軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第百九十二話 レザドⅡ

そもそもの話、まずレザドをこれからどのように治めていくか決まっていない。

現在の地位は直轄地なのだから、俺が直接治めれば良い。

しかしレザドの連中は自治独立の精神が強い。

ある程度、政治に参加させてやらなければ不満を溜めこむだろう。

とはいえ、自治をやらせるわけにはいかない。

レザドの港は軍港としても、アデルニア最大にしてロサイス唯一の港としても価値が高いからだ。

直轄地として、治め続ける必要がある。

そこで現在考えられているのは、議会を設置してその議会を尊重しながら間接統治をしようという少々面倒な政治体制である。

レザドから入ってくるモノに対する規制や関税は国の監視が必要。

同様に軍港として海軍を維持するのも国がやらなければならない。

しかし全てに対して国が直接指揮を執ってやる必要は無い。

レザドの街のインフラや特別法などは、中央から派遣された役人よりも現地の人間の方が必要性は理解出来るだろう。

それに俺は地方自治は推進していく方針でいる。

というのも、その方がいろいろと経費が浮くからである。

軍事と道路などの交通インフラ、そして税金。

この三つさえ掌握出来ていれば、地方が何をしようがどうでも良い。

我が国の国税が非常に安いのも、地方自治を前提としているからである。

借地料である十分の一税、売上税である二十分の一税。

その他、相続税などの課税。

全てを合計しても、税金は高くない。

だから地方で何か、祭りだとか特別な建物だとか、そういうモノを実施したり建てたりしたければ好きに人頭税でも付加税でも集めて、やってくれれば良い。

まあ、現状それを認める法律は未整備であるため、現地に派遣された地方官が住民の要望に従って実施しているに留まっている。

レザドには我が国に於ける、地方自治のモデルケースになって貰いたい。

さて、ここで問題になるのが議会の設置である。

議会を設置するというのは、議事堂を立てれば良いという話では無い。

議員を選出する方法とその権限を定めることを議会の設置というのだ。

議会に与える権限に関してはすでに決めた通りである。

問題は選出する方法だ。

ロサイスの税金は定額制ではなく、定率制である。

つまり稼ぎが多ければ多いほど、税金を支払わなければならない仕組みである。

即ち、金持ちほどたくさんの税金を支払うことになる。

だから金持ちは考えるのだ。

「参政権を持つのは俺たちのような、金持ちだけで良い!! と、いうわけか」

「そういうわけです」

現在、レザドの市政を実質的に取り仕切っているのは元レザドの議員たちであり、彼らは大金持ちである。

だから参政権が認められるのは、一定以上の納税額を支払った者だけであるという考えの元、政治改革をやろうとした。

今までの、『納税額によって一人当たりの投票数が変わる』から『一定以上の納税をした者には全員一票の票を持つ』に変えようとしたのだ。

今までのレザドの政治制度から考えると大きな進歩と言える。

しかしこれに一部の二級市民が反発した。

二級市民は叫ぶのだ。

「俺たちだって税金を支払っている」と。

無論、二級市民は土地も持っていないし商売もしていない。

だから借地料や売上税とは無縁である。

しかし徴兵の対象にはなる。

血税は立派な税である。

それに先のポフェニアとの戦いの中、二級市民は大きな役割を果たした。

彼らの協力が無ければレザドは陥落していただろう。

しかし一級市民からすると、一銭も支払っていない二級市民が参政権を持つなど許せない。

故にグダグダと揉めているようだ。

「しかし、折衷案など無いしな。どちらかしか選べない」

「そうなんです。しかしこのままでは議論が進まない……ですから、ここは陛下の鶴の一声でバシっと決めて貰えませんか?」

「二級市民の参政権も認めてやれ」

二級市民の方が一級市民よりも数が多い。

なるほど、一級市民からすれば恐ろしいかもしれない。

しかし民主主義というのはそういうものだ。

何度も言うが、国税と徴兵、そして軍事的に重要な施設の維持管理さえ出来れば、地方政治がどうなろうと俺には関係ない話だ。

まあ、流石に一級市民の資産を凍結して平等に配りますなどやり始めたら、俺も止めに入るが。

「まあそれに選挙活動は金が掛かるからな。結局、被選挙権を生かせるのは金持ちだけだ」

だから二級市民が数の暴力を使うことは出来ない。

そもそも二級市民は纏まりが悪いだろうし。

一級市民若干優位のバランスが保たれ続けるだろう。

「もう俺が何か決めなくてはならないことはあるか?」

「いえ、特には」

そうか、なら問題ないな。

アルムスとアレクシオスがレザドの市政について話し合っている頃……

ロンは新たに獲得した領地での戦後処理に当たっていた。

この地域の維持管理をロンが任されたのはいくつか理由がある。

まず前提として、アルムスがロンに経験を積んでほしいという思いが有ったこと。

しかしこれはロズワードもグラムも同じことである。

では、何故ロズワードやグラムではなくロンが選ばれたのか?

