軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第130話 ~進路1~ アメリア・ローズクォーツ目線

「お帰り」

ホテル"レイヴン"の部屋へ帰ると、すっかり元気を取り戻したアキラが出迎えてくれた。

目の下のクマも消え、表面だけは健康体そのもので安心した。

「ただいま」

歩き疲れたようなクロウを先頭にぞろぞろと部屋に入ってくつろぐ。

アキラは何も聞いてこなかった。

「各自休息が取れたらすぐに荷物をまとめてくれ。全員準備が整い次第出発する。クロウ、ジールさん、アメリア、勇者、京介は今から隣の部屋に集まってくれ」

「了解」

アキラの言葉に全員が行動を始めた。

この中で一番リーダーシップをとってほしいクロウが何も言わないので、渋々アキラがとっている感じがする。

隣の部屋にアキラが言った全員が集まると、示し合わせたわけではないが、円になるように位置につく。

「じゃあ、これからの進路を決めよう」

ん?と首を傾げる勇者とキョウスケに、アキラは首の後ろに手を当ててそっぽを向く。

これは照れているときの動作だ。

アキラは勇者たちの同行を認めないと言っていたが、進路を決める会議に二人を呼んだ。

つまりはそういうことなのだろう。

勇者は喜び半分、戸惑い半分といった様子で口を開いた。

「おい、同行を許してくれるのはありがたいが、なぜ急に?」

「別に俺は力を示せばいいとは言っていない。守られる対象は要らないと言ったんだ。結果、お前たちは誰を守るのが最優先か考え、自分たちで戦うことを選んだ。それだけで十分だろ」

アキラの言葉を思い返し、頷く。

「ことが大きいのにもかかわらず俺に相談しなかったのはいただけないが、……まあいいだろ。なんか苦労したようだし」

二人は安堵したように息をついた。

アキラに隠していたことを気に病んでいたらしい。

「とにかく、これからどちらに向かうかだ。具体的に言うと、魔王がいると思われる魔族領か、グラムがいると思われるウルクか」

魔族領に勇者が反応し、グラムにクロウが反応した。

どちらも後々いかなければならない場所ではある。

「……君はどう考えているんですか?もちろんもろもろの事情抜きで」

もろもろの事情が何を指しているのかは分からないが、アキラは少し考えて答えた。

クロウがじっとアキラの目を見ている。

「……魔族領は、相当入り組んでいて安全な場所が少ない。その上つい先日、ヨルは魔王によって魔族に関する情報を消されているらしい」

私は思わずアキラの肩あたりを見た。

ここ数日は見ていないが、ヨルの定位置といえばアキラの肩の上だ。

姿が見えないことと関係があるのだろうか。

アキラが心配していないような雰囲気なので何も言わないが。

「よって、魔族領に入るには絶対的に専門家の知識が必要になる。……たとえそれが百年以上前のものだったとしてもな」

全員の視線がクロウに向かった。

一度魔王城の奥深くまで進撃をしたことがあるクロウなら、詳しいだろう。

伝承では、彼らは約五十年の時をかけて魔族領を調べ上げたそうなのだから。

「魔族領は俺の庭といっても過言じゃないぞ。……百年前から変わってないだろうしな」

「えっと、根拠はあるのでしょうか?」

クロウは口を挟んだ勇者を鋭い目つきで睨みつけながら、話す。

「根拠?そんなの簡単だ。警戒する必要など、奴らは感じていないからな。魔族領をうろついてる気色の悪い魔物たちは知らんが、魔族に警戒心は欠片も存在しない。奴らは魔族以外の種族が自分たちに勝てないのを知っているから、警備もしないし警戒もしない。なにかが変わることなんてない」

そういえばヨルは迷宮で、魔族の中には痛みを生涯感じたことがない人もいると言っていた。

魔族の驚異的の生命力と攻撃力、魔力の陰に隠れているが、防御力も全種族の中でも抜きんでている。

普通の生活でつくような傷どころか、戦闘でつく怪我もないらしい。

本当に、今思うと逃げきれたのが奇跡的に思える。

「つまり、クロウの同行は魔族領に行くことを考えると必要不可欠だ。クロウはある条件を達成すれば案内役を引き受けてくれるらしい。その条件の関係でウルクにはいかなければならない」

"ある条件"とは一体何なのか。

嫌な予感しかしない。

「ということで、俺はウルクに行ってから魔族領に行くべきだと考えていた。が、その条件は俺だけでも片付けることはできるし、二手に分かれてもいい」

アキラ一人でも片が付く条件……。

本当にどんな依頼なのだろう。

「もろもろの事情抜きで考えると、今すぐにでも魔族領に殴り込みにかかって家に帰りたい。……が、物事には順番というものがある限りはそうもいかない」

つまりはウルクによって魔族領に行くべきだという結論に達したらしい。

私はアキラについていくと決めたのだからどこに寄り道をしようとか構わないのだが、勇者たち二人はそうでもないらしく、難しい顔で黙り込んでいた。