作品タイトル不明
義光は起こりうる未来を話す
「父上、母上。何かありましたか?」
「勝之尉様、竹姫様。何か良からぬ事でもありましたか?」
勝之尉の嫡男の勝千代と、勝之尉の側室の奈和、そして奈和が産んだ勝之尉の長女の奈月が奈和の腕の中で寝ながら、大広間に連れて来られてきた
3人の到着に勝之尉は
「勝千代、奈和。お主達に紹介しよう!竹の父、つまり勝千代の母方の祖父の最上出羽守様じゃ。勝千代にとって祖父様じゃ
奈和にも紹介しておきたくてな!それに、少し特殊な事情ではあるが、義父上の側に居る睦子殿と栄太郎殿は、竹より歳下ではあるが、何と竹にとって叔母と叔父にあたる
更に、甲斐武田家当主で、此度正式に官位を賜った武田勝四郎殿と正室の江姫殿、
そして最上家嫡男の太郎義兄上の正室に決まった摩阿姫殿じゃ!義父上も摩阿姫殿も勝四郎殿夫婦も
簡単に会えぬからこそ、此処で顔を覚えて縁を繋いでもらいたくて来てもらったのじゃ!」
かなりアバウトながらも、それぞれに説明した。説明を受けて最初に動いたのは勝千代で
「祖父様でしたか!お初にお目にかかります!勝千代です!」
子供らしい元気溌剌な挨拶をした。挨拶を
受けて義光は
「おお、おお。何とも可愛いのう。倅達の幼い頃を思い出すのう。勝千代、祖父様の元に来なさい」
すぐにデレデレした。義光に呼ばれた勝千代は走って義光の前に行くと
「祖父様は父上と違って、お身体が細いのは何故ですか?」
と、突拍子も無い質問をしたが、義光は
「はっはっは!勝千代よ、お主の父上は、この日の本において数少ない身の丈が高いだけでなく、体躯も逞しいお方じゃぞ!
幼い頃からしっかり食べて、身体を鍛え、長い時間眠ったから、この様な立派な身体になったのじゃ!
勝千代も、いつか父上の様に身の丈高く、立派な体躯になるのじゃぞ!?」
勝之尉が幼い頃から頑張ったから、体格に差が出たと伝えた。それを聞いた勝千代は
「はい。絶対に父上の様に逞しい武士になります!」
少しは理解出来たのか、勝之尉の様になると答えた。それを聞いた義光は
「うむ。しっかりと父上から学ぶと良い」
そう言いながら、勝千代の頭を撫でて
「それでは勝千代、次は奈和殿と話したいから、父上と母上の元に行ってくれるか」
「はい」
一旦、勝之尉と竹姫の元に戻した。それから奈和に向きを変えて
「それでは奈和殿。改めてじゃか、竹の父の最上従五位下出羽守と申す。見たところ竹は奈和殿と協力して婿殿を支えてくれておる様じゃな
子を産んだと言えど、まだまだじゃじゃ馬な所があるので、時にはその旨を指摘してくだされ」
竹姫のじゃじゃ馬な部分を心配する旨を伝えていた。軽くイジられた竹姫は
「ちょっと父上!」
義光に怒ったが、義光は
「これ!儂に言われて、その様に反応しては、婿殿が腹芸をしても無意味になるぞ!笑って流せる様にせんか!」
竹姫を嗜めた。嗜められた竹姫は
「父上、勝之尉様が腹芸をしなければいけない状況など来るわけ無いでしょう」
「そんな場面は来ないよ」と、お気楽な言葉で返した。しかし義光は真剣な顔になると
「婿殿、済まぬがこれから元服済みの面々で話をしたい。睦子と栄太郎と勝千代と奈和殿達を別の部屋に行かせてくれぬか?」
幼子達と奈和を外してくれと頼む。それを受けて勝之尉は
「しょ、承知しました。奈和、済まぬが子供達と共に別の部屋に移動してくれ」
「は、はい。それでは勝千代様、睦子様、栄太郎様、私と一緒に移動しましょう」
奈和に幼子達を任せた。奈和達の足音が聞こえなくなると勝之尉は
「義父上、これで話しても大丈夫だと思われます。話していただけますか?」
義光に話を促す。義光は
「うむ。それでは播磨国で右府様と徳川様と越前守殿殿と共に話していた内容を簡単に話すが
実は右府様の御子息で伊勢国と伊賀国を治めておる神戸伊勢守殿が話しておったが、伊賀国へ、隣の大和国から領民が逃げて来ておるそうじゃ
右府様はそれを調べ、もしかしたら戦になる可能性を示唆しておった。その件に関して、柴田殿を絶対に参加させる事を宣言しておった
それだけでなく、徳川様の嫡孫の竹千代様や、三男の長丸様、更には柴田殿の弟の京六郎殿に初陣を経験させる事を示唆しておった
これは良い事なので、とやかく言わぬが、竹!お主が先程やった感情を隠さない事は
万が一にも婿殿が治める信濃国と境を接する国や国内の地侍達と小さな争いが起きた際
話し合いで済む筈の火種が、戦の狼煙になりかねぬ!やらずとも良い戦が起きるのかもしれぬのじゃぞ?それを分かっておるのか?」
「お前の態度次第では、やらなくても良い戦が起きるかもしれないよ?」
と、厳しい言葉で竹姫を嗜める。言われた竹姫は何も言えなかった。しかし勝之尉が
「義父上、お怒りは竹だけでなく拙者も受けます!勿論、その様な事が起きない様、内政にも領民達、地侍達の扱いには細心の注意を持ちます!
なので、此処はお気持ちを鎮めていただきたく!この通り!」
竹姫の不手際に対して、義光に頭を下げて謝罪していた。勝之尉の態度に義光は
「婿殿の態度に免じて、うるさく言うのはこれまでとしよう。婿殿は勿論、家老や家臣の方々、申し訳ない」
勝之尉や家臣達に頭を下げた。こうして、若い夫婦は万が一の可能性を指摘された事でこれからの統治に更に注意する様になっていく。