軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

母しか分からない事だらけ

妹達と京六郎の乳母のたみさんが、部屋を出て、親父とお袋と俺だけになった。そこでお袋から

「権六様。六三郎。此度、神戸家に行く事は、ただの財政改善の手伝いではありませんね?

恐らく、三郎兄上の子供達の勢力争いなのでは?それこそ嫡男の勘九郎殿に、近いうちに家督を譲る事を決めたから、

勘九郎殿の弟達の序列を決めてしまうつもりで、戦ではない戦いで勝敗をつけるのでしょう?違いますか?」

いや、お袋!あなたはエスパーですか?それとも名探偵ですか?完璧な推理で、親父が俺に言った事を全て当てているんだけど?

で、こんな時の親父は、やっぱり。本当、親父は、お袋に、というか立場が上の人に隠し事出来ないよな

顔に出てるから、バレバレだよ。仕方ない。親父が話しやすい空気を作るか

「母上。そのとおりでございます」

「六三郎。勝手に話を」

「父上。母上は、拙者が殿にお話した父上の再婚相手の条件のひとつの「男だったら一廉の武将になれたであろうお人」なのですよ。

その様な人ならば、話を聞いただけで相手の目的を読む事は造作も無いと思いませぬか?」

「む。それは、そうじゃが」

「だからこそ、母上の前では隠しても無意味ですよ。正直に話しましょう」

「仕方ない。市の申す通りじゃ。此度、六三郎が神戸家に行く理由は、南伊勢の北畠家の養子になった三介様との争いで、不利な条件の三七様の手助けじゃ」

「やっぱり。権六様。もしや、三郎兄上と勘九郎殿は、本心としては三七殿に勘九郎殿を支える一番手になって欲しいと思っているけれど、

三七殿の何かしらが理由で発言力も影響力も低いから、周りから文句を言わせない為にするには、

三介殿より内政で優秀である事を示す形、それこそ争いに勝利させる。その手助けに六三郎が行くのですね?」

「その通りじゃ。だが、話は簡単ではない。三介様の領地である南伊勢は大きな湊があるから、交易で優位に立てる。それこそ、熱田の湊にも近い。

熱田の湊は、東海道に面する国の物が堺に持っていく為に、一時的に集まる。そこに南伊勢の物を船で持っていける点で、三介様は有利な状況じゃ

一方で、三七様の北伊勢も湊は有れども小さいのじゃ。交易を行なうにも、荷の数は少しだけになるし、他の湊までは距離があるから、馬で運べば銭がかかる

そこまで不利な状況の三七様を勝たせたい理由は、三介様が短慮で気性が荒く、更には戦下手なのじゃ

勘九郎様が家督を継いだ時、お支えする親族の一番手が三介様では不安というのが、此度の争いの理由じゃ」

親父の説明を聞いたお袋は、しばらく考えこんで、

「つまりは、三七殿が正々堂々と争いに勝利しないと、織田家の天下どころか、将来も不安になるから、六三郎を手助けに行かせるのですね」

そう結論づけた。まあ、間違いではないからな。で、親父は

「そう言う事じゃ。恐らく殿は、六三郎が神戸家で役目を始めてから一年か二年を期限にするはずじゃろう」

「分かりました。六三郎の働き次第ならば、六三郎!しっかりと働いてきなさい!」

「はい!」

これで話は終わりだなと思っていたら、

「若様!おりますでしょうか!?」

源次郎の声が響く。余程の事でもあったのかもしれないから、部屋に呼ぼう

「源次郎!此処じゃ!」

「若様!大殿と奥方様も」

「気にするな!父上、母上!よろしいですか?」

「源次郎!気にせず話せ!」

「そうですよ!気にせず話しなさい」

「申し訳ありませぬ。では、若様。花が体調を崩しておりまして」

「どの様な状況なのじゃ?」

「それが、飯の香りだけで吐いてしまったり、一日中身体を動かせない程の倦怠感を訴えたりしているのです。何か重い病気でしょうか?だとしたら、医者を」

源次郎がそこまで言うと、お袋が

「落ち着きなさい源次郎!恐らく、花は病気ではありません!」

「奥方様。で、では花は?」

「恐らく、やや子を授かっております。今は、初期の悪阻が多い辛い時期です。花の身体を大事に扱う事を最優先にしなさい。

今は、花の側に居てやりなさいそれで良いですね?権六様、六三郎」

「そうじゃな。源次郎。源太郎達には儂から伝えておく。六三郎がまた、他国に行く事も含めて伝えておくから、花の側に居てやれ」

「は、ははっ」

「源次郎。泣くのは早いぞ?まだ二十歳にもなってない儂が言うのも変ではあるが、今の時点で、嬉し泣きしておったら子が産まれた時に、

嬉し泣きで身体中の水分が無くなってしまうぞ?儂は残念ながら、また他国に行くお役目があるが、

源次郎!お主の子が無事に産まれる事を祈っておる!だから、今は花の側に居てやれ」

「ははっ」

源次郎は安心したのか、去って行った。まあ、間違いなく花の側に行くだろうから、そっとしておこう

「では、父上。拙者は直接三七様の元に行くのですか?それとも、一度岐阜城の殿の元に行くのですか?」

「儂と一緒に、一度岐阜城へ行くぞ。明日に出立する」

源次郎と花にも子供が出来るし、めでたいけど、今から俺は出張準備です。未来を変える為の投資なんだから、頑張らないとな。