軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

狙っていた主君

天正十年(1582年)一月五日

近江国 長浜城

「六三郎殿!遂に!遂に!」

「兄上。まだ義姉上は産気づいておりませんから」

「羽柴様。産まれるのは、今月の中頃か、中頃を過ぎたくらいの可能性が高いと産婆の方々も言ってましたから」

皆さんおはようございます。年が明けてから毎日の様に、落ち着かない秀吉を秀長さんと宥めている柴田六三郎です

まあ、落ち着かない理由は寧々さんの出産が近いからだと分かりますから、そんな秀吉に対して「年甲斐もなく」とか、「恥ずかしくないのか」なんて言えません

奥さんの出産は何回あっても、男は落ち着けないのですから。ましてや初産なら、ねえ。

で、秀吉がそんな状態で使い物にならないから、必然的に秀長さんか代わりに働くのは分かるんだけど、

「六三郎殿!この様な場合は、どの様に対処したら良いですか?」

「六三郎殿!山から鹿と猪が畑を荒らしに来ているので、退治してくれと領民から」

「六三郎殿!」

「六三郎殿!」

と、何故か俺に仕事を持って来る家臣さんが日に日に多くなって来てるんです。いや、俺は羽柴家の者じゃないので内政に口出しするのは良くないと思うのですが?

そんな手伝いをしながら、秀吉と寧々さんや側室さん達の食事を作っていたある日、このタイミングは止めてくれ!と思った文が届いたんです

天正十年(1582年)一月六日

近江国 長浜城

「兄上。大殿からの文です」

「殿から?まさか、そろそろ出陣せよとの仰せか?せめて、寧々の出産までは側に居てやりたいのじゃが、とりあえず中を見よう。小一郎、文をくれ」

秀吉はそう言いながら、秀長さんから文を取って読みだす

「ええと。「藤吉郎!寧々の腹の子は順調に育っておるか?寧々は勿論じゃが、お主も不安であろう?そこでじゃ!子育ての先達として、見舞いも兼ねながら

三日後くらいに長浜城へ行く。寧々達は出迎えや饗応に参加させないで、安静にさせておく様に」との事じゃが、出陣に関しては言及しておらぬから、一応安心して良いか」

秀吉は安心していたけど、俺からしたら源太郎の時と同じタイミングなので、殿が狙っているとしか思えません。

恐らく、いや、間違いなく寧々さんが産気づいたら秀吉や秀長さんと一緒に神棚のある部屋で安産祈願をやるんだろうな

天正十年(1582年)一月十日

近江国 長浜城

「殿!お寒い中、来ていただき、この羽柴筑前!誠に嬉しゅうございます!」

「筑前!寧々達が静かに過ごせる様、気をつけながら暮らしておるのが分かる程、城の中を質素にしておるな!良い心がけじゃ!」

皆さんおはようございます。殿一行が長浜城に到着しましたので、出迎えに参加しております柴田六三郎です

殿一行が来るのは分かっていたんです。でも、その一行の中に俺目当ての人が2人も居るなんて、誰が想像出来ますか?で、その2人が

「柴田の鬼若子殿、噂はかねがね聞いておりました。拙者、蒲生忠三郎賦秀と申します。殿が時折、鬼若子殿の事の行動を「予想出来ない常識外れ」と仰っておりましたので、どの様な人なのか楽しみにしておりました

いやいや、恐ろしさ溢れる二つ名のせいで、昔話で聞いた鬼の様な顔や体躯をしているかと思いきや、

至って普通の見た目の若武者ではありませぬか!人の噂とはなんとも当てにならないものですな!」

「いや、蒲生殿。柴田殿は見た目で鬼若子と呼ばれているわけではないと、殿が仰っていたではありませぬか。

柴田殿、挨拶が遅くなりましたが、拙者、細川与一郎忠興と申します。舅の明智日向守が、お父上の柴田越前守様と共に、役目に就いているので、お話は時々聞いております」

「蒲生殿と細川殿ですな。柴田六三郎長勝と申します。鬼若子という二つ名ですが、

父の二つ名の「鬼柴田」から、誰かが勝手につけたのですよ。なので、拙者からは一度も名乗っておりませぬ」

「謙虚な方ですな。拙者ならば、その二つ名を使い、敵の戦意を喪失させて、戦をしない様に仕向ける事も考えますぞ」

「確かに!それに、殿からも舅からも聞きましたぞ?元服前に初陣を経験したと。しかも相手は武田で、撤退に追い込んだとか」

「この人が生きていたら豊臣家も生き残れたかもしれない」と歴史好きから言われている蒲生氏郷と、「戦国一のメンヘラ武将」と呼ばれている細川忠興なんですが、

何やら、イメージとは真逆のミーハーなんです。俺の事を色々聞いて来ます。蒲生氏郷は、三郎様と同じ殿の娘婿なので、それなりに大きな領地を任されている

大変忙しい人かと思いきや、殿の付き添いとして長浜城まで来てるし、細川忠興は明智様に連れられて親父の北陸方面軍に参加していると思っていましたよ

ですが2人共、俺の事以上に気になる事がある様で

「羽柴殿!その見事な身体は、どれ程の事をやったから出来たのですか?拙者もその様な身体を目指したい!」

「拙者も同じく!」

それは秀吉のムキムキになった身体でした。元々筋トレをやらなかった秀吉が、食べ物も気をつけたら、子を授かった事で、更に筋トレを頑張った結果、

全身が分厚くなりました。この前なんて、赤備えの皆にやらせている筋トレ4種をやった後に弓の練習をしていたのですが、

力が強くなり過ぎて、弦を切っていました。この世界線だと将来的に筋肉を極めた人になりそうです

俺が、そんな事を考えていたら、秀長さんが走って来て

「兄上!義姉上が、産気づきました!」

「誠か!?な、な、な、何か、で、出来る事は」

うん。パニックになるよね。仕方ない。俺が声をかけようとしたら、殿が

「藤吉郎!寧々が命をかけて、お主の子を産もうと頑張っておるのじゃ!お主が出来る事は、神棚に母子の無事を祈る事しか出来ぬのだから、神棚の部屋へ行くぞ!

儂も忠三郎も与一郎も小一郎も六三郎も安産祈願を行なう!お主ひとりではないのだから、不安になるな!」

「殿。ははっ!」

殿に言われた秀吉は、立ち直って、神棚の部屋へ俺達を連れて行った。