軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第102話 〜『影魔法』VSマヒロ3〜

結論から言うと、俺は死ななかった。

アメリアも俺も無傷だ。

「……無事か」

こいつが助けに来たからだ。

俺の目の前で黒色の尻尾が揺れている。

『クロウ……。なぜここに?』

夜が聞くと、クロウはちらりとリアを見て鼻で笑う。

質問には答えなかった。

リアの方を見たのはほんの一瞬で、次の瞬間にはもうこちらを見てはいない。

「人族の次は獣人族か。しかもあのクロウかよ……」

「どのクロウか教えてもらおうか。私も魔族にどういう風に伝えられているのか知りたい」

好戦的に口端を上げるクロウと対照的にマヒロの顔には焦りにも似た笑みが浮かんでいる。

二人が火花を散らしている間に、俺たちは夜に促されて壁際に避難した。

いつの間にかアメリアにかけられていた体を操る魔法が消えている。

そして俺の体を使っていた『影魔法』も消えていた。

「夜、クロウとマヒロは知り合いか?」

満身創痍の状態の俺は、壁にもたれかかって息をつく。

俺の隣でサラン団長の姿をした夜が同じようにしていた。

アメリアは俺から離れた場所にいる。

操られていたとはいえ、意識のある状態で俺を殺しかけたことを気に病んでいるのだろう。

『影魔法』のおかげで貧血以外の症状はないけどな。

『先代の勇者メンバーであるクロウは、魔王様を倒せずに逃げ帰ってきても王や民からのお咎めはなかった。それは、クロウとそのときの勇者がたった二人で魔王城を攻略しかけたからだ』

俺は目を見開いた。

アメリアは知っていたらしく、特に驚いた様子はない。

確かに、逃げ帰ってきた者が人里離れた所とはいえ、立派な鍛冶場付きの家に住めているというのもおかしな話だ。

失意の末に自殺……なんてことに普通はなるのではないだろうか。

それでも、たった二人で魔王城を攻略しかけたのならお咎めなしにもなるかもしれない。

攻略したわけではなく、攻略しかけたというのは気になるが。

『俺はそのとき魔王様の近くにいたから、勇者パーティは勝手にやられて逃げて行ったくらいの認識しかしていなかったが、それから少しして部下から話を聞いて初めて魔王様の近くまで迫られていたのを知ったのだ』

それがクロウがアメリアと俺にかけられた魔法を消したこととなんの関係があるのだろうか。

俺の目線に気づいたのか、夜がまあ少し待てと視線を寄こしてきた。

『そのとき、クロウと勇者が撤退を決断する最後の一撃を与えたのはマヒロだったらしい。だがマヒロも万全のクロウと対戦したわけではない』

そういって夜は二人の方に視線をやった。

俺もつられてそちらを見る。

マヒロの顔は俺たちと戦っているときとは違い、余裕がなかった。

自分がクロウより下だと分かっていたつもりだったが、なんだか癪だ。

「久しぶりだな、マヒロ・アベ」

「獣人族の寿命は人族プラス百歳くらいだろ?なんでまだくたばってないんだよ、ジジイ」

確かに、“アドレアの悪夢”が百年前で、クロウが勇者パーティとして魔王城に行ったのはそれより前で、勇者パーティに選ばれるほどの実力をつけるために時間がいるはずだ。

ということは、そろそろ寿命が来るはずなのか?

獣人族は老若の区別がつかないな。

「舐めるなクソガキ。全盛期ほどではないが、私もそれほど衰えてないぞ」

クロウが歯を剥き出してうなる。

マヒロはちらりとこちらに視線を寄こした。

「そのようだな。一瞬で俺の魔法を解きやがって」

やはり俺とアメリアの魔法が解かれているのはクロウの仕業らしい。

クロウは再び鼻で笑う。

「『体傀儡』の方はほぼ解けかかっていた。集中力を切らしたのか?それとも、切らされるような攻撃を受けたのか?」

「分かってんだろうが、性悪ジジイ」

マヒロの口がだんだん悪くなっていっている。

いつも笑顔なのだから、敬語キャラに転換したらいいのにな。

クロウはマヒロの憎まれ口に動じることなく笑った。

「どうやら今回の勇者召喚は悪いものではなかったらしいな。少なくとも一人は根性あるやつがいたようだ」

俺の話だろうか。

初対面のときとはまるで違う評価だ。

話していた二人はしばらく睨み合い、そしてマヒロが身を引いた。

「今日のところは見逃してやるよ」

「それはこっちのセリフだ」

どうやら睨み合いはクロウに軍配が上がったようだ。

マヒロは舌打ちをして、魔物の上でいつの間にか気絶していたアウルムを抱えた。

クロウも戦闘態勢を解く。

俺は立ち上がってマヒロを睨みつけた。

マヒロは俺の視線に気づいて、アウルムを抱えたまま俺の前に立つ。

「今日のところは引いてやるが、次は同じ日本人でも容赦しねぇぞ、劣等種」

「お前はアメリアを傷つけた。俺が倍で返してやるから首を洗って待ってろ」

俺とマヒロの睨み合いは、夜が俺の手を引いたことで終了した。

『主殿、早く帰ろう』

振り返ると、クロウはリアを抱えてさっさと撤退している。

俺は俯いているアメリアの手を握った。

アメリアはハッとして俺の顔を見上げる。

「帰るぞ」