軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

謎は解けた

「我は目が覚めたらこの地にいた。木々や花、動物に溢れた美しい場所だと思って気に入った」

魔王……もとい、ムーが語ったのはこの地に来たときからだった。

自分がどこから来たのか、ここがどこなのかは分からないらしい。ただ、元居た場所は荒涼とした何もないところだったようだ。

「我とよく似た姿のものを見つけたが、今よりもっと獣に近い生活をしておっての。木ノ実を食べ、動物を狩り、集団で生活をしておった」

どれぐらい昔の話なのだろうかとマーギンは思った。

それから、うたた寝しては目が覚めると人々の生活はどんどん進化していたらしい。

「そうこうしているうちに、他の場所から違う見た目の人間がやってきた。そやつらはここに住む者より文明が発達しておったようでの、どんどんとこの地を開拓していきおった。それにつれて、この地に訪れる船が増え、人が増え、元々ここに住む者たちともめるようになった」

こうして南半分の先住民が駆逐されていったそうだ。

「我は、これ以上見ておられんようになっての、結界を張ったのじゃ」

「結界?」

「そうじゃ。他の地からこれ以上他のやつらが来ぬように、島をぐるりと結界で覆った」

「島って、この大陸のことか?」

「大陸と島の違いは分からんが、元々お前が居た地で言うと、九州と呼ばれていたかの? それと同じぐらいの大きさじゃ」

「九州か、なるほどな。世界地図から見たら島と呼んでもおかしくない……って、九州? おいっ、なぜお前が九州のことを知っているんだっ!」

「なぜって、この星を見て回ったからの。そのときにあちこちで種やらなんやら手に入れて持ち帰ってきたのだ」

マーギンは頭がこんがらがってきた。

「マーギン」

「なんだよミスティ。今、頭の中を整理してんだよ」

「この星は、お前が生まれた星と同じ星じゃ」

「えっ?」

「じゃから、お前にとって、ここは異世界ではなく、外国といった方が正しいのじゃ」

マーギンはミスティの説明でもっと理解ができなくなった。

「ちょっと待ってくれ。上手く理解ができん」

マーギンはうんうんと唸る。

「これは見せた方が早いの」

そう言ったムーは《アーカイブ》で、早送りしながら過去を見せた。

「あっ……」

理解できなかったというより、信じられなかったマーギンは、映像を見せられたことで、ここが地球であることを理解せざるを得なくなった。

「こ、こ、こんな外国があるなんて知らなかったぞ」

「そうじゃろうの。結界を張ったことで、この島が急に消えたとなっておる。しかし、月日が経つにつれ、この星の文明は急速に発展し、機械が空を飛び、空を飛び越えて宇宙からでもこの地を探れるようになった。そこで次元をズラしたのだ」

「次元をズラす?」

「そう。我の魔力の大半はそのことに使われておる。しかし、次元をズラすと時間の流れもズレるとは思わなんだがの」

「究極の転移魔法と思えばいい」

と、混乱しているマーギンにミスティが解説した。

「転移魔法……? あっ! お前、俺が転移魔法の出口から出られなくなったときに助けてくれた?」

夢だったかもしれないと思った出来事を思い出した。

「まったく危ないことをしおってからに。ムーがいなければ私でも見つけられんかったところじゃ」

ミスティは、ムーに時空と空間の仕組みを聞いたらしいが、感覚でやっているので理屈は説明できないと言われたようだ。

「それにな、ムーの話で理解できたことがある」

「何が理解できたんだ?」

「魔法じゃ」

「魔法?」

「お前は魔法のないところから来た、というかコピーした。しかし、魔法の知識があった。それに魔物のことも知っておったな。どちらも元居たところにはなかったものじゃろ?」

「知ってたというより、物語の中に出てくるからな」

「その物語は誰が作った? お前の居た国だけの物語か?」

「いや、魔法や魔物とかの物語は世界各国にあると思うぞ」

「交わることのない人々の中で、似たような物語が作られる。これは不思議なことだとは思わんか?」

「ムーが教えたとでも言いたいのか?」

「教えたのではない。実在したから同じような物語が作られたのじゃ」

「どういう意味?」

「ムーは魔素を生み出す者じゃ。この地を守る結界を張るまでは星全体にうっすらと魔素が行き渡っていた。じゃから、小さな魔法が使える者がいたり、魔物もいたのだと思われる」

