軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

化けの皮

夕飯までに製麺機の使い方と米粉の作り方を教え、晩御飯はロブスン達に合わせて焼肉にした。マギュウは歯応えが足りなかったのか、ゴイル達が用意してくれた肉をバクバク食っていた。タレはお気に召したようだ。

翌日、ワー族の集落に向けて出発する。ゴイルも来ると言ったが、今回はやめてもらった。自分の見知らぬ魔物相手だと何が起こるか予想できないからだ。

ゴイルとマーイにまた戻って来ると伝えて出発する。ロブスン達と走るがミャウタンの足が遅いし、持久力もない。

「ミャウタン様、もう少し走れませんか? 一刻も早く戻りたいのです」

何度も休憩しているので痺れを切らせたロブスンが渋い顔でミャウタンに苦言を言う。

「こ、これでも精一杯走って、ハァッ、ハァッ、ハァッ」

「ちっ」

舌打ちをする他のワー族。

こいつはミャウ族の族長の娘で敬うべき存在なんだよな?

皆の態度を不思議に思うマーギン。本当はミャウ族とワー族は仲が良くないのだろうか?

「ミャウタン、ほれ」

マーギンはミャウタンの前でしゃがむ。

「な、なんのまねじゃ」

「もう限界なんだろ? 俺がおぶってやるから早く乗れ」

「だっ、誰が貴様になど乗るか!」

「そんなのいいから早く乗れ。予定より遅くなってんだろ? 集落が襲われてても知らんぞ」

「ぐぬぬぬぬぬっ」

ミャウタンは渋々マーギンの背中に乗った。

「尻を触るなよ」

「触らんと落っこちるだろうが。さ、ロブスン。お前らのペースで走ってくれ」

「俺達が本気で走ったら付いてこれるのか?」

「多分な」

マーギンがそう答えるとロブスン達は本気で走りだした。

「おー、さすがに速ぇな」

「何をしているかっ。さっさと追いかけぬか」

「はいはい」

マーギンはスリップと風魔法を併用してホバー移動して付いていく。非常に楽ちんでよろしい。

「きっ、貴様何をしておるのじゃっ?」

「魔法で移動してんだよ。もっとスピードを上げる事もできるけどな」

「魔法で移動じゃと?」

「そう。かなり高度な魔法だ」

「私にもできるようになるか?」

「多分無理だな。適正と魔力量に関係してくるからな」

そう言うと黙ってしまったミャウタン。しかしこいつ……。

日暮れ前に夜営ポイントを探して本日の移動は終了。本日の晩飯は豚肉ローストとハードパンだ。

「移動中でもこんな飯が食えるんだな」

「まぁな。旨い飯と風呂は活力につながるから重要な事だ」

ロブスン達もミャウタンもガツガツと食っている。

「ロブスン、ちょっと聞いていいか?」

「何が聞きたい?」

「ワー族は全員獣人だよな?」

「そうだ」

「ミャウ族も獣人なのか?」

「いや、ミャウ族は人族だ」

やっぱりそうだよな。

「なら、こいつはなんだ?」

マーギンがミャウタンを指差す。

「ミャウタン様は人族で……」

「いや、こいつ獣人だよな?」

「どうしてそう思う?」

厳しい顔をするロブスン。マーギンはミャウタンから濡れた犬の臭いがしたとは言えない。

「なんとなくだな。それにお前らの態度は敬う人に対するものじゃない。お前らはどちらかと言うとミャウタンを下に見てるだろ?」

そう言うと少し黙るロブスン。

「やはり隠し通すのは無理か。ポニー、変化を解け。マーギンを騙すのは無理だ」

「いっ、いいの?」

「もう他のやつらはいないから構わん」

そうロブスンが言うと、ポンッと変化を解いたミャウタンが本来の姿に戻る。

「こりゃ驚いた。変化の魔法なんてあるんだな」

ロブスンにポニーと呼ばれた女の子。ロブスン達みたいにケモノケモノしておらず、ケモミミとシッポのある女の子だった。

「どうして分かったの? 完璧に変化できてたはずなのに」

臭いだとは言わない。デリカシーのないマーギンでもそれは言わなかった。

「俺は天才だからな」

答えになってないマーギンの返答。

「マーギン、そいつは混じりだ」

「混じり?」

「人族と獣人の間に生まれたんだろう。捨てられてたのをミャウ族が拾って、ミャウタン様が可愛がったのだ。こいつは獣人みたいな身体能力はない。人族みたいな魔法も使えない。劣った部分だけを引き継いだ出来損ないだ」

