軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

冬の鰻取りって辛いですよね

天正六年(1578年)一月六日

遠江国 某所

「皆!岡崎城の竹千代様が、美味すぎて麦飯を五杯も食べた、柴田六三郎殿の宇治丸料理を儂らも食べるには、

多くの宇治丸が必要じゃ!寒くて辛いと思うが、ここはひとつ気張ろうではないか!」

「「「おおお!」」」

皆さんおはようございます。現在、遠江国にあります今切、未来で言うところの浜名湖に来ております。柴田六三郎です

昨日、家康に「孫の竹千代が食べた鰻料理を食わせてくれ」と言われて、「鰻が居たら料理します」と返事をしたら、

冬の浜名湖にて、徳川家家臣のうち20名程が、鰻漁をする事になりました。その漁の仕方で驚いたのが、

通常の投網漁の他に、前世のテレビで見た事あるやり方の竹筒を置いて、鰻か入る様に促す事だったのですが

それがまさかの人が水中に入って追い立てる力技でした。これを冬の時期にやるのは辛いだろ。

だからなんだろうけど今回、榊原康政が現場監督的な立場で俺の隣に居ます。で、俺は家康から

「済まないが、家臣達の身体が温まる料理を今切で出してくれないか?」と言われて、簡単ではありますが、

たっぷりの擦りおろした生姜と、牛蒡を始めとした根菜類の入った味噌汁を作っております。

皆さん覚悟が決まった様で、

「榊原様!いつでも行けますぞ!」

「うむ!では、始めよ!」

榊原殿の合図で、家臣の皆さんが静かに浜名湖に入る。日本海側に比べたらマシとはいえ、寒いよなあ。

俺がそう思っていると、投網漁の漁師さんが舟を着岸させた。漁の成果を榊原殿に見せると、

「おお!丸々と肥えた宇治丸が七匹も!しかも全て二尺はあるのでは?」

とても喜んでおりましたが、二尺って事はざっくりセンチに直すと60センチくらいか。それを最低7匹。

しかも、脂がかなりのっている。これは、料理人の皆さんもフル稼働してもらわないとキツイぞ。

白焼きと蒲焼きは出す事が決定として、あと2つ出せば満足してもらえるかも。うん、それは作りながら決めよう

俺が料理の事を考えているうちに、家臣の皆さんも水から上がる。ガタガタ震えてるから、源次郎達だけでなく、俺も身体を拭くのを手伝おう。皆さん焚き火にあたりながら、味噌汁を飲むと

「温かくて美味い!生き返る様じゃ!」

「いつも以上に身体が温まる!」

「具は簡素な物しか入ってないのに不思議じゃ」

身体の芯から温まって落ち着いたのか、震えも止まりました

そんな中でも現場監督の榊原殿は

「寒い中、よく働いてくれた!して、罠に入った宇治丸はどれだけ居る?」

と確認の催促です。20個設置した罠を1つずつ確認した結果、

「儂達の捕獲した宇治丸は、八匹か。全ての罠に入らないと思っていたが、半分以下とは」

「榊原殿。十五匹も居ましたら、皆様21名分と、徳川様、於大様、古茶様、於義伊様、於古都様の分はなんとか作れるかと」

「六三郎殿!誠か?」

「はい。拙者は岡崎城で竹千代様が食べているのを見ておりましたが、竹千代様はまだ小さいので、

麦飯五杯食べたと言っても、宇治丸を一匹分食べた訳ではないので、於義伊様、於古都様はそれ程多くはお食べにならないかと」

「確かに、いくら美味い宇治丸でも一匹丸々食べる事は流石に」

「それに、岡崎城で料理した宇治丸よりも、この宇治丸は脂がのっておりますので、於大様と古茶様は多くは召し上がれないかもしれませぬ」

「それならば、殿と我々が多めに食べるかもしれぬと」

「ええ。出来るかぎり、食べやすい料理を作らせていただきます」

「よろしく頼みます」

と、いう事で浜松城に戻って料理開始です。捌き方は前回と同じ背開きで、骨を取って火で炙って、骨から出汁を取りまして、料理道具の関係上、3匹ずつしか料理出来ないので、蒸篭で蒸して脂を減らして

