軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

えーっ

二人をボロ家に招き入れるマーギン。カタリーナからは納屋?とか言われたけど否定は出来ない。

「次兄から話は聞いていると思うが…」

ローズは姫様の前なのでオルターネンを次兄と呼ぶ。

「ちい兄様から聞いてる。もう承諾しているからローズが謝る必要はないよ。でも本当に隠しきれるかなぁ」

でもマーギンはちい兄様呼びをしたのでローズは嫌そうな顔をした。

「コホン、そうなのだ。どのようにすれば良いと思う?」

「どういう設定を考えてんの?庶民に紛れるとしても貴族ってのは隠せないと思う。ローズの事を知ってる人もいるし」

「そうだな」

「姫様はローズの親戚の子供って事にしとく?」

「私は子供じゃないですー」

成人したのに子供と言われてプクッと膨れる姫様。

「子供ですー」

マーギンは姫様の口調を真似て子供だと言い返す。

「姫様はまだ子供ですよ、こんなワガママ言うんですから。それに俺が引き受けた条件は姫様をアイリスやバネッサと同じように扱うということを伝えてあります。それが無理ならお断りします」

「それは大丈夫よっ」

とウインクするカタリーナ。本当に姫様なんだろうか?

「では、まず呼称から変えましょう。姫様呼びもカタリーナ呼びもダメです。何か他の名前を考えて下さい。ローズも敬語なしで自分の妹のように接すること」

「私が姫殿下を…」

「そう。護衛ではなくお守りみたいな感じだね。出来る?」

ローズは真面目だ。上手く切り替えれられるのだろうか?

「姫様、宜しいでしょうか?」

「いいわよ。あっ、私の名前はフェアリーにしようっと」

「ひっ、姫様。それはちょっと…」

「ローズ、ほら姫様と呼ばないの。それにフェアリーでいいじゃん。ローズと一心同体みたいで」

と、マーギンはニヤニヤしてからかう。

「マーギンっ」

「なら、フェアリーローズって本名で呼ぼうか?」

「やめろっ」

「フェアリーローズって可愛いのにねー」

「ねー、可愛いよねー」

カタリーナとマーギンはローズを見て、ねーっと言う。

「マーギンっ、私をからかうなっ」

それを赤くなって怒るローズ。

「では姫様は今日からフェアリーって事で決まりね」

「いいわよ。で、今日はどこに行くの?」

「職人街。ちょっと言葉使いとか荒い人達が集まっているけど大丈夫かな?」

「ローズとマーギンがいるから大丈夫」

「馬車もないから歩きになるぞ」

「それも大丈夫。馬車ってあんまり好きじゃないの。お尻が痛くなるし」

「分かった。姫様は問題なさそうだけどローズがうっかり姫様呼びしそうだよな」

「マーギンも姫様と言ってるではないか」

「あ、そうだね。ワガママフェアリーがそう呼べとか言う設定を追加しておこうか」

カタリーナは何度もマーギンにワガママって言わないでっ、と怒っていたけど、自覚してもらうために何度も言うことにしたのだった。

ー職人街ー

「また女連れか」

食堂の親父に白い目で見られるマーギン。

「またとか人聞きの悪いことを言うな。他に連れて来たのはシシリーだけだろうが」

「へへっ、まぁ、こんなべっぴんさんを連れて来るなら大歓迎だ」

ったく、食堂の親父はスケベで困る。

「先に言っとくけど、二人は貴族だからな。あんまり失礼な事をすんなよっ」

「えっ?こりゃ失礼いたしやした。マーギン、こんな所にご貴族様を連れて来んなよ」

「本人の目の前で連れて来るなとか言うなよ。フェアリーが泣いたらどうすんだ?」

「ローズーっ、この人にイジワル言われたぁー」

と泣き真似をするフェアリーことカタリーナ姫。

「いっ、イジワルなんて言ってねぇっす。こんな所で良ければいつでもお越しくだしゃい」

「本当?エヘヘへ」

女は子供でも女だ。おっさんを手玉に取るのも容易いようだ。末恐ろしい…

「ローズ、ちい兄様か大隊長に売り込みに行きたい商品があるんだけど、伝達頼んでもいい?こっちから連絡取る手段がないからどうしようかと思ってたんだよ」

「あ、渡すのを忘れていた。後ほど説明する」

渡すもの?ここで出すとまずいものなのか?まぁ、それは後でいい。

「了解。これを売り込みに行きたいんだよ」

と、防刃服を見せる。

「こっ、こんなスケスケの下着を誰に着せるというのだっ」

ローズが着て見せてくれる?と言いかけたのを止める。

「これは下着じゃない。試しに斬ってみてくれ」

マーギンは説明せずに防刃服を丸太に着せてローズに斬らせてみる。

「斬って楽しむ下着なのか?」

「だから下着じゃないって。これは防具の一種なんだよ」

「防具?」

「そう、魔鉄の剣で斬れなければ実用に十分だから試して欲しいんだよ」

「こんなもの容易く斬れるだろ?」

「いいから斬ってみて」

と、マーギンが言うのでローズは剣で斬りつけた。

「むっ…」

丸太に切れ目が入ったが服は斬れなかった。

「マーギン、なんだこの服は?」

「防刃服。防具の下に着ておけばダメージは通るけど出血は防げると思うんだよ。治癒師がいれば大量出血を防げて助かる可能性が飛躍的に上がる。騎士や軍に売れると思わない?」

