軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

刀の使い方

「じゃ、一戦目ね。この石を高く投げるから下に落ちたのが開始の合図だよ」

「わかった」

マーギンは刀を鞘に入れたまま石を投げる動作をする。

「待てっ」

「何?」

「剣を出しておかなくていいのか?」

「うん、大丈夫。気にしないで構えてて」

マーギンはそう言って石を投げてから、少し低く構える。

ぽとっ

石が地面に落ちた瞬間にマーギンは居合抜きをしてオルターネンの首筋に刀を当てた。

「なっ…」

「今のが居合抜き、抜刀術と言われるやつだね。要人警護だと常に剣を抜いているわけじゃないだろ?いきなり襲われた時とかに使う剣術だよ。通常の戦いでは使わない。けど、初見なら剣を抜いてないと油断した相手はあっさりやられる」

「今の見えんかったぞ」

「少し重心を落としてるし、ちい兄様が動く瞬間を狙って抜いたからね。静からいきなり動になると目が付いていかないんだよ。じゃ、もう一度やろうか」

「う、うむ」

マーギンはもう一度同じような体勢を取り石を投げる。

ぼとっ

オルターネンは今度はマーギンの静から動への動きに惑わされまいと剣を先に振ろうとした。

シパっ

「うっ…」

またもマーギンの刀が首の前で止まる。

「これは後の先というやつ。カウンターともいうよ。相手が動き出した瞬間を狙うと回避行動を取れない。この2つで2回は勝てると思うんだけど」

「なるほどな、確かに一瞬で勝負が決まるな」

「抜いてから戦う場合は、相手の攻撃を受けずに回避して攻撃することになる。回避出来ない時は受け流す必要があるんだよ。これはロングソードでも同じ戦い方が出来るからそれで勝てばいいんじゃかいかな?」

「わかった。それは出来る」

「騎士が使う剣は鍛造?それとも鋳造?」

「その2つはどう違う?」

「槌で叩いて作って行くのが鍛造。溶かして型に流して作るのか鋳造だよ」

「なら、支給されているのは鋳造だな」

「鋳造の剣なら、刀を扱う腕が伴えば剣ごと斬れるかもしれないね」

「本当か?」

「うん、鋳造の剣ってそんなに硬くないはずだから。硬い素材を使ってる鋳造剣なら鎧で防護されてる所で上手く受けたら折れると思う。それを防ぐのに分厚くしてあるなら一撃の強さはあれど、スピードは遅いんじゃないかな?剛腕の人が使ってたらわかんないけど」

「それ、なんかイメージ出来たな。大隊長がまさにそれだ。一撃の重さとスピードの両方を兼ね備えている」

「大隊長も試合に出るの?」

「いや、剣技会は小隊長、隊長候補を見極めるものだから大隊長が出ることはない」

「優勝するまで対戦は何回?」

「5回勝てば優勝だな。小隊長は1回戦はシードだから4回だ」

「結構試合するんだね」

「1回当たりそんなに時間が掛からんからな」

なるほどね。

「じゃあ、もう一つ戦い方を入れようか」

次の立合いはマーギンは刀を抜いていきなり喉に突きを放って勝負は終わった。

「今日は時間を取らせてすまなかったな」

「ちい兄様はこのあと時間ある?」

「構わんぞ」

「昨日、庶民街の鍛冶屋に行ってたんだけどね、刀に興味があるみたいなんだよ。で、見せて欲しいと言われてるんだけど、付き合って貰うことは可能?」

「庶民街の鍛冶屋か。腕はいいのか?」

「かなりいいね。そのうち、その刀を作れるようになると思うよ」

「本当か?」

「うん、同じ製法でロングソードに取り掛かってるよ」

「よし、そこに行こう。と、その前に腹も減ってきたな」

確かに。もう昼過ぎてるからな。

「さっきもらったチーズとパンでも食べる?」

「おお、そうしよう」

ということで、炭に火をつけてから、手持ちの食パンを軽く焼く。

「お前の着火魔法は便利だな。炭でもそんなに簡単に火がつくのか」

「風魔法と併用してるからね。で、頂いたチーズを半分に切ってと」

硬いチーズを半分にスパッと包丁で切ると驚かれる。

「その変わったナイフはよく切れるな」

「その刀と同じ製法で作られてるから切れ味は抜群なんだよ」

「ほう、この刀と同じか… ならこの刀も同じぐらい斬れ味がいいんだな?」

「そう。人の首なんかスパッと斬り落とせるから試合で気を付けてね」

オルターネンは仲間の首を斬り落としてしまうことを想像してブルッと震えた。

「はい、パン持って」

「ん?チーズを乗せないのか?」

「これはこうしてやると…」

マーギンはチーズの断面に炎を出して炙っていき、包丁で溶けた部分をにょにょっとパンに落とした。

「はいどうぞ。で、俺のにも」

同じようにパンを足で挟みつつチーズを落とした。

「旨いっ」

「こう寒いときに溶けたアチアチチーズって旨いよねぇ」

「確かに旨い。他にはどんな食べ方をするつもりなんだ?」

「鍋でチーズを溶かして、ドロドロのチーズにパンや野菜、ソーセージとかを付けて食べるんだ。この前ライオネルに行った時にエビとか買っておいたら良かったよ」

「エビか、冷凍のでもいいか?」

「全然大丈夫」

「なら、うちにあるはずだから後で取りに帰ろう」

ん?