そこから白焼きと蒲焼きを焼いて、蒲焼きの一部は、卵焼きに入れる、「う巻き」にしまして、4品目はシンプルに骨から取った出汁のお吸物で完成です

完成した4品を大広間に持っていきまして、先ずは家康から

「この香り!漂っていたものじゃ。これだけで腹の虫が騒ぐのう。して、六三郎殿。竹千代が食べたのは、どれじゃ?」

「白いものと汁のかかっているものです。特に竹千代様は、汁のかかっているものがお気に召した様でした」

「ほお。六三郎殿。食べる順序などはあるのか?」

「特には決めておりませぬが、味の薄い白いものから食べ始めて、最期に汁物で口の中がくどくなくなるので、それがよいかと」

家康は六三郎の説明を受けて、白焼きから食べると、

「おお。あっさりとした美味さに、あの宇治丸とは思えぬ歯応えじゃ。しかし、程よい柔らかさも残しておる。これは塩を少々つけて食べると。うむ!やはり美味い!どれ、次は汁のかかっているものを」

蒲焼きに手を出すと

「白い物とは逆に濃厚な美味さじゃ。これを麦飯と食うと、うむ!美味い!竹千代が沢山食べるのも分かる。箸が止まらぬ美味さじゃ」

茶碗一杯分の麦飯を食べ終えたが、直ぐにおかわりして

「次は、この黄色い物か。六三郎殿、これはもしや鳥の卵と宇治丸か?」

「はい。宇治丸を卵で巻きましたので、仮の名前で、「う巻き」と呼んでおります」

「これも、箸が止まらぬ。鳥の卵が宇治丸の味と合わさっておる。うん!美味い!」

う巻きも気に入った様で、最期のお吸物も

「優しい味と香りじゃ。六三郎殿。この汁物はどの様に作ったのじゃ?」

「こちらの汁物は、宇治丸の骨を炙り、煮出した汁に塩と擦りおろした生姜をいれた物です」

「なんと!聞くだけならば、一番簡単に作れそうではないか!」

「はい。作り慣れたら、1番簡単かと」

「うむ。皆も食べよ!これは誠に美味い!」

家康の合図で皆が食べ始めると

「う、美味い!」

「冬の今切に入った価値がある美味さじゃ!」

「汁のかかっている物は、酒も飲みたくなる!」

「ほっほっほ。二郎三郎、六三郎殿がう巻きと名付けた料理は、私にも食べやすいですし、骨から取った汁物も、優しい味ですねえ」

「「父上!とても美味しいです!」」

皆さん、満足しておりますね。あっという間に15匹分の鰻を食べ終えました

「六三郎殿。これならば、竹千代が沢山食べるのも納得の美味さじゃ。じゃが料理人達は、六三郎殿の作り方を覚えておるかのう」

「皆様、しっかりと見ていたので大丈夫かと。それに、いざとなったら岡崎城の料理人の方を何人か指導役で呼んでもよいかと思いますが」

「そう言えば、岡崎城でも作っておったな。この宇治丸の料理、三河国と遠江国、そして武田から駿河国を取り返したら更に徳川家の銭を増やす事に使えそうじゃな」

「多くの銭を生むと思いますが、取りすぎ食べすぎには気をつけた方が宜しいかと」

「うむ。程よい量に気をつけなければな。六三郎殿。於義伊と於古都の食事の不安を解消してくれただけでなく、美味い物を食わせてもらった事、

誠に感謝いたす。もう、二人も大丈夫だと思うから、

来月になったら岡崎城へ戻り、三郎達を助けてやってくれ」

「ははっ」

こうして、来月には戻れる事が決定しました。