軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

遊びを楽しむ

イルサンを出てパンジャへ向かう時にハンナリーに商売の話をする。

「なぁ、マーギン。なんであそこで肉とか食べさせたん? 精米機を売るだけやったんちゃうん?」

ハンナリーは営業というものを分かっていない。

「精米機って今まで存在しなかったものだろ?」

「そやから珍しくて売れるんちゃうん?」

「あのな、タイベは王都より収入が低いだろ? それに米は精米せずに玄米でも食べられる。ここの人達はそうして暮らしてきたんだからな」

「うん、ほんで?」

「精米機は暮らしていくだけなら不要な代物なんだよ。精米しなくても米は食べられるんだから」

「そやけど、白い米の方が美味しいやん」

「そう、そこが重要なんだよ」

「意味が分からへんで」

「美味しいというのは、ちゃんと食べられるようになってから次に求めるものなんだよ。お腹が減って何も食べるものがない、そんな時に白い米がいいとか言わないだろ? それに旨いものを食おうと思うと余分にお金を払わないといけなくなる。毎日の生活がカツカツだったら食べる方を優先して旨いというのは後回しになるんだ」

「まぁ、そらそうやけど」

「でもタイベは自然豊かで飢えるような生活をしている人は見かけなかった。森に行けば何か食べられる果物があったり、海に行けばなんか捕れるだろうからな。だからそんなに働かなくても食べていける環境なんだろうな」

「それはそうかもしれんけど」

「でもな、旨いものを食いたいというのは生き物の 性(サガ) だ。一度旨いものを味わうとまたそれを食べたくなる。でもそれを食べようと思えば金が必要になる。だから金を稼ぐのにもっと働くようになるんだよ。これは食い物だけじゃなしに、楽しい事とか他にも言えることなんだけどな」

「そんなんまで考えてたん?」

「これは考えていたわけじゃない。当たり前の事だ。今度王都の店で販売を始める化粧品もそうだ。別に化粧品がなくても死にはしない。でも欲しがる人が出てくる。これは綺麗になりたいとかの欲望を刺激するものだな」

「女が綺麗になりたいと思うのは当たり前のことやんか」

「だろ? 旨いものを食いたいと思うのも当たり前のことなんだよ。米を白くするのも精米機がなくても時間を掛けたら自分でも出来る。でも時間を掛けると他の事が出来なくなる。魔道具は時間を節約したり、面倒な事を楽ちんにしてくれるものだな。その点は生活魔法も同じだ」

マーギンはハンナリーが扱うであろう商品の根っこの部分を説明する。ハンナリー商会は生活必需品を扱うのではなく、生活を豊かにするものが大半なのだ。

「肉はなんで食わせたん?」

「醤油の販売の件もあるけど、焼き肉と米のコンボは人を魅了する。お前なら焼き魚と米みたいな感じだな」

「あー、それならよぅ分かるわ」

「見知らぬ物を売るにはその良さを体感してもらわないと売れない。それに俺達はタイベでは余所者だから信用もない。まずは商品の良さを分かってもらうだけで十分なんだよ。売り付けるようなやり方を初めからすると、次に来た時には面倒がられて会ってもくれなくなるぞ」

「うん、それは分かるわ」

「商売ってのはな、売る側だけが儲かるとか、安売りして買った人だけが儲かるとかじゃダメなんだ。作った人も売った人も買った人も儲かるようにするのが商売だ。それを忘れずにな」