「確かに… 凄い発明だなこれは」

「うん、俺もそう思う」

「へぇ、こんなに薄くてスケスケなのに凄いのね」

「お嬢ちゃん、凄いのはこういう風にも使えるのよ」

いきなりシシリーがやってきてコートの前を開き露出する。

「シシリーっ、やめろっ」

「うわっ、すっごーい。マーギンはこういうのが好きなの?」

「ちっ、違うっ…」

とは言い切れないのが男の 性(さが) だ。

「ね、ローズも着てみて。マーギンが喜ぶと思うの」

「ひっ、姫様っ」

あ、早速言いやがった。

「姫様?」

「そう、こいつはワガママでさ、自分の事を姫様と呼べとか言うんだよ。ローズもそれに付き合う事ないぞ」

「あ、あぁ、そうだな。フェ、フェ、フェアリーもいい加減にしなさい」

ローズの慌て方とフェアリーを恥ずかしがる顔がたまらん。

「えー、じゃあ私が着て見せてあげようか?」

「やめなさい。これはそういう目的で作ったものではありません。シシリーもいらんことをするな。俺がゴミを見るような目で見られるだろうが」

「あらぁー、私はそんな目で見ないわよぉ」

「いいからやめろ。職人達にも刺激が強すぎる」

「ふふふっ、お待ちしているわねぇ」

と、鼻の下が伸びている職人達を誘惑するシシリー。まぁ、これで職人達が早く稼ぎたいと思って頑張ってくれたらいいけど。

お腹が空いたというカタリーナにお好み焼きをご馳走する。大将が作るともっさりしそうなのでマーギンが作った。

「はふはふっ おいひい」

「ゆっくり食べろ。口の中をヤケドすんぞ」

「マーギン、これはなんだ?」

「お好み焼き。庶民の食べ物だよ」

「旨いぞ」

「そりゃ良かった。フェアリーも旨いか?」

「うん、こんなの初めて食べた」

だろうね。お好み焼きなんてどこにもないんだから。

それから樹脂の実験やガラス工房の見学、ハルトランの工房等を見学してジーニアの所へ。

「あっマーギン、その人達は?」

「ローズとフェアリー。職人街の見学だよ。二人は貴族なんだけどね、庶民がどんな仕事をしているかお勉強ってところだ」

「はっ、初めましてっ。ジーニアといいます。魔道具の回路師をしています」

ジーニアはカタリーナの可愛さにやられたようだ。年齢からするとローズよりドンピシャなのだろう。

「私はフェアリーよ、宜しくね」

パチンとウインクするカタリーナ。ジーニアはこれで落ちた。今後カタリーナのお願いなら何でも聞いてしまうだろう。

ジーニアは赤くなりながらも魔道具の回路とはとか熱く語りだした。素人にそんな専門的な説明しても面白くないぞ。

「へぇ、こんな風に作ってるのね。私にも何か面白い物を作って欲しいなぁ」

「はっ、はいっ。必ずお気に召す物を作ってみせますっ」

女の力は凄い。これでジーニアの人生の目標が出来たかもしれない。全てはカタリーナの為にっ、とかだな。

しかし、こいつは人のやる気を出させるのが上手いな。リヒトも褒められて嬉しそうだったしハルトランですら素直にカタリーナを受け入れていた。さすがは王族ってことか。まさかチャームとか使ってないよね?

一度の訪問で職人街のアイドルと化したカタリーナ。せっかく誤魔化したのに姫様呼びが定着してしまった。まぁ、本当の姫様と思ってないからいっか。

ー帰り道ー

「マーギン、これを王妃様から預かってきた」

「これは?」

「王城に入れる許可証だ。高位貴族と同じ効力を持つからどこでも入れるぞ。騎士隊の所へも入れる。あの防刃服を売り込むなら自分でも行けるぞ」

「こんなのもらってもいいのかな?」

「というよりちょくちょく顔を出せという意味ではないか?」

そういう事か…

「これ、ロッカ達を連れて行く事があったら同行出来る?」

「マーギンと同行なら誰でも可能だ。王家の紋章が入ってるだろ。これを見せれば何も調べられん」

王家の紋章入りとかそんなもん渡して来るなよ…

「ローズ、この後どこに帰るんだ?」

「家が完成するまでは王城に戻る事になる」

「家を作ってんの?」

「ロッカ達の近所に今建てている」

「は?庶民街に住むの?」

「そうだ。数年間だけだろうけどな」

これは四六時中一緒にいるハメになるのではなかろうか?

「4月になれば俺は数ヶ月ほど旅に出るぞ。それには同行させないからな」

「どうしてだ?」

「ガキ共のハンター研修を兼ねてんだよ。野営したりその辺の獲物を狩ったりしたのを食ったりするから旅行じゃない。移動は走り続けたりもするから姫様がいると邪魔になる」

「邪魔って酷いじゃない」

「本当のことだから仕方がない。丸一日走ったり出来るなら付いてきてもいいけどな」

「出来るわよ」

「なら、今からリッカの食堂まで走るから付いてきて。俺に付いて来れたら考えてやる」

「ふふーん、私はこう見えても足が速いのよ」

「ローズ、リッカの食堂で晩飯食うなら連れて来てくれ。じゃなっ」

それだけを言い残してピュッと走り去るマーギン。

「えっ、ちょっと…」

もう見えなくなってしまった。

「姫様、マーギンに付いて行くのは私でも無理です。旅は諦めましょう」

「えーっ」

「晩御飯はリッカの食堂で取りますから。それで我慢して下さい」

「えーっ」

カタリーナはローズにずっとえーっといい続けるのであった。