軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

あの人が来た理由と近隣の事情

天正八年(1580年)六月二十日

山城国 洛中

「若様!こちらに着いてから十日、雷花殿達と見廻りを行ないましたが、怪しい者は現状見つからなかったのですが、声をかけた者の殆どが、

店に入りたいが満員なので、入れる様になるのを遠目で見ておりました。他には」

皆さんおはようございます。神戸家の営業終了後に源太郎から店を見ている人の中に怪しい奴が居なかったとの報告を受けている柴田六三郎です

報告の中には何処ぞの密偵、それこそ北畠家の回し者が居る可能性も考えていたのですが、これは北畠家に神戸家の存在がバレてないという事か?

それならそれでありがたいけど、師走になるまでは油断大敵です。源太郎と喜三郎は店で働かないので、

見廻りに専念してもらいますが、雷花達は店で働きながらなので、大変だと思いますが、頑張ってくれと思いながら、当分はお金でお礼を示したいと思います

そんな感じで日常を過ごしながら翌月、店にあの人が来て、更に仕事量が増えるきっかけを持って来ました

天正八年(1580年)七月五日

山城国 洛中

「いらっしゃいませ!」

「御免!此方に柴田六三郎殿は居られるかな?」

と、聞いた事がある声で俺を指名する声が聞こえて来ましたので行ってみると、

「おお!誠に働いておられたのですな」

と、榊原康政が居まして、その後ろには

「儂も居るぞ」

と、家康自ら挨拶して来ました。いやいや、あなた達、遠江国に居る筈では?しかも、50人くらいの団体さんで来てるし、全員入るのは無理なんだけど、三七様、どうしますか?

と、思っていたら、家康本人が

「六三郎殿、こちらの店主の三七殿は居るかな?少し話をしたいのだが」

と言って来たので三七様が出て来ましたが、

「三七は手前ですが。と、徳川様?」

「およそ十年ぶりぐらいかのう。久しぶりじゃな三七殿」

何か顔見知りだった様で、俺が間に立たなくても会話がスムーズに進んでおります

「あの、徳川様。此度はどの様なご用で、店に?」

「うむ。儂と倅の三郎が新たな官位をもらってな、それで内裏に顔を出した帰りに茶でも飲んで帰ろうと思っていたら、

三郎殿が「儂の三男の三七が、六三郎と共に少し、いや、だいぶ変わった茶屋を営んでおるから、行ってみてはどうじゃ?大層、客が多いから入るのは難しいかもしれぬが」と言っていたのを思い出してな、

それで探し出したら、誠に客が多くて驚いたわ!それで、相談なのじゃが」

「ど、どの様な」

「店が終わった後、儂達に貸し切りで宴に使わせてくれぬか?勿論、銭は弾む!」

「六三郎殿!徳川様が、店が終わった後の貸切をご希望しておるが、食材は大丈夫か?」

「最低限の物しか無いので、御希望の料理が出せるかどうか」

俺がそう言うと、

「はっはっは!六三郎殿。以前作ってくれた物で構わぬ!それに、どうしても作って欲しい料理の材料は、儂達が準備してあるぞ!」

と言って家康は、持って来た籠を開けて、その中の桶を見せると、

「徳川様、宇治丸を食すのですか?」

三七様は驚いておりますが、家康は

「はっはっは!三七殿。六三郎殿は、既に儂や倅、更には孫達に宇治丸の新しい料理を出しておるぞ!

これまでのぶつ切りとは一線を画す美味さであったから、また食いたいと思い、買ってきたし、野生の宇治丸も捕獲して来たのじゃ」

ウナギを見せながら、以前食べたウナギの美味さをアピールしておりますが、これは労働時間が日付を超えるコースかなあ?

「かしこまりました。それでは、店を閉めた後に御案内します」

と、話がまとまりました。で、営業終了後、徳川家御一行が来まして、ウナギを渡されてから、残業開始です

岡崎城でやった様にウナギを背開きで捌いて、骨を炙ってお吸物を作りながら、茶を出しましょう

「徳川様。神戸家の人気の品のひとつの茶でございます。榊原殿を始めとする皆様もどうぞ」

と、夜中なので温めの玉露を出しまして、

「うむ。これは、熱すぎず冷たすぎずの程よい温かさの茶じゃな!夜中は少し冷えるから、これくらいの温かさはありがたい」

と、じっくりと堪能したので、次は食事用の少し熱い焙じ茶を出しまして、その間に、ウナギの白焼き、蒲焼き、う巻き、それからお吸物は通常の味と、赤味噌味の2つを出しまして

「これじゃこれじゃ!この香り!宇治丸を多めに買っておいて良かった!皆も食べよ!」

と家康が言ってから宴会スタートです。そこからは飲めや歌えやのどんちゃん騒ぎです。そして、立場上、三七様も宴会に強制的に近い感じで参加しております

「徳川様。先ずは一献」

「うむ。いただこう。やはり、六三郎殿の作る宇治丸料理と酒は合うのう。三七殿も、ほれ」

と言われて酒を注いでもらったので、飲んでから、

「徳川様。美味しい酒でございます」

「ふっふっふ。礼には及ばぬ。儂の徳川家、三郎の松平家も六三郎殿には世話になっておるからな

三七殿は聞いた事があると思うが、三郎と正室の徳、三七殿から見たら妹か。

二人が元服前の六三郎殿に無理難題を頼んで、それにかかった銭の支払いを儂と三郎殿に頼んで大目玉をくらった話を」

「ああ、あの件ですか。噂には聞いておりましたが、それで松平家の家臣の多くが嫁取り出来たと、ですが大目玉とは。どれ程のお叱りを二人に行なったのですか?」

「織田家からは嫡男の勘九郎殿が、柴田家屋敷にかかった銭の半分を持って行って二人を叱責し、徳川家からは儂の母、つまり三郎から見たら祖母が銭の半分と共に叱責に向かったのじゃ」

「それは、拙者でも分かる程の重要な人選ですな」

「それで二人も反省して質素倹約に励んだ結果、織田家と徳川家の両方へ借銭を返し終えたら、今度は岡崎城の銭が枯渇寸前になってな、三河国での武田との戦の前に

三郎殿が「六三郎が領内の麦を使った料理を京や堺で流行らせたら、織田家の銭か増えた」と言っておったから、三河国の財政改善の為に六三郎殿を貸してもらう様に頼んで、三河国に来て働いてから一年半で財政改善を達成したのだから、

誠に、六三郎殿には感謝しかない。三河国で働いてもらっていた時に、この宇治丸料理も作ってもらったのじゃ」

「拙者も六三郎殿に助けてもらっている身なので、徳川様のお話も納得です」

「それにな、三河国の財政が良くなったから朝廷に献金したら、新たな官位も貰えてな。儂が従四位下右近衛権少将を、三郎が従五位上三河守を手に出来た

恐らく、これから勘九郎殿と三郎殿も更なる上位の官位を手にするであろう。その時はもしかしたら、この店に来るかもしれぬぞ?」

「それが年内なら、拙者も六三郎殿も問題ないのですが」

「まさか、年内で店を閉めるのか?あれ程繁盛している店を閉めるとは、何とも惜しい」

「実は、父上から言われた「ある事」の為に、前年の霜月から一年限定での営業なのですよ」

「それはもしや、最近、三河国に伊勢国の多くの人間が出稼ぎに来ておる事と関係があるのか?」

「え?」

「どうやら、三七殿は知らなかった様じゃな。ならば伝えておくか」

おいおい。三河国に出稼ぎに行ってる伊勢国の人間が北伊勢の人間か南伊勢の人間かで、話が変わってくるぞ!どっちだ?