軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第196話 ~秘密基地~ 津田友也目線

それから、僕たちは五か所の崩壊した通路を調べた。

そのうち一か所は完全に崩壊しており、人間が通る大きさの隙間すらなかったために、夜さんに小さくなってもらって確認してもらったが、完全に崩れていてたった一つの手記しか持って来れなかったらしい。

長い時間がたったことを思わせるような、黄ばんで擦り切れた手帳。

かろうじて見える色は赤だろうか。

クロウさんはそれに見覚えがないのか首を傾げていたが、今は読んでいる暇がないため他の魔石と一緒に、僕が背負っている荷物の中に入れた。

「さて、あと何か所だ?」

夜さんが前を歩いているクロウさんを見上げる。

どこか沈んだような雰囲気のクロウさんは怠そうに夜さんを見下ろした。

「あとは俺たちが拠点にしていた場所だな。そこで通路にあった魔石を使った道具などを作っていた。何か使えるものがあるかもしれない」

すたすたと歩きだすクロウさんに僕たちは慌ててついていく。

こうして実際に目で見てみると、先代の勇者たちは本当にすごいことが分かる。

魔族領へ向かっているありとあらゆる通路は、一体どれだけの時間をかけて作られたのだろうか。

魔王の元へと行くしか後がない僕たちとは違い、彼らには家族や居場所があるだろうに。

僕たちならば、いったいどうしただろうか。

きっと、彼らがここにいた頃はノアさんもいなければクロウさんのような先達もいなかっただろう。

僕たちも同じような立場になったとき、同じことができただろうか。

いや、きっとできなかっただろうな。

僕は苦笑して夜さんとクロウさんに続いた。

クロウさんが言っていたその場所へはすぐ到着した。

通路を開いていた場所なのだから近いのは当然か。

「ここだな」

木々に隠れて、絶妙に見えない場所。

建物でこそあるが見るからに廃墟で、どこかくたびれて見えた。

秘密の基地っぽくてうずうずする。

その場所を見て夜さんは鼻を鳴らした。

『ほぉ、よくこんな場所をみつけたものだ』

「そりゃあ、な」

あの頃は楽しかった、とクロウさんがこぼす。

様々な思いが込められたその声音に、僕はどんな反応をすべきだったのだろうか。

「わあ!!」

隠された建物の、さらに隠された出入口を入った瞬間、前を歩いていたリアさんが歓声を上げる。

建物の外からは分からない、清潔感のある内装は明るい色で統一されていた。

『これは……』

夜さんも目を見開いて高い場所にある照明や埃を被っている何か分らない道具などを見ている。

「むやみに触るなよ。体の一部が欠損するかもしれないぞ」

脅しのようなクロウさんの忠告を聞いて、触りかけていたものから慌てて手を引いた。

埃だらけで触りそうになっていたものが何かすらわからない。

だからこそ触れたくなるのだが。

「この部屋には危険なものはあまり置いていなかったが、時間を経て変化しているものがあるかもしれない。気をつけろ」

懐かしむように目を細めてクロウさんが言った。

先代の勇者パーティーは魔族領以外の各大陸から一人ずつと、勇者の四人だったらしい。

その中で生き残ったのはクロウさんと勇者の二名。

先代の勇者ももう生きていないから、現在も生きているのはクロウさんだけだ。

周りと違う時間を生きている彼は、きっと多くの友人と死に別れたのだろう。

それは一体どんな気持ちなんだろうか。

そんなことを考えていたからか、前からクロウさんが来ているのに気が付かなかった。

慌てて道を開けようと動いたところ、何かに足をとられて転びかける。

思わずその辺のものにすがろうと手近のものに触れた。

「あ」

それはさっきまで触ろうとしてクロウさんに注意されたものだった。

どうしてもそれが何なのか気になるので、あとで聞こうと近くにいたのが仇になったらしい。

思わず固まってしまった僕と、咄嗟のことに反応しきれなかったクロウさんの視線の先で、埃まみれでざらざらのそれにわずかばかり魔力を取られた感じがした。

「馬鹿!はやく手を放せ!!」

思わず呆ける僕の手をクロウさんが慌てて掴む。

瞬間、手元の何かから発された光が部屋を包んだ。

光を近くで見てしまった僕とクロウさんはあまりの眩しさに目を閉じる。

「……何だったんだ今のは」

強い光が薄れ、消えた瞬間にクロウさんがそう呟いた。

どうやらクロウさんも分からない現象だったらしい。

『おい!お前たちは誰だ!!』

チカチカと所々白く霞む視界の中で、夜さんが何かに向かって威嚇していた。

「……え……」

そこには、ここに入ったときにはいなかったはずの男女が立っている。

いや、立ってはいるけれど、その体は透けていた。

幽霊という言葉が脳裏をよぎる。

いまだに僕の腕を掴んでいるクロウさんの手が震えた気がした。

『元気そうだな、クロウ』

『久しぶりだね、お兄ちゃん!』