まずロズワードだが、彼は近衛騎士団の団長という職を持っている。

近衛騎士団の役割は国王の身辺警護と王都の防衛。

故に本国から長期間離れるわけにはいかない。

次にグラムだが、グラムはロマリアの森の開拓任務がある。

ロマリアの森はロサイス王の国にとって戦略的に重要な場所であり、この地域の開拓はグリフォン様に親しい者しか出来ない。

だからグラムが席を外すことは出来ない。

ではロンは無役なのか?

そんなことは無い。ロンには国内の麻薬の取り締まりや、間者の排除などの任務がある。

しかしすでにロンは組織を完成させているし、指令を出す場所は首都でなくてはならない理由は無い。

鷹便を使えば数時間でアルムスと連絡を取ることも可能である。

そして何より、新たに侵略した地域にはロンの作った組織は浸透していない。

ロンは秘密警察の長官として、新たに侵略した地域に網目を広げなくてはならない。

だったらついでに内政と防衛も任せてしまおう。

という判断である。

ロンにはアルムスから四千の兵を与えられた。

いろいろと 処分(・・) を下すには力が居るだろうという配慮だ。

四千の兵を率いて旧ミエハリス家の館に入城したロンがまず始めにしたことは領内の治安維持である。

即ち、盗賊や山賊の掃除だ。

戦争後の領地は逃亡兵により荒れ、山賊などが発生する。

また一部の豪族による富の搾取により平民が困窮し、結果として盗賊に走り、元から治安が非常に悪い場所もあった。

「投降すれば許すよ」

「本当ですか?」

「本当、本当。命は助けるから」

「投降しました! これからは真面目に働きます!」

「うん、働いてね。エインズさん、宜しく」

「ええ、分かってます。これは良い筋肉ですね、高く売れそうです。こっちは男娼として売ればそれなりに……」

「えっと、助けてくれるんじゃなかったんですか?」

「命は助けてるじゃない」

ロンとエインズは大分儲けたらしい。

次にしたことは国勢調査である。

人口の把握と土地の測量。

この二つを済ませなければ始まらない。

狭い範囲で人口そのものも多いわけでは無かったため、国勢調査は恙無く行われた。

「うーん、やっぱり小作人が多いね。平民の八割が小作人なのは問題だ」

ロンは報告書を読みながら顔を顰めた。

ロサイス王の国の軍制は徴兵制であり、財産によって兵科が決まる。

広い土地を持っている地主や商人などの富裕層は騎兵。

自作農は重装歩兵。

小作人や無産市民は軽歩兵。

このうち、ロサイス王の国の主力は重装歩兵である。

即ち重装歩兵の質と数はロサイス王の国の軍事力に直結する。

故に自作農が少ないのは、大きな問題なのだ。

「それに未開拓の土地や放棄された農地が多いね。まあ、こちらは移民を募れば良いか……さて、取り敢えずは……」

ロンは下記の布告を出した。

・地主の土地は没収、小作人に無償で分け与える。

・一年間は無税、以後は一割の借地料を採る。

・税の徴収はロサイス王の国の制度で行う。

大打撃を被ったのは、今まで豪族と癒着して富を搾取してきた地主たちであった。

土地の分配で大きく土地を削られた。

そして今まで徴税請負人として税金の一部を懐に入れることが出来る既得権益も失ったのである。

いくつか反乱が発生しそうになったが、流石は情報機関を司るロンと言える。

全て未然に逮捕し、処罰した。

「ロン・アエミリウス様!! 万歳!!」

「新領主様万歳!!」

「結婚して!!」

「何て素敵な方だ……横顔を見ただけで股間が膨らんでしまう」

ロンの人気取り政策が功を成し、新たに獲得した地域はすんなりとロサイス王の国に組み込まれた。

農民反乱の心配は当分の間無いだろう。

「というか、俺は新領主じゃないんだけどね……一年の統治期間が終わったら帰るし」

「良いじゃん、新領主様。カッコいいよ」

ソヨンがロンをべた褒めする。

首都と違い、知り合いの目が少ない所為かいつも以上にイチャイチャする二人。

子供が出来る日も早そうだ。

「さて……次は館の改修作業をしないとな」

旧ミエハリス家の館は改修して、要塞として西部征伐の拠点とする予定となっている。

改修の指導もロンの仕事だ。

「労働力はどうするの?」

「平民を雇うよ。リーダーからはお金貰ってるしね」

税が無くなったとはいえ、すぐに生活が良くなるわけでは無い。

収穫を待たなくてはならない。

この地域には今にも奴隷落ちしてしまいそうなほど困窮した平民が大勢居る。

彼らを保護し、同時に労働力に変えてしまう一石二鳥の策だ。

ロンが大々的に布告を出すと、多くの平民たちが次男や三男をロンの元に送り込んできた。

ロンは彼らに、館の改修、道路・橋の整備、治水灌漑設備の整備を命じた。

報酬は銅銭だ。

貨幣経済を出来るだけ早く浸透させるためである。

「いやー、自分で言うのも何だけど、中々俺も統治上手いじゃないか。リーダーのやってることをそっくり真似ただけだけど」

「流石、ロン君!!」

子供(以下略)。