作品タイトル不明
小田原評定にならない為に親子と長老が話し合った結果
その日の夜、氏政と氏直は幻庵も交えて領地の割譲について話し合う事になった。その中で最初の議題は
「上野国をどう割譲するか?」だった
最初に提案したのは、氏直で、その提案内容は
「父上、幻庵殿。上野国は一国で五十万石程になります。そのうちの半分を武田家に割譲したのですから、
残り二十五万石は、十五万石を武田家、十万石を上杉家に割譲する事で良いのでは?」との内容だった
これは上野国北部を武田家と上杉家に割譲して、北条家は全てを手放す事になる。氏直の提案を聞いた氏政は
「右府殿と右少将殿との話し合いがまとまらない最悪の場合は、それを落とし所にすべきと、儂も思う。じゃが、それは最期の手札として残しておきたい!」
そう前置きして、自らの提案を話す
「儂としては、上野国北部二十五万石のうち、武田家と上杉家に十万石ずつ割譲して、残り五万石は北条家の物として残しておきたい!上野国を丸々失っては、
北条家の税収もかなり減ってしまう!出来れば、この線で進めたい!幻庵翁の考えはどうじゃ?」
提案を話した氏政は、幻庵に意見を求めると、幻庵は
「拙者としては、最初に大殿の案を出して、右府様と右少将様が了承しなければ、殿の案を出した方が良いと思いますな」
最初に氏政の「武田家と上杉家に十万石ずつ」の案を出して、
信長と家康が了承しなければ氏直の「武田家に十五万石、上杉家に十万石」の案を出した方が良いとまとめる
幻庵の言葉に氏直は
「分かりました。それでは、最初の目録に父上の案を書いておきます。ふたつ目の目録に拙者の案を書いておきましょう」
そう言って、ふたつの目録にそれぞれの案を書く。書き終えた次の議題として
「上総国と下総国をどれだけ割譲するか?」になった
この議題も氏直から提案を始める。氏直は
「上総国の南側半国を里見家に割譲するとして、東西に広がっている下総国は佐竹家に割譲する。これが良いと拙者は思いますが、父上はどの様に考えておりますか?」
内容を伝えると、氏政に話を振る。氏政は
「上総国はおよそ三十八万石。その半分の十九万石を里見家に渡しても痛くはないから、里見家への割譲はそのままで良い
だが、下総国と佐竹家となると、話は変わる。佐竹家は常陸国の大部分を領地としておる。石高はおよそ四十五万石はあると見て良い
そんな大大名の佐竹家に、およそ三十九万石の下総国の半分を割譲して、そこから更に下野国の一部を割譲しては、八十万石に達してしまう!
それでは、北条家の関東における立場が無くなってしまう!そこはなんとか阻止したい!」
「佐竹家に北条家並の領地を持ってもらいたくない!」と本音を漏らしていた。氏直と氏政の案を聞いた幻庵は
「大殿も殿も、里見家の事は決まった様ですな。ですが、佐竹家に割譲する領地の事で悩んでおられるのであれば、
佐竹家には下総国三十九万石のうち、十万石を割譲し、更に下野国三十七万石から佐竹家と小田家、それぞれに十万石ずつ割譲して、
小田家には本城の小田城と領地を佐竹家が返還する。これを織田家の名の下に実行させたのであれば、まとまると見て良いかと存じます
右府様と右少将様が了承しなければ、諦めて佐竹家には下総国を半国割譲しましょう」
下総国も下野国も割譲しても、多い残りを北条家の物とする事と、信長と家康が納得しない場合は下総国半国の割譲を提案する。これを聞いた氏政は
「やはり、それが右府殿と右少将殿が了承する可能性が高いか。仕方ない!新九郎、それぞれの目録に書いておけ!」
「ははっ!」
氏直にそれぞれを書かせる。氏直が書き終えると、氏政は
「最期に徳川家への領地割譲と、最上家と伊達家への金銭じゃな。伊豆国は七万石程じゃから、
駿河国に近い場所なら割譲しても問題ないと思うのじゃが、幻庵翁、何か懸念はあるか?」
伊豆国の割譲に関して、幻庵に質問する。幻庵は
「土肥金山の存在か露見しない様にすべきでしょうな。はっきり申し上げるならば、武蔵国六十七万石と相模国十九万石と土肥金山を割譲せずに済めば、他の国の北条家の領地は
五万石ずつでも構わないわけです。しかし、それでは領民達が苦しい思いをする事になるので、基本的には先程、殿が目録に書きました、北条家に少しだけ多く領地が残る割譲が良いでしょう!
改めてですが、殿!そして大殿!交渉相手は天下人に一番近い右府様と、督姫様の父の右少将様ですが、
へりくだってばかりの交渉は絶対になりませぬぞ?最初から最悪の場合の手札を切る事を考えずに、交渉してくだされ!」
伊豆国の割譲で土肥金山を奪われない事を注意しながら、信長と家康への交渉で気をつけるべき事を2人に注意した
勿論2人は
「「分かった」」
大事な事なので、了承する。こうして、北条家の当主親子と長老が話し合った内容を書いた目録を信長と家康に渡す時が来る
翌日
相模国 小田原城
「右府殿、右少将殿。我々が出来るかぎり話し合った領地の割譲を含めた内容の目録にございます。確認してくだされ」
氏政は信長と家康へ北条家有利な内容を書いた目録を渡す。目録に目を通した信長は
「相模守殿。領地の割譲については、これで了承するが、最上家と伊達家に対して、「それぞれに五年で五百貫の金銭」と、「織田家へ五年で二百五十貫の金銭」とあるが、可能なのか?」
領地の件は了承したが、最上家と伊達家に対しての金銭が気になった様だった。しかし氏政は
「それなりに節約しないといけませぬが、その両家に対して、割譲出来る領地が無いので、金銭でご了承いただきたく!」
信長にそう説明して、平伏する。その氏政を見た家康は
「相模守殿。徳川家も伊豆国半国で了承しよう」
この条件で納得した事を伝えると、氏政は
「忝うございます!」
平伏しながら、信長と家康に感謝を述べた。これで、北条家の領地割譲を含めた戦後処理が終わった事を確認した信長は
「話もまとまったのじゃ!明日には甲斐国へ出立して、虎次郎の元服の儀に向かうとしよう!」
虎次郎の元服が待ち遠しい様子で、大広間をあとにした。