「うん」

こんな話をしながらパンジャへと歩いて行く。

「マーギン、お前の魔法書店ではそんな風に商売をしているようには見えなかったがな」

と、ローズが今の話を聞いて訝しげな顔をした。

「魔法書店は年に1〜2冊売れたら良かったからね。大将の所でタダ飯を食わせて貰ったりしてたから」

「本気で商売をしていればもっと儲かってたのではないか? 高い魔法書も高い理由をきちんと説明すればもっと売れたのではないかと前にも聞いたが」

「ほら、俺も前に言ったけど、異国人だからあまり目立たないようにしてたんだよ。色々と面倒事に巻き込まれるだろうからね。まぁ、結局面倒事に巻き込まれてんだけど」

と、カタリーナを見る。

「ハンナ、マーギンに面倒事だって言われてるわよ?」

いや、面倒事は君なのだよカタリーナ。

自分が面倒事の張本人だと言われているのに気付かないカタリーナは「うちは面倒事ちゃうわっ」と怒るハンナリーに「やーい面倒な女ーっ」とからかって遊ぶのだった。

夕暮れ過ぎて暗くなってからパンジャに到着。

「さて、宿はどうする? 今から探すか、ビーチでテントを張って野営するか」

「海の側に行きたいっ」

と、カタリーナの一声でビーチで野営することが決定。蒸し暑いタイベもこの時期の夜はずいぶんと過ごしやすくなっているので皆もそれで良いと言ったのだった。

「わー、波の音がこんなすぐ側で聞こえるっ」

カタリーナはビーチに来たのが初めてのようで、裸足で波打ち際に遊びに行く。

「冷たーい。ねぇ、ローズもこっちに来てっ」

「えっ、あ、はい」

ローズも靴を脱いでズボンの裾を捲りカタリーナの所へ行く。

「なんか足の裏がくすぐったいですね」

波に砂がさらわれる時の感触がくすぐったいらしい。

月明かりに照らされて美女と美少女が波打ち際で戯れるシーンは良いものだ。

そこへハンナリーが参戦。

「うははははははっ、めっちゃこしょばゆいわっ」

名画の様なシーンから一気にお笑いの世界へと導くハンナリー。全く持って台無しである。

「お前ら気を付けろよ。何がいるか分からんからな」

波打ち際だから問題はないだろうけど、一応マーギンも側に行く。オルターネン達も足の裏がくすぐったくなるのを体験するようで、裸足になって波打ち際へ。

「ほう、確かにくすぐったいな。それに歩いて疲れた足に冷たい海の水が心地よい」

足で海水をテイスティングするオルターネン。

「マーギンも入りぃな。気持ちええで」

そうだな。警戒ばかりしてるのもなんだな。パンジャでは遊ぶと決めていたから俺も入ろう。

マーギンも裸足になって波打ち際へ。

ビシャシャシャシャッ

「冷てっ。何すんだよっ」

ハンナリーがイタズラで海水を掛けて来やがった。

「うははははっ。びしょ濡れマーギンやっ」

ビシャシャシャシャッ

今度は後からカタリーナの水攻撃。なぜ貴様らは俺だけを狙うのだ?

「きゃははっ 楽しいっ♪」

楽しいのは君たちだけなのだよ。

マーギンは反撃するのに魔法を使う。

「ウォータースプラッシュ!」

ブベベベベベッ

ハンナリーの顔に容赦なく水を掛けるマーギン。実に大人気ない行為だ。

「ゲホッ ゲホッ。何すんねんっ。魔法を使うなんて反則やんかっ」

「誰がそんな事を決めたんだ?」

「そっちがその気やったらなぁ」

「ん? お前の水魔法なんか返り討ちにしてやるわ」

「ラリパッパ!」

げっ

マーギンの脳内に流れるちゃんかちゃんか音。

マーギンは波打ち際で妙な踊りを始める。

「うははははっ。見たかっ」

ちゃんちゃんかちゃんかと踊るマーギンに水を掛けまくるハンナリー。傍から見ているととても楽しそうではある。

「私にもラリパッパ掛けて♪」

それを見ていたカタリーナ参戦。そして隣にいたローズにも当然ラリパッパが掛かる。

「マーギン、踊ろっ」

一心不乱にちゃんかちゃんかするマーギンの手を取り踊るカタリーナ。ローズもそこに混じり、水を掛けて来るハンナリーに3人揃って足で水を蹴り上げ反撃。まるでラインダンスのように揃って足を上げて水を掛けた。

「ぶへっ。砂まで蹴り上げなやっ」

ハンナリーも頭から海水と砂を被るのは勘弁と、マーギン達のラインダンスに加わり、標的はオルターネン達に。

「くそっ 反撃だっ」

特務隊も3人で肩を組み、ラインダンスのように海水を蹴り上げて反撃したのだった。

「はあっはあっはあっ。疲れたぞ」

ラリパッパを食らってない特務隊が砂浜に避難した所で終了。マーギンは途中からラリパッパが解けていたが、ローズと肩を組んでいた為、オルターネンから思いっきり砂多めの海水を掛けられていたのでこっそり身体強化をして反撃していたのだ。

「ほら、もう身体も冷えてきたから上がるぞ」

カタリーナとハンナリーは寒っと言って砂浜に上がった。しかし、魔法耐性が低いローズはまだラリパッパが解けておらず、マーギンにそっと抱き着く様な感じで近付き、チークダンスを踊ろうとする。

「あっ、あのローズさん?」

チークなんて知らないマーギンはドギマギしてどうして良いか分からない。

ゴスっ

マーギンはオルターネンから砂玉を頭に当てられる。

「何すんだよっ」

「ローズから離れろっ。チークダンスを踊る様な関係ではないだろうがっ」

あぁ、これはダンスの一つなのか。

「ローズっ ローズっ。もうダンスタイムは終わりだぞ」

ハッ

ローズはマーギンに揺さぶられてラリパッパが解けた。

「あっ、あのっ、そのっ、これはだな……」

暗くても分かる真っ赤になったローズの顔。

「ほら、風邪をひくかもしれないから砂浜に上がるよ」

マーギンは真っ赤になったローズの手を引いて砂浜に上がったのだった。

マーギンがお湯を出して皆の砂と海水を洗い流した後温風で乾かしていく。冷えた身体も程よく温まり、晩飯の準備をすることに。砂浜で食う飯といったら当然バーベキューだ。

肉や魚とか適当に網に載せて各自が食べたいものを食べていく。カザフとバネッサがいないので取り合いになることもない。ハイボール飲んじゃお。

男は蒸留酒のハイボール。女性陣は甘めの酎ハイみたいな物を飲む。

「こうしてると訓練の一環で来たとは思えんな」

オルターネンがカルビを食べてハイボールを飲んでそう言う。

「そうだね。パンジャでちょっと遊んで、ナムの村で仕事の話をし終わったら、森の中を通って魔蛾がどうなったか確認して領都に戻るよ。だからここでは気を張らなくていいよ」

「そうか。たまにはこういう時間も必要なのだな」

「そうそう。遊びの時は遊びと切り替えて楽しまないとね」

こうしてマーギンとオルターネンは友人同士で楽しむように酒を飲んで遅くまで話をしていたのであった。