作品タイトル不明
ポーションクッキング
「そうだ、マイホームの外観出来たよ」
「んじゃ、先そっち見るか」
ポーション作りも大事だが、肝心のマイホームを忘れてはいけない。
一体どんな出来栄えになっているのか――――
「おぉ……ちゃんとしてるな」
「でしょ〜?」
バンダナに連れられた先には、湖畔の側に佇む木造一軒家があった。
外観は周囲の景色に合わせた素朴な造りだが、雑に建てられた印象は無い。
明るい色合いの木材で組まれた二階建て、切妻屋根の下には小さなベランダまで備え付けられている。
正面には短い柵で囲われた庭があり、端には花壇らしき区画も見える。
「赤月が見晴らし良くって言ってたから、湖側は窓を大きめにしてみたんだ。後、水汲みに行きやすいように、裏口からそのまま岸辺に出られるようにしてあるよ」
「結構気が利くじゃねぇか」
湖に面した側は大きめの窓が取られており、見晴らしも悪くない。
水面の光を受けて、家全体が柔らかい雰囲気に見える。
童話風の意匠を残しつつも、過剰に飾り立てた感じは無く、普通に住む分には十分すぎる出来栄えだった。
「これなら3万HGの価値あるな」
正直、もっと簡素な家を想像していた。
だが実際に建ったものを見ると、見映えも利便性も良い。
これで家具付きなら、3万HGもそこまで高い買い物ではなかったのかもしれないな。
「まだまだだよ。これから家具置かないとだし」
「家具は何があるんだ?」
「えっと……まずベッドでしょ? 机と椅子でしょ? カーテンや床マット、そして観葉植物……」
「……あ〜そこは最低限でいいよ。ひとまず、机と椅子を貰おうか」
「ベッドで寝るとリスポーン地点固定出来るよ?」
「じゃベッドも」
流石にポンポンと家具置くわけにはいかない。
どっちかと言うと、俺実用性重視だし。
「それと、物置部屋も作っておいたよ。ポーションや素材置き場必要でしょ?」
「それは有難いな」
いつまでもポーションや素材をアイテム欄に入れておく訳には行かない。
整理整頓も兼ねてアイテムを置く場所は欲しかったんだ。
「……うん、これで家具も置き終わったよ」
「マイホーム建築ご苦労様。出来栄えは大満足だ」
「それなら良かった〜!」
バンダナも作業に音を上げずよく頑張ってくれた。
見てると、マイホームを建てるだけで結構な労力が必要に思える。
外観や内装のデザインも自分で考えなければならないし、依頼者に満足出来る物を提供しなければならない。
ここまでやって普通1万HGはむしろ貰わな過ぎだろ。
いやまぁ、5分で出来る程度の適当さなら妥当なんかもしれないが。
「さて、マイホームも出来上がった所で――――」
「出来上がった所で?」
「お待ちかねのポーション作りと行こうじゃないか」
今回は北に売る為の商品作りだ。
量産は今度やるとして、まずレシピを解放しなければ話にならない。
「商談持ち込むにも品揃え良くしなければならないからな」
「売るのは『割れやすい腐食ポーション』だけじゃないんだ」
『割れやすい腐食ポーション』だけを商品として押し出すのは危険な販売戦略だ。
ブランド力は付くかもしれんが、もしそれがコケればたまったものじゃない。
「そうだ。例えるなら某大手飲料会社のコーラようにあのポーション単推しって訳にも行かないだろう」
「……それ相当昔の話じゃない? あの会社って他にも飲料出してたよね」
「……ともかく! こういうのは多角化ってやつだ。せっかく素材あるんだ。他の商品を作らない訳にもいかないだろ」
色んなポーション作って、どれが一番売れるかの傾向も掴みたい所だな。
市販のポーションには無い、俺達だけの強みを主張していけば、十分勝機がある。
「1つ聞きたいんだが、市販のポーションって具体的にどんな物があるんだ?」
「自分の体力や魔力の回復するもの全般だよ。少なくとも、この前のマイセラ=ファガスで使ったポーションのように投げる物じゃないかな」
投げて当てるポーションは調薬師の【脆弱化】のお陰で成し得てる物で、「割れやすい」が付くポーションは調薬師にしか作れない。
更に体力回復や魔力回復のような治癒メインの効果が市販のものなら、バフやデバフの効果のような特殊なポーションを全面的に押し出すべきだ。
