軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

商売は別物

王都に戻って来て、マーギンの家の前まで来て解散する。

「フェアリー、これをお母さんに渡しておいてくれ」

王妃宛に書いた手紙をカタリーナに渡す。

「ラブレター?」

なんと恐ろしい事を言うのだお前は?

「違う。お知らせだ」

タイベに隠密を置き去りにしてきた理由を書いておいたのだ。カタリーナを見失ったと思われたら隠密が叱られそうだからな。

カタリーナが城に戻るのはローズと特務隊に任せて、マーロックとハンナリーを連れて家に戻った。カザフ達はまだ帰って来てないようだ。

「はぁー、疲れたね」

「親分の家にしちゃ小せぇ所に住んでるんだな」

「どうせ飯食って寝るだけだからな。風呂に入るだろ? 使い方を教えてやるよ」

マーロックに風呂の使い方を教えるとめっちゃ驚いていた。

「さて、どうやって寝るかだな。お前はアイリスかシスコの所に寝に行くか?」

「もう向こうに行くの面倒やからここで寝る」

マーロックと3人で雑魚寝か。誰か来るとやっぱりここは狭いよな。

マーロックは落ち着かなかったのか風呂からすぐに出てきたので、お湯を替えてハンナリーに入らせる。

「マーロック、なんか飲むか?」

「そうだな。軽いのをもらおうか。なんか眠くなっちまったぜ」

アイテムボックスに入れてあった揚げ物をいつくかだし、軽めのワインを飲む。

「なぁ、親分」

「なんだ?」

「王都ってデカいな」

「そうだな。ここは下町だからタイベとあまり雰囲気は変わらんけど、貴族街とかに行くとまったく違うぞ」

「親分は貴族なのか?」

「いや、前にも言ったけど平民だ。それにこの国の人間でもないからな」

「どこの国から来たんだ?」

「遠く離れた島国だよ。来る時に事故かなんかにあったのか、ここまでどうやって来たか記憶があまりないんだよ」

「そうなのか」

「あぁ。生まれ故郷はタイベと感じが似ててな。王都の食い物より馴染みがある。だから俺には先住民達に違和感がないんだ」

「先住民達は難しいやつが多いんだろ? 俺達は荷物の受け渡しだけとはいえ、上手くやっていけると思うか?」

「みんなそんな風に言うけど、ナムの村の人達は全然そんな事はないぞ」

「そうなのか?」

「あぁ。ミャウ族という太陽神ラーを祀る人達は違うみたいだけどな。ワー族は知ってるか?」

「いや、知らん」

「真なる獣人ってやつでな、ライオネルやタイベにいる獣人と違って、顔も獣の顔をしてるんだよ。そいつらはプライドが高いから、もし出会っても獣扱いすると揉めるから気を付けておけよ」

「分かった」

そんな話をしているとカザフ達が帰って来た。

「マーギン、お帰りっ」

いきなり抱き着いてくる3人。

「お、ちょっと大きくなったか?」

「2ヶ月やそこらで変わるかよっ。って、この人誰?」

「ハンナリー商会で働くマーロックだ。船を動かすのが無茶苦茶上手いぞ」

「もしかして海賊の人ー?」

「そうだ。これからはちゃんと働くから宜しくな」

「うん、宜しくーっ」

カザフ達はマーロックとの挨拶もそこそこに、マーギンがいなかった間の事を一斉に話し始める。ロッカ達と魔物をバンバン倒したことや、他のパーティとの連携、そして年明けに正ハンターになることを。

