軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第186話 〜成長〜 佐藤司目線

ドンッガンッゴンッ!!

おおよそ人体からなるとは思えない音を響かせて、青空をバックに人の体が宙を舞った。

というか、どこかのアニメーションを見ているような気分だ。

とてもいい天気で、洗濯物もよく乾くだろうと、思考回路が現実逃避を始める。

「ほらほら次!!!」

拳一発で人間を飛ばしているのが、散々苦戦したあのロボットならまだ理解ができたのだ。

だが、俺たちを飛ばしているのは動きにくそうなゴスロリ服を着た、年齢不詳の少女である。

しかも、俺たちは刃すら潰していない普通の武器を持っているが、彼女は持っていない。

「そんなものか勇者は!!」

腹部に小さい拳がめり込み、足が地面から離れる。

今なら、彼女が魔王だと言われたら信じてしまうかもしれない。

遠く離れた所にあったはずの木に背中からぶつかり、本日五度目、俺の意識は闇に沈んだ。

「とりあえず自分の伸ばしたい所を探すことから始めるか。ステータスを開け」

自己紹介を終えたあと、ノアさんはおもむろにそう言った。

クロウさんのこととか、色々と気になることはあったが、口を開こうとするたびにすべて黙殺されてしまう。

質問は受け付けないらしい。

「ステータス・オープン」

久しぶりにそう唱え、自分にしか見えないボードを見た。

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・ツカサーサトウ

・種族/人間

・職業/勇者Lv.78

・生命力:2150/3200

・攻撃力:12800

・防御力:8000

・魔力:4685/5600

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スキル

・算術Lv.7

・魅了Lv.8

・体術Lv.7

・剣術Lv.7

・四属性魔法Lv.5

・威圧Lv.6

・咆哮Lv.5

・索敵Lv.4

・危機察知Lv.5

・剛力Lv.5

・同化Lv.1

・瞬脚Lv.1

・硬化Lv.1

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エクストラスキル

・言語理解

・聖剣術Lv.2

・限界突破

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ステータスを開いて俺は固まってしまった。

そういえば日々生きることに精一杯で、大和の国を出てから一度もステータスを確認していない。

最後に見た時よりも格段に各スキルのレベルが上がっているうえに新しいスキルをいつの間にか習得していた。

スキルの取得に気づかなかったためにレベルも上がっていないスキルもあるし、『索敵』や『危機察知』のように取得に気づいてはいなかったがいつの間にかレベルが上がっているスキルもある。

確かにある時から魔物の気配が分かるようになってはきたが、てっきり戦闘に慣れてきたからだとばかり思っていた。

……それに、使っているつもりがない『魅了』が一番スキルレベルが高いとはどういうことだ。

そっと周りを見ると、他のみんなも同じように驚いていたことから、知らないうちにレベルが上がっていたりしたのだろう。

「確認は済んだか?では、裏へ出ろ」

親指を立ててくいっと外を指すノアさんはやはり少しばかり言葉が足りない気がする。

仕草からしても体育館裏に呼び出されているようにしか見えない。

これをしているのがクロウさんだったら一発通報案件なのでは……。

とはいえ、説明が足りなさ過ぎて全員の頭上に疑問符が浮かんでいるように見える。

「な、何をするんですか?」

幸いなことに、彼女を唯一知っているジールさんが声をかけてくれる。

なんというか、俺たちが何を言ってもノアさんの逆鱗に触れそうなのだ。

気のせいかもしれないが、それでも触らぬ神に祟りなしというし。

クロウさんの何もしていなくても凄みのある雰囲気といい、親子そろって無駄に威圧的だ。

俺たちが一体何をしたというのか。

「何って、こいつらをサンドバッグにするのさ。見たところ今回の勇者は軟弱らしいからな。"ウサ子十一号"の攻撃にも耐えられんなどありえん」

さんどばっぐ。

俺が思い浮かべているものと同じとすれば、そろそろ命の危機かもしれない。

視界の隅でジールさんの口が引きつったように見えた。

というか、この世界にもサンドバッグがあるのだろうか。

たまにスキル『言語理解』の翻訳が不安になる。

とはいえ、さすがに小枝のような細い腕を持つ少女が俺たちの相手をすることは難しいだろうから、相手はおそらく俺たちが一度は相手をしたあのロボットだろう。

今度こそは完全に破壊してみたいものだ。

と、かなり本気で思っていた。

が、建物の裏の少し開けたような場所にロボットはおらず、ゴスロリ服のノアさんが武器を構えた俺たちに挑発するように人差し指をくいっと曲げた。

「え、ノアさんが相手をするんですか?」

思わず声を出してしまった俺にギンッと鋭い視線が向けられた。

しまった、何かのスイッチを入れてしまっただろうか。

「ああ、もちろん私が相手さ。何か問題でも?」

妖艶に微笑むその姿を見て誰が戦闘員だと思うだろうか。

というか、本当戦えるのか?

「危なくないか?」

「まあ、そうでなくても多対一で多いほうが武器もって少ないほうが素手ってかなり卑怯な気がする」

七瀬君と津田君の言葉にジールさんが何かを言おうとして口を開いた。

が、少し遅かったようだ。

次の瞬間には二人の身体は空へと飛び、遥か後方に立っていた木に衝突する。

「……え?」

二人が立っていた場所にはいつの間にかノアさんが拳を突き上げて立っていた。

呆然とその姿を見る俺たちと天を仰ぐ仕草をするジールさんがいた。

「私が非戦闘員だとでも思っていたか?覚えておくといい。魔族領では弱い者から死んでいく。見た目で判断をするな」

険しい顔でそういうノアさんにさすがの俺たちも真剣に各々の武器を構える。

そして、意識を失った。

それから数日が経ち、その日五度目の失神から目を覚ました俺は晶が到着したことに心底安堵した。

それは晶たちがこの危険な森を無事に抜けたことよりも、ノアさんの相手をする人手が増えたということの方が割合的には多いかもしれない。

一度もその攻撃を避けることが出来なかった俺たちの仇を討ってほしいという気持ちももちろんあった。