「そうだな……この『光茸』を使ってみようか」
俺は『調薬釜』を取り出し、『光茸』と清水を入れる。
中身が光った後、『割れやすい空瓶』で掬った。
[『割れやすい閃光ポーション』を入手しました]
◆◆◆◆◆◆◆◆◆
割れやすい閃光ポーション
品質 良品級
特性 即効性、脆弱性
効果持続 3秒
プレイヤー赤月により作成された割れやすい発光ポーション。
投擲後、割れた直後に閃光を放つ。
その光を視認した対象は目眩の状態異常となり、何も見えなくなる。
◆◆◆◆◆◆◆◆◆
「フラッシュバンってやつか」
「これ欲しいプレイヤー結構居るんじゃない?」
「そうだな。これも商品にするか」
目眩ましにはこれ以上の無い商品だな。
これをポーションと形容して良いか微妙な所だが……ポーションと言い張っておこう。
「ねぇねぇ、この釜って素材と水系のものを入れたらポーションになるの?」
「俺も詳しい事は分からんが、とうやらその可能性は高い」
例えばさっき入れた『光茸』入れれば光系のポーションとして出てくるだろうし、水の品質が良かったらポーションの効力も上がる。
だから、いかにレシピを解放するかなんだよな……。
色んな種類の素材が欲しい所だ。
「それって…… 遺(・) 物(・) は入れれないの?」
「……考えた事も無かったな。だが入れても何も起こらないとは思うけどな」
「な〜んだ」
俺は【調薬観察眼】によって、それがポーションに使える物かそうでないかを判別出来る。
ポーションに使える物……例えば『光茸』も、ちゃんとポーションのマークが浮かんでいる。
対する遺物には何のマークが浮かんでいない。
「そうだな、一応ポーションに使えない物を入れる実験もしといた方が良いか」
きっと、ポーションに使えないと判別された物を入れると失敗判定となり、失敗作的なポーションが出てくるだろう。
それがどんな形で行われるか――――
「良し、マイセラ=ファガスで取れた『菌王の瘴面冠』と『胞子の寄生核』を入れてみよう」
「えっ、それ使うの?!」
「良いって、どうせ付ける枠無いし」
ちなみに『菌王の瘴面冠』と『胞子の寄生核』の説明は以下の通りだ。
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
菌王の瘴面冠
体力 30
魔力 50
毒効力 1毎2
状態異常命中 +30%
胞子菌王マイセラ=ファガスからドロップする遺物。
ぼろぼろに崩れかけた菌糸の王冠。
常に瘴気を滲ませている。
【毒界侵蝕】
種類 常時
自身を中心に毒フィールドを展開する毒系スキル。
半径10メートル内の敵に毒の状態異常を与える。
また範囲内で敵が死亡すると毒爆発を放出する。
毒爆発に触れた者は、触れた者の毒を強制的に効力発揮させる。
胞子の寄生核
体力 60
魔力 20
胞子効力 5毎30%
状態異常命中 +30%
胞子菌王マイセラ=ファガスからドロップする遺物。
それは脈動する核であり、内部で胞子が蠢き続けている。
【寄生拡散胞子】
種類 常時
状態異常を与えた対象を胞子の状態異常を付与する。
胞子状態の敵は一定時間毎に、周囲に異常胞子を放出する。
異常胞子に触れると、放出した者の現在の状態異常と同じ状態異常を付与する。
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
集団戦闘に強い遺物だが、装飾品に付ける枠が無い。
状態異常重複は絶対外せないし、麻痺も欲しい。
今付けてる遺物の方が毒効力が強い。
現地点で遺物を付け替える必要が無い。
「私が言うのも何だけど勿体――――
「せいやぁ!」
「あ〜!」
俺はこの2つの遺物を『調薬釜』へとぶち込んだ。
そして清水を入れる。
「……えっ?」
ふと、『調薬釜』が光った。
しかも光り方が今までとは異なり、放出の勢いが強い。
「いや、いやいや……まさかな」
光が収まる頃、恐る恐るで掬うと――――
[『割れやすい遺物ポーション』を入手しました]
[遺物レシピを発見しました]
[職業の昇格条件を達成しました]
[遺物調薬師になりますか?]
[承認/拒否]
「はぁぁぁぁぁぁぁぁぁ?!?!?!」
遺物調薬師……?
遺物調薬師?!
遺物調薬師ぃぃぃぃぃぃぃ?!?!