軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

闇のゲーム

ここ『サンド街』は過去を類を見ない程の盛り上がりを見せていた。

ここまでプレイヤーが入り乱れるのは、まさしくリリース初日以前と言っても良い。

口々にプレイヤー達は囁く。

トッププレイヤーが帰ってきたと。

前線で戦っているはずの者達が最初期の街『サンド街』に来れば、人盛りが起きるのは当然の事。

一体何が起きているのかと、噂が飛び回り、多くのプレイヤーが一堂に会する事となる。

だがそのトッププレイヤーは全く人前に現れない。

やはり噂は噂に過ぎず、ただの杞憂だったのだろうか。

――――否。

1人のプレイヤーが 配(・) 信(・) を見やる。

そこに映るは4人のプレイヤー。

会場は、 賭(・) 博(・) 場(・) 。

プレイヤー“BAN”。

プレイヤー“赤月”。

プレイヤー“爆弾愛好家”。

プレイヤー“蛇者”。

彼らが手に持つは――――

4枚のカードである。

それは『エレメント・コンフリクト』と呼ばれる4人で戦うターン制カードバトルである。

属性カードによる攻防と、異常・特殊カードを駆使して最後の1人を目指す――――

最終的に、自身以外の『20HP』を削り切れば勝ち。

勝者は1人で十分だ。

「まずは私からやね」

BANは山札から1枚カードを引く。

それは 腐(・) 食(・) のカードである。

一瞥を済ませた後、その腐食のカードを前に出した。

「対象は――――赤月」

その瞬間、赤月の周囲には腐食のエフェクトが舞う。

そして付与されるは腐食――――

その効果、防御力の低下。

カードにはそれぞれ、数字が記載されている。

それは右上に記されており、その通りの威力や効力を相手に与える。

BANが提出した腐食の右上には『2』の数字が見える。

[赤月は腐食2の状態になりました]

「ほう、向かって来るのか、この赤月に」

「厄介な奴は早めに潰すのは定石やろ?」

「……違いない」

赤月は余裕そうな顔付きで山札をめくる。

少し考えた後、1枚のカードを表に出す。

「爆弾愛好家に火傷3の付与」

[爆弾愛好家は火傷3の状態になりました]

今度は爆弾愛好家に火傷エフェクトが舞う。

火傷は攻撃力の低下――――

自身に腐食の状態異常が付与されている以上、次に狙われた時の被ダメージを減らす思惑である。

「そりゃそうだよな〜俺でもそうする」

「皆陰湿過ぎません? ちっとも基礎カード使わへんやん」

「使えば良いんじゃないかい? 勿論、 相(・) 殺(・) するけど」

このゲームには相殺のシステムがあり、基礎カードで攻撃される時、同じ属性のカードを使用するとダメージを軽減が可能なのだ。

そのシステム上、なるべく初手で基礎カードは温存しておくべき――――

それを4人は理解しているのだ。

「じゃ、次は俺の番だな」

爆弾愛好家も1枚めくる。

そして、爆弾愛好家は躊躇い無く、1枚のカードを出す。

「へぇ?」

「君、ギャンブラーやね。自分がどうなろうが関係あらへんの?」

「ちょっとした 運(・) 試(・) し(・) って所かな」

それは特殊カードの1つ――――

爆弾のカード。

その効果、全てのランダムなプレイヤー1人に10の固定ダメージである。

腐食や火傷の効果は無視されるが、それでも一撃で体力の半分が消える可能性がある凶悪なカード。

勿論、自分自身に当たる可能性もある。

爆弾のカードを前に出した瞬間、プレイヤーの頭の上を爆弾が飛び回る。

互いの緊張が最高潮に達した瞬間――――

「は?」

蛇者の上で爆発する。

[蛇者20HP→10HP(爆弾)]

「残念、赤月に当たらへんか」

「爆弾なんて当たる奴おらんだろ。蛇者以外」

「ドンマイ蛇者!」

「爆弾愛好家……あんた、俺を敵に回したな?」

蛇者は青筋を立てながら、山札から1枚引く。

そして、とあるカードを前に出した。

「風6を爆弾愛好家へ」

「嘘だろ……なんて言うと思ったか! 風3相殺!」

[爆弾愛好家20HP→17HP(風)]

