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作品タイトル不明

最終判断に揺れる徳川家

天正十一年(1583年)三月二十日

遠江国 浜松城

「殿!織田様からの文でございます!」

「来たか!どの様な内容か早う見せよ!」

六三郎が信長と相談してから2週間後、落とし所をまとめた文が家康の元に届けられた。家康は理不尽な内容でなければ、全て受け入れる覚悟だった

「ふ〜」

深呼吸して自らを落ち着かせて、文を開き読みだす

「二郎三郎!!此度の事、お主が悪いわけではない事を儂も、当人である六三郎も分かっておる。そこは安心せよ。だが、お主の家臣がやった事について、

何のお咎めも無しでは示しがつかぬ!だが、六三郎曰く水野藤十郎の首は要らぬ、於古都姫の出家も止めてもらいたい!との事じゃ。そこで六三郎と儂とで

話し合って決めた落とし所を伝えておく。先ず、近いうちに行なう予定の武田征伐において徳川家が先陣を務める事、そして先陣の中に「必ず!」水野藤十郎を入れよ!

六三郎は「訳ありの於古都姫を嫁にするなら、先陣の中に居ても生き残る強運を見せろ!」との事じゃ!

次に、甲斐国を征圧してから行なう予定の土木作業に人員を多く出せ!六三郎の家臣で甲斐国出身の赤備えの者達曰く、甲斐国では泥かぶれと呼ばれる奇病があるそうじゃ

それを治す手立ては現状無さそうだからこそ、土地を改善して泥かぶれとやらにかからない様にするしかない!最悪の場合、甲斐国では米を諦めるしかないのかもしれぬ

だからこそ埋め立ても含めて、土地を改善する為に徳川家から人員を多く出せ!これが六三郎と儂が話し合い決めた徳川家の責任の落とし所じゃ!この条件を飲めるのならば、返答の文を送って来い!

最期に、六三郎からの返答が遅かった理由じゃが、六三郎は前月の頭から三日間も寝込んでおった。働き過ぎで疲労困憊が理由じゃ。だから返答が遅くなった

決して徳川家を下に見ているわけではない!そこは分かってもらいたい!」

「う〜む。お主はこの内容をどう見る?弥八郎?」

「拙者としては、大分譲歩してもらったと見て良いかと。それこそ藤十郎殿の首は要りませぬ。や、於古都様の出家を止めていただきたい。

など通常はありえませぬ。ですが、何も無しでは済まさぬ!という意思は藤十郎を「必ず」先陣の中に入れろ!と書いている部分に感じますな」

「そこに関しては、他の者達と共に先陣に編成したら良いだけじゃが、気になるのは次の条件じゃ。儂はこの条件にも納得出来るが、問題は家臣の中の跳ねっ返り共じゃ!」

「まあ、間違いなく反発するでしょうなあ」

「それよ!恐らく甲斐国の土地改善は織田家主導で行なわれるじゃろうが、跳ねっ返り共は「織田家の者の言う事なぞ聞かぬ!」と反抗的な態度になるじゃろう

その者達をどうするか?平八郎と小平太ならば、そ奴らを抑えられるだろうが限界もある。どうしたら良いか」

「殿。評定を開いて、この文の内容を話して反発する者達全員、先陣に編成したら良いのでは?武田の強さを身をもって実感したら、生き残った時に大人しくなると思いますが」

「それが現状、良いかもしれぬな。藤十郎は於古都の婿には良い若武者ではあるが、於古都に惚れられた為に少しばかり不憫じゃな」

「殿、そこは藤十郎殿に諦めてもらいましょう」

「そうじゃな。それでは、跳ねっ返り共を炙り出すか」

家康はそう言って評定を開く事を家臣達に伝えた。そして集まった家臣達に信長からの文の内容を伝えると

「その様な条件、拒否すべきです!」

「そうですぞ!織田家はこれを好機と捉えて、武田との戦で徳川家を疲弊させる、それこそ使い潰すつもりなのです!拒否すべきですぞ!殿!」

「藤兵衛殿!藤兵衛殿の嫡男が名指しで先陣を切れと言われておるのだぞ?藤兵衛殿はそれで良いのか?」

条件に反対している者達は、藤兵衛に意見の賛同を求めたが、藤兵衛は

「拙者は、十年以上前に六三郎殿と話した事がありますが、あの若者は基本的に穏やかな性格です。その若者が怒りの感情から藤十郎の首を要求されても仕方ないと思います

ですか、藤十郎の首を要求するのではなく、先陣に入り、生き延びて於古都様の婿に相応しい強運を見せろ!と譲歩してくれるのであれは、拙者は受け入れます!これで藤十郎が拒否したならば、廃嫡して寺に入れます」

藤兵衛が神妙な面持ちで条件を受け入れるべきと主著した為、反対派は静かになった。それを見て家康は

「決まりじゃな!徳川家は織田家が行なう武田征伐の先陣を務める!そして、その後の甲斐国の土地改善も人員を多く出す!以上で評定を終わりにする!」

「「「ははっ!」」」

反対派は不服な顔をしていたが、家康が条件を飲むと発表した為、従う事にした

評定が終わり、大広間に家康と本多正信だけが残り、

「殿。案の定、反対する者達がそれなりに居ましたな」

「うむ。しかもじゃ、反対する者達は甲斐国での土木作業の事が頭の中から抜けていた様じゃ。あの者達を先陣に入れたなら、

何とか生き延びで大人しくなるじゃろう。しかし、藤兵衛が藤十郎の事をあそこまで言うとはな」

「それだけ此度の件を重く見ているのでしょう。首を要求されない事に安堵していた様でしたし、これから先は、藤十郎殿の強運次第になりますな」

「六三郎の言葉を使うが、於古都の婿になるならば、先陣に編成されても生き延びる強運を見せろ!じゃな」

「間違いなく生き延びてそうですな」

「儂もそう思う!話はまとまったのじゃ!文を書いて三郎殿に早く読んでもらおうではないか!」

家臣達も一応、まとまった事で家康の顔は達成感に溢れていた