軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第216話 ~晶班4~

「そういえばノアに鍛えられていたと言っていたが、どのくらい動けるんだ?」

正直言って、俺の中でクラスメイトの非戦闘員の戦いは召喚されてから行ったカンティネン迷宮から動いていないし、迷宮でも細山の戦い方はほとんど見ていないため何ができるのか把握していない。

あの時は散々だったなと思い出してげっそりとしてしまった。

非戦闘員というと、身近ではアマリリスだろうか。アマリリスは魔力量や職業以外は特に特筆することもないくらいにはこの世界の一般人のステータスだ。だから“死の森”ではただひたすら逃げに徹していた。パーティを組んでいたメンバーがメンバーだったからアマリリスが逃げた方向に魔物を逃すことはなかったし、リアの『神の結界』で文字どおり鉄壁の守りだったため流れ弾や石などが飛んでいってもアマリリス本人には怪我一つなかった。ので、思いの外図太い性格をしていたアマリリスは、最終的に俺たちが戦闘をしている側で鼻歌を歌いながら薬草の採取をするようになってしまった。流石にあのメンバーだったからこそできたことだと分かっているとは思うが、一応船を降りる際に忠告しておいた方がいいだろうか。

リアも一応は非戦闘員なのだろうが、『神の反転結界』を取得してからはそれで反撃にも出るようになったので、正直どこに括ればいいのか分からない。

もしさっきのワイバーンが複数襲ってきても俺は全て倒しきる自信はあるが、リアや津田のような防御専門がいない状態で細山を傷一つなく完璧に守りきる自信はない。ジールさんにも“死の森”で言われたことだが、そもそも俺は個人の攻撃力に特化しすぎて他人と連携することや誰かを守るなんてことは不得手なのだ。

「うーん、私もノアさんに鍛えられてから魔物と戦ってないからどのくらい上達したかどうかは分からないかな。流石に織田くんたちみたいに前線で戦えるってことはないけど、足手纏いにはならない程度には動けると思うよ」

そう言ってグッと拳を握り気合を入れる様子に俺は思わず苦笑した。

先程のワイバーンとの戦いを見ていただろうに、それでも立ち向かおうと思えるのはある意味一種の才能かもしれない。勇者たちが敵わない魔物に向かっていく度胸といい、本当に俺たちと一緒に平和な世界から召喚されたのだろうか。元々生まれる世界を間違えたとか言われても納得できそうだ。

戦闘感覚については経験していくしかないとして、ステータス的にはどうだろうかと俺はまた『世界眼』を起動させた。先程はスキルを主にみていたから今度は数値の方を確認する。

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シオリ・ホソヤマ

種族:人間 職業:治癒師Lv.65

生命力:2340/2340 攻撃力:1560 防御力:1300 魔力:2210/2210

スキル:算術Lv.7 料理Lv.5 治癒魔法Lv.8 短剣技Lv.5 解毒Lv.4 悪食Lv.3 自己再生Lv.2

エクストラスキル:言語理解

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戦闘職業と比べるとかなり劣る数値だが、この世界の一般人であるアマリリスと比べると確かに高いし、攻撃手段である短剣技も最近鍛えたにしてはスキルレベルも高い方だろう。それと、『自己再生』で自分で自分の傷を治せるようになったのは強い。今のスキルレベルでは自分のかすり傷を治すくらいだろうが、おそらくLv.9にもなれば魔力が枯渇していない状態で即死ではない限り死ななくなるのではなかろうか。

「ま、これなら大丈夫か。さっきも言ったが、ここにはリアも津田もいない。命の保証はするが怪我をしない保証はできない。大丈夫か?」

そういうと、細山は笑って力強く頷いた。

「この世界に召喚された時から……ううん、迷宮に行った後からかな。その時から覚悟はできてるよ。いまさら怪我ごときでギャーギャー言わないから」

それより、と言葉を繋いで今度はいたずらっ子のような笑顔を浮かべる細山はぐいっとこちらに身を乗り出して下から俺の顔を覗き込んだ。

「織田くんって顔怖いし何考えてるのか分からないところがあったから不良なんじゃないかってみんな言ってたんだけど、優しい人だったんだね。それが分かっただけでも、この世界に召喚された甲斐があったのかも」

クラスメイトの事誤解したままなのは嫌だもんね。

それはこちらのセリフだと俺は細山から顔を逸らしてぼやいた。

「俺も、細山がこんな性格してるとは知らなかったな」

クラスの中心にいる細山は、典型的な女子そのもので苦手だった。こういう性格だと知っていれば関わり方も変わっていただろうに。

「じゃあお互い様だね。そうだ! もう一つ聞きたかったんだけど、クロウさんってどこか悪いの? 治せそうなら私が診るけど」

そういえば勇者たちにクロウの寿命のことは言ってなかったかもしれない。まあ、言いふらすようなことではないし、クロウ本人もあまり周りに悟られないようにしている。とはいえ、止められるものではない老化現象で体の動かし方がぎこちなくなるのを治癒師の細山が気付くのは順当と言えるだろう。

周囲の警戒はしたまま、俺は獣人族の寿命について、クロウのことについてざっと説明をした。もちろん、個人的な妹の話や敵についてはぼかしているが。

話を聞き終わった細山は難しい顔をして俯いた。

「……そっか、寿命は流石の私でもどうしようもないし、クロウさんもこれ以上生きることを望んでいないなら何もできないよね」

悲しいことだが時を止めることはできない。

「クロウの命がどこまで保つか分からないが、それを無駄にしたくない。生かすも殺すも俺たち次第だ」

俺の呟きに細山が僅かに頷いた気がした。