「そんな見え見えの攻撃マトモに喰らうかよ」

「ちっ流石に持ってたか」

爆弾愛好家は肩を竦めながらニヤリと笑みを浮かべる。

その姿を見た蛇者は悔しそうに舌打ちをひした。

「さて……」

BANは楽しそうに山札からカードを1枚引く。

そして、カードを表に出した。

「風5を爆弾愛好家へ」

「待て待て、それは聞いてない!」

同じ属性同士の基礎カードは相殺する事が可能。

それはつまり、持っていなければ防げないと同義である。

[爆弾愛好家17HP→12HP(風)]

「何かピンチそうだな。大丈夫か? 頭」

「くっそ関係無いからってムカつく……!」

赤月は依然余裕の表情を浮かべながら1枚引く。

少し悩んだ後、カードを表に出した。

「風4をBANへ」

「……まぁ、やとおもうてましたわ」

BANは先程攻撃で風の基礎カードを使い果たしており、当然攻撃を相殺する事が叶わない。

[BAN20HP→16HP(風)]

「腐食2付いてるのに攻撃されてないの腹立つな」

爆弾愛好家は山札からカードを引いた後、間髪入れずあるカードを出した。

「吸収3を赤月へ」

[赤月は吸収3の状態になりました]

ここで新たな異常カードである吸収を切る。

吸収とは自分のターンの終了時、その分自身の体力を回復させるという効果である。

[赤月20HP→17HP(吸収)]

[爆弾愛好家12HP→15HP(吸収回復)]

このゲームにおいて、状態異常の上に状態異常を重複させる事は出来ない。

その代わり、新たに 上(・) 書(・) き(・) するシステムとなっているのだ。

「自分だけ得しようたって、そうは行かないよ」

蛇者は山札を引き、カードを出す。

「毒2を赤月へ」

「あっ蛇者てめぇ!」

[赤月は毒2の状態になりました]

更に上書きとして毒が付与される。

毒とはその数字分を タ(・) ー(・) ン(・) 毎(・) に与える状態異常である。

[赤月17HP→15HP(毒)]

「おいおい、そんなに俺の事が好きなのか? 何だか照れちゃうな」

「皆、状態異常の掛け合いで必死やねぇ」

BANは山札を引く。

「そろそろ勝負を急ぐとしますかね」

BANが出したのは、土の『6』であった。

「ふっふっふ、そんな物――――都合良く持ってる訳無いだろ! ふざっけんな!」

[爆弾愛好家15HP→9HP(土)]

[赤月15HP→13HP(毒)]

「つーか、そこは赤月に行く流れだろうが!」

「ほら油断してるから〜」

「こいつマジで……!」

今、この場では爆弾愛好家が最も追い詰められており、額から冷や汗が流れる。

息を呑む現状にて、次は 赤(・) い(・) 悪(・) 魔(・) の手番である。

赤月はニヤニヤした顔を隠さず山札を引き――――

「腐食3を爆弾愛弾好家へ」

[爆弾愛好家は腐食3の状態になりました]

[赤月13HP→11HP(毒)]

「ごばぁぁぁぁぁぁぁ!!!」

更に駄目押しとして、腐食3が爆弾愛弾好家を蝕む。

次の番は爆弾愛弾好家、そして蛇者である。

このターンで何か対処をしなければ、狩られる――――

爆弾愛好家は震える手でカードを引く。

「くっくっく……どうやら、運命が味方しているのは――――俺の方だったみたいだな!」

爆弾愛好家が提示したのは――――

打消の特殊カードである。

[全員の状態がリセットされました]

次の瞬間、全員の状態異常が解かれた。

「九死に一生を得たか……」

蛇者は苦虫を噛み潰したような表情をする。

ここで爆弾愛好家が打消を使用しなければ、蛇者とBANのコンボで確実に仕留めれていたからだ。

山札を引く。

「吸収2をBANへ」

[BANは吸収2の状態になりました]

[BAN16HP→14HP(吸収)]

[蛇者10HP→12HP(吸収回復)]

「一旦は横並び……せやけど、現状では蛇者有利やね」

BANは山札を引き、少し考えた後カードを出す。

「回復3の使用」

回復の特殊カード――――

それは文字通り、自身の体力を数字分回復する。

[BAN14HP→17HP(回復)]

