軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第211話 ~『一点集中』~ 津田友也目線

まだレイティス城で騎士団の人たちから訓練を受けていた頃、僕はジールさんに“騎士”という職業について教わった。“騎士”という職業を持った人は大まかに三種類に分けられる。一つ目は高い攻撃力を持つ攻撃特化型。二つ目は攻撃力も防御力もあまり突出していない安定型。三つ目は高い防御力を持つ防御特化型。どの騎士も剣と盾を持っていることには変わりないが、どの種類の騎士かによってパーティーの戦略が大きく変わる重要な立ち位置であると言っていた。ちなみにジールさんは攻撃特化型寄りの安定型、僕は防御特化型だ。

防御特化型には専用の取得できるスキルがある。もちろん他の二種類にもそれに合ったスキルが取得できるのだけど。それよりも、そのスキルが今の状況を打破するために最適なスキルということだ。

織田君が船首のほうから僕がいた位置まで下がったのを確認して、僕はそのスキルを取得してから初めて使用した。

「防御特化型専用スキル『一点集中』――発動」

剣を天に掲げ、普通の騎士が扱うのものよりも大きい僕の盾に振り下ろす。

金属と金属がぶつかり合う甲高い悲鳴のような音が響き、その瞬間ワイバーンの視線がすべてこちらに向いた。目には見えないはずの殺意の塊に、無意識に一歩後退る。いつも、朝比奈君たちはこんな状況下で戦っていたのか。

『一点集中』の効果は文字通り、敵のターゲットを自分に集中させることができる技だ。仲間に向けられていた視線も殺気も攻撃も全てが強制的に僕に向けられる。

「……っリア! 俺たちの分の結界をあいつに重ねがけしろ!!」

何かを察した織田君が全員にかけられた結界を僕にかけるようにリアさんに言う。瞬時に僕にかけられていた結界が数枚重なり、次の瞬間には轟音と共に元々僕に張られていた結界が破られた。生き残ったワイバーン五匹すべてが、僕に噛みついた衝撃でさらに後退する。追加で張られた結界に阻まれてはいるものの、僕なんて丸呑みできるほど大きな口と鋭い歯が目の前に広がった。巨大な死を前に食いしばった歯の隙間から悲鳴が漏れる。

「津田君!!!」

佐藤君が剣を抜くのと、朝比奈君が二振りの刀を抜いたのが大きなワイバーン越しに見えた。同時に、二枚目の結界に罅がはいる。

「二刀流――『疾風迅雷』」

「『影魔法』――起動」

「聖剣術――『光剣』!!!」

雷が落ちたような大きな音が近くで轟く。美しい軌跡を描いてワイバーンの首が刎ねられ、黒い影に喰いちぎられ、光の束に呑まれた。

一瞬の静寂の後、辛うじて耐えた二枚目の結界がガラスが割れたような音を立てて崩れ、同時に僕に噛みついていたワイバーンが一匹残らず消えた。

「何を考えてるんだ! 死ぬ気か!?」

すべてのワイバーンが死んだことを確認して、ホッと一息ついた後佐藤君に肩を掴まれて揺さぶられる。これは、森の中でのクジラの魔物との戦闘で『悪食』を発動させるために無茶をした細山さんに怒っていた時と同じ雰囲気だ。今回は怒られる対象が僕だけど。

「ご、ごめんなさい。朝比奈君と織田君とリアさんもありがとうございました」

確かに自分が悪かったと思っているので素直に頭を下げる。織田君の機転とリアさんの結界がなければ今頃僕はワイバーンの胃の中だっただろう。

自分でも初めて使うスキルだったとはいえ、その効果は知っていたのだから、どういうものなのか一言でも共有しておけば良かったかもしれない。

「……いや、お前のおかげで助かった。次からは事前に教えてくれるとありがたい」

表情こそあまり動かないものの、織田君はホッとしたような雰囲気で手を振る。朝比奈君も僕に怪我がないことをざっと確認して、織田君と同じような動作で安心したように頷いた。

織田君の言葉に佐藤君も僕の肩からパッと手を離す。

『主殿の言うとおりだぞ。報連相という言葉を知らんのか!!』

ドラゴンの姿からいつもの黒猫の姿に『変身』しながら夜さんが口うるさくぎゃおぎゃおと吠える。夜さんに食って掛かったあの日以来、気に入られたのかちょくちょく話すようになった。まあ、半分以上が織田君とアメリアさんのことでもう半分はちょっとした説教のような内容なんだけれど。

「言い訳をするつもりはないけど、あのときはこれしかないと思ったんだ。初めて使うスキルだからどういう威力かもわからなくて。佐藤君も、心配かけてごめんね」

他のみんなにも口々に怒られて、反省する。細山さんがやらかしたとき口から心臓が飛び出そうなほどハラハラしたけど、まさか次は自分に番になると思わなかった。

「そう口うるさく言うものでもないだろう。ここは戦場だぞ。皆万が一の覚悟はしているはずだが」

何を甘っちょろいことを、とノアさんが呆れたように言う。

その言葉に僕は唇を噛んだ。

その通りだ。今もかなりギリギリの戦いだった。これまでも何度も死ぬと思ったけど、ここから先は本気で死人が出るだろう。

「だが、死なないに越したことはないだろう。誰かが欠ければ士気にも関わる」

クロウさんが宥めるように呟き、ノアさんはそれで一応は納得したのか口を噤んだ。