作品タイトル不明
就職活動
来たる4月16日の土曜。
数時間のメンテナンスを終え、正午丁度に『Relics Online』の世界に降り立つ。
[ワールドアナウンス]
[バージョンが更新されました]
遂にバージョン1.1が来た所で、俺は『ゴースト港』のある場所へと向かう。
「おぉ、赤月か。俺達の準備は済んだぜ」
“船長 フック”は頭に付けている恐竜の骨をカタカタと鳴らしつつ、俺を船の上に乗せた。
相変わらず、どういう身体の構造をしているか甚だ疑問だが……まぁ突っ込んだら負けな気がする。
[新大陸へ向かいますか?]
[承認/拒否]
俺は迷わず承認を押した。
すると視界が暗転し――――
いつの間にか、目の前には見知らぬ街が広がっていた。
『ソル街』
そこは非常に輝かしい日照りに晒された港町であった。
崖の上に建てられおり、石灰石のような白い建造物が良く映える。
その隣にある海はエメラルドのように煌めいていた。
既にNPCが忙しなく物資を運んでいる様子が見える。
服装を見るにハンター協会の職員だろうか。
俺達が港に着くや否や、その職員は駆け寄り挨拶を交わす。
「遺物ハンターさん、お待ちしておりました。ここが新たな活動拠点となります」
「随分と気前が良いんだな。わざわざ俺達が向かわなくても拠点建ててくれるなんて」
「俺が頼んだんだ。これから新大陸を調査するってのに、活動拠点1つ無いのはどうかと思ってな」
「なる程、それ込みでの 準(・) 備(・) 期(・) 間(・) か」
そこまで準備が長くものなのかと思っていたが――――
新大陸での活動拠点を建てる期間でもあった訳だ。
「そんじゃ、一旦俺は元の大陸に戻るぜ。まだ待ってる奴らが大勢居るもんでな」
「そうか、ありがとうな」
フックはそれだけ言って、どこか姿を消した。
最近のゲームは、こうして中々流暢に会話を話せるAI積んでくれているから助かるな。
そう思うと、一昔前のAIは酷かったな――――
そう思いながら、マップを開いて『集会所』に位置を確認する。
「『集会所』は……あれか」
『集会所』に入った俺は、ふとある新機能を思い出す。
職業――――
話だと生産系のものしか無いらしいが、それでも戦闘に役立つアイテムを作ったりとやりようはあるものだ。
「あの、職業に就きたいんだが……」
「はい。職業に就きたい場合は職業クエストをクリアする必要がありますよ」
職業クエスト――――
確かそんな事書いてたような気がするな。
つまり、それをクリアすれば良いって訳だ。
「あちらの『クエストボード』の隣に『就職ボード』がございます。詳しくはそちらをご覧下さい」
受付が示した通り、『クエストボード』の隣に別のボードが設置されていた。
建築士、魔導技師、料理人、記録者、採集者、農家、運送業者、大道芸人、芸術家――――
「お、これ良いじゃん」
数多くの職業の中、俺が選んだのは 調(・) 薬(・) 師(・) だった。
戦闘に刺激を求め、刺激に快楽を覚える者たるもの、アイテムであろうと妥協は許されない。
現地点での手持ちは、体力や魔力を回復させるだけのポーション類のみ。
バフ効果やデバフ効果のポーションを作れるようになれば――――
戦略の幅が広くなるに違いない。
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
調薬師試験
達成条件 体力回復ポーションの作成
報酬 調薬師の解放、『調薬釜』
依頼内容
調薬師となる為の訓練を受けて貰います。
試験内容は『体力の回復ポーション』の作成ですが、品質は問いません。
調薬に必要な『調薬釜』は一時的に配布します。
合格した場合のみ、そのまま所持して頂いて構いません。
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
[職業クエスト「調薬師試験」を受注しました]
[『調薬釜』を一時配布しました]
[今より職業チュートリアルを開始します]
「これが『調薬釜』か。案外小さいな」
俺に一時配布された『調薬釜』は両手で持てる程の大きさの黒釜であった。
流石に創作のような巨大な『調薬釜』が贈られる訳では無いらしい。
[『体力回復ポーション』を作成するには、最低でも薬草と水が必要です]
[薬草と水の場所の目的地にマークしました]
マップを見てみれば『ソル街』の上方面の空き地と砂浜周辺にピンで示されていた。
海風を浴びながら北上していくと、確かに地面には 赤(・) い(・) 草(・) が生えていた。
[『薬草』×4を入手しました]
「採集なんて、クエスト消化以来の作業だぞ」
一通り『薬草』の採集を終えると、今度は砂浜周辺へと向かう。
その道中、煌めく海面を見て癒されながら歩いていった。
「んで、ここから水掬う――――」
[水を入手するには専用の瓶が必要です]
「は?」
俺が少々イラッとしていると、近くにピンが付いた。
その方を見やると、都合よく瓶が流れ着いていた。
[『空瓶』を入手しました]
「……許す!」
ここで『空瓶』買ってこい言われたらキレてた。
間違いなくキレてた。
俺はその『空瓶』で近くの水場から水を掬い上げる。
[『海水入り瓶』を入手しました]
「海水……大丈夫なのか?」
……品質は問わないらしいから問題無いか。
俺は再度『調薬釜』を出して『薬草』と海水を入れる。
すると、突然『調薬釜』が光り出す――――
「赤い液体になったが……完成したって事で良いんだよな」
俺は『空瓶』で、赤い液体を掬い上げた。
[『体力回復ポーション』を入手しました]
◆◆◆◆◆◆◆◆◆
体力回復ポーション
品質 粗品級
特性 即効性
プレイヤー赤月により作成された体力回復ポーション。
飲むと自身の体力を5%回復出来る。
◆◆◆◆◆◆◆◆◆
「あ~流石に品質に影響出たな」
品質、 粗(・) 品(・) 級(・) って……流石に海水を使うと劣化しちまうんだな。
色んな水を使った品質の違いも研究しておかないと。
俺が『体力回復ポーション』を入手した瞬間、『調薬釜』の中身が綺麗さっぱり掻き消えた。
生成出来るのは1つ限りのようだが、これで職業クエストはクリアだ。
[「調薬師試験」をクリアしました]
[『調薬釜』を入手しました]
[調薬師になりますか?]
[承認/拒否]
承認を押す。
すると、ステータスの所に職業の欄と調薬師が載った。
[職業スキル【調薬図鑑】を入手しました]
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【調薬図鑑】
種類 職業
調薬師の熟練度1となった者が習得するスキル。
自動的に素材情報とレシピ履歴を保存する。
使用すると、データベースが表示される。
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「職業スキルか……こうして、直にスキル貰うの新鮮だな」
普通、スキルというものは遺物に外付けされているものだ。
新たなスキルを入手したければ、遺物を探し当てるしかない。
だが職業には 熟(・) 練(・) 度(・) という概念があり、熟練度が上がる毎に新たな職業スキルが貰えるシステムなのだろう。
「戦闘も刺激的だが、たまには生産職で遊ぶのも良いな」
データベースを埋める為にも、探索の道中で素材採集に勤しんでみても良いかもしれない。