軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

鉢形城側と松田達は微妙にすれ違う

天正二十一年(1593年)六月十日

武蔵国 某所

この日、松田の元に朗報が入って来た。それは

「殿。最上家の夜襲から一度落ち延びた者達も戻って参りました!これで、我々の軍勢は七千五百にまで戻りました!ですが、この軍勢でどの様に堅城で知られる、忍城を攻略するのですか?」

足軽達を含めた味方が本拠地へ戻って来た事だった。しかし、松田の家臣はそれだけの軍勢では、忍城を攻略出来ない事を示唆する。それに対して松田は

「安心せい!正攻法で攻めるのではない!そして、戻ってきた者達に伝えておけ!明日の朝一番に、ここを出立すると!」

含みのある言い方をして、明日の朝一番に出立する事を伝えろとだけ、命令する。その命令を家臣が周囲の者に伝えるだけで、この日は過ぎていった

翌日

「殿!全員、出立準備は終了しております!これから、どちらへ出陣するのでしょうか?」

松田の家臣全員が、出立準備を整えて大手門の前に居た。その家臣達に松田は

「今から、儂達は忍城へ向かう!もっとも、それは戦の為ではない!あくまで、忍城を貸してもらう為じゃ!なので、儂が命令するまでは忍城の者達を攻撃してはならぬぞ!良いな?」

「「「ははっ!」」」

忍城に向かうのは、戦の為ではない事を家臣達へ説明する。家臣達も良く分かっていない様子だったが、とりあえず返事だけはしておいた

「それでは出立じゃあ!」

「「「「おおお!」」」」

家臣達の返事を聞いた松田は、軍勢を出立させた。後々、この出立が踏んだり蹴ったりな事になる事を知らずに

そんな松田達の事を知らない鉢形城の面々はと言うと、

天正二十一年(1593年)六月十二日

上野国 三国峠

「三国峠に到着したぞ!!周囲を警戒しながら布陣せよ!」

「「「ははっ!」」」

この日、鉢形城を出立した面々が、「何故か」三国峠に到着していた。その理由は

「三十郎殿。誠に、三介殿は松田の軍勢が上野国南部を攻める為に、三国峠に来ると思っておる様じゃが?止められなかったのか?」

「徳川様。申し訳ありませぬ!本人や周りの者達が、「先陣を切るから」と言う事で、やらせております!今日一日、

一日待っても来なければ、松田とやらの軍勢を追い、三介を静かにさせますので、どうか!北条家の皆様も!お許しを!」

信雄が出しゃばって、「松田達は三国峠を通る!」と推測して、本陣を構えていたからだった。

信包が頭を下げてまで頼み込んでいたから、北条家の源三と新太郎も家康もやらせるだけやらせたが、実際のところは

「「「重要拠点だからと言えど、すぐに取り返しに来るわけがないだろ!」」」

3人とも、同じ事を思っていた。しかし、北条家の3人と家康は信包の顔を立てて、「一日だけ」という縛り付きで、三国峠に本陣を構える事を許可していた

もっとも、絶対無駄になる事を分かっていて、更に信長の息子に先陣を切らせる事など出来るわけない事も分かっていた

そんな中で、とりあえず一日だけ待っていたが

翌日

「「誠に、申し訳ありませぬ!」」

信雄の本陣では、信雄と信包が源三と新太郎と家康の3人に頭を下げていた。しかし、3人は信包に対して、

「三十郎殿。頭を下げるのは、貴殿ではなかろう」

「徳川様の仰るとおりですぞ、尾張守殿」

「そうですぞ。此度の責めを受けるのは、三介殿のみじゃ!」

「「「悪いのは信雄だけ!」」」と言って、フォローする。それを聞いた信包だったが

「しかし、拙者も三介と同じ様に」

変わらずに信雄の隣で頭を下げていた。そんな2人を見て、家康は

「のう、三十郎殿。三介殿は、何歳まで誰かしらの補佐を受けて行動しないといかぬのじゃ?確か、儂の嫡男よりも歳上だったはずではないのか?

こう言っては何じゃが、三介殿をいつまで甘やかすのじゃ?三郎殿が気にかけている事は知っておるが、

三介殿の弟である三七殿も源三郎殿も、己の考えが正しいかどうか分からぬ時は、人に頭を下げて頼んでおったぞ?それこそ、自身より立場が下の柴田六三郎殿にじゃ!

その柴田六三郎殿本人が、幼い頃から領民達に頭を下げて協力してもらいながら、猪や鹿を狩っておった!

更には、僅か八歳で当時の領地に攻めて来た武田に対して、逃げずに立ち向かい、勝利を手にした。その戦の前にも、領民達に頭を下げて参加を頼んでいたそうじゃ

此処まで言えば分かると思うが、家名で戦は出来ぬ!そして、出しゃばって武功を求めた結果、松田の軍勢は更に遠くに行ったじゃろうな!

改めて聞くが、三介殿。此度の失策。どの様に責を取るつもりじゃ?父である三郎殿に尻を拭いてもらうのか?」

三介にこれでもかと、圧をかけながら責任の取り方を問いかけていた。そんな家康の圧に信雄は

「誠に!誠に!申し訳ありませぬ!!」

先程よりも、頭を下げていた。それこそ額に土が付く程、頭を下げていた。その様子を見て家康は

「あまり口うるさく言うのも良くないのう。まあ、次からは良く考えて周囲の意見を聞いて行動してくれ」

それ以上の言葉を止めた。そして、

「源三殿!新太郎殿!これから攻めるとしたら、何処が候補になりますかな?松田が居るであろう場所に進みましょうぞ!」

松田の居るであろう場所を質問した。その質問に源三が

「徳川様。此処から松田の本拠地が近いので、そこに進みましょう!」

松田の本拠地に進む事を提案する。その提案を聞いた家康は

「分かりました。案内を頼みますぞ」

「「ははっ!」」

了承した。こうして、松田が居なくなってから、松田の本拠地に向かうという、微妙なすれ違いが起こってしまった。