作品タイトル不明
第226話〜再会〜
「魔族のことについて知りたいんでしょ? それなら僕が教えてあげる!」
羽織っていた黒布を腰のポーチにしまいこみながらニコニコとラティスネイルが言った。
「いや待てそもそもお前誰だ? どうやってこの船に乗り込んだ?」
警戒しながらノアが拳を構えるのを慌てて止めながらラティスネイルに駆け寄る。
魔王の娘だというのに警戒心がなさすぎる。空を飛ぶ船に突然現れれば怪しまれるなんて考えずともわかるだろうに。
「待って、ラスティは私たちの知り合いなの。助けてもらったこともある。だから突然攻撃するのはやめてほしい」
アメリアの言葉にノア以外にも戦闘体勢に入っていたジールさんや勇者たちも力を抜いた。
勇者たちは会ったことがあるが、それほど会話もしていなかったためかノアにつられたらしい。
「確かに君は初めましてだね。僕はラティスネイル! アメリアとおニーサンの友達の魔族だよ!」
アメリアはともかく俺といつ友達になったんだか。
というか、ノアのことを外見通りの年齢と見ていないだろうか。いや、ラティスネイルも魔族なんだからノア以上に生きている可能性もあるのか。外見で年齢が測れないのがこれほど面倒だとは思わなかった。
魔族という言葉にノアはピクリと反応した。
「魔族だと? おい、どういうことだ」
ノアはクロウを見るが、クロウも詳しくは知らないため肩をすくめてそっぽを向いた。仲直りしたのかしてないのかどっちなんだこの二人は。
ついでノアが俺を見るので俺は渋々ラティスネイルとの出会い、獣人族領であった美男美女コンテストのことを話す。
その間ラティスネイルはアメリアと久々の再会をキャッキャと楽しんでいた。いいな。俺もあっちに混ざりたい。
「……なるほど、家出してきた魔王の娘ね。どこの家も子供には苦労するものだな。初めて魔王に少しばかり同情したぞ」
そっぽを向いたままのクロウを見ながらノアが言う。
「ともかく、あいつに敵対の意思はない。……そうだろ?」
「もっちろん! 僕はただの助っ人としてみてくれていいよ〜」
その言葉におや? と首を傾げた。まるで俺たちの仲間になるとでもいうような言い方だ。
『まさかラティスネイル様! 魔王様に反旗を翻すおつもりですか!?』
夜も同じことを思ったのか俺との念話で喚くが、俺が通訳しなければ夜の言葉は届かない。
「悪いが、誰か夜と警備を交代してくれないか」
万が一の警備だが誰か一人は甲板にいてほしい。
俺の言葉にクロウが黙って立ち上がった。ノアの視線に耐えかねてかもしれない。
クロウと交代した夜はすぐさまやってきた。
「夜、お前たちが話す前にはっきりさせないといけないことがある。……ラティスネイル、どうやってこの船に乗り込んだ? 他の魔物や魔族が可能な手段であれば何か対策をしなければまずい」
ラティスネイルに何かを言いかけた夜を静止して尋ねた。
出鼻をくじかれた夜は憮然とした表情で俺を見上げたが、この船がどんどん魔族領に近づいている以上、警戒するにこしたことはないはずだ。
「大丈夫だよ! 僕がここへ来れたのは君もおニーサンにも前にしたようにこれで空を飛んで、この色々と遮断する布を身につけていただけ! それでこれは二つとも僕が城の宝物庫から借りてきた二つとない魔法具だから同じことができる魔族はいないはずだよ!」
宝物庫からと言った時にペロリと舌を出していたずらっ子のような顔を見せるラティスネイルに苦笑しながらも俺は納得して頷いた。
にしても、どこぞの騎士団長といい、宝物庫から拝借しすぎではないだろうか。その拝借した刀を酷使して短刀二振りに改造した俺が言えたことじゃないが。
「わかった。さて、さっきの言葉通りなら俺たちの仲間になって魔王と対峙するつもりだと聞こえたんだが」
どうにも夜は冷静ではないようなので俺が主導させてもらった。
ラティスネイルはそれまでのニコニコとした表情を引っ込めて真面目な顔をする。
「そのつもりで来たんだ。……どうか、僕の父さんを止めてほしい。もう後戻りできないところまで来てしまったけれど、僕にはたった一人の父さんなんだ」
ラティスネイルは今までの陽気で気楽な間延びした言葉遣いではなく、どこか強張った顔ではっきりと俺を見上げて言った。
自分が何を言っているのか、何がしたいのか理解して覚悟した目だ。
それをみた夜は呆然とした表情でラティスネイルを見上げた。親戚の子供が見ないうちに成長していたことに気づいたおじさんの気持ちだろうか?
「……俺は問題ないと思うが、勇者たちやノアはどうだ?」
ここにいるのは俺たちだけではない。別行動をとれば解決な地上とは違い、この船の中で少なくとも二日は共同生活をする上で他の人の同意は必要だろう。
「俺たちは魔族と魔王についての情報が少ない。その中で実際に魔族に教えてもらえるのなら願ったりだ。もしかして俺たちがこの地へ召喚された詳細も知っていたりするのかな」
勇者がそう言ってラティスネイルを見る。
ラティスネイルはどこかきまり悪そうに視線を逸らしたが、すぐに頷いて勇者を見上げた。
「うん。……君たちからすると、とても、その、不快なことだとは思うんだけれど。君もだよリア」
確かリアの家族は俺たちがこの世界に来る要因になった勇者召喚の魔力リソースとして犠牲になったのだったか。
それも知っているという事は本当に魔王たちの計画の深いところまで知っていることになる。
「私は、……知りたいです。私の家族や村の人たちがどうして殺されたのか。許すか許さないかはそれから決めます。よろしいですか? ノア様」
「私は関係ないだろう。喉から手が出るほどほしい情報が向こうからやってきたのは歓迎すべきことだと思うが」
聞いてから決めるというリアの言葉に同意したのか、他も反対意見はないようだった。
反対する者がいなかったと言ってもそれはラティスネイルの話をまだ聞いていないからだろう。聞いた後でその内容によってはラティスネイルの同行に反対する意見も出るかもしれない。その場合、俺はどうするべきだろうか。
頭を悩ませる俺をよそに先程までノアが立っていた場所に立ったラティスネイルは深呼吸をした後話し始めた。