ロブスンに酷いことを言われて涙目になるポニー。

「そんな事を言ってやるなよ。変化の魔法なんて初めて見たぞ。すごい魔法じゃないか」

「何にでも化けられるならな。こいつが化けられるのはミャウタン様だけだ。攻撃魔法も一応できるが発動までに時間が掛かるし、威力も弱い。唯一できるミャウタン様変化もマーギンに見破られる始末だ」

「グスッ、グスッ。ごめんなさい」

名前はポニーだが馬系の獣人ではない。丸みのある耳と短めでふわっとしたシッポの先が黒い。おそらくタヌキだな。それなら変化の魔法が使えるのも頷ける気がする。

「ポニー、泣かなくていいぞ。ロブスンはあぁ言ったが、俺は結構魔法に詳しいほうなんだが、変化魔法なんて初めて見た。俺はすごい魔法だと思うぞ」

「本当?」

「あぁ、本当だ。ポニーはすごい魔法を使える」

マーギンが褒めてやるととても嬉しそうな顔をした。ミャウタンの変化を解いたら口調も子供っぽくなったから、これが素のこいつなのだろう。

「ポニー、お前は何歳だ?」

「多分10歳くらい」

少し胸があったけど、獣人は成長が早いんだったな。

マーギンはポニーが子供だと認識したことでオヤツ食べるか? と甘やかせる。それを見たロブスンは渋い顔をする。

「マーギン、甘やかさないでくれ。癖になる」

ハナコと同じ扱いを受けるポニー。オヤツを嬉しそうに受け取ろうとしたポニーはシュッと手を引っ込めた。

「いらない」

真なる獣人のワー族、人族のミャウ族、どちらにもなれないポニーは肩身の狭い思いをしてきたのだろう。ロブスン達の事も少し怖いみたいだしな。

「ポニー、これは体力を回復する薬にもなる。お前、かなり疲れてるだろ?」

「えっ?」

「そいつはここまで背負ってもらってだろ。疲れているはずがない」

と、他のワー族も甘やかせるなと言ってくる。

「疲れは体力面だけじゃない。ポニーはどれぐらいの間変化していたんだ?」

「人族の街にいる間はずっとだ。宿で寝ている時は元に戻ってたがな」

「それなら疲れて当然だな。朝からずっと魔法を使いっぱなしだったんだ。魔力切れになってもおかしくない。この歳でよくそんなに長い間魔法を使えてたものだ」

「こいつはもう10歳なんだぞっ。もう大人だろうが」

「それはお前たち真なる獣人の理屈だ。ポニーは人族の血が混じってるのは間違いないだろう。純粋な人族より成長は早いと思うが、お前たちみたいにすぐに大人になるわけではない。こいつはまだ子供だ」

「マーギン、それは本当か?」

「あぁ。ミャウ族の10歳ぐらいの子供を考えてみろ。大人に見えるか?」

「見えん」

「だろ? こいつもそうなんだよ。ほら、ロブスンももう怒らないからこれ食っとけ」

と、ドライフルーツ入りのクッキーをポニーに渡す。

「食べていいの?」

と、マーギンとロブスンの顔を交互に見る。

「それはお前のだ。それ食ったらテントを出してやるからそこで寝ろ」

マーギンはテントを出してマットを敷いてやる。

「マーギンの臭いがする」

と言われて思い出す。ポニーに洗浄魔法を掛けておこう。マットが濡れた犬の臭いになってしまう。

ロブスン達はテントを持たない。そのまま地面で寝るようだ。ポニーも同じ生活をしてきたのだろう。寒くないとはいえ、ほぼ人族の身体でそれはキツかっただろうな。

「お前らも気配を探れるだろ? 見張りはなしでもいいか?」

「いや、あの黒い魔物は気配がない。足音で判断するしかないから見張りは必要だ」

「じゃ、1時間交代でいいな」

ロブスンと他4名。マーギンを入れて5人だ。初めのやつと1番最後が2時間見張りをすることに。

最初はマーギン。焚き火をしながら気配を探るが強い魔物の気配はない。いるのは小型のボアかイノシシだろう。狼系のワー族は天敵だろうから寄ってくることはない。

退屈なので朝食の下ごしらえをしておく。ポニーにはフレンチトースト、ロブスン達はベーコンと目玉焼きでいいか。後はローストビーフを仕込んでおいた。

見張りを交代して、テントに入るとポニーが小さく丸まって寝ていた。カザフ達と寝方がそっくりだ。常に何かを警戒しながら生きてきたんだなと思う。

「ミスティも初めはこんな寝方してたよな」

マーギンはミスティと魔物討伐に出るようになった初期の頃を思いだすのであった。