軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

年長者でも答えは出ず

天正十一年(1583年)二月六日

越前国 柴田家屋敷

「六三郎殿。体調は大丈夫な様じゃな?」

「水野様もご心配をおかけしました」

「儂の事は気にせずとも良い。それよりもお市様から聞いたが、あの羽柴殿の子作りを手伝って、見事に子が産まれたそうじゃな?」

「拙者はあくまで身体を鍛えて、食べる物に気をつける様に指導、と言うよりも父上がやっていた事を羽柴様に伝えただけです。それを踏まえて羽柴様や奥方様達が頑張った結果ですから」

皆さんおはようございます。朝から水野様と出張の思い出話をしている柴田六三郎です。水野様も子供はそれなりに人数が居るけど、男児は松千代くんだけだもんな

やっぱり興味があるんだろうな。男児が多い方が自分が死んだ後の事も、息子達がアホでないかぎり家は残せると期待も出来るだろうし

まあ、水野様が「自分にも教えてくれ」と言わないかぎりはスルーしておこう。改めて本題に入りますか

「水野様。実は拙者が寝ていた間にとんでもない事が起きたと母上から聞かされまして」

「どの様な事じゃ?」

「実は」

俺は出来るかぎり簡単に説明すると

「それは儂も経験した事のない話じゃな。しかも殿から「六三郎殿本人に委ねる」と決めてある事も中々」

「ええ。拙者としては仮だったのですし、破談になっても構わないのです。ですが、事を出来るかぎり丸く収めたいので」

「簡単には答えが出ない。と」

「はい。きっと徳川様の家臣達でも、意見が割れているでしょうから、拙者の言葉ひとつで織田家と徳川家の関係が壊れてしまうのはよろしくないので」

「難しいのう。六三郎殿は於古都姫が惚れておる藤十郎殿の首を欲しいわけではないのじゃな?」

「はい。戦ではない事で首を差し出されても」

「確かにのう。この件が殿と徳川様の子供同士の話ならば、姫を尼として寺に入れて、男は斬首したら済む話じゃが。六三郎殿はあくまで家臣の倅じゃからなあ」

「はい。拙者の言葉次第では、徳川家の家臣の中から「家臣の倅か偉そうに」となるでしょうから」

「確かにのう。すまぬ!儂の様な戦ばかりしてきた人間は何も分からぬ!誠にすまぬ!」

「いえ。母上に言っても「於古都姫の心を取り返して来い」と言うだけでしょうし、水野様や父上と歳の近い利兵衛に聞いても、おそらく良い言葉は出ないでしょうから、話を聞いてくれただけでも有り難いものです」

「そう言ってもらえると、儂も気が楽じゃ。しかし、あまりに遅く返答しては「徳川家を馬鹿にしているのか?」と思う徳川家家臣も出てくるぞ?」

「ええ。なので、悩みに悩んで早めに答えを出したいと思います」

「大した事は言えぬが。無理をせぬ様にな」

「はい。では失礼します」

こうして六三郎は信元の部屋を出た。自分の部屋に戻るまで

(成程、最悪な状況を考えると鬼日向さんは斬首で、於古都ちゃんは強制出家か。そんな重い話にしなくてもいいと思うんだけどなあ。正直、三郎様と徳姫様で織田家と徳川家は婚姻での同盟関係が成立しているわけだし

やっぱり殿と話し合いをして落とし所を見つけるしかないか!そうと決まれば、四日後に長浜城に戻って温泉の開発工事を再開してから話し合いをしよう。そうと決まれば〕

「母上!お話したい事が」

「於古都姫の事ですか?それならば、母はあなたを」

「それも含めた事です」

「とりあえず話しなさい」

「はい。此度の件を殿と話し合って落とし所を決めたいので四日後に長浜城へ戻りたく」

「六三郎。それならば兄上を、それこそ徳川様と当人達を越前国へ来させたら良いではないですか!」

「母上。拙者は家臣の倅ですぞ?その様な無礼な事が出来るわけありませぬ。それに当人達を連れて来られても、万が一に殺されてしまっては、拙者が仕組んだと思われてしまいますから」

「仕組んだと思われても良いではないですか!あなたは許婚を奪われたのですよ!?その代償を」

「母上!そこから先は言わないでいただきたい!戦以外で首を取られるのは、拙者とて嫌ですから!甘いと言われようとも、命以外で代償を払ってもらいますから」

「まあ、あなたがそう決めたならば母も一応、納得しましょう。それで、何故四日後に出立するのですか?もう少しゆっくりしても」

「母上。開発に携わる皆が我々を待っております!皆が働いているのに、我々だけが休んでは開発が遅れます。だから、早く戻るのです。

それに、越前国から殿に文をお出しして、受け取った殿が先に長浜城に居たのでは失礼にあたりますから、長浜城についてから、殿に文をお出ししたいのです」

「分かりました。六三郎の事だから大丈夫だと思いますが、虎夜叉丸の事は、まだ兄上に言ってはいけませんよ?」

「勿論です。だから母上も、虎夜叉丸殿に本当の事を言わないよう、お願いします」

「勿論です。とりあえず、あなたはその落とし所を見つけて、役目を終わらせて来なさい。それと、あまり働き過ぎたら此度の様に倒れてしまいますよ!休む時はちゃんと休みなさい!詰め込み過ぎては」

「分かりましたから!今日は早めに休みます」

「しっかり休むのですよ!」

何とかお袋に納得してもらったけど、程よい落とし所は何だろうな?