作品タイトル不明
金儲け
俺はスカーフと素材供給の提携について話し合っていた。
ひとまず素材の基準値を1つ100HGとして、収集難易度や手間、希少性などを考慮して値段を増減する形とした。
「例えば……この『瘴気茸』の値段は?」
「1つ120HGだな。『光茸』より数が少ないが、探そうと思えばボチボチ見つかる程度だ」
「良し、10個貰おうか」
[プレイヤー スカーフに1200HGを送金しました]
[プレイヤー スカーフから『瘴気茸』×10を譲渡されました]
「……これだけで最低レベルのダンジョンボス討伐分の金を貰って良いのかって気分になる」
「そんなもんだろ、商取引ってやつは」
むしろ、タダ働きの方があり得ない。
取引ってのは「Win-Win」が大前提だ。
お互いが得をするから取引が生まれるんだろうが。
「んじゃ、また何か欲しい時に呼ぶわ。それと……フレンド申請も送っとくか」
[プレイヤー スカーフがフレンド申請を承認しました]
これで素材供給の提携は済んだ。
後は……俺のマイホームが出来上がるまでの待ち時間か。
「スカーフ、マイホーム作るのにどれくらい時間かかるものなんだ?」
「規模にもよるだろうけど……僕や姉貴のマイホームは 合(・) 計(・) 10分くらいで出来てた」
「合計って……5分くらいで出来るのかよマイホーム」
「速度重視の適当なマイホームだけどね。赤月の場合はもう少し時間かかるんじゃないかな」
俺が頼んだマイホームの位置は湖畔の側だ。
ともなれば、景色に似合うようデザインをしっかりしなければならない訳で――――
「……あ〜なら、もう少し金渡しとけば良かったかな」
「どれくらい渡したんだ?」
「3万HG」
「さっ、3万HG?!」
凄い驚かれた……。
まず価値基準が分からんから、これが多いのか少ないのか判別が出来ない。
俺はこういう金銭関係に疎いんだ。
「もう少し足した方が良かったか?」
「……むしろ逆だよ。1万HGでも少し多いくらいなのに」
「……マジで?! つまり、約3倍渡してたって事か……聞かなきゃ良かった」
そっか多かったのか……凄い損した気分だな。
まぁでも、これ家具付き込みでの値段だから――――
いや、それでも3万には足りなそうだな。
「……赤月って、どれくらい手持ちあるの?」
「それ聞くかよお前……」
「いや、結構ポンポン金出してくれるなって思って」
「現地点で大体3万HGくらいだな。街の建造で10万HG取られて、マイホームで3万HG取られ、『瘴気茸』で1200HG取られた」
「金遣い荒いって良く言われないか?」
「返す言葉がねぇ……」
おかしいな、少し前まで結構HG貯まってたはずなのに、いつの間にか所持金が消し飛んでる。
だが俺は今まで必要経費の物しか買ってきていない。
街の建造、マイホーム、『瘴気茸』はこれから必要な物だし、『空瓶』の購入だって調薬師には必要な事だ。
そして『賭博場』での溶けた5万HGだって……楽しかったから必要経費だ!