「そりゃ良かったな」

「うんっ」

その後にタジキが愚痴り出す。

「でさー、バネッサ姉のやつ、俺の作る飯に文句ばっかり言うんだぜ」

「そうなのか?」

「食うのは食うんだけどさ、マーギンの作る飯と味が違うとか言いやがるんだ」

「同じ作り方をしてても微妙に違うのは仕方がないだろ。バネッサは旨けりゃ何でもいいだろ? とか言ってたのにな」

「アイリスも違うって言ってたー」

「それはハンバーグの事か?」

「他のもだよ」

と、トルクが教えてくれる。

「何が違うんだろうな? まぁ、俺が大将の作った賄いとタジキの作った賄いの味が違うと思うのと似たようなもんかもしれんな。他の人にはあまり分からん違いだろ」

「そうかもしんないけどさぁ」

明確に塩気が足りないとかなら説明のしようがあるけど、そうじゃない違いは説明出来ないからな。

「明日からどうすんだ?」

「大将の所と、ロッカの所に顔を出してから職人街に向かうわ。マーロックを職人街のみんなに紹介しときたいからな。お前らは討伐依頼を受けに行くのか?」

「うん。もう受けているやつがあるから、それを討伐しにいく」

西の領都に行くまでの町から魔犬の群れの討伐依頼を受けているようだ。

「魔犬は魔狼より弱いが、すばしっこいから気を付けろよ」

「もう何度も倒したから問題ねぇぜっ」

「黒い魔犬はいたか?」

「黒? いや、茶色や灰色とかのやつだけ」

「そうか。もし黒い魔犬がいたら近付くな。トルクが離れた所から矢で倒せ」

「危ないのー?」

「黒いやつは毒持ちだ。噛まれたら死ぬぞ」

「噛まれるようなヘマはしねぇって」

「それでもだ。強さ自体は他の魔犬と変わらんが、もし噛まれたら俺でも治してやれん。それに自分が死ぬだけでなく、噛まれたやつは魔犬みたいになって他の人間に噛みつくようになることがある。そうなれば人間であっても討伐対象になるからな。絶対に近寄るな」

「わ、分かった。噛まれた人も魔犬みたいになるって本当か?」

「ならなくても狂ったようになって死ぬ。悲惨な死に方になるから本当に近付くなよ」

「わ、分かった」

黒い魔犬は過去にもあまりいなかったが、噛まれた人がどうなるかミスティが教えてくれた。だから見付けたら真っ先に討伐する必要があるのだと。実際に噛まれた人を見た事はなかったが、ミスティがあれだけ本気の顔で伝えたということは本当なのだろう。

ハンナリーが風呂出てきた後にカザフ達と風呂に入る。久々の湯船だったからゆっくりと浸かりたかったが、嬉しそうに一緒に入ろうぜと言ってきたから断れなかったのだ。

「ハンナリー、あいつらはマーギンの子供じゃねぇよな?」

「カザフらは近くの貧民街におった孤児や。うちもライオネルで似たような生活してたんやけどな、マーギンに拾てもうてん」

「孤児を育ててんのか」

「そやね、父親代わりみたいな感じやわ。でもあの子ら凄いねんで。マーギンが鍛えた事を全部吸収して強うなってる。これから特務隊と一緒に魔物討伐の凄腕になっていくんやろねぇ」

「へぇっ、どんな事をしたんだ?」

ハンナリーは特訓の話をして、あんたらもやってもうたら? と言われて苦笑いをするのであった。

翌日、マーギンは1人で娼館に行き、タイベの豚肉を差し入れ。

「調子はどうだいマーギン」

珍しく土産が足らないと言わないババァ。

「ぼちぼちだ」

「あの猫娘はどうしてるんだい?」

「ハンナか? 商売の足固めをしてきたから、後はあいつが頑張るだけだぞ」

「取り扱い商品は?」

「主に仕入れてくるのは特殊な草、米、豚肉、魚介類の流通だな」

「あのクズ真珠は?」

「それもあるけど、メインにはならんと思うぞ」

「あれの製法は極秘にやらないとダメなのは分かってるのかい?」

「ババァに喋った事をシスコに死ぬほど怒られてたからな。大丈夫じゃないか?」

「真珠を使った化粧品ってのは貴族向けの化粧品さね。いくらで売るか知らないけど、庶民街で売るなら気を付けるんだね」

「何に気を付けるんだ?」

「貴族相手の商売人は何をしてくるか分からないもんなんだよ」

「乱暴なことはされないと思うぞ。その辺の事は手を打ってあるからな」

騎士が店の護衛に付くからな。

「そんな単純なことじゃないよ」

ババァが言うには、化粧品は人によって肌荒れがする可能性があり、それを逆手に取って嵌められるかもしれないから気を付けておけとのこと。

「随分と親切なんだな」

「指導代として、うちに優先的に化粧品を卸しな」

「買ってくれるのはいいけど、値段は俺が決めるわけじゃないからどうなるか分からんぞ」

「ま、販売価格が決まったらそれはまた交渉ってやつだね」

シャングリラで買ってくれるなら安定して売れるからいいか。

ババァもハンナリーをちょっと心配してくれてたのかな?