「晩御飯を一緒に食べるの?」

「嫌か?」

「べ、別にいいけど…」

こうしてマーギンとオルターネンは遅い昼飯を食べた後に貴族街経由でグラマン工房へと向かうのであった。バアム家にはオルターネン一人で行って貰い、マーギンは貴族門前で待っていた。

そして夕方前にグラマン工房に到着。

「あ、マーギン。遅い…ぞ?誰を連れて来たんだ?」

店番をしていたのはバネッサ。

「ローズのお兄さん。オルターネン様だよ」

「えっ?めっちゃカッコイイ…」

バネッサの目がハートマークになる。

「バネッサ、親父さんに中に入っていいか聞いて来てくれ。刀を持ってきたってな」

「あ、あのっ、うち… 私はバネッサといいます」

「オルターネンだ」

マーギンの声も聞こえないバネッサはオルターネンに女の子っぽく振る舞う。

「バネッサ、親父さんに聞いて来てくれって」

「あ、あの、彼女とかいますか?」

バネッサにすり寄られて困惑するオルターネン。

ちっ、こいつちい兄様に釘付けじゃねーかよ。俺の声すら聞こえてねぇ。

「バネッサっ。さっさと行かないとケツ丸だしの事をバラすぞっ」

「なっ、なっ、なっ ケツ丸だしなんかしてねーっ」

カッコイイ人の前で嫌な事をバラすマーギンについ地が出たバネッサ。

「あっ、オホホホ。ちょっと待ってくださいましー」

バネッサは手で尻を隠しながら親父さんを呼びに行ったのだった。

「ごめんね、あいつは悪気はないんだけど、興味のあるものにストレートでさ」

「俺になんの興味があったのだ?」

無自覚なハンサムってやだねー。

「ご貴族様が珍しいんだよ。多分…」

と誤魔化した。ホント、ちい兄様とは一緒に並んではいけない。

「マーギン、刀を持ってきたって…」

「親父さん、バウム家の次男で騎士隊の小隊長でもあるオルターネン様。この人に刀をあげたんだよ。で、今日は時間があるから一緒に来てもらったんだ」

「オルターネン・バウムだ。マーギンに頼まれて来たが俺も店主に相談がある」

「グッグッグッ」

親父さん、なんか喉に詰まったのか?

「グッ ラマンと申しますっ へへっー」

この国の庶民はみな貴族にこんな感じになるんだな…

「グッラマン殿、マーギンから譲り受けた刀と同じようなものが作れるとは本当か?」

どもったせいで、名前をグッラマンと認識された挙げ句に話しかけられても頭を上げない親父さん。

「親父さん、親父さんってば」

「へっ、へい」

どこの丁稚だよ?

「今、ロッカの剣を作り出しただろ?あれと同じ物が作れるかって聞かれてんぞ」

「へへー」

ダメだこりゃ…

「ちい兄様、中に入ろう。俺が説明するよ」

「いいのか?」

「この親父さんが中に入っちゃダメって言うと思う?」

「本当にいいなら問題はないが…」

「早く行こう、どんどん遅くなる」

マーギンはオルターネンの背中を押して中に入った。

工房前ではバネッサがロッカとシスコにオルターネンの事を伝えたらしく、シスコとバネッサはキャーっカッコイイとはしゃいでいた。

「初めましてオルターネン様。この工房の娘、ロッカと申します。むさくるしい所で心苦しくはありますがどうぞ、ご自由にご覧になって下さい」

さすがはロッカ。素晴らしい対応だ。

「初めましてオルターネン様。フォートナム商会の長女、シスコムーンと申します」

シスコはカーテシーで挨拶をする。さすがは良家の娘だ。

「マーギンさんの妻、アイリスです」

「は?」

ボコンっ

「アイリス、それやめろって言ってんだろうがっ。ちい兄様、こいつが保護をしているやつですよ」

「あぁ、冗談だったのか。お前は子供趣味だったかと驚いたぞ」

どんどんロリ認定されていくマーギン。

「で、さっき対応してくれたやつがバネッサ。ロッカ、シスコ、バネッサが星の導きってパーティーを組んでる。アイリスは修行が終わったらそのパーティーに加えてもらう予定なんだよ」

「なるほど、ローズが言っていた腕の立つハンターとはお前らのことか」

「ローズ様がどのようにおっしゃって下さったかわかりませんが、先日我々の訓練を見学頂きました」

「いや、見事な連携で自分一人だと対処は無理だと言っていたぞ」

「ありがたいお言葉、恐縮です」

「マーギン、マーギンっ。俺も紹介してくれよ」

ロックもオルターネンに紹介して欲しいようだ。

「こいつはロック、今挨拶をしたロッカの弟で、この工房を継ぐかもしれないやつだよ」

「継ぐかもってなんだよ、継ぐかもって」

変な紹介をしたマーギンにぶつぶつ怒るロック。嫌なら自己紹介しろってんだ。

そしてお母さんも出てきて、ロッカを宜しくお願い致しますと深々と頭を下げた。オルターネンはロッカを嫁に貰いにきたんじゃないぞ。

オルターネンも あ、はい…というだけでどう反応してよいか困惑していたのであった。