構ですが、皆さん。もっと大事なことを忘れてはいませんか?」

「大事なこと?」

「国防ですよ。陛下。……確かに、攻撃は最大の防御と言います。ええ、北に関しては今まで通りで良いかと。ですが、南はどうでしょう? いつまでもあのハンノがポフェニアの元老院を支配できるか……近年、バルカ家が再び勢力を盛り返している。と、僕は聞きましたよ」

現在、ポフェニアの主流派はアズル・ハンノを筆頭とする、地主貴族中心の平野党だ。

彼らの方針は、農業重視、反拡大、善隣外交、現状維持、そして親ロマリアである。

だからこそ、先の戦争では中立でいてくれた。

しかし近年、再びバルカ家を筆頭とする、商業に従事する平民中心の海岸党が勢力を盛り返しているらしい。

彼らの方針は、商業重視、領土拡張、そして反ロマリアである。

彼らの勢力が盛り返しているのは皮肉にも俺たちが悪い。

というのも、俺たちが当初の(ポフェニア人たちの)予想に反して大勝ちしてしまい、一気に領土を広げたからだ。

アズル・ハンノは

「ロマリアは勝ったとしても大きな痛手を被る。決して、勢力を拡大することはない。態々我々が国費を投じて戦争に参加するまでもなく、アデルニア人は勝手に殺し合い、力を落とすだろう」

と主張していたが、それが見事に裏切られる形となった。

結果として、アデルニア半島に大きな地域大国が誕生してしまったのだ。

それを非難するバルカ家が勢力を拡大し、再びポフェニアは領土拡張に転じようとしている。

……メルシナ海峡を奪うというのであれば、我々も指を加えて見ているわけにはいかないのだ。

「別に南に拡張せよ、と言うわけではありません。しかし警戒すべきです。ある程度の海軍の整備が必要かと。あるのと無いのとでは、大きく違いますよ」

「お前の言う通りだ。……しかし我が国に海軍を組織した経験は無いぞ? レザド等の都市国家の船を集めても、大した数にはならないし……」

「新たに造船すれば良いではありませんか。技術は南部のキリシア諸都市が持っています。お金と材料さえあれば、可能ではありませんか?」

確かに、その通りだ。

だが海軍は維持費が高いからな……

「一先ず、そちらに関しては研究を兼ねて少しづつ作ろう。それで良いか?」

「はい。……できれば、五段櫂船を造って頂けませんか? キリシア諸都市の船は三段櫂船が主流なのですが、それでは五段櫂船が主力のポフェニアには太刀打ちできないのです」

「分かった。そちらに関しては別で検討しておく」

俺はアレクシオスにそう言ってから、今度はエインズに視線を向けた。

「クセルクセス帝は何ておっしゃっていた?」

「ペルシス帝国の意思は、今までと変わっていません、彼らが我らに期待している役割は、対ポフェニアですから。ロゼル王国との戦争に関して、文句を言ってくる可能性は低いです。しかし、ロゼル王国との戦争のためにポフェニアと妥協する、という事があればクセルクセス帝は御怒りになるでしょう。……私もアレクシオス殿の意見に賛成です。領土拡張の前に、南に備えるべきです」

エインズはキリシア人。

キリシア連合軍はペルシス帝国に敗北したのは、中立を破ってポフェニアがペルシスに組したからだと聞く。

ポフェニアには並々ならぬ思いがあるのだろう。

「実はクセルクセス帝が、船の在庫処分をしたいそうで、中古を買ってくれないかと打診されています」

「中古? 動くのか?」

「中古、と言いますが実際に老朽化したから捨てるというわけではなく、軍縮の為だそうです。あと、技術保全のために常に一定の船を生産していると、どうしても古い船が要らなくなるとか。私も何隻か見分しましたが、修繕を施せば十分に使える船ばかりでしたよ。……三段櫂船は無論、五段櫂船もありました」

要するに、体の良い在庫処理なわけだが……

まあ、悪い話ではないかもな。

「安くは成ってるんだな? 何隻だ?」

「三十隻ほどあるそうです」

「……十隻ほど、買わせてもらうと伝えてくれ」

三十隻はさすがに多い。

ポフェニアを下手に刺激するのも、どうかと思う。

さて、話がズレた。

最後はロン、ロズワード、グラムだな。

まずロンが口を開く。

「お前たちはどう思う?」

「……俺は北に進むべきだと思います。征服した土地の民を手懐けるためには、新たな土地と富が必要です。違いますか?」

違わないな。

ロンの言う通りだ。

我が国はこれからも、軍事拡張を続けなければならない。

一度でも、守勢に回ったら滅ぶだろう。

守勢に回れるほどの余裕がこの国にはないのだ。

「俺も賛成です。……そのために、騎兵の強化をお願いできないでしょうか? 現在の近衛騎兵は千騎ですが、これでは足りません。いつまでも、アルヴァ王国に頼り続けるのは良くない」

そう言ったのはロズワードだ。

ロゼル王国はガリア人の国家で、ガリア人はアデルニア人よりも馬に乗るのが得意だ。

だから多くの騎兵を持っている。

これまで通りとはいかないだろう。

「……いっそ、一万ほど騎兵を増やしてしまうか?」

領土拡張でかなりの税収が見込めるし、グラナダを倒した時に得た財宝はまだ山ほどある。

これを使えば、一気に騎兵の数を一万に増やすことは不可能ではない。

問題は人材だが、これには当てがある。

貴族の子弟たちだ。

大概、貴族の子弟たちは馬に乗れる。

中央集権化の過程で領地を失った多くの貴族の子弟たちは、かなり生活には苦しんでいるようだし、失業対策にもなる。

まあ、一気に一万は不可能かもしれないが……

三千規模への拡大なら、十分に可能だ。

「グラムは意見、あるか?」

「今までの意見に反論はありません。あと、これは僕個人の意見ですが……仮にロゼル王国に侵攻するにしても、最低でも二年は国内を固めるべきです。それとこれは提案なのですが……占領地に新たに植民都市を築いたらどうでしょうか? 自分の土地を持たない臣民を入植させるのです。彼らは同時に兵士でもありますから……内外への押さえになります」

「それは名案だな。……言い出すからには、入植地への当てはあるのだな?」

「はい」

グラムは不適に笑って見せた。

よし、ならば問題ない。

「それに関してはお前に一任しよう。上手くやってくれ」

さてと……

俺は立ち上がった。

「やはり我が国は領土を拡張する以外、道はない。二年掛けて国内を固め、さらに軍拡をして軍隊を強化し、内政で国力の充実を図ってから……ロゼル王国と戦う。……連中をアデルニア半島から追い出すぞ」

腹は決まった。

そうと決まれば……

「イアル。ロゼル王国内には、ガリア人の支配に不満を持つアデルニア人が大勢いるはずだ。上手く、アデルニア人有力者と接触してくれ。……内部から切り崩す」

「はい……お任せください。それは私の得意分野です」

イアルはニヤリと笑う。

これはイアルに任せておけば、大丈夫だろう。

「バルトロ、軍隊の強化はこれまで通り頼む」

「はい、仰せの通りに」

バルトロは頭を下げた。

「アレクシオスは海軍の編成と育成に、ロズワードはさらなる騎兵の拡充を頼む。グラムは植民都市建設の指揮を頼む。ロン、お前は俺と一緒に行政処理を手伝ってくれ。それと、エインズ」

最後に俺はエインズに声を掛けた。

「我が国の国際上の立場はお前に懸かっている。頼むぞ」

「はい……陛下」

よし!

さて、残りは北半分。

一気に奪ってしまおうじゃないか!!