「ほう、ここで回復切ってくるか」

「あくまで応急処置やね」

そう、これはあくまで応急処置。

吸収を放置すれば、蛇者が得をする事になる。

赤月は山札を引いて、少し悩む。

「……仕方ない。ここはBANを救ってやるか」

赤月はカードを提出した。

その瞬間、BANは目を細める。

[BANは毒3の状態になりました]

[BAN17HP→14HP(毒)]

「これで吸収は無くなったはずだ」

「えぇ 吸(・) 収(・) はね? 毒3を付与しろとは言ってませんよ?」

「あれだよあれ、手が滑ったんだ」

適当な事を言う赤月に、BANは軽く舌打ちをする。

確かに蛇者の体力が回復されるのは宜しくない状況であるが、それ以上にBANをただ助けるのも癪だったのだ。

爆弾愛好家が山札を引く。

「流石に不義は見逃すつもりはねぇ。赤月に毒1」

「うげ」

[赤月は毒1の状態になりました]

[赤月11HP→10HP(毒)]

[BAN14HP→11HP(毒)]

「そりゃねぇぜ爆弾愛好家」

「自由に動かれるの面倒なんでな」

「それは、こっちの台詞だね」

既に、蛇者はカードを引いていた。

「炎6を爆弾愛好家に」

「ちっ炎2で相殺する」

[爆弾愛好家9HP→5HP(炎)]

[赤月9HP→8HP(毒)]

[BAN11HP→8HP(毒)]

現状では、爆弾愛好家の体力が5HP、赤月とBANの体力が8HP、そして蛇者の体力が12HP残っている。

それに加え赤月には毒1、BANには毒3が身体を蝕んでおり、落ちるのは時間の問題だ。

「これは俺の勝ちかな?」

BANが山札を引く。

少し時間を置いた後、カードを出した。

「――――腐食1を蛇者に」

BANは舌打ちをする。

この状態での毒3――――

彼は悔しい思いをしながら、他のプレイヤーが蛇者を倒してくれる事を願い苦し紛れの腐食を付与する。

そう、毒3によって自身のターンが回って来る前に死亡が確定してしまったのだ。

「おやおや、かの腹黒狸は脱落のようだね」

「……流石に詰みやね」

[BAN8HP→5HP(毒)]

[赤月8HP→7HP(毒)]

全員の体力が残り少なくなってきた状況。

それでも、蛇者は依然余裕を持っていた。

「水6を蛇者に」

「水1で相殺かな」

[蛇者12HP→6HP(水)]

[赤月7HP→6HP(毒)]

[BAN5HP→2HP(毒)]

赤月の猛攻により、蛇者の体力は着実に減らされていく。

これを勝機と見た爆弾愛好家が嗤う。

「蛇者が優勝するのだけは避けねぇとな? 炎4」

「ぐっ……」

[蛇者6HP→1HP(炎)]

[赤月6HP→5HP(毒)]

[BAN2HP→死亡]

ここでBANが脱落となる。

残るは蛇者、爆弾愛好家、赤月。

「――――だけど、爆弾愛好家……あんた、炎の基礎カード使ったね?」

「そんな、馬鹿な……!」

爆弾愛好家は1つの可能性が脳裏に浮かぶ。

蛇者は今回相殺を選択しなかった。

もし彼が炎5を持っているが温存し、敢えて素で受けたのなら――――

「炎5を爆弾愛好家へ」

「馬鹿なぁぁぁぁぁぁぁ!!!」

[爆弾愛好家5HP→死亡(炎)]

[赤月5HP→4HP(毒)]

爆弾愛好家、盛大に散る。

残るは蛇者と赤月のみ。

「さて、決着を着けようじゃねぇか」

俺は堂々と手札の中で一番数字の高い土4を叩きつける。

蛇者には腐食1が付与されている。

流石にこれをノーダメで切り抜けるのは――――

「土5で相殺」

「…………………」

[蛇者1HP→完全相殺(土)]

[赤月4HP→3HP(毒)]

「何か言い残す事はあるかな?」

「いや〜蛇者さんってマジで格好良いっすね特にその目隠しとか強キャラの典型だと思うんですよね後イベントの時の動きもマジで強い動きしてるなってずっと思って――――」

「水4で攻撃」

「ほえやぁぁぁぁぁ!!!」

蛇者は無慈悲にも赤月へと攻撃を差し込む。

赤月は一応水2を出すも――――

[赤月3HP→1HP(水)]

[赤月3HP→死亡(毒)]

完全王者は蛇者となったのだ。