一度家に戻って、みんなと一緒にロッカ達の所へ。

「なんだ、帰って来やがったのかよ」

ツンで迎えてくれるバネッサ。

「お帰りなさいマーギンさんっ」

デレで迎えてくれるアイリス。

「で、首尾は上々だったのかしら?」

業務報告を求めるシスコ。

「で、そいつは誰だ?」

マーロックを睨みつけるロッカ。

「こいつはマーロック。元海賊の親玉だ。タイベから戻るのに今年の最終船に乗り遅れてな、マーロックがライオネルまで送ってくれたんだ」

「あなたが海賊を仕切ってた人なのね?」

と、シスコがマーロックの前に立つ。

「そうだ。マーギンの親分に助けてもらった恩は必ず返す。俺達にできる事はなんでもやるから言ってくれ」

「あら、いい心掛けね。少し話をしておきたいのだけれど、時間はあるかしら?」

「お前ら討伐に出るんだろ?」

「少しだけよ。確認しておかないとダメな事があるの」

「今日は討伐が終わったら戻って来るのか?」

「順調に終わっても戻って来るのは明後日になるわね。だから今話しておきたいの」

と、いうことでシスコはハンナリーとマーロックと3人で話したいと、みんなから少し離れた。

「マーロック、悪いけど、ハンナリー商会があなた達をすぐに雇うのは難しいの」

「あぁ、それは親分から聞いている。この冬の間は船を作れと言われたからそれをやってるぞ」

「えっ? 他には何を?」

「立派な剣を20本渡されて魔物討伐ができるやつはハンター登録をしろと言われている。それと海の大型魔物を討伐するための武器を作るから海の魔物もだな。他は蚊取り線香の元になる花の栽培と加工は孤児院のやつらにも手伝わせる」

「あなた達、雇うまでどうやって収入を得るのかしら? それと船を作るなら資金も必要でしょ?」

「親分から、正式に雇うまでの支度金と船を作る費用代だと言って1億G渡された」

「えっ? 1億Gですって」

「あぁ、あんな大金初めて見て手が震えちまったぜ」

「そう、マーギンが先に手を打ってくれていたのね。ハンナはこの事を知ってたのかしら?」

「知らん」

呑気にそう答えるハンナリーはマーロックにあんたら1億ももろたん? ええなぁ。と言っている。

「まったく、あなたはっ。今日の討伐に付いて来なさいっ。説教よっ」

「えっ? なんでうちも行かなあかんの」

「いいから来なさいっ」

なんかめっちゃ怖い顔をしてシスコがズンズンとマーギンのところに戻ってきた。

「マーギン、戻って来たら1億Gの借用書を書くから。利子まで払えるとは約束できないけど、稼いでキチンと返すわ」

「マーロックに渡した金のことか? それなら別に返さなくていいぞ」

「ダメよ。これは商売なの。ただでさえ、仕入れルート、販売先、新商品開発までやってもらっているのに、資金まで提供してもらうわけにはいかないわ。ちなみに剣はいくらだったのかしら?」

「2000万G……」

「海の魔物を討伐する武器の値段はいくら?」

「いくらぐらいで出来るんだろうな? ロッカの親父さんと相談だな」

「概算は?」

「船首に付けるバリスタは1千万Gぐらいになるのかな? 手持ちのは200万G×5台とかだと思うぞ」

「合計1億4千万か……」

「そこまで気にするなら、1億Gは貸付じゃなくて投資ってことでいいぞ。売上の1%とかのリターンで。武器代は不要だ。これはハンナリー商会とは別物だからな。マーロック達にハンター業務として仕事を受けさせるつもりだから」

「そんな条件聞いた事はないわよ」

「お前らが100億G売ったら元が取れる。それ以上売ればもっと儲かる。お前らが頑張って売れば売るほど俺は儲かるのが投資というやつだ」

「そんなに売れると思ってるのかしら?」

「売れるんじゃないか? タイベのものは珍しいから引く手あまただろうし、新鮮な魚介類も売り方によっちゃバカスカ売れる。ライオネルの大型漁船だけでなく、北の街の漁船とも話が付いたからな」

「北の街の漁船ですって?」

「あぁ、今回は売れなかったカニを全部買ってきた。今回の分は俺が使うけどな」

「カニが入って来てたの?」

「シスコは知ってるのか?」

「カニって高いのよ」

「1匹5千Gだったぞ」

「えっ? そんなに安いの?」

「あぁ、全部買ったからかもしれんが、見た目が気持ち悪いから売れてないんだよ。食ったけど旨かったぞ」

「まだ持ってるのね?」

「大量にあるぞ」

「分かったわ。ロッカ、さっさと討伐してすぐに戻るわよ。詳しい話はそれからね」

シスコはカニを知っていたらしく、しかも好物のようだ。話を途中で切り上げて、ロッカの手を引っ張って走っていったのだった。

「気を付けて行きやぁ」

「あなたも来るのよっ」

シスコはしれっといってらっしゃいをするハンナリーの首根っこを掴んで引っ張っていったのだった。