軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

答え合わせ

パン粥を食べたあと、身体に血が巡ってきたような気がするマーギン。

「ミスティ。お前、生きてたならどうして会いに来なかったんだよ? 俺が復活したの知ってたんだろ」

マーギンはとても不思議な気持ちだった。壊れたミスティの石像を見つけたときの張り裂けそうな気持ち。生きているなら会いたいと探し回った日々。しかし、いざこうしてミスティが隣にいて、旨さ控え目の飯を食っているのが普通の日常だと思えてしまうこの感覚。

「お前は……」

ミスティはマーギンと目を合わせられない。

「何だよ? ちゃんと言えよ」

それに対して、昔と変わらないマーギンの態度。

「お前は私を恨んでおらぬのか……?」

ミスティは絞り出すような声で恐る恐る聞いた。

「恨む? 俺を石化したことか?」

と、マーギンが聞くと、ミスティは小さく頷いた。

「まー、確かに目が覚めてからしばらくは考えたよ。どうして俺は石化されなくちゃならなかったのかってな。それにお前に裏切られたと思ったのも事実だ」

「なら……どうしてそんなに昔と変わらない態度を取れるのじゃ。普通なら怒ったり怒鳴ったりするもんじゃろ」

と、ミスティは目に涙を溜めてマーギンの顔を見つめた。

「色々なやつと出会って普通に生活しているうちに、なんか理由があったんだろうなと思えるようになったんだ。それに、俺を石化したときのミスティの顔は今でも覚えている。お前のあんな辛そうな顔を見たのは初めてだったからな」

「そこまで詳細に覚えておるのか……」

「俺にとっちゃ、数年前の話だからな。まさかあれから数千年も経ってるとは驚いたわ。で、お前はあれからどうなってたんだよ?」

「私は……」

◆◆◆

「どうした……早く殺らぬか……」

ミスティは自ら石化したマーギンを抱きしめたまま魔王にそう言った。

「なぜ我がお前を殺さねばならぬ?」

「貴様は人類の敵じゃ。魔物を生み、人々を脅かす元凶。我らはその元凶を始末しにきたのじゃ。ならば貴様にとって敵じゃろ」

「なるほど。我はいつの間にか人類の敵と思われていたのじゃな」

ミスティは魔王の言葉をうまく理解できなかった。

「して、その男をずいぶんと大切に思っておるようじゃの」

そして、普通に話し掛けられ、普通に答えてしまう。

「こいつは……マーギンがこんなことになったのは私のせいなのじゃ……」

「ふむ、では石化を解けばいいではないか。そやつはなかなかに面白い男よの。人間でありながら我の核を潰せるやつがいたとは驚きじゃ。ほれ、石化を解いてみよ。我もこやつと少し話がしたい」

「今は無理じゃ。誰にも解けぬように渾身の石化魔法をかけた。今の私では解けん」

「ふむ、ではいつなら解けるのじゃ?」

「私の魔力量では解けぬやもしれん……」

ミスティは苦しそうな表情でそう答えて、石像となったマーギンの頬を撫でた。

「そうか。確か、人間は成長と共に魔力が増えるのじゃったな」

魔王はミスティをジッと見つめたあと、ニヤッと笑った。

「ではお前も魔力量が増えるまで寝ておれ」

こうして、ミスティは魔王に石化されたのであった。

◆◆◆

「私は目が覚めたら黄金でできた部屋にいた」

「ラーの遺跡か?」

「そうじゃ。自分でも何がどうなっているのかまったく分からなんだ。そこに人がやってきて大騒ぎになってしまっての」

やはり、ミスティが目覚めたのは俺より何百年も早かったということか。と、マーギンはミャウ族の伝承を思い返した。

「で、身代わりの石像を作って、その場を去ったということなんだな?」

「そうじゃ。私を見つけた人には絶対に人に言うなと言い聞かせて、とりあえず転移魔法で魔王城に行った。お前の石像を探しにな」

「それで?」

「ずいぶんとボロくなった魔王城で、コヤツはぐーすかと寝ておったわ」

ミスティは魔王を起こし、あれから何があったのかを聞いた。

◆◆◆

「起きろっ、起きぬかっ!」

「ん? お前は確か……」

ミスティにとってはついさっきの出来事。しかし、魔王にとっては数千年前の出来事。ミスティのことを思い出すのに少し時間が掛かった。

「おー、あれからそんなに時間が経っていたか。うとうとしていると時間が過ぎるのは早いの」

まさか、あれからずっと寝ていたのかと思うミスティ。

《アーカイブ!》

魔王が聞いたことのない魔法を使った。

ブォン。

目の前に映像が映し出された。

「な、なんじゃこの魔法は……」

「えーっと、どこらへんかの? おー、このへんじゃな」

目まぐるしく映像が変わったあと、自分とマーギンの石像が映った。

音声はないものの、過去に何があったか映像で分かる魔法とはどのような仕組みなのかまったく理解ができない。

「あっ……」

男たちが現れた。その中に見たことのある姿。歳を取っているが、あの姿はガインで間違いない。

「魔王よ、あの男はマーギンの石像をどこに持って行ったっ!」

「ん? どこじゃろうの」

魔王は画面を見て、ガインを追跡するように映し出した。そして、遺跡に安置されたところまでは分かったのであった。

◆◆◆

「で、そこから俺の石像を持ち去ったのか?」

「いや、お前を石化から解いたのはもっとあとの話じゃ。その頃の情勢は荒れておった。ここで石化を解いてしまうと、また戦いの中に身を投じるはめになる。だから情勢が落ち着くのを待っておったのじゃ」

だから、目が覚めたときは平和な世の中だったのかとマーギンは思った。

「しかし、少々誤算があっての。石化魔法を解除したはずが、なかなか解除されなかったのじゃ」

ミスティが石化魔法を解いてから、完全に解けたのは5年近く経ってからだった。

「クックック、あのときのミスティはずいぶんと面白かったの」

いきなり後ろからそう魔王に声をかけられた。

「ムーっ、余計なことを言うでない」

「ムー?」

マーギンは、ミスティがムーと呼んだことに驚く。

「いつしか我はそう呼ばれておったの。まぁ、呼び名なぞなんでもいいわ」

「ま、まさか……月の女神ムーって……」

「シャーラム、今のタイべに残る伝承の女神がこやつじゃ」

「う、嘘だろ……」

「まだ、この地に何もないときに他の土地の種や食べ物を与えたら、我を神と崇めだしての。まぁ、昔の話じゃ」

「ちょっ、ちょっと待ってくれ。詳しく説明してくれ」

「ん? 我のことに興味があるのか?」

「当たりまえだろ。俺はお前を倒すために生きてきたんだ。それをいきなり違うと言われたら混乱するに決まってるだろうが」

「ふむ、ではどこから話してやろうか?」

「初めからだ」

こうして、魔王と思っていた者が、伝承に残る月の女神ムーだと知り、これまでの長い長い話を聞くことになるのである。