軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

狼藉をはたらく

「お前は誰だ?」

「きっ、貴様っ。馴れ馴れしく人の顔を触っておいてなんじゃその言い草はーーっ!」

マーギンは顔から手を離して少女の身体をペタペタと触る。

「胸もあるな」

ナチュラルにセクハラをするマーギン。

「ぎゃーーーっ。どこをっ、どこを触っておるのじゃーーーっ!!」

胸を触られて恥ずかしいのと怒りが混ざって真っ赤っ赤になる少女。

「私に対してその不埒な態度。もう許さん」

「ったく、紛らわしい顔をしやがって」

全く反省の色がないマーギンがそう吐き捨てると、少女はブチ切れた。

「わが名はミャウタン! ミャウ族の長の娘にして、真なるミャウ族の名を持つもの!!」

なんかそんな自己紹介パフォーマンスを見たことがあるぞ?

「うるさい。変な名前をしやがって。普通に名乗れ」

「ええーいっ、私の名前を聞いてもその態度。もう勘弁ならん。生きてきたことを後悔せよっ。食らえっシャカシャカシャーン」

なんだそれ?

「シャカシャカシャン、シャカシャカシャン、シャカシャカシャカシャカ……」

ミャウタンと名乗った少女は両手を前でぐるぐると回しながら詠唱というか歌っている。

「イェイィッ、シャカシャカシャーケンシャンケン……」

ベシッ

「あうっ」

なんか攻撃をしてこようとしたのが分かったマーギンはミャウタンが歌い終わるのを待たずにデコピンを食らわせる。

「何をするかーーーっ」

「うるさい。人に向かって攻撃魔法を撃とうとするな」

「なっ、なぜ私が攻撃魔法を撃つのが分かったのじゃ」

アホだこいつ。

「ならばこうしてやる!」

ポカポカポカポカっ。

グーでマーギンの胸をポカポカと殴ってくるミャウタン。

「いい加減にしろ。俺は機嫌が悪いんだ。今度は本気のデコピンを食らわせるぞ」

「なぜじゃっ、なぜ私の攻撃が効かぬのじゃーっ」

ポカポカポカっ。

「いい加減にし……」

ザーーーーっ。

マーギンが呆れて怒鳴ろうとした時に突然スコールが振り始めた。

「マーギン、やめとけ。ナムの神も喧嘩を止めろと雨を降らせてきた」

と、ゴイルが止めに入った。

「これはナムの神が降らせているのか?」

「ナムの神は争いを好まん。これは喧嘩を止めろとのお告げだ。まぁ、ちゃんと話し合って仲直りしろということだ。つまり慈愛のスコールってやつだ」

マーギンの脳内に愛のスコー……♪ というCMソングが流れる。

「分かったよ。ロブスン、こいつを俺から引き離してくれ」

まだポカポカし続けているミャウタン。

「ミャウタン様、お止め下さい。マーギンに敵うはずもないのですから」

「グスッ、グスッ」

必死の攻撃が何も効かずに悔し泣きをするミャウタンをロブスンが引き離した時にスコールが止む。本当にナムの神が降らせたのかもしれない。そう思ったマーギンは冷静になり、だんだんと自分が悪かった事に気付く。勝手に勘違いしたのは自分なのだ。

ん?

マーギンは辺りの臭いを嗅ぐ。なんだか濡れた犬と同じ臭いがする。ロブスン達は風呂に入ってないのだろうか?