「まさか金が無くなりそうになるとは……そろそろ、ポーションで金稼ぎする必要が出てきたな」
「ポーションねぇ……ネット見てる感じ、あんまり調薬師居なさそうなんだよね。「ポーションなんて市販で十分」って感じで」
「まだ職業追加されて2日目だろ? 調薬師の真の実力を分かってないのさ」
逆に考えるんだ。
誰も居ないからこそ、供給が少ない。
つまり、俺の独占市場って事じゃねぇか。
「スカーフ、調薬現場を見せてやるよ」
「それは楽しみだね。是非見学させてよ」
俺は『調薬釜』を取り出した。
『腐った水入り瓶』を入れ、先程手に入れた『瘴気茸』を入れる。
そして『調薬釜』が光り出し――――
「……ん?」
ふと、その光り方がこれまでとは異なる事に気が付く。
普段は釜の中身のみが光っていたが、今回は心無しか釜自体も輝いているように見える。
俺は慎重に『割れやすい空瓶』で掬い上げると――――
[『割れやすい腐食ポーション』を入手しました]
[裏レシピを発見しました]
◆◆◆◆◆◆◆◆◆
割れやすい腐食ポーション
品質 秘品級
特性 即効性、高純度、脆弱性、追加要素
効果持続 60秒
プレイヤー赤月により作成された割れやすい腐食ポーション。
当てた対象は腐食の状態異常となり、防御力が40%下がる。
更に被ダメージを50%増やす。
◆◆◆◆◆◆◆◆◆
「腐食に加え被ダメージ50%増加?!」
「……どうやら、相性の良い組み合わせだったようだな」
俺は内心魂が飛び出そうな程に驚愕している。
これ裏レシピなんてものもあるのか?
普通は別の組み合わせで作る事を想定していたのだろう。
だが偶然にも、相性の良い組み合わせを入れたお陰で効力が向上したようだ。
いや、防御力40%減に被ダメージ50%増しって何だよ。
ぶっ壊れか?
「え、スカーフ。これ1200HGで要る?」
「いや、原価の10倍じゃんか! 欲しいけども!」
いやいや〜これは原価10倍の価値あるだろ。
このポーション敵に当てるだけで、敵溶けてくんだぜ?
これ欲しい奴なんて大勢居るだろ。
「冗談だって。だがなスカーフ、このレベルのポーション量産出来たら、数多のプレイヤーが欲しがると思わないか?」
「確かに、既に僕が喉から手が出る程欲しいもん」
例え他に調薬師が居たとしても、このレシピを持っているのは現状俺だけだ。
これは大きな付加価値となるだろう。
「スカーフ、一山当てる気は無いか?」
「その金儲けに協力して欲しいんだろ? 乗った」
「お前ならそう言うと思ってたぜ……!」
よし仲間ゲットだぜ。
何か活動を起こすにも人手が足りないからな。
「……でも、南には行きたく無いな。せっかく逃げてきたのに、あそこに戻りたく無い」
「なら最初は……例えば北の方で売るのは良いかもな。それと……あ〜バンダナは巻き込むか?」
「私は良いよ〜」
「姉貴は良いら――――姉貴?!」
何だ俺達の会話盗み聞きしてたのか。
バンダナもこの悪巧みに参加する気満々なご様子だな。
「2人だけで面白い事して〜私は仲間外れなの?」
「いや、バンダナも参加してくれるなら有難い」
「……まぁ姉貴が良いなら大丈夫か」
どうせ悪巧みするなら、皆でやろうじゃねぇか。
それもある種の信頼って奴だ。
俺達は一蓮托生、仲良く共犯なろうぜ。
「それに、スカーフは採集者だから、一生懸命素材集めしないとでしょ? 私が売り子になるよ!」
スカーフが採集して、俺が作って、バンダナが売る。
役割分担こそ分業の本分、商売っぽくなってきたな。
「姉貴だけ向かって大丈夫かな……」
「まずは俺も一緒に付いて行く。北の連中に……リアルで知り合いが居るんだ」
「ならそいつを通して事業展開が出来るかもしれないな」
もし あ(・) い(・) つ(・) から商売が認められれば、俺達は「公認の売人」という事になる。
そうなれば、かなり金儲けしやすくなるだろう。
「ちなみに、その知り合いってどんな名前なの?」
「俺の予想が正しければ――――ヌルハートだ」
「……は?」
さて、取引の準備と行こうか。
相手に「利がある」と思わせる為に、サンプルとしてのポーションの種類を増やすべきだな。
「待て、ヌルハートって……あのヌルハートか?」
「いや〜売れるといいな〜ポーション」
「絶対碌な事ならないだろそれ!」
確実に一筋縄では行かないが――――
リアル知り合い補正で何とかするしかないか。