「何だと?」

マーギンは衝撃の事実を知る。確かに魔法と言う言葉がなかった大昔の日本でも、陰陽術や妖怪といった伝承が数多く残っている。それが現実のことだったのか……

「これがどういうことか分かるか?」

「え、あぁ、うん」

と、あいまいな返事をする。

「もし、ムーを殺せば結界が消える。そうなれば、他の文明の発達した世界の人間がここに来るじゃろう。それに魔素に耐性のない人間は毒を吸うのと同じじゃ。ここにいる人間は魔素がないと生きておれん。つまり……」

「生き物が死に絶えるかもしれないってことか?」

「そうじゃ」

「我は別に殺されても良かったんじゃがの。もう生きておるのにも飽いておったところじゃ」

そう笑って口を挟んだムー。

そして、ムーを殺せないことが分かったマーギンは、普通の寿命のある人間になれないことが確定した

「なぁ、ミスティ……」

「何じゃ?」

「お前、長命種の人間なのか?」

「私は……魔人じゃ」

ミスティは少し間を置いて、自分を魔人と言った。

「魔人……? それも敵だっただろうが」

「魔人とはな……魔王、いやムーの血を飲んで生き延びた者のことじゃ」

「えっ?」

「私は幼きころにムーに助けられ、血を飲んだ」

目を伏せて説明したミスティ。

「幼きころって、今も幼いじゃん」

それに対して、胸の前で手をストンと落としたマーギン。

ベシベシっ。

怒ったミスティに叩かれるマーギン。

「話の腰を折るなっ。私もこのことはムーから教えられて分かったのじゃ。幼きころに……」

手を胸にやろうとしたマーギンをキッと睨む。

「幼きころに魔狼に両親を殺され、私も死にかけた。そのときにたまたま通り掛かったムーが血を飲ませたのじゃ。私はムーの血に耐えた。そして、不老になったというわけじゃ」

そうか……ミスティも寿命がないのか。

「ムーは他のヤツにも血を飲ませたことがあるのか?」

「あるぞ。面白そうなやつもすぐにいなくなるからの。しかし、我の血に適応できても殺されたり、数百年も経つと自ら死ぬやつばかりじゃから、やらんようになったの」

寿命がなくなっても自ら死ぬか……その気持ちは分からんでもない。

そして、マーギンはチラッとミスティを見た。

終わりのない人生に耐えきれずに自死を選ぶ者ばかり。しかし、こいつはそんな中、ずっと1人で生き抜いてきたんだな。と、マーギンは思った。

「あーっ、もう俺も寿命がなくなったの確定じゃんかよ。どうしてくれんだよ?」

「す、すまぬ……」

ミスティは目を閉じて謝る。

「お前、責任取れよ」

「せ、責任じゃと? わ、私は何をすれば……」

ミスティは責任をどう取っていいのか分からない。

「そう。責任取ってずっと俺のそばにいろ」

「えっ?」

ミスティは予想外のことをマーギンに言われて驚く。

「俺の寿命がなくなったんだ。その俺に付き合えるのはお前しかいないだろ?」

「お、お前をこんな目に合わせた私にそばにいろと言うのか……」

「そう。だから勝手にいなくなるな。ずっとそばにいろ」

マーギンはそう言って、ミスティに手を伸ばした。

ミスティはボロボロと涙を流す。

「わ、私が一緒にいていいのか……?」

「だからそう言ってんだろ」

「う、恨んではおらぬのか……?」

「恨んでないって初めに言っただろ」

「わ、私は子供の身体で……」

「そんなこと、どうでもいいんだよ」

ミスティはそう答えたマーギンの言葉に耐えきれずに大泣きをした。

「ったく……」

マーギンは泣きじゃくるミスティを抱きしめ、背中をトントンする。

「良かったのぅ、ミスティ。だから初めに言うたのじゃ。コソコソと覗き見をせずにとっとと会いにいけと」

「えっ?」

「む、ムーっ! いらぬことを言うでないっ!!」

「お前、覗いてたの……?」

ミスティの顔を見つめるマーギン。

「の、覗いてなんか……」

バツが悪くて目を逸らすミスティ。

「やっぱり助けてくれてたのお前だったんだな」

「……………す、すまぬ……」

ビシッ。

「あうっ」

マーギンはミスティにデコピンをした。

「覗くぐらいならとっとと会いにこいよ。さんざん探しただろうが」

「お前は私を恨んでいるだろうと……」

「それならそれで謝りに来いよ」

「す、すまぬ……」

何度も謝りながらも、嬉しそうな顔をしたミスティをムーはニヤニヤとした顔で見ているのであった。