「あーあ、お前のせいでびしょ濡れになっただろうが」

尚もミャウタンのせいにするマーギン。

「ロブスン、お前ら疲れてたんだろ? 風呂入ってから飯にしようぜ」

お前ら臭いから風呂に入れと言わない気遣いができるようになったマーギン。

「お、俺達は風呂には……」

「俺の生まれた国は風呂に入って疲れを癒すんだ。そこで詳しく話を聞かせてもらう。このままびしょ濡れのままだと風邪を引いて応援にも行ってやれなくなるぞ」

そう言うとロブスン達は渋々風呂に入ることを了承した。

醤油職人達の為に改装した風呂に案内する。ゴイルも一緒に入るらしく付いてきた。マーイも走って家に戻って行ったので水着を着てくるのだろう。

皆で風呂に入る。ロブスン達は身体も獣チックだから風呂に入る習慣とかなさそうだな。湯に浸かるのにめっちゃ嫌そうな顔をしてやがる。

「マーギン、さっきの狼藉に理由はあるのか?」

風呂に浸かってしまえば平気なようで、ロブスンがさっきの事を聞いてくる。

「もう会えないと思っていた仲間によく似ててな、ちょっと確かめただけだ。見てくれは似てたがまるで違う人だったわ」

「そうか。王国では女性の身体を触って確かめる習慣があるとは知らなかったから驚いたぞ」

いや、そんな習慣はないぞ。そういや、胸も触ってしまったんだな。あの変な名前のやつが怒るのも無理はない。

「あのミャウタンはミャウ族のやつか?」

「そうだ。長の娘だ。本来であればあのような狼藉は許されぬ立場の方だ」

「それは悪かったな。後で謝っておくわ」

「頼む」

「で、お前らが敵わん魔物とはどんなやつだ?」

「大きさは2mほど。腕が4本に足が2本。手足に鋭い4本爪があって、1本は長い。長い爪は短剣のような感じだ」

「動きは速いのか?」

「目で追えないような速さはないが、こっちの攻撃が何も効かん。ミャウ族がファイアボールで応戦したが効き目なしだ」

「炎耐性のある魔物もいるからな」

「そして、とてつもなく硬い。爪、噛みつき、剣、すべて硬い皮膚に阻まれる。あいつは攻撃されても全く動じない」

「硬い鱗で覆われてんのか?」

「いや、鈍く光るような皮膚だ。俺は虫系の魔物ではないかと思う」

「カブトムシみたいな感じか?」

「そうだ。口に長い牙と短い牙が2対。長い牙はクワガタみたいな感じだ。木も真っ二つにできる切れ味とパワーがある」

「何も攻撃が効かない虫みたいな魔物か。厄介だな」

「あぁ、相当厄介だ。俺達の攻撃だけではどうにもならんので、人数を集めて物量で押し切ろうと思ったのだが」

ロブスンは暗い顔をする。

「誰も協力してくれないんだな」

「そうだ」

「まぁ、ワー族が敵わない相手だからしょうがないかもな」

「それでも、そのうちあちこちが危機になるということが理解できていないのだ」

「日頃から魔物の脅威に面してない人は理解できんよ。自分たちに被害が出て初めて分かるのが普通だ」

「しかし、それでは手遅れになるではないか」

「そう。手遅れになる。だから戦えるものを育てる必要があるんだよ。魔物の脅威が増してるのはタイベだけじゃない。王国というか大陸全土に及んでいる。まだまだこれから酷くなるぞ」

「育てると言っても、ワー族の戦えるものは鍛えているぞ」

「ワー族が強いのは理解している。が、そのうちワー族だけではどうにもならないことが出てくるんじゃないか。今回みたいに」

そうマーギンが言うとロブスンは黙ってしまった。

「わーい、お風呂久しぶり」

水着を着てきたマーイが風呂に入ってくる。ロブスン達は種族が違うからか、自分が素っ裸でも動じない。というかマーギンもだが。

「マーイ、ミャウタンは風呂にはいらんのか?」

「水着持ってないから入らないみたい」

「そうか。なら俺達は出るから一緒に入ってやってくれ」

「もう出ちゃうの?」

「飯の用意をしておいてやるよ」

「えっ、何作ってくれるの?」

「それはお楽しみだ」

風呂から出る時にロブスン達に洗浄魔法を掛けておく。これで濡れた犬の臭いにはならんだろ。

タオルで拭いてもすぐに乾かないロブスン達を風魔法で包んでやる。フワフワになりたまへ。

風呂に目隠しの壁を作ってやるとミャウタンがこっちを睨みながら風呂に入っていった。

「ロブスン、お前らは肉以外も食うのか?」

「生野菜は食わんぞ」

「なら大丈夫か。今から作るものが気に入らなかったら肉を焼いてやるよ」

マーギンは作ってきた麺を茹でていく。作るのは焼きそばだ。魔導鉄板で豚肉を炒め、出た脂でキャベツを炒める。マーイ達が風呂から出たのを見計らって麺を炒める。

「やったーっ! 焼きそばだ」

マーイとの縁は焼きそばだ。自分にとっては大した事のない食べ物だが、マーイ達には珍しくて旨い食べ物なのだ。

「今日は2種類作るからな。まずはソース焼きそばだ」

ソースを投入すると一気に焼きそば感が増す。皿に盛って、上に目玉焼きをのせて完成だ。

「さ、食いたいやつから食え」

マーイとゴイルが先に取り、次いでロブスン達が取った。

「ミャウタンはいらないのか?」

「だっ、誰が狼藉者の作った飯なぞ食うか」

「そうか。ゴイル、一つ余るわ。まだ食えるだろ?」

「当然だ」

ミャウタンの前に出した皿をゴイルへ渡す。

「あっ」

「お前が食わんと言ったんだろ?」

鉄板に洗浄魔法を掛けて、次は塩焼きそばにする。こちらの具はイカとエビの海鮮だ。野菜はタマネギにする。自分好みに胡椒強めにしてニンニクも少々追加。

ジャッジャッジャッジャッ。

小気味良い音を奏でながら出来上がった塩焼きそば。実に旨そうである。全員おかわりするだろうと、ミャウタン以外に渡していく。

ぐうぅぅ。

ミャウタンから聞こえる腹の音。

「食うか?」

「いっ、いらぬ」

意地を張ったミャウタンは塩焼きそばも与えられず。

「マーギン、焼きそばとは旨い食い物だな。初めて食べたぞ」

「タイベは小麦が高級品みたいだからな。王都だと小麦は主食だから安価に手に入る」

「これは小麦からできているのか」

「そう。あ、ゴイル。麺を作る魔道具を持ってきたからおいていくわ」

「そりゃありがたいが、小麦はそんなに買えんぞ」

「そのうち小麦ぐらい簡単に買えるようになると思うぞ。それと食感とか変わるけど米からでも麺を作れなくはないしな」

「本当か?」

「あぁ、手間暇がかかるけど、すぐに手に入る材料で作れた方がいいだろ?」

そんな話をしている間もグゥキュルルと聞こえてくるミャウタンの腹の虫。

マーギンはソース焼きそばをもう一度作る。マーイが皿を持って見てるから3人前ぐらい作るか。

ジャッジャッジャッ、ジューーーっ。

腹が減ってるミャウタンにとってこのソースが焦げていく匂いは暴力だと言っても過言ではない。

マーイが皿を出すので、ひょいひょいと入れてやり、もう一つ皿を出してミャウタンの前に置く。

「いっ、いらぬと言うたじゃろうが」

「これは詫びだ。さっきは悪かったな。俺の知ってるやつかと思って確かめたんだ。触ったのも悪かった。スケベをしようと思って触ったわけじゃない」

「自分が悪かったと認めるのか?」

「あぁ、俺が悪かった。俺の知ってるやつとお前は違う」

「そ、そこまで言うなら食ってやらんでもない」

「早く食え。冷めたら味が落ちていくぞ」

「で、では」

フォークでくるくると巻いて一口食べるミャウタン。そして目をパチクリとしてこちらを見る。

「塩焼きそばも作ってやるから早く食え」

そう言うとガツガツとすごい勢いで食べ始める。まるでカバ丸だ。

ミャウタンが食べている間に塩焼きそばも作ってやるマーギン。そしてそれを嬉しそうに食べるミャウタンの顔を優しい目